Nobiro

~みんなの寺子屋スポーツクラブ~

事実と真実

2018年09月15日 | etc
「Future of Work -未来の経営と働き方に出会うEXPO-」 原監督のご登壇抜粋

■まず選手(部下)に、現在の自身のレベルを把握させる
タイムや順位という数字で結果が出るので、選手個人も自分がどれくらいの実力がついているのか把握しやすいのが陸上競技です。ただ、監督という立場で気をつけるのは、ある大会で出た結果1つだけを評価するのではなく、3つの大会で結果の平均をならして評価すること。1つだけだと「たまたま」「運」の要素が強すぎてしまう。あとは、日頃の生活態度もなるだけ数値にして評価することが大事です。

■成果が出る計画方法は「見える化」が必須
可能な限り「見える化」をしています。例えばトレーニングに関しても、1年間を4期にわけ、その期のテーマを掲げます。こうすれば監督と選手が同じ方向を向けるんですよね。
* 1月2月3月:1期→この時期は体力をつけましょう
* 4月5月6月:2期→5000メートルのベースをあげましょう
* 7月8月9月:3期→走り込みをしましょう
* 10月11月12月:4期→実践トレーニングをしましょう 
そして、見える化にはデータも取り入れること。
わたしたち青学の練習の場合、設定したトレーニング量の70%消化すれば16人の選手※として選ばれるということが科学的データでわかったんです。(※箱根駅伝の場合は1チーム16人をエントリーする)
これは逆に言うと、70%をとにかくこなすだけでいい、100%じゃなくていいということ。
これまでのスポーツ指導はとにかく練習量の100%をさせていました。できることを評価しました。しかしスポーツは怪我の時期があります。そのときに無理をしてはいけない。でも選手は無理しようとしてしまう。
怪我じゃなく単純に遅れることもあります。そんなときはデータを見せて「70%でいいんだから、今は焦らなくてゆっくりでいいんだよ」というような内容を個別に相談します。データはこういうところで使うのです。

■目標は個々に合わせて設定する
才能がある人、自頭がいい人はいる。ただそれはイレギュラー。それに合わせてはいけない。
そんなに練習しなくてもある一定の高めの到達点にいけるという人はいます。さほど練習していないのに圧倒的に速いとか。陸上においては身体能力が長けているということですね。ビジネスにおいても、本当にセンスがある人、嗅覚がすごい人がいます。ただ、1つの大学での競技の場合そういう才能がある選手は4年やって1人か2人出てくるかどうか、ぐらいの確率です。あくまでイレギュラーなんですよ。その確率に他を合わせてはいけません。
同じことをやっても、同じ結果がでない人はいるんです。だからこそ、目標は個々に合わせるべきなんですね。

■目標設定は半歩先を設定する
目標を決めるときは半歩先がコツ。半歩先ならできるんです。頑張ればできるポイントを気づかせることが大切です。「君はどう伸びたいの?」と聞くんです。帰ってきた回答、それがあまりにも高かったら「現実的ではないよ。もう一回考えてみなよ」とフィードバックします。目標が低すぎたら「そんなに自己評価低いの?わたしはあなたをもっとできると評価してるよ」と感想を述べます。
目標は達成できたほうがいい。成功させないといけません。成功させるには、頑張れば達成できることを目標としないといけない。
何も考えず「お前ならできるよ」は嘘になってしまう。
「ちょっとだけ頑張ればできる」というのが目標。それは本当にだいたいできるんです。それに対して「お前ならできる」という声がけはOKですね。
成功体験に勝る成長はないんです。
 
青学陸上部で取り入れたマネージメントの一部
結果を出すためには方程式がある
勝つための方程式というのがあります。
結果 = 準備 ✕ こだわり
こだわりをもてばインプットもアウトプットも変わります。

■メッセージが大事
「あなたは○○だ」ではなく、「わたしは○○だと思っている」と、自分を主語にすることが重要です。相手を愛してそれをきちんと伝えること。伝えなければ意味がない。
本当に愛がないのに、愛がある風に見せるのは相手に嘘がばれる。みんなを愛する。

■「事実」を見極める
本質は何か「事実は何か」を見極めるのが重要です。
事実と真実の違いですが、事実は1つなんです。全員が一致していること。例えば今日ここに原監督が来ている、これが事実です。
真実はいくつもある。その人にとっての主観が入っているんですね。例えば「原監督はイケメンだ!」とか、そういうの(笑)
例えば部下が自分と違う意見を述べたとき、衝突したときがあったとします。その時はこの2つをしっかり分けるのが重要です。そうすると頭ごなしに否定するのではなく、こんなふうな言い方になります。
「あなたの考え方は正しい。真実である。ただ、いまの組織としてそれは事実ではない。だから受け入れることができない」
コーチングの前にティーチング
ビジネス上でもコーチングが流行しています。しかし何も教えずに、材料も与えずに「自分で考えてください」では無理です。
肝は必ず教えること。ビジネスであれば業界の常識など基礎はしっかりと教えないといけない。
これをやらないですぐにコーチングをやってしまう、これは管理放棄だとわたしは思っています。
新入社員などは基礎知識が固まったあと、そのあとに組み立て方や混ぜ方、オリジナルを出していけるんですよね。

■心理的安全性(安心性)は大前提
会話をたくさんする必要はないんです。意思疎通をきちんとすることが必要。
意見を述べやすい関係、環境を築くことは大前提で大切。

■自分のことを自慢しろ!
マイナスの話を聞くよりもプラスの話を聞くほうが楽しいでしょう?吉本興業の芸人さんの奥さんは美人が多いんです。
つまり、世の中は「楽しい」が人気なんです。楽しいほうが絶対にいい。自慢って、自分の嬉しかったこと、すごかったことなんです。愚痴より自慢聞いてるほうが楽しいじゃないですか。

表情、状態、声をしっかりと観察する
数字だけじゃないところを見ること、表情、顔色、服装など。
目標達成ができたとして、その人は余裕をもってできたのか、いっぱいいっぱいでできたのか、その差は大きいですよ。単に達成ではなく、どうやって達成できたのか。観察しないといけません。
そのためにはコミュニケーションとらないとわからないですよね。対面。それが難しければ電話。メールとか文字だけでコミュニケーションするのも便利ですが、やっぱり実際に話すとか、声の調子がどうだとか、そういうものに情報がつまってるんですよ。