厚生労働省が今年3月末までの半年間に職を失うと予想されている派遣などの非正規雇用労働者数が当初3万人から8万に増え今では約12・5万人に上ると言う調査結果を公表しました。
また企業従業員の自殺者は年に3万人に登るそうです。
今日は見方を変えて企業経営者に焦点を当ててこの問題を考えて見たいと思います。
[日本の企業経営の流れ]
・学歴中心主義の人事管理
戦後以来、学歴中心主義の人事管理は今まで続いているようです。
その最大の理由は、途中入社など認めると従業員育成計画が乱れることや人事管理がややこしくなるからでしょう。
戦後間もなくは、当時の高小卒や旧中卒で工員として入っていた人の中にも優秀な人が多くいましたが、注記で書いたように彼らが夜間の大学にいっても認められないのがふつうでした。(*注記1)
(今は一般従業員と管理職と書かれていますが、その記述でははっきりしないので、昔使われていた工員(優秀な人で係長止まりに終わる)、職員(課長以上の職を約束されている人)というやや差別的とも取れる呼び方で通させて下さい。)
・「名ばかり管理職」の発生
当時は社会党や共産党に率いられた過激な労働組合が有りました。
それで企業が取ったやり方は、工員の地位を引き上げて管理職にし穏健な管理職組合に入らせることでした。(*注2)
然し、過激な組合を持つ企業と、穏健な旧民社党の影響の強い組合を持つ企業との間に競争力の差が出始め、次第に過激な組合は衰退の一歩を辿りました。(*注3)
・合理化の進行と企業の発展
組合問題が落ち着いたころから、日本経済の発展に伴って企業は膨張を続けて来ました。
当時の合理化の手法は、経済の低迷期に希望退職や新規採用を控えて人員を削減し、経済の回復期には企業を拡大するが人員を増やさないという、経済の発展時だから出来た無理のない形の合理化が進められていました。
・自主管理活動による合理化
そのころ米国からは品質管理の考えの導入され、工員を中心とする日本独自の自主管理活動や改善運動が進められて、今の自動車や電子機器などを中心とした企業の競争力の強化され、一億総中流意識を持つと言われるほどの大成功を納めました。
その理由は
・前にも書いたように工員にも職員に負けない潜在能力を持った人が多くいた
・昔からの年功序列、終身雇用による愛社心やチームワークで働くと言う土壌があった
・工員には労働組合の存在があり、人員削減など簡単に出来なかった
つまり現在では企業運営の障害と思われている、年功序列、終身雇用や労働組合の存在が日本企業の合理化と競争力向上の推進力(ドライビング・フォース)になっていたのです。
[麻薬のような労働者派遣法]
成功した日本の企業に立ちはだかったのが
・日本のバブルの崩壊
・膨大な人口と超低賃金の国、中国と台頭と、日本企業の相対的な競争力の低下
・小泉さんのドラスティクな規制緩和、構造改革の推進
です。
それに対して経団連は政府に労働者派遣法の制定を申請し、さらに同法と労働者の防波堤だった労働基準法の緩和を要求し、政府はその申し入れを受け入れてきました。
労働者派遣法は企業経営者にとってはとても便利な方法です。
・経営者の好きな時に受け入れ、好きなときに契約を破棄出来る。
・解雇に伴う企業としての社会責任の追求や従業員とのトラブルは全ては派遣会社が受けてくれる。
・そして圧倒的な受け入れ先と派遣元の力関係で、賃金はいくらでもカットできる。
・人事管理では正規従業員の管理だけで良い、法律化されている面倒な非正規社員の正規社員化など頬被りすれば良い。
労働基準法の緩和で昔なら法規違反だった実質的な「人入れ稼業」もOK、偽装請負や残業時間の規制も緩くなりました。
それで一昔のように組合の監視や、従業員を大切にすると言う基準法の規制もない中で、今までのような生産性向上のための合理化を進める必要もなく、いつでも切れるそして賃金も抑えられる、派遣労働者や請負会社の従業員の導入で簡単に経費が削減できるようになりました。
おまけに小泉さんの米国一辺倒の波に乗って、成果主義の導入、企業は株主のものの考え、長期的視野の経営より短期的な利益追求など、昔の企業の良い所を捨て去った企業もも出始めました。
[頭の悪い一部の企業経営者]
これらの動きを見て心に浮かんで来るのは、
・全てを「物」とする考えかたを持つ経営者
労働者のロボット扱い、従業員の潜在能力の無視、開発は開発する人、作るのは作る人
・凡庸な企業経営者
半世紀以上も固定化した人事管理システム、長期的な視野もなく世の流れに流される人、倫理観や企業の社会責任の考えのない経営者
と、
・従業員の精神疾患や自殺者の激増、行先のない離職者の激増
です。
我々は「契約を打ち切っただけで首を切ったのではない」、「離職者のケアは政府の責任だ」と言わんばかりの経団連の幹部の発言などなど聞いて呆れるばかりです。
労働者派遣法や労働基準法の改正は、企業経営者にとって余りにも便利が良過ぎたので、つい過去の厳しい法規や労組の監視のもとで営々とやってきた合理化の努力を忘れ、つい放漫な企業経営に陥ったのが、今回の大量解雇の一因となったのだと思います。
今回の金融・経済の危機は天から降ってきたのではないのです。
何故なら銀行などは日本のバブル崩壊の経験を活かして、行き過ぎた米国の金融資本の動きに警戒していたのに、製造業はそれ対する警戒心もなく、企業の拡大により競争力強化を図って来たと思うのです。
この項のタイトルに書いたように今回の大量解雇は、経営者に取って便利過ぎる、労働者派遣法や緩和された労働基準法が企業経営者に麻薬のように作用して、その経営に対する判断力を誤ったのも一つの大きな原因だと思います。
[私の提案]
行き過ぎた規制緩和や、構造改革が多く問題を残したように、余りにも便利の良過ぎた労働者派遣法や、労働基準法の改正が数々の問題を引き起しています。
それで対策にも色々あると思いますが、一つの方法は労働者関係法に何らかの歯止めとかブレーキを掛ける必要があるような気がします。
対策は色々あると思いますが、例えば、離職者救援資金を創設して、非正規社員の数に応じて派遣会社、請負会社、受入会社からの資金提供を義務づけるなどです。
それで、政府も離職者ケアの出費を抑えられまし、野放図な非正規社員の導入を防ぎ、企業の拡張プランを慎重にさせ、企業にも従業員の採用に対する社会責任を認識させることになると思います。
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*注記1:私の見聞したこと
私は20代のころ国立大学の夜間部に通ったことがあります。
学校へ通う電車の中で自然と他の大学に通う同じ会社の人達の知り合いになりました。
みな私と同じ旧制中学の卒業でしたが、普通なら私と同じように「職員」で入れるところを「工員」として働いていた人が大部分でした。
そして彼らの卒業後の処遇が当然のように問題になりました。
大学卒の場合は旧帝大と戦後出来た大学、二流の私立では相違がありますが所謂エリート・コースに乗るのが普通でしたが、会社は入社以後の上級の資格をとっても認めてくれませんでした。
何故なら、将来の幹部の育成コースに横から入ってくれば、人事管理制度ががたがたになるから、また工員として働いていた人がいきなり出世コースに飛び乗るなど、同僚の士気に影響すると考えたかも知れません。
当時の夜間大学に通っていた人達の大部分は地もとでは職がないのではるばる出てきた人達で、皆、意欲満々で、中には退職後、国立の工業大学の教授になった人もいる程優秀な人も多かったのです。
当然のように夜間大学に通った人達の殆どは辞めてしまいました。(私は前にも書いた様に貧乏な家庭に育ったので家計のことを考えてそのまま勤めました。)
ここで会社に取ってまた工員の欠員の補充の問題が出ました。
そして会社が取った対策は、会社の従業員の子供しか工員として採用しないことでした。
その理由は差別的な表現になるので省略しますがご想像下さい。
つまり会社は工員の能力など全く無視していたのです。
お断りして置きますが私が勤めていた会社は今でも業界で一、二を争う会社ですし、私の大学の友人達が勤めていた会社も殆どが一流会社ですが、工員の能力を無視した点では皆同じでした。
読者の方々はもうお気づきと思いますが、今でもこの少なくも作業員への処遇はごく一部の会社をのぞいては殆ど変わらないと思います。
私たちの現役時代から約5~60年の間以来変わらないのです。
*注2:名ばかり管理職
今の「名ばかり管理職」は残業代をケチルためのひどいやり方ですが、当時は労組の力を削ぐためでした。
ひところ「残業代ゼロ法案」として問題になった「ホワイトカラー・エグゼンプション」も同じ流れです。
*注3:今の日教組、官公労は、力も弱りましたがその悪影響をみれば、昔の過激労組の影響が如何に大きかったか判ると思います。
池田先生のブログでも読んで勉強しなおしなさい!
どアホ!
2000万円の給料を一時的に1000万円にしても生活に困る事はありません。すれば、2~3人の雇用は守れるはずです。同様に2年間、給料5~10%カットして休日も多くすれば、派遣社員も問題は無いはずです。
そもそも忙しい時期もあれば、暇な時期もあるはずです。それは、製造業だけでなく一般でも同じです。職場でも年から年中、同じように仕事をするのもおかしな話であって。けど、そういう人間が多いです。会社のために。社員のために。そういう互恵関係の崩壊は、結局、マイナス面が多かったように思いますね。