普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

品物扱いの非正規従業員

2008-12-26 16:31:46 | 企業経営

 25日の読売新聞の「論点」で 法政大学の藤村博之さんが「非正規社員の削減」について書いていました。
 その対策として、
・労働者が身を守る方法として、パートや派遣でも、企業でも重要な 仕事を任されたひとの立場は揺らいでいないことを考えて、企業からから必要とされる様に自分の能力を高めること。
・企業は日本の競争力の源泉である「ものづくり」の強化、中長期の視点での経営、米国型でない日本型の株式市場を作ることを上げている。
を上げていました。

 私も前にも何度か同じような提案を書いてきましたが、特に2番目の提案は長いスパンで見た日本型の経営、「短期の利益を求める海外の資金が本当に日本に取って必要なのか」など書いてきた私しては大賛成です。

[企業にとってとても便利な労働者派遣法]
 然し藤村さんの非正規社員の大量解雇の理由として、
 金融ビッグバン→株式市場の米国型化→四半期毎の行政の開示の野義務化→これを怠れば株主の代表訴訟→企業の1年単位の利益最大化→非正規社員の雇用は経営者に取って訴訟リスクを負ってまで守る対象でなくなる→今回の大量解雇
を上げていました。
 然し私は今回の大量解雇は企業はその防衛の為に非正規社員を切ったので、藤村さんの言う「株主代表の訴訟リスク」の恐れなどは二の次だと考えが公平な見方だと思います。
 それを容易ににしたのは、労働者派遣法の制定と労働基準法の改正と派遣会社の発生です。
・大企業は非正規社員を切ろうと思えば、請負会社と派遣会社との契約を切れば良い
・そして労働者を首にすると言う会社にとって人聞きの悪い評判や、企業倫理や企業の社会責任などの批判は全て請負会社と派遣会社(何故か両者ともよそ事のような顔をしている)が全て引き受けてくれる
・そして、請負会社と派遣会社はお客様である大企業には何も言えない
・そして、大量解雇の後始末は国や地方自治体がやってくれる
・そして、経団連の会長は「この問題の解決は景気の回復だ」と全て政府の責任だと言わんばかりの態度で済ます
 藤村さんは多分これらのことは全て判っていても、短い文章の中では書き切れなかったのだろうと思います。

[非正規従業員の実数を知らない企業のトップ]
 私はその藤村さんのホームページを見ていて、気になるエッセイ、検証日本企業の人事、正社員が競争力の源泉を見たので紹介します。
派遣労働者を受け入れると、派遣会社に代金を支払う。この費用は、企業の会計処理上、人件費ではなく物件購入費や管理費に組み入れられていることを読者はご存じだろうか。
・企業では派遣や請負な間接雇用の人数は末端の部門では判っていても、企業全体としては、正社員の数はわかるが、その他の非正規の社員の実体を知らない
・これで、本当に効率的な人事管理ができるのだろうかと心配になってくる。
・ある電機メーカーの人事部が各事業所の人事担当に調査を依頼して、間接雇用の人数も含めて集計した。すると驚くくらいの数の派遣労働者や請負労働者が働いているという実態が明らかになった。しかも、研究開発の重要な部分で派遣労働者が多用されており、自社の競争力の将来に不安を抱いたという。その結果その会社は正社員を積極的に雇用するようになった。
・サービス業のある会社で、「本当の人件費」、会計上の費目に関係なく、広義の人件費を計算すると、十年前とまったく変わらなかったそうだ。
・正社員の解雇が難しいために、数の調整のしやすさが派遣や請負を使うメリットだと考えられている。確かに、短期的には人件費の削減になり、コスト競争力を高めるだろう。しかし、中長期の企業競争力を考えると、必ずしも得策とは言えない。新しい財やサービスを生み出したり、斬新な仕組みを考え出したりすることによって出てくる競争力は、正社員によって担われているからである。人事部は.何が競争力の源泉かを見極め、それを強化する人事施策を展開しなければならない。

 企業の人事部、当然に企業のトップが非正規従業員の実数を知らないなど考えられないほど酷いと思いますが、藤村さんのエッセーには皆さんも御存知の方が多いと思いますが、かなりの注釈がいります。

[品物扱いの非正規従業員]
 正規の社員の費用は固定費として計上されます。
 私どもが働いていた製造業では一部を除いて設備の運転員はすべて正規社員でした。
 設備のメンテナンスや製品の流通などは業者に任せること多く有りましたが、それは変動費として処理されました。
 その場合必要な技術、設備や工具などは全て業者で提供していました。(最近の非正規社員の提供は単に人員の提供だけです。)
 その理由は勿論社外発注による経費の削減です。(藤村さんはこのことを多分書き忘れています。)
 大企業の社員は実際に受け取る給与は外注の社員のそれより多いのですが、企業の経理上では社員の給与の上に社員管理に関する膨大な間接経費が加算されるので、帳面上からの正規社員の費用と外注への(比較的少ない間接費を含む)支払い工賃の差は5~10倍近くにもなりますので、企業にとってもは外注の魅力は大きかったでしょう。
 中国などの台頭に伴う相対的な企業の競争力の低下のために、企業は労働者派遣法などを政府に請求して、昔は固定費扱いだった設備の運転員の費用を、外注化し経理上からも固定費の大幅な削減をしました。
 そして外注の労働者のみの導入は変動費で処理されました。
 変動費だから企業の業績が悪いときに、部品納入の下請けへの発注を削減すると同じように、非正規社員を削減することが出来るし、固定費である程度身分を保証された従業員を首にするなどに伴う良心の呵責の念など感じずに済みます

 然し正規社員も人間です
 そんなに遠くない昔は、企業の人員の大半を占める設備の運転をする人達も小集団活動で改善提案などして来ましたし、それが企業の業績向上に大きく貢献して来ました
 現在の製造業やサービス業ではその設備の運転をする人達の大半を身分不安定、安い給与の、当然のように意識の低い非正規社員で占めています。
  技術とチームワーク(それも成果主義の名のもと壊した?)しか売り物のない企業がどうして世界で勝ち抜いて行くのでしょう

 自由主義経済、グローバル化、規制改革の名の元で、長期的視野に立った企業の経営をその場限りの経営にし、従業員の首を切って企業の業績を上げた株主と経営者だけが儲かることで、改善活動やチームワークを誇っていた従業員の意欲を低下させるなどを、米国の陰謀だと言う人もいる様です。
 その真偽はとにかく、米国は自国の都合の良いとばかり言うと非難しても仕方がありません。
 日本がお手本のしてきた、その米国の金融も製造業の中心のビッグスリーも破綻をしています。
 日本は、日本人は、日本の企業はどうあるべきかを考え直す時期に来ていると思いませんか。

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1 コメント

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Unknown (a)
2008-12-26 22:42:00
まさにマスコミのミスリードですね。
「非正規がかわいそう」という「弱者」の報道はするが、
そんなにかわいそうなら、全国に溢れるほどいる、サービス残業月何十時間とかの真っ当に働いている正社員の立場はどうなるんだと思います。
非正規がどうのというなら、過酷な労働環境にある正社員の実態ももっと報道されてしかるべきでしょう。

正規・非正規で分けるからおかしくなるんです。
雇用者・労働者に分けて考えれば、また違った構図になるんじゃないですか?

ちなみに私は元正社員の社員並フリーターです。

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