27日の私の荒れる学校と教育委員会で何時も的確なアドバイスを頂いている「はかたのさとう」さんから地方の国立大学、あるいは二、三流の私立大学出のものは技能のラインマンにしているのではないか?東大の機械工学科出は公団住宅に住み、法学部出は郊外の瀟洒な一軒家に住むなどという話も聞くが、日本では、技術者を冷遇しているのではないか?元技術者としての私の意見を聞きたいと言う主旨のコメントを頂いた。
私は現場を離れて随分永くなるので、正確な答は出来ないが、はっきり言えるのは私の出向した会社では、二三流の私立大学出身者がラインの仕事をしていたことだ。
然し「はかたのさとう」さんが言われるように地方の国立大学の工学部出身の人までラインの仕事をしているかどうかについては、その出世の上限が有名国立大学の人より下になる(例えば部長止まりや重役になれないとか)かも知れないが、ラインの仕事をしているとは思えない位の返答しか出来ない。
ちなみに私の卒業した旧制の工業専門学校の後身の地方の工業大学の例を挙げると、卒業生で一流の会社の社長や重役になった人も多くいるし、今でも若い卒業生の殆どは技術者として活躍しているようだ。
「技術者より管理者、経営者が優遇される理由]
現在、政府も経済界の有力者も日本企業が競争力強化のため人的資源と技術力を活かすべきだと誰でも言っている。
然し現実はの下記のような悩ましい問題があるようだ。
1.技術者より管理者、経営者の能力の方が企業経営の成果に響いて来る確率の方が高い。
その例として、Wikipediaに書かれた日産自動車の歴史をみればその理由がはっきりしてくる。
・1966年に高い技術力を誇ったプリンス自動車工業株式会社と合併し、同社の技術がフィードバックされたことで技術の日産と巷間呼ばれるようが、その反面、技術偏重の社風より販売政策は余り上手いとは言えずが、しかも組合闘争とそれにあわせた内部権力闘争が経営の足を引っ張り、オイルショックの頃から長くライバル視してきたトヨタ自動車に営業成績において差を広げられた。
・バブル崩壊後は財務体質が悪化。もともと販売戦略が不得手な上に、商品戦略やデザインなどの面でも失敗したことからヒット車種が出ずに販売不振に陥ってしまい、1998年には約2兆円もの有利子負債を抱えるほどにまで財務内容が悪化し、経営危機に陥ってしまった。
・1999年3月、日本人社長の塙義一は解任され、カルロス・ゴーンが新たな最高経営責任者に就任した。
・現在はゴーンCEOの指揮の元、日産自動車生え抜きの志賀俊之がCOOを勤める。
詰まり、
(1)日産自動車では優位を占める技術部門が販売部門からのフィードバックを無視または軽視したため世の需要にそぐわなくなったのが業績の悪化に繋がった。
これをコントロールするのは管理部門の役目だ。
(2)一方その様な情勢の中で、首脳部の間の足の引っ張りあいと言う権力闘争が行われていた。トップの経営陣が業績悪化を加速させた。
(3)そこで、ゴーンさんが出て来て思い切った合理化を進めてやっと業績が回復しだした。トップの経営者が変わって業績が回復した。
1.これを見て判る様に技術者以上に管理者や経営者の能力や意識が会社の業績に大きく影響している可能性の高いことが判る。
詰まり、市場経済のルールにそって運営されている、企業はどうしても優れた経営者や管理者を求めようとするし、従って技術者の給与や昇進が管理、経営者より少なくなり遅れがちになるのだと思う。
2.製造技術がほぼ安定し、開発より安定運転が重要視される工場ではどちらかと言えば管理に重点を置かれる。
極端な例を挙げると、技術開発能力のない開発途上国では、技術者の役割は工場の安定運転を維持することに限られ、重点は設備を如何に運転し管理して行くか。
日本で言えば、原子力発電所などが顕著な例だ。
[バブル崩壊後な経営者のやって来た事]
日本の技術力の強かった一因は会社への忠誠心を持った優秀な技術者の存在に加えて、小集団による自主管理活動で一般工員から若手技術者までの創意工夫を活かしてきたことだ。
所が経営者はバブル崩壊から中国の台頭を眼の前にした経費削減ばかり眼をむけてつぎのようなことをやって来た。
そのため今盛んに言われている技術力強化のことは無視または軽視してきた。
1.現場の従業員をぎりぎりまで縮小し、契約労働者を導入した。
・従来:会社への忠誠心→自主管理活動→改善提案→競争力の強化
現在:大量解雇、低賃金の契約労働者の雇用→会社への忠誠心欠如
・従来:ある程度の合理化はされていたが、時間内でもある日常業務でもある程度考える余裕があった
現在:タイム・スタディーなどを利用して、ぎりぎりまで人員削減→従業員のロボット化
・契約社員の増大に伴う教育のための作業の標準化→従業員のロボット化
・経費節約のための社内の技術・技能教育機関の廃止→その役割をすべて学力低下が叫ばれていた大学や工業高校に頼った。
2.下請け業者の締めつけ→社内技術を支える土台が弱くなった
・コスト削減のための下請け業者の締めつけや海外の下請けの採用→日本の業者の疲弊、廃業
・海外の下請け業者の育成のために、従来の日本の下請け業者のノウハウを強制的に提出させた→従来の下請け会社の競争力の低下
下請けの金型メーカーのノウハウが詰まっている図面を強制的に海外に持ち出したのは有名な話だ。
3.システム的な合理化を怠り団塊の世代の退職で技術の伝承に慌てて取りかかった。
上記を並べて気づくのは合理化を進める余り、日本の売り物の技術力の強化がまったくおろそかにされていることだ。
逆に成功例としてはトヨタ自動車はバブル崩壊後のレイオフなど行わずに徹底した管理方式と共に日本式の会社への忠誠心を基本とする小集団活動などで世界のトップ近くまで登り詰めた。
また余り知られてないが、岡山の林原グループでは従業員には本業の他に必ず自分がやりたいことを申告させその開発研究でデンプンからの各種糖質開発を事業として特許を多数取得。そこから得られた莫大な収益でさらに新たな研究を行っている研究開発型の企業であるそうだ。
この2例からみても、無闇な合理化が必ずしも競争力の強化に繋がらないことを示している。
もしバブル崩壊以降の合理化に、技術陣の考えがもっと経営陣に反映されて居れば、日本の技術力が今以上に上がっていたかも知れない。
[若い技術者やそれを目指す学生へ]
その本務である技術のレベル向上は勿論だが次のことも考えてはどうだろうか。
1.技術の大切さを身をもって知る経営者がもっと増えて欲しい。
文系の人達に負けぬために、藤原邦彦さんではないが、技術以外の経営、経済、文学など文科系の本も読んで貰いたい。
2.就職してがっかりしないように、就職時にその仕事の内容まで出来るだけ調べて貰いたい。
例えば機械工学の専攻者が石油化学工業に入るときと、自動車製造会社に入るとき、研究所に入るときは、同じ機械専門でもその仕事の内容や重点が管理から技術までそれぞれ全く異なる事になることを知って置くべきだ。
参照:カテゴリー→企業経営
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