メジロ牧場は近年不振であったため解散することになりましたが、この近年の不振の原因として挙げられることに「モガミの肌馬の不振」があります。
じゃあメジロ牧場はモガミの肌馬にどんな種牡馬を付けるべきだったのかというのが気になります。
それで、メジロ牧場出身のモガミの肌馬に対してどのような種牡馬が付けられ、どのような成績だったのか調べてみました(メジロ牧場は血の入れ替えを行ったため、メジロ牧場に繋養されていた繁殖牝馬だけでなく、他牧場で繋養されていたメジロ牧場出身のモガミ肌も含めました)。するとメジロのモガミ肌の仔は202頭。データをいじくるのに少なすぎるわけではなく、また多すぎて扱えないというわけでもない、まあまあな数でした。全部のモガミ肌にすると大変すぎますし、メジロと全く縁もゆかりもない種牡馬も上がってきますし、祖母の部分によって左右される面もありますから「メジロのモガミ肌」だけを対象にしました(最初の理由が一番であり、後の理由は後付けです)。
元となるデータは
netkeiba.comから抽出し、抽出の条件は「母名」を「メジロ」(こうすれば前方一致でメジロから始まる肌馬がヒットする)、「母父名」を「モガミ」にしました。他にも様々な抽出条件を試しましたが、もれなくヒットするのはこの条件でした。
作成した
リストはこれです。89頭の種牡馬が使われていました。
どの順に並べればリストが見やすいかはいろいろあると思いますが、やっぱり中央で勝ち上がらないことにはと思い、中央での勝ち上がり率を優先しました。稼ぎ順をその次に優先したいと思いましたが、これの目安には獲得賞金の中央値か平均値が使えるはずです。正規性がないデータですので、中央値の方を優先し、中央値が同じ場合は平均値の順に並べました。
202頭全体では中央勝ち上がり率は29.7%、地方を含めた勝ち上がり率は50.0%、デビュー率(地方を含む)は83.7%、獲得賞金の中央値は167.6万円、平均値は1661.2万円でした。
これら項目全てで全体での値を上回ったものは「成功した組み合わせ」としていいと思います。それらは表では青字で強調されているテリオス、ミシル、ノーリュート、タニノギムレット、コロナドズクエスト、オース、メジロブライト、ティンバーカントリー、サクラバクシンオー、リアルシャダイ、フォーティナイナー、アフリート、ダンスインザダーク、アサティス、ドクターデヴィアス、リンドシェーバー、メジロライアンの17頭。3頭以上の仔があってこれらの条件をクリアしたサクラバクシンオー、リアルシャダイ、フォーティナイナー、アフリート、ダンスインザダーク、リンドシェーバー、メジロライアンの7頭の種牡馬は特に成功したと言っていいかもしれません。サクラバクシンオーやアフリートを使い出したためにメジロらしくないと言われることもありましたが、これらはメジロのモガミの肌馬の相手としては優秀でした。むしろもうちょっと試されて良かったかもしれません。ちなみにサクラバクシンオー産駒のGI馬ショウナンカンプは牝系がメジロ出身です。
少し気になるのはリンドシェーバー。Alydar直仔で基本的にはアメリカンな血統ですが、母父Cool Moonの母はかなりマニアックな欧州血統。そのマニアックさはメジロが多用したフィディオンなんかと共通するところがあり、父リンドシェーバー×母父モガミの稼ぎ頭
メジロバンクスはここが上手く合っています。メジロ伝統の資産を生かしつつ新しい方向に切り替えるために、こういう種牡馬は重要だったんじゃないだろうかと思います。
メジロライアンは産駒が一番多い15頭で、大きくクリアしている項目はありませんが、渋く全ての項目をクリアしています。その次に産駒が多かったのはメジロマックイーンの13頭。メジロマックイーンがクリアできなかった項目は「地方も含めた勝ち上がり率」のみです。メジロライアンとメジロマックイーンはメジロのモガミ肌の相手として特別に優れていたわけではありませんが、まあまあ良い相手でした。これらが「駄目な相手」だったらもう少し早くメジロ牧場はつぶれていたかもしれません。メジロティターンは産駒が3番目に多い11頭。賞金順で2番目である
パリスナポレオンを出してはいますが、クリアできた項目はパリスナポレオンに引っ張られて上昇した獲得賞金の平均値のみであり、それほど良くなかったのは少し意外でした(しかもパリスナポレオンと父メジロティターン×母父モガミの稼ぎ順2番目の
ボヘミアンチェリーは生産者も馬主もメジロではなく、メジロに対する貢献は少ないです。勝ち上がり馬はこの2頭のみ)。
このリストの上で最も良かった種牡馬はメジロのモガミ肌の仔の稼ぎ頭
メジロランバダを出したテリオス。もう1頭の
メジロシェダールも6000万以上稼いでいます。テリオスがもっと長く種牡馬生活を送れていたらもっと試されたかもしれません。
サンデーサイレンスはシンボリルドルフとほぼ同じ。10冠ベビーと言われた
メジロリベーラの孫フィールドルージュがGIを勝っていますからサンデーサイレンスよりシンボリルドルフの方がましだったと言えるでしょうし、ダンスインザダークとの比較では断然、ダンスインザダークの方が上でした。
他に良かった可能性があるのはフォーティナイナーとその仔のコロナドズクエスト。もうちょっとサンプル数が欲しかったですね。リアルシャダイが良く、ブライアンズタイムは地方での勝ち上がりがあり、その仔タニノギムレットは中央で勝ち上がっています。ブライアンズタイムとタニノギムレットの仔のサンプル数がもうちょっと欲しかったです。
逆にこれらの項目全てで全体での値を下回ったものは「失敗した組み合わせ」と言えると思います。それらは表では緑字であり、ラムタラ、アンドレアモン、パドスール、クリミナルタイプ、ソヴィエトスター、テンパレートシル、メジロパーマー、メジロルイス、アドマイヤベガ、オペラハウス、クリスタルパレス、ジェイドロバリー、フサイチブライアン、サッカーボーイ、エルコンドルパサー、ミュゲロワイヤルの16頭。3頭以上の仔があってこれらの条件を全てクリアできなかったラムタラ、パドスール、メジロルイス、ミュゲロワイヤルの4頭の種牡馬は特に失敗したと言っていいかもしれません。ラムタラを付けるとNorthern Dancer 3. 5 x 4という近親交配になりますが、全く効果はありませんでした。パドスールはMill Reef直仔。同じくMill Reef直仔テリオスが最良の父であった可能性があるのにパドスールは全く駄目でした。リアルシャダイはいいのにミュゲロワイヤルは駄目。メジロ的良血馬メジロルイスも全く駄目でした。
メジロパーマーは祖母がモガミの全姉で同血による3 x 2が発生しますが、良くなかったようです。またメジロイーグルを父に持ってくると産駒はメジロパーマーの3/4同血になります。が、クリアできた項目はデビュー率だけでこれも駄目。メジロパーマーは父メジロイーグルと母父ゲイメセンの関係で生じるAureole 4 x 5のスタミナを武器に粘り込む馬であり、プリンセスリファードの部分はほとんど関与していませんでした。ですから、メジロイーグルとモガミでメジロパーマーを再現するのは不可能ですし、メジロパーマーとモガミでプリンセスリファード = モガミの3 x 2を作っても効果は見込めませんでした。
テリオスがいいのにパドスールが駄目とか、リアルシャダイはいいのにミュゲロワイヤルは駄目とか、非常に難しいですね。使う種牡馬を最適化するのは相当に困難で、牧場の苦労が偲ばれます。ラムタラは初めから駄目っぽい感じがありますが。ただ、サクラバクシンオーやアフリートと言った「いいところ」に目を付けていたのは確かだと思います。