マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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なら学談話会

2009年07月22日 07時39分58秒 | 民俗を聴く
奈良女子大でなら学談話会が開催された。

滋賀県立大学准教の市川秀之氏が話題提供者として語る「神武天皇祭の民俗行事化」だ。

サブタイトルは「奈良県下の神武レンゾを中心に」。

奈良女子大の武藤先生に誘われて公聴してきた。

興味あるテーマだけに市川氏の語りに吸い込まれていく。

県内の民俗行事を取材していくとさまざまな行事が広範囲亘って行われていることに気付く。

なかでもその名の響きが謎めいている「れんぞ」がある。

當麻寺の當麻れんぞ、久米寺の久米れんぞ、多坐神社の多れんぞ、長岳寺の釜の口れんぞ、帯解の神武れんぞ、大和神社ちゃんちゃん祭のおやまとれんぞ、大安寺のれんぞ、矢田寺の矢田れんぞなど多数ある。

各地に分散しているれんぞって一体何なのか。

大凡は見当ついている。

それは岳のぼりとも共通するのだが、行われている時期からにいえば農業の営みにおける農休み(はるやすみとも)と深く関連している行事であることだ。

小高い丘などへ行って花見を兼ねて弁当を広げて食べる。

苗代作りから田植え辺りのころの4月から5月にかけてに行われている。

辞書を紐解けばれんぞを当てはめる漢字は「練道」とあるそうだ。

これには前々から疑問をもっていた。

ある学者がいいだしたのであろうか、當麻のお練りから「練道」を導き出した漢字。

これには違和感があった。

お練りが見られるのは當麻寺、久米寺、矢田寺だけなのだ。

他の地区ではそのようなお練りはない。

大和神社のちゃんちゃん祭はお渡りはあるものの神幸祭なのでお練りとは異なる。

共通しているのはゴザを敷いて持ってきた弁当を広げて食べることだ。

そこには神事は登場しない。

現代のサクラの花見と同じだ。

ブルーシートを広げて酒の宴に変わりはない。

帯解取材のおりに郷土誌を拝見した。

そこにはれんぞのことを「連座」と表記している。

そうなんだよな。

まさしく車座になって食事をする、その様子が「連座」の字が物語っている。

大正4年(1915年)に編纂された市町村『風俗史』には「連座」と表記されている。

一方、1918年に刊行された「折口信夫「方言」『土俗と伝説』には當麻のお練りから由来したとする「練道」がある。

『風俗史』は当時の行事ごとをそのまま纏めたもので実態そのものである。

地域限定から推定された漢字と県内全域をくまなく収集されたものとどちらが正しいかは一目瞭然だ。

発表年代からみても、市川氏の語りを聞いてますます持論に間違いないと確信した。

「今日は神武さんの日やいうて農(野)休みしてた」という台詞は帯解、天理、田原本などの取材地で聞かれた。

(H21. 5.13 SB912SH撮影)


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