マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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ようやく見えてきた栗野のお垢離取り

2019年10月31日 10時11分21秒 | 宇陀市(旧大宇陀町)へ
平成28年の5月29日、調べていた大宇陀栗野のお垢離取り

いつにされるのかわからないものだから、翌週の6月5日も訪れた。

その前の5月15日も調べにきていた。

平成29年の5月8日も訪れて調べてみたが・・。

かつての話題提供をしてくださるが、実施日がとんとわからない。

話してくださったお垢離取り。

全容は見えないが、想像するイメージは見えてきた。

聞き取り調査に来てからこの年で3年目。

実際に、今でもお垢離取りをされている方に出合いたいが、そんなに上手く出会えることはないだろう。

縁を求めてやってきた3年目の栗野の地。

どなたかお会いできればと思って当地を散策した。

火の見櫓から少し南に下ったところに数軒の家がある。

声が聞こえるお家に足が自然と動く。

そこにおられた娘さんと父親に尋ねた栗野のお垢離取り。

村から通知が届いた連絡文書に書いてあった日程は6月上旬の日曜日。

一週目か、二週目なのか。実施時間も書いていない通知文だった。

親子で話してくださった下垣内のNさん。

子供のころの記憶によれば、葉っぱにご飯を盛って供えていたそうだ。

70戸からなる栗野に庚申講はあるが、離脱する家もある。

また、解散した別の講もある、という。

講の営みは当番家で行っていた。

当番の廻りは講中の順。

講中を迎える接待が大層になっていた。

現在は数組の講があるらしい。

話してくださったN家は、農家ではないから、垢離取りは86歳になる隠居のN家が詳しいようだ。

家はそこだ、というから訪ねてみたが不在だった。

本人は不在だったが、庭にすごく素敵な山野草鉢がいっぱいあった。



その美しさに見惚れてしばらくは佇んでいたいイワチドリ



すいぶん前であるが、私もイワチドリを鉢栽培していた。

環境が合わなかったのか、一年ぽっきりだっただけに、蘇る美しさは映像に記憶させてもらった。

そのNさんが、北の方からとぼとぼと歩いてくる。

平成28年の5月15日、神社前を歩いていたNさんである。

2年前にお会いしたときと同じように杖をついて歩いていた。

覚えてはるかな、と思って声をかけたが、「聞こえない」という。

後でわかったが、2年間の経過にずいぶんと耳が遠くになったそうだ。

「お垢離取りってなんですか」と云われたときはショックだった。

逆に言えば、2年前に話してくれた体験談が、実に貴重なもの、と思えるのだ。

Nさんの件は断念。

次はどこに・・。

車道から見える中腹の高台に民家が見える。

なんとなくお家におられるような気配を感じて立ち寄った。

広地に車を停めさせてもらって声をかける。

たしか人影が見えたと思うのに返答はない。

山に登ってしまったのか。

呼び鈴を押せば若い女性が玄関に出てこられた。

お垢離取りの件を尋ねたら、義理のお母さんが詳しい、という。

たしかそこらへんにおったはずだ、というから待っていたら、ひょっこりお顔が見えたFさんに教えを乞う。

出里は隣村の菟田野であるが、垢離取りなんぞはなく、嫁入りしたとき聞かされて驚いたものだった、という。

それから長年に亘ってしてきた垢離取りを「田休みのお垢離取り」と呼んでいる。

中出垣内に住むN家は農家さんだからこそ、すっと口に出る「田休みのお垢離取り」である。

かつては、鳥居を潜って岩神社との間を往復する。

その回数は33回。

垢離取りは、神社に自生する榊の葉、或いは家にある木の葉を33枚摘んでもってくる。

その葉は、神社北裏に流れる小川の水に漬ける。

水に浸した葉を手にして鳥居を潜り、岩神社・社殿に向けて葉についた水滴を飛ばす。

清らかな水で祓い清める作法がお垢離取り。

33回も繰り返すお垢離取り。

いつしか体力的にもしんどくなり短縮することにした。

本来なら、一人で33回も繰り返す作法であるが、しんどくなったら、例えば連れてきた二人の子どもに、或いは孫にも手伝ってもらう。

33回の垢離取り回数を子どもや孫に分担してもらうワケだ。

3人ですれば垢離取り回数は11回でアガリになる、という。

昔は、田植えが終わったそれぞれの家単位でしていた田休みの垢離取り。

F家は田植えを終えたあくる日か、二日ぐらい経った日に垢離取りをしていた。

水で清めた葉をもって神さん参りして、その年の豊作を願っていたのである。

垢離取りには、お神酒と洗い米も持っていった。水に浸けた葉っぱ。

清めたあとに洗い米を盛ってお神酒とともに供えていた、という。

葉に洗米を盛って供える、その場所は社殿下にある一対の花立ての間の祭壇である。

垢離取りの時間は、特に決まっていない。

村の人が揃って一斉に参ることもなく、めいめいが順次参拝する。

F家は朝の7時ころからしている、という。

できれば、F家のあり方を撮らせてもらえばありがたいが、恥ずかしいから、とやんわりお断り・・・。

「岩神社は女の神さんやから」と、いうFさん。

「女は構うことができないので神社行事のすべては男でしていた」が、今の時代そういうわけにもいかなくなった、とも。

岩神社の年中行事に夏祭りと秋祭りに亥の子祭りがある。

栗野の垣内は下垣内に中出垣内。

上垣内にハリガタニ垣内(針ケ谷)垣内の4垣内が廻る当番垣内。

ただ、ハリガタニ垣内の軒数は他の垣内と比べてとても少ない6軒垣内。

その垣内でトーヤ家を選んで祭りを営んできたが、軒数の多い下垣内は軒数分けした2年間の営み。

平成30年の今年であれば秋祭りと亥の子祭りの2回連続の当たりである。

また、中出垣内も軒数が多く、来年の平成31年の夏祭りと秋祭りに当たるそうだ。

(H30. 5.27 SB932SH撮影)