マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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藤井のフクマル

2012年02月07日 08時45分42秒 | 天理市へ
天に近い山の上に設えたとんどのフクマル。

天理市の藤井で行われているフクマルは数組の組で、それぞれにより行われている。

垣内単位ではなく組単位だというから仲間うちの組だそうだ。

山の上と言えば龍王山の登る道の途中にある。

そこからは藤井の集落を見下ろすことができる。

竹垣は杭を打つように土中に埋められた。

倒れないようにするためだ。

その中には数多くの竹を入れている。

はみ出すぐらいなのでロープも張っている。

火を点ける個所には藁束を挿し込んでいる。

15時ぐらいから始めて1時間ほどで作りあげたという「フクマル」。

大きさは直径2m、高さは3mを越えているだろう。

火を点けて燃え上がれば「フクマル コイコイ」と掛け声をあげる。

燃え上がった竹は葉も焼けて集落に落ちていく。

火の粉は「フク」の火。

玄関を開けて飛んできた「フク」を箒で掃いて家に入れる。

という家もあったと話すHさん。

現在のフクマルの場所はそこではなかった。

もっと家の近くだったようで当番の土地だったそうだ。

飛んできた「フク」の火は竃の火点けにして雑煮を炊いていた。

雑煮は正月を迎えたときに神棚に供える。

「神さんにいただいてもらうのだ」とHさんは話す。

今はガスコンロ。生活文化は大きく変わった。

竃はなくなったからと「フク」の火はローソクに移して神棚に祀る。

フクマルの場所から家までは距離があるからと提灯に移して持ち帰るようになったと話す。

家の神さんに供えるから家族が揃ってから雑煮をいただくと話すNさん。

「コイコイ」は「来い来い」と呼ぶ掛け声だろう。

竹で組んだ「フクマル」を燃やして「フク」を迎える藤井の行事である。

日が暮れて空がうっすらと夜の世界に入っていく時間に集まってきた人たち。

ほとんどが上垣内だそうだ。



そろそろ始めようかと言ったとき下の集落から狼煙(煙)が昇っていった。

話しによれば北垣内の方角だという。

南垣内もされているそうだが、北垣内では2軒の家でしているという。

竹がポンポンとはぜる音も聞こえだした。

「あっちから狼煙があがった。北垣内とちゅうか、こっちも火点けるで」とフクマルに火を点けだした。

点ける方角はアキの方角。この年は北北西だという。



火は勢いよく燃えだした。

「フクマルー コイコーイ」と揃って掛け声をかける。

何度も何度も繰り返すフクマル呼び。

力強い火になればフクマル呼びをする。

それは「フク」を呼ぶ行為だという。

「よー燃えたら、えー年になるんや」と話す。

竹がポンポンをはぜて藤井の村に「フク」を呼ぶ。

「フク」は「福」。

「福」を貰って、良い年を迎えるフクマルの火なのである。

風があれば燃え尽きるのは早い。

昨年は雪が降ったこともあって長時間かかった。

今年は無風状態。なかなか燃え尽きない。



お月さんもその様子を天上から見ている。

およそ1時間もかかったが少しずつ鎮まってきた。

ほどよい焼け炭ができあがる。

当番の人が用意した竹製の猪口。

フクマルに近づけて熱燗の酒を作る。

今回、始めての製作だという。

こうして温まったフクマルのお神酒を美味しくいただく。

おかわりをする人もいるがフクマルの火も持ち帰らねばならない。



めいめいが持ってきた家の提灯に焼け炭でローソクに火を遷す。

フクマルの火だけに『遷す』行為なのである。

(H23.12.31 EOS40D撮影)