「仕分け、選別、排除、切断、部分連結」
「世界を分けるコードしか知らないって?」
「うそほんと、よいわるい、きれいきたない、すききらい」
「世界を分節しなければ生きられない。生きるためだろう」
「もちろんそうさ」
「なにが足りない」
「分断コードが目白押しだ。星の数ほどてんこ盛りだ」
「世界はばらけたままだと言いたいのかな」
「ちょっとちがう」
「どう?」
「中途半端なばらけが戦線をつくる」
「どういうこと?」
「ひとりひとりに分かれた完全な分断ならいい」
「そうかな」
「ちょっと考えたらわかるはずさ」
「分断が足りないって?」
「そう」
「何が問題なの」
「グループ交際に留まっている」
「個になりきれていない?」
「グループ内で完結することばが幅を利かせている」
「グループ言語しか見当たらないって?」
「うん。ことばも思考も感性もグループ仕様になっている」
「いけない?」
「つまり、ひとり立ちした個がいない」
「いまだ中世?」
「せいぜいグループ間を渡り歩くだけ」
「ひとりじゃ生きられない」
「相互に依存しあって生きる、それはそうさ」
「そうだろ」
「部分依存ではなく、普遍的な依存関係がある」
「事実として?」
「そう。この事実が部分連結に自足したグループには見えない」
「それを見ろって」
「見るためには個の視線を必要とする」
「どうやって」
「エポケーを徹底する」
「判断中止とかいうやつ?そうする動機はどこから来るの」
「グループ構造、グループ思考の限界に出会うこと」
「よくわからん」
「でなければ個になりきるまえに人生を素通りして終わる」
「そうかな」
「ああ、けっこう大きな問題だと思う」
「どう」
「個と個が出会えないグループ構造があって戦線を維持している」
「つまりそれが戦争に使われるっていいたいのかな」
「あっちとこっち、うそとほんと、善と悪。そこで必ず火花が散る」
「消しようがないでしょ」
「うん」
「どうすんの」
「時間はかかるだろうけど、全員が踏み上がるべき場所があると思う」
「どんな」
「メンバーシップをともにする公正なゲームの場所」
「途方もない時間が必要だな」
「イメージだけは描いておいたほうがいいと思う」