鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『檀林皇后私譜:杉本苑子・著』

2012-07-07 22:51:59 | Weblog
七夕。梅雨空復活。くもり時々雨。


歴代皇后の中で、最高の美しさを持つひと・・・橘嘉智子。
その美貌は、人々を引きつけ、或いは、邪な思いにまで、抱かせる。それは、皇后の存在による罪なのか・・・?だから、自分が死んだ後には、四辻に捨てよ。
死体は、腐敗するもの・・・かつて、美しかった自分が、腐り果て、獣や鳥に喰われ、膨張し、蛆が湧き、九相を経て、やがて地に帰る・・・

・・・これは、京極夏彦さんの著作:巷説百物語『帷子の辻』の冒頭に橘嘉智子・・・後の檀林皇后九相図を、描いているので、神秘的な・・・皇后かと思っておりました。

・・・で、以前から、檀林皇后については、興味があって、どなたか、小説にしてくれないかな・・・と思っておりましたところ、京極夏彦さんより以前書かれたものに、杉本苑子さんの御作が、ありまして、これは、これは、是非是非、読まねば・・・ということに相成り、一気読んでしまいました。

洗練された作品で、権謀術数渦巻く朝廷で、落ちぶれた名門・橘家を復興させるために、同じ祖をもつ藤原家と手を組み、政敵を退け、ついに皇后の座につくことになった橘嘉智子の生涯を流麗な筆致で描く平安絵巻が展開されていきます。

名家・藤橘(藤原家・橘家)の蜜月は、平安の朝廷を影から動かしていくことになりますが・・・。

幻想的な檀林皇后ではなくて、どちらかと言えば、人間・橘嘉智子を、等身大で描いた作品と言えるかもしれません。
その配偶者であり、順当に行けば、冷や飯食いで終わるはずだった次男・神野皇子(親王)の野望。その野望は、彼が、帝位につくこと・・・橘家復興に繋がっていくのが前半。

神野皇子・・・後の嵯峨帝ですが、こちらも禁中一の美男。
しかも、老成して、怜悧な、人に胸の内を明かすことなく、着々と、帝位に近づくさまは、お見事。
自分の夫でありながら、底が知れない男と、従兄弟であり、お互いに反発しながらも、最後まで、心ではつながっている橘逸勢との関わり。

・・・しかし、橘逸勢は、留学生として唐に渡るものの、堕落し、果てには、承和の変で失脚。
伊豆へ流罪になる途中で、その命を終えます。

怨霊、陰謀、野望渦巻く平安時代から、1200年後。
その美貌は、現代にも伝えられる檀林皇后、そして、三筆として名を上げられる橘逸勢、嵯峨帝、空海・・・。

私は、この時代が好きです。


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