鼎子堂(Teishi-Do)

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『聖餐城:皆川博子・著』

2012-05-01 22:50:51 | Weblog
午後から、暗雲のち雨。


大型連休に入る前から、休日を待ちきれなくて、読み始めてしまったのだけれど・・・。
長編でございます。
長編だから長いです(当たり前だけど・・・)。
登場人物・・・巻頭の一覧にあるだけでも42名。
しかも、17世紀神聖ローマ帝国時代のドイツ語系?長~~~い名前・・・。

まず、なにより驚いていただきたいのは、この本の著者である皆川博子先生の御年。
生年月日が二つあるようなのですが、この本のカバーに表記されているのは、1930年・・・現在82歳。
この『聖餐城』が、上梓されたのは、2007年・・・。77歳の頃の作品という計算になりまするな。

どぁぁぁぁぁぁ・・・77歳の婆さま(失礼!)の御作とは、とても、とても思えません。
迫力のある戦闘シーンは、臨場感あふれ、まるで、映像をみているような筆致。
コレ、本当に、女性の・・・しかも、お年を召された方の筆でしょうか・・・と思えるくらい凄い。
武器弾薬および、馬術の描写なんて、軍事マニアだって、こんなふうには、描けないのでは・・・?

舞台は、神聖ローマ帝国・・・大体、この国の名前は、世界史の試験にでたのだけれど、不覚にも私は、失念し、『ドイツ帝国』なんて、書いちまった恥ずべき過去がありまして、地理的には、概ね正しいと思うのですが、現在のドイツとチェコとオーストリアとスイスとか・・・あの辺、東ヨーロッパ一帯でございます・・・で、17世紀の30年戦争を舞台に、孤児(一応、養い親はいますが)のアディとユダヤ人の富豪の少年イシュア・コーヘンの出会いから始まります。
ユダヤ人少年・イシュアは、(出来損ないの)人造人間という設定になっております。その秘密も徐々に明かされていきますが、そのへんも、ほんとに、77歳の・・・と御婆さまの御作とは、思えないくらい・・・年少の男性作家には、まず、無理だろうし、40歳代の力のある男性作家だって、こういう複雑な構想で描き切れるかどうか・・・。

本篇の主人公は、少年・アディなのだけれど、アディと不思議な友情のつながりをもつ富豪ユダヤ人・イシュアとその長兄・シムションの野望、そして、二人の権力争いが、主軸となっておりますが、物語は、それだけでは終わりません。
タイトルの『聖餐城』と『青銅の首』の秘密、占星術、錬金術、カバラ、ノタリコン・・・魔術、オカルト(←コレ使っていいのかどうか?)、神秘系、耽美系・・・もう1冊で、お腹一杯でございます。

更に、ユダヤ人の歴史、刑吏の成り立ち・・・アディの切なく、悲しい、禁断の恋・・・ロマン系だって忘れてはおりません。

855ページの物語の海・・・堪能させていただきました。