みどりの一期一会

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堺市立図書館問題、『週刊金曜日』に掲載/『密やかな教育-〈やおい・ボーイズラブ〉前史』(石田美紀著)

2009-02-06 07:29:48 | 「ジェンダー図書排除」事件
先週発行の『週刊金曜日』に、堺市立図書館問題の
記事が掲載されたということで、友人がFAXを送ってくれました。

堺市立図書館がBL本5500冊を撤去
撤去要求の背景に反男女共同参画バックラッシュ

(週刊金曜日 2009.1.30 736号)
 

上野さんを監査請求の「代表」と書く(正しくは「代理人代表」です)など、
いくつか気になるところはありますが、よくまとまった記事です。

この問題の関係者としては、やっとまともな記事が出た、という感想です。

特に、『知る自由の保障と図書館』(塩見 昇 編著 川崎 良孝 編著 
京都大学図書館情報学研究会 版)ほかたくさんの本を書かれている
「図書館の自由」の専門家である川崎良孝さん(京大)の
「図書の排除は検閲」の説明は、とても納得できるもので一読の価値があります。

 川崎良孝京都大学大学院教授(図書館情報学)によると、米国では図書館資料に対する苦情は検閲と位置づけられている。口頭やメールでの苦情は受け付け図、『イラストの描写が過激だから』と一部分だけ取り上げたクレームは通らない」。苦情を申し立てた人は、名前、住所を明らかにし、特定したジャンル全体を検討したかなど理由を所定の書面で説明しなければならず、検閲に対して厳格な一線を隠している。・・・・・川崎教授は「堺市立図書館が、一般図書を電話で抗議されただけで撤去したことは理解しがたい。過剰反応で、お粗末な対応だ」と批判する。・・・・

記事中の、アメリカの「図書館の自由宣言」については、
この本の川崎さんの論文に詳しいです。

京都大学図書館情報学研究会

  

今回の事件で、わたしが岐阜県図書館で借りて来て、参考に読んだ本には、
川崎良孝さんや京都大学図書館情報学研究会の本が多いです。


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関連で、2月1日の朝日新聞と読売新聞の書評です。
やおい・ボーイズラブに関するほんとのこと、
紹介されてる本を読んでみたいと思います。


 『密やかな教育--〈やおい・ボーイズラブ〉前史』 石田美紀
発行元 : 洛北出版  2008年11月8日発行
 「やおい・ボーイズラブ」というジャンルも、その愛好者を指す「腐女子」という分類もなかった70年代……
 少女マンガと小説の場に出現した「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」は、旧い教養(三島由紀夫、ヘッセ、稲垣足穂、ヴィスコンティ…)をどん欲に取り入れ、エンターテインメント教養ともいうべき独自の体系へと成長していった。
 本書は、この性愛表現が誕生し、80年代に充足してゆくまでの軌跡に光をあてる。
 「女こども」とみなされていた女性の創作者たちは、なにを糧とし、いかなる葛藤に直面し、どのように次世代へとリレーしていったのだろうか。
 


『密やかな教育--〈やおい・ボーイズラブ〉前史』 石田美紀 出版社:洛北出版
無視できないジャンル  評・三浦しをん(作家)


 主に女性の作者による、主に女性の読者のための「男性同士の性愛物語」を描いた漫画や小説は、現在「ボーイズラブ」という一つのジャンルを築いている。愛読者も相当数いるが、作品をほとんど読まずに見当違いな(と私には思える)批評をするひともいる。
 そういう現状のなかで、本書はきわめて有意義な評論だ。「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」は、ボーイズラブから突然はじまったのではない。それ以前には少女漫画家や雑誌「JUNE」の、試行錯誤と質の高い作品があった。先行の文学や映画を取り入れながら、独自の美と表現を指向する熱い思いがあった。
 「三島(由紀夫)の死以降、『男が男の体で政治を語る』姿勢が奇妙奇天烈(きてれつ)な振る舞いとなってしまった」という著者の指摘は、とても重要だろう。一九七〇年あたりを境にして、男性が男性身体を表立って賛美することは少なくなり、かわりに「男性同士の性愛物語」を女性が表現しはじめた。その流れは、いまもつづいている。本書は、竹宮惠子や栗本薫の作品を丁寧に分析し、「男性身体へのエロティックな関心を積極的に肯定」することの意味や、彼女たちが抱いている信念を浮き彫りにする。
 竹宮惠子、少女漫画黄金期を築いた漫画家に大きな影響を与えた増山法恵、「JUNE」編集長だった佐川俊彦へのインタビューは、現在のボーイズラブとそれ以前の作品との相違を示唆し、当時の状況と実作者たちの思いを知ることのできる、非常に貴重な証言だ。
 女性による女性のための「男性同士の性愛物語」は、もっと作品本位の正当な批評がなされるべき質と歴史を持っているし、いずれは性別に関係なく作者や読者が広がるだろう可能性を秘めている。社会と文化と人間を考えるうえでも、無視したり見下したりしていいジャンルでは決してない。本書のように鋭く誠実な研究が、今後ますます増えることを心から願う。
◇いしだ・みのり=1972年生まれ。新潟大学准教授・映像文化論。共著に『入門・現代ハリウッド映画講義』など。
評・三浦しをん(作家)
(2009年2月2日 読売新聞)  


男色(なんしょく)の景色 ―いはねばこそあれ― [著]丹尾安典
[評者]唐沢俊一(作家)■隠されてきた日本文化の美意識

[掲載]2009年2月1日 朝日新聞

 堺市の図書館にBL(ボーイズラブ)と呼ばれる少年愛小説が多数収められていることが、つい最近、問題になった。図書館にこのような書籍を置くことには賛否両論あるだろうが、たとえ否定的な意見の持ち主でも「川端康成の『伊豆の踊子』も廃棄せよ」とは、まさか言い出すまい。
 しかし、本書によればこの作品の原型は川端が大正11年に執筆した『湯ケ島での思ひ出』という作品の前半部分であり、後半には川端が中学校のときに初恋におちた、清野という少年のことが描かれている(この部分は、後に『少年』という作品になる)。
 そして、純粋な少女への憧憬(しょうけい)を描いた作品としてとらえられがちな『伊豆の踊子』にも、その裏に踊り子の兄の栄吉と主人公の同性愛的な感情がサブテーマとして描かれているという。今まで思い描いてきた作品のイメージが根底からくつがえされる、という読者も多いだろう。
 著者の筆は「万葉集」から男性の同性愛誌「薔薇(ばら)族」まで縦横に駆け巡り、日本文化において男色というものがどれだけ大きなファクターであったかを指摘する。ある部分では、日本文化の通奏低音として隠されてきたこの美意識を思うとき、それがBL小説などにいかに影響を与え、かつ変容してしまったかも思い合わせられる気がする。
(朝日新聞 2009.2.1)



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3 コメント

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過剰な反応 (富士山2000)
2009-02-12 22:02:17
 私も読みましたが、過剰な反応だと思います。
「撤去要求の背景に反男女共同参画」(バックラッシュ)の見出しで、笑ってしまいました。
 行灯の影を見て、幽霊だと叫んでいるようで、ハハハ?  ですね。

まともな親なら、苦情をいいますよ。

「図書館の自由」を守らないと主張しておりますが、読みたくない自由もありますから、こんな本が「図書館の自由」で青少年を守れないなら、法律を変えるべきだと思います。

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Unknown (satoko)
2009-05-09 07:38:17
図書館の自由だと何の本を置いてもいいということになりますが、やはりそこには良識というものがあるでしょう。自由の意味を私達は吟味して見直す必要があるでしょうね。

税金を使って男色の本を置くというのも、なんだかなあとおもいます。

まともな司書なら、こういう本は発注しないとおもいますね。

こうやって世の中は乱れていくのだとおもいます。
返信する
Unknown (Unknown)
2010-03-12 15:31:47
税金を使ってるからこそ、幅広い層をカバーできるように取り揃えるべきでしょが。
返信する

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