南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

遷延性意識障害(植物状態)者の余命認定 9(完)

2005年10月22日 | 遷延性意識障害
 生活費控除をしないという裁判例は数的には多数であり、前回述べたような立証活動を積み重ねていけば、裁判官の遷延性意識障害者に対する誤解も解けていくものと思います。
 しかし、裁判官の理解を変えていく、勝訴判決を勝ち取っていくということは決して容易なことではありません。
 裁判官は役人だから信じることができるという態度では駄目で、さまざまな証拠を提出してようやくわかってもらえるものだという風に思ったほうがよいです。
 その意味で、裁判とはひとつの戦いといえます。
 そして、前の方が勝ち取った裁判例を使って、さらにまた別の裁判例を積み重ねていくということが必要であり、勝利を得た事件の情報を使用することができれば、全体を変えていく力になるということができます。
 遷延性意識障害(植物状態)者の法的な問題点は、ほかにもありますが、余命認定の問題はとりあえず、本稿をもって終了とし、次回からはまた別のタイトルで遷延性意識障害者の問題点を解説していく予定です。
(完)

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遷延性意識障害(植物状態)者の余命認定 8

2005年10月22日 | 遷延性意識障害
 生活費控除をする裁判例は、このように遷延性意識障害者には一般の方より生活費がかからないという認識があるようです。
 私が担当したケースで、被告から「生活費控除をすべきである」旨の主張がでましたので、原告の親族の方に実際のところどうなのかお伺いしたところ、刺激を与えて介護の質をよくし、また、実際に生活の質を高めるためには、外出をさせて外気に触れさせることが必要で、そのためには移動のために自動車も必要になるし、ガソリン代も必要になるということでした。
 また、自宅で介護をする場合は、体温調整ができないことから、エアコンを頻繁に使用する必要があり、電気代がかえって上がるという状況がありました。
 被服費についても、服を購入する必要は一般の人と変わらないですし、娯楽費についても、音楽を聴かせる等の刺激を与えることは介護上からも必要とのことでした。
 このような治療費でまかなえないような状況を詳細に陳述書にし、また、介護の文献などでもそのことが裏付けられれば、それを証拠として提出するなどの立証活動をしましたところ、「生活費控除はしない」との判決を勝ち取ることが出来ました。
(続)


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