久離・勘当は認めない・仮刑律的例 49
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(要旨)久離・勘当は認めない
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【播磨姫路藩主からの伺い】
明治2年3月27日、 播磨姫路藩主からの伺い
旧幕府の頃は久離・勘当をした場合は届け出をすればよい扱いでしたが、この度御一新(明治維新)となり、脱藩した者は帰藩させるようにとの寛大な措置が取られています。
久離・勘当をした場合はどのように扱えば良いでしょうか。
領主が受付けた上で、お届けすればよろしいでしょうか。それとも、脱藩者と同様に扱うべきでしょうか。
適切なご指示をいただきたく、この件についてお伺い申し上げます。以上。
【明治政府からの返答】
久離・勘当は、天下に無籍の者がないようにとの(天皇の)御旨意(この点については既に布告したとおりである)に抵触する。よって、久離・勘当は行わず、寛大に取り扱うべきである。
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(コメント)
・仮刑律的例もこの播磨姫路藩主からの伺いで最後です。最後は久離・勘当について。勘当は現代でも聞く言葉ですが、久離(きゅうり)は全く聞かないので、ご存知ない方も多いでしよう。まずは語義を確認しましょう。
久離:親族中の目下の者(子・弟・甥) の犯罪や債務負担について、連帯責任・社会的非難を免れるため、目上の者(親・兄・叔父)が親族関係の断絶を言い渡し、役所に届出て人別帳からはずしてもらうこと。
勘当:主従・親子・子弟の 縁を切って追放すること。久離より軽いが、同じく人別帳からはずすことを役所に届け出る。
・久離も勘当も「人別帳からはずす」という点では同じですが、久離の方が重いのです。この説明ですと、犯罪や債務負担について、連帯責任・社会的非難を免れるという点が勘当とは異なる点です。
・久離・勘当は現代法の感覚からすると、親族法であり、刑事法とは関係がないように見えてしまいますが、犯罪等について連帯責任を免れるという点が江戸時代は刑法的な感覚でとらえられていたのでしょうか。
・江戸時代までは久離・勘当は普通に行われていました。伺文中でも「旧幕府の頃は久離・勘当をした場合は届け出をすればよい扱いでした」と述べられています。
姫路藩は久離・勘当を認めたかったようですが、明治政府は、「天下に無籍の者がないように」との方針を採っており、脱藩した者も帰藩させておりました(仮刑律的例 #5脱籍者処置)。この方針からは、久離・勘当を認めることはできないことになりますので、返答は「久離・勘当は行わず、寛大に取り扱うべきである」とされています。
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