【単純承認をしてしまったら相続放棄はできません】
以前相続放棄のことを記事にお書きしまして、そのときに相続放棄をするのであれば単純承認というものをしてしまってはいけませんよ、 単純承認をしますと 相続放棄は法律上できないことになっていますからということをご説明致しました(→過去記事)。
【こんな場合は単純承認になるでしょうか?】
どういうことをしたら単純承認になってしまうのかは微妙な問題がありまして、裁判での争いとなることがあります。
例えば、こんなケースで考えてみます。
Aさんのお父さんは生命保険をかけていました。受取人はAさんになっていました。
お父さんが亡くなったので、Aさんは保険金を受取りました。
お父さんの債務30万円を受け取った保険金からAさんは支払いましたが、その後お父さんに1000万円を超える債務があることが分かったので、相続放棄の申述をしました。
これのどこが悪いのかと思われる方がおられるかもしれませんが、裁判で争われた論点が入っています。
【生命保険金の受取りは単純承認になるか?】
まず、保険金を受取ることは単純承認にはならないのか?です。この点が争われた裁判があるので、裁判例があります。
結論を分かりやすくいいますとこんな感じになります。
「保険金の受取人がAさんということですね。保険金の受取りはAさんの固有の権利です。遺産を受取ったことにはなりません。単純承認というのは、相続財産の一部を処分したことと法律に書いてあるけれども、相続財産を受取ったわけではないんですから、Aさんの行為が単純承認に当たりません。」
実際の裁判での言い回しも紹介しておきましょう。
福岡高等裁判所宮崎支部平成10年12月22日決定(家庭裁判月報51巻5号49頁)
「抗告人らのした熟慮期間中の本件保険契約に基づく死亡保険金の請求及びその保険金の受領は,抗告人らの固有財産に属する権利行使をして,その保険金 を受領したものに過ぎず,被相続人の相続財産の一部を処分した場合ではないから,これら抗告人らの行為が民法921条1号本文に該当しないことは明らかである。」
生命保険の保険金を受領するのは、保険金の受取人になっていれば問題ないのです。
【受け取った保険金からお父さんの債務を支払った場合は?】
次にAさんが保険金からお父さんの債務を支払ったことが問題になりそうです。
債務を支払ったら単純承認になってしまうのではないか、という問題意識ですね。
「単純承認にならない」という裁判例があります。
先ほどの高裁の決定の判断です。
Aさんが自分が受け取った保険金から支出しているというところがポイントです。
先程保険金の受取は、Aさんの固有の権利であって、遺産ではないとご説明しました。
遺産から出せば単純承認になりますが、遺産でないものから出しても単純承認にはなりません。
つまり、Aさんが自分のポケットマネーから出せば単純承認にはならないのです。
もらった保険金を法律上から見ると、Aさんのポケットマネーということになります。
法律上の言い回しだと、「Aさんの固有の財産」というような言い回しをします。
裁判例の判断部分をみておきましょう
「抗告人らのした熟慮期間中の被相続人の相続債務の一部弁済行為は,自らの固有財産である前記の死亡保険金をもってしたものであるから,これが相続 財産の一部を処分したことにあたらないことは明らかである。」
ここで「自らの固有財産である死亡保険金」と書かれているところがポイントになります。
固有財産=ポケットマネーであり、遺産ではない、ここがポイントです。
以前相続放棄のことを記事にお書きしまして、そのときに相続放棄をするのであれば単純承認というものをしてしまってはいけませんよ、 単純承認をしますと 相続放棄は法律上できないことになっていますからということをご説明致しました(→過去記事)。
【こんな場合は単純承認になるでしょうか?】
どういうことをしたら単純承認になってしまうのかは微妙な問題がありまして、裁判での争いとなることがあります。
例えば、こんなケースで考えてみます。
Aさんのお父さんは生命保険をかけていました。受取人はAさんになっていました。
お父さんが亡くなったので、Aさんは保険金を受取りました。
お父さんの債務30万円を受け取った保険金からAさんは支払いましたが、その後お父さんに1000万円を超える債務があることが分かったので、相続放棄の申述をしました。
これのどこが悪いのかと思われる方がおられるかもしれませんが、裁判で争われた論点が入っています。
【生命保険金の受取りは単純承認になるか?】
まず、保険金を受取ることは単純承認にはならないのか?です。この点が争われた裁判があるので、裁判例があります。
結論を分かりやすくいいますとこんな感じになります。
「保険金の受取人がAさんということですね。保険金の受取りはAさんの固有の権利です。遺産を受取ったことにはなりません。単純承認というのは、相続財産の一部を処分したことと法律に書いてあるけれども、相続財産を受取ったわけではないんですから、Aさんの行為が単純承認に当たりません。」
実際の裁判での言い回しも紹介しておきましょう。
福岡高等裁判所宮崎支部平成10年12月22日決定(家庭裁判月報51巻5号49頁)
「抗告人らのした熟慮期間中の本件保険契約に基づく死亡保険金の請求及びその保険金の受領は,抗告人らの固有財産に属する権利行使をして,その保険金 を受領したものに過ぎず,被相続人の相続財産の一部を処分した場合ではないから,これら抗告人らの行為が民法921条1号本文に該当しないことは明らかである。」
生命保険の保険金を受領するのは、保険金の受取人になっていれば問題ないのです。
【受け取った保険金からお父さんの債務を支払った場合は?】
次にAさんが保険金からお父さんの債務を支払ったことが問題になりそうです。
債務を支払ったら単純承認になってしまうのではないか、という問題意識ですね。
「単純承認にならない」という裁判例があります。
先ほどの高裁の決定の判断です。
Aさんが自分が受け取った保険金から支出しているというところがポイントです。
先程保険金の受取は、Aさんの固有の権利であって、遺産ではないとご説明しました。
遺産から出せば単純承認になりますが、遺産でないものから出しても単純承認にはなりません。
つまり、Aさんが自分のポケットマネーから出せば単純承認にはならないのです。
もらった保険金を法律上から見ると、Aさんのポケットマネーということになります。
法律上の言い回しだと、「Aさんの固有の財産」というような言い回しをします。
裁判例の判断部分をみておきましょう
「抗告人らのした熟慮期間中の被相続人の相続債務の一部弁済行為は,自らの固有財産である前記の死亡保険金をもってしたものであるから,これが相続 財産の一部を処分したことにあたらないことは明らかである。」
ここで「自らの固有財産である死亡保険金」と書かれているところがポイントになります。
固有財産=ポケットマネーであり、遺産ではない、ここがポイントです。