南斗屋のブログ

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自賠責で高次脳機能障害認定を否定。判決では認定

2013年05月28日 | 高次脳機能障害
 自賠責で高次脳機能障害5級が認定され,裁判所には否定された判決を紹介したことがあるが(→過去記事),今回はその逆。自賠責では高次脳機能障害が否定され,裁判所では高次脳機能障害が認められたケースを紹介する。

 東京地裁平成24年12月28日判決(自保ジャーナル1893号)

 自賠責での否定の理由が,それでいいの?と思わせるような理由だ。
 自賠責は頭部の画像をみて,脳挫傷痕や脳萎縮の所見はある。しかし,脳挫傷痕の範囲,程度等からすると,重度の高次脳機能障害を生じさせるものではないというのだ。

 画像所見があっても、高次脳機能障害の認定を否定したということになり、違和感を覚える。

 裁判所はこの自賠責の考え方を採用していない。

 画像所見から,びまん性脳損傷ないしびまん性軸索損傷を負ったことを示唆する画像所見があるということを指摘して,高次脳機能障害を肯定する理由としている。

 裁判所の考え方がスタンダードだと思う。
 
 高次脳機能障害が認められるかそうでないかでは,損害賠償額が非常に異なる。
 この辺の訴訟遂行能力は,弁護士により差が生じるところだろう。


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自賠責で高次脳機能障害を認定。しかし、判決は否定。

2013年05月23日 | 高次脳機能障害
自保ジャーナルに高次脳機能障害の被害者側としては,ちょっと気をつけなければならないぞという判決が掲載されていた。

「34歳男子の自賠責5級認定高次脳機能障害を意識障害なく画像所見からも否認して14級神経症状を認定した」(東京高裁平成25年2月14日判決,東京地裁平成24年2月23日判決;自保ジャーナル1893号)

 自保ジャーナルが裁判例に付ける題はわかりにくいものが多いのだが,つまりは,「高次脳機能障害で自賠責で5級認定されたが,訴訟では否定されて14級しか認定されなかった」ということである。

 自賠責で等級認定をしてもらえれば,それを裁判所は認めることが多いのだが,必ずしもそうではないんだぞということを教えてくれる裁判例である。

 なぜ,こんなことになったのか。

 判決文を読んでみると,自賠責もすんなりと高次脳機能障害を認めたわけではない。
 3回異議申立をして,ようやく高次脳機能障害5級が認定されているのだ。
 しかも,その理由も微妙な表現である。
 「頭部画像上は,本件事故の受傷によって生じた残存する症状の原因を捉えられるような客観的な異常所見に乏しいものの,受傷当初に軽度の意識障害が長期にわたって継続していたこと,神経心理学的検査などにおいて高次脳機能障害の存在が明確になっていること」が理由となっている。

 頭部の画像では所見がないので,軽度意識障害継続が高次脳機能障害を認定する唯一の理由といっていい。
 つまり,「軽度の意識障害が継続していた」という点を否定されたら,高次脳機能障害が認定できないことになる。
 訴訟ではまさにこの点が問題となり,地裁でも高裁でもこの点を理由として高次脳機能障害が否定された。

 このような展開になることは,そう頻繁なことではない。
 そうだからこそ,自保ジャーナルも1893号のトップにこの裁判例をもってきているのだろう。
 この裁判一審だけで7年ほどかかっているようなのだが,これもまた異例である。

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