南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

成年後見について考える

2009年03月26日 | 成年後見
以前、成年後見の制度について書いたことがあります。
成年後見制度(pdfファイル)

そのときは、障害者ないしそのご家族が成年後見制度を利用することを前提としていました。
つまり、成年後見制度を申し立てることを前提として、その制度がどのようなものであるかということを紹介したわけです。

ただ、そのご家族によっては、成年後見制度を利用した方がよいのかどうかについてよくわからない
というお考えを持つ方もいるだろうなとは思っています。

 そこで、今回は、障害者の家族の視点からみて、成年後見制度を利用するとどうなるのかについて考えててみます。

なお、ここでの障害者というのは、判断能力に問題のあるかたを念頭においています。
交通事故関係でいえば、遷延性意識障害や重度の高次脳機能障害があたります。

 さて、そこで、現在の成年後見制度がどのように家庭裁判所で運用されているのかということですが、裁判所としては、成年後見人や保佐人を監督することを主たる目的としています。

これは、
 過去記事「後見人を裁判所はどう見ているか」
でも触れていますので、そちらを参照してください。
 
 家庭裁判所が、後見人(や保佐)の”監督”を行おうとするということは、
これまで(交通事故でいえば、事故以前)には、誰の監督もなく、家族で自由に家計の使い方を決められたものを、年に1回であれ、裁判所に報告をしなければならなくなり、その報告内容が裁判所の決められた基準にそぐわない場合は、呼び出しをされて文句を言われることがあるということになるわけです。

 交通事故の被害者側からすれば、家族が被害者となり、重度の後遺障害が残っただけでも多くの負担とストレスを抱えることとなるのに、財産の管理の関係でもさらに負担を背負うことになります。
家計の報告をしなければならないということは、家計簿をある程度つけなければできないことですから、これまで家計簿をつける習慣のなかったかたにとっては、これはかなり大変なことになると思います。

 問題は、なぜそのように監督という機能ばかり、裁判所が強調するのかということですが、それにはいくつか理由があります。
1 成年後見の利用者(被後見人)は、ほとんどが高齢者であることにより意思能力を失うに至ったケースである(交通事故被害者は少ない)
2 であるから、その子たちは、基本的に独立して生計を立てていることがほとんどである(事故の被害者の家族は、独立して生計を立てられないケースがある)。
3 成年後見を利用するようなケースは、遺産相続争いの前哨戦であることも多い
4 それゆえ、裁判所は、どうしても懐疑的な目で見る

以上の要因が重なっていると思います。

 裁判所によっては、忙しいからか、年に1回だけの報告をしていれば、さして文句をいってこないところもあるようですが、それでも報告書を提出するだけでも負担であるとは、被害者側の方からお話を聞くところです。

 遺産相続の前哨戦のようなケースと交通事故の被害者のケースは当然異なるものであり、被害者に対して裁判所が適切なアドバイスをすることは当然ですが、交通事故の代理人となる弁護士もどのようにアドバイスしていくのかは、損害賠償とは別の問題ですが、これもまた大きなテーマであると思っています。

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最高裁裁判官の生活

2009年03月22日 | 未分類
 裁判官の仕事、それも最高裁裁判官の仕事の仕方というのはどういうものかというのは、ほとんど知られていないと思います。
 
 最高裁の裁判官のインタビュー記事から、そのことが書かれているものがありましたので、紹介します(「関弁連だより2009年3月号 宮川光治最高裁判事へのインタビュー記事から)


Q 宮川判事の一般的な生活パターンを教えてください。
A 私は、自宅が近いので自宅から通っています。朝8時45分に車が迎えに来て、9時には判事室に入っています。そして、すぐ持ち回り審議案件を読み始めます。1日15件前後あるでしょうか。夕方5時15分まで執務します。運転技官、秘書官事務官が帰るまで待機していますので、残業はしません。持ち回り審議案件でも、熟考すべき案件があり、私の場合は、1~2月ほど抱える事もあります。
 持ち回りではなく、議論すべきであると考えて、期日審議に回すものもあります。
 これとは別に、期日審議案件が常時10件前後あり、いずれも難事件ですので、時間がとられます。
 そのため、いつも自宅に1,2件持ち帰っています。
 週末は、じっくり調べたり、考えたりする事に費やします。

Q 法廷はいつ開くのですか
A 第1小法廷では、開廷日は木曜日です。そして、5人の判事が集まって審議するのも木曜日の午前10時30分からです。
 間に合わない場合の為に、月曜日が予備日となっています。

引用終わり

 さて、ここで、「持ち回り審議案件」「期日審議案件」という言葉が、特に”注”もなくでてきます(実際のインタビューでもこの点について解説はありません)。

 最高裁は、全部で3つの小法廷があり、1つの小法廷に5人の裁判官しかいません。
 この5人の合議で裁判をすることになるのですが、
 「持ち回り審議案件」というのは、5人の裁判官が一同に会さず、持ち回りで審議をする案件
 「期日審議案件」というのは、合議をする期日に5人の裁判官が一同に会して、合議をして裁判する案件
という振り分けをしています。

 「持ち回り審議案件」は、上告棄却、つまり、上告を認めないという案件で、かつ合議をするまでもないと一応考えられている事件です。


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頭部外傷における手術

2009年03月16日 | 未分類
重度の頭部外傷を負ったケースのカルテなどを見ていますと、
 開頭血腫除去術+内減圧術
のような記載があります。

 字面からして「開頭血腫除去術」というのは、なんとなくわかるのですが、「内減圧術」となると正確には今ひとつ把握しないまま時が経っていました。
 
 今回、調べる時間がとれたので、ネット上で検索してみましたが、「内減圧術」がどんな意味で、「外減圧術」がどんな意味かは、でこれが一番わかりやすかったです。
 
船橋市立医療センター脳神経外科「減圧手術と頭蓋形成術」(PDFファイル)



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交通事故に関する弁護士費用を決めるにあたっての問題点

2009年03月12日 | 未分類
交通事故に関する弁護士費用については、今回もご紹介していきたいと思います。

前回、
弁護士費用について
という記事で、日弁連の弁護士費用についてのアンケートを紹介しましたが、このアンケートの中には、交通事故に関する弁護士費用についても載っています。

 そこにはこんな例が載っています。

「交通事故に遭い、重傷を負った被害者から損害賠償請求を依頼された。
 弁護士の判断として1000万円が妥当と考えたが、保険会社の提示額は500万円であったので、訴訟を提起し、その結果1000万円の勝訴判決を得て、任意に全額回収した。」

 この例ではさらっと書いていますが、現実ではこんなに簡単にいかないだろうという部分がこの例にはあります。

 まず、「弁護士の判断として1000万円が妥当と考えた」という部分です。
 この例では、結果として同額の勝訴判決を得たこととなっていますから、この弁護士の判断が正しいように見えますが、これは例をそのように作ったとしか思えません。

 交通事故の損売賠償額を算定するのは、いろいろな資料を集めて、裁判例を参照してみなければわからないところがあり、何年も交通事故事件を扱っていても、難しいものだと思います。

 というのは、損害賠償の基準というものは一応定められているものの、その基準のどれを適用するのか、原則と例外が規定されているような基準の場合でこのケースが、原則に当たるのか例外に当たるのかというようにどの基準を適用するのか自体が難しいケースが多いからです。
 
 ですから、どれが「妥当」かというのは、極めて難しく、私の場合は、複数の可能性をあげて説明することが多いです。

 先ほどあげた例では、「弁護士の判断として1000万円が妥当と考えた」ことが前提として、弁護士費用を算定することになっていますが、現実にそれだけのことをして、弁護士費用を定める前提として、交通事故の損害賠償金額を算定している弁護士はどのくらいいるのか、私としては疑問です。

 また、一般的には、依頼された弁護士は、「妥当な額」ではなく、「加害者に対する請求額」で弁護士費用を算定している可能性も高いのではないかと思います。

 なお、私の場合は、最初にいただく手数料(依頼時手数料;着手金とも呼ばれていますが)は、後遺障害等級を基準として請求させていただくことに現在ではしております。
 →弁護士費用基準表

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弁護士費用について

2009年03月09日 | 未分類
 前回の記事で、全国の弁護士会にあった苦情処理7,035件のうち、
 「報酬等」については、 864件の苦情処理申し立てがあったことについて触れました。
 割合にしてみると12%くらいです。

弁護士費用については、日本弁護士連合会(日弁連)がホームページで説明をしています。
 日弁連ホームページ弁護士報酬(費用)について

 このホームページには、
「弁護士の費用は、個々の弁護士がその基準を定めることになっており、標準小売価格というようなものはありません。」
と書かれています。
 つまり、弁護士費用は自由化されており、弁護士それぞれが決めることになっている(=オープン価格)ということです。

ところが、そうなると、ある弁護士の弁護士費用の請求が妥当なのかどうかというのが、一般の方にはわかりません。

そこで、日弁連では、弁護士にアンケートをとって、事例に応じてどのくらいの弁護士費用を請求するかについて統計をとりました。

 先ほどご紹介した日弁連のホームページにはそれが載っていますので、興味のある方はご参照ください。


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弁護士会における苦情対応(レポートより)

2009年03月06日 | 未分類
 前回
依頼している弁護士に不満があるとき
という記事で、依頼している弁護士に不満があるときにどのように対応したらよいのかを書きました。

その中で、弁護士会における苦情対応について触れましたが、調べてみましたら、そのことについて、日弁連の会報に載ったレポートがありますので、紹介しておきます。
弁護士会における苦情対応(→pdfファイル

 同レポートによれば、

1 2006 年1 月から12 月までに全国の弁護士会での苦情の受付件数は
  合計で7,035件(その前年の受理件数は6295 件)
で、前年よりも11%も増えている

2 苦情等の内訳は多い順に並べると次のとおり。
「対応・態度等」 2697件
「処理の仕方」 2451件
「処理の遅滞」 1149件
「報酬等」 864件
「裁判結果への不満」 526件
「預かり金処理」 201件
「その他」 973件
というようなところが目に付きます。

 このレポートからは一番多い苦情は、
「対応・態度等」
ということになっております。
 弁護士が依頼者に対してとる対応・態度に問題があれば、これは甚だ依頼者にとっては迷惑なことだと思いますが、この記事の冒頭でも触れた過去記事でも書いたように、双方のコミュニケーション不足からこのような不満が生じることもありますので、依頼した弁護士とよく話し合った方がよいのではないかと思います。

 弁護士の中には、社会的経験を積むことなく、学生から弁護士という職業に就くものも少なくありません。そのような中で、弁護士事務所の中に入ると、既にいる弁護士を態度を知らず知らずに学んでしまうものです。
 弁護士事務所の中でも、社会的なマナーは自分で学べというような雰囲気もありますし、そもそも新人弁護士の仕事にすべてトレーニングする弁護士がついていくわけにもいきませんので、新人弁護士が依頼者とどのような応対をしているかを細かく把握することはできません。
 かくして、弁護士の依頼者に対する態度が知らず知らず悪くなるということは、一般論としてはありえます。

 これをただすのは、ひとりひとりの弁護士の自覚をまつしかなく、また、この自覚を促すのは、依頼者の声であると思います。



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依頼している弁護士に不満があるとき

2009年03月03日 | 未分類
 以前、
 "弁護士が委任契約を作成せず、懲戒"
という記事を書きましたが、自分が依頼した弁護士への苦情を申し立てたい場合には、交通事故被害者としてはどうしたらよいかという点について書いておきたいと思います。

依頼した弁護士に不満がある場合は、その弁護士に不満をはっきりということが、もっとも大切です。
弁護士に対して、そのようなことをしてもいいのか心配される方もおられますが、心配は無用です。
不満をかかえながら、我慢して弁護士に依頼している状況よりも、コミュニケーションが良好な関係を築いている方が、弁護士は良いと考えるのが、一般的です。
依頼者が率直に疑問点をぶつけ、それに対して弁護士がきちんとした答えをすることによって、不満が解消されるのが理想的です。

不幸にして、それでも不満がある、苦情として申し立てたいという場合には、弁護士会の苦情処理相談の窓口を利用するという手段があります。

多くの弁護士会は弁護士への苦情処理の窓口を用意しているはずです。

例えば、
東京弁護士会のホームーページでの苦情処理の案内
では、次のように説明されています。

 東京弁護士会では会員に対する苦情を、市民窓口という制度でお聞きしております。
 この制度は、窓口担当者が電話・面会により事情をお聞きしたうえで、弁護士法が定める手続(弁護士の非行を理由として処分を求める場合には懲戒手続、報酬、預かり金等のトラブルは紛議調停手続)をご案内したり、弁護士業務の性質を説明するものです。また、ご希望があれば、苦情内容を弁護士に伝え、自主的な解決を促しております。

 このような苦情処理窓口を使うことができます。
 詳しくは、依頼した弁護士が所属する弁護士会に電話をして、問い合わせてください。





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