南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

裁判官の機嫌が悪かった話

2009年10月31日 | 未分類
某地方裁判所でのこと

 準備室に入ってきたときから担当裁判官の機嫌は、はなはだ悪かった(弁論準備手続で行われたので、公開の法廷での出来事ではありませんでした)。


 どうも、加害者側(被告)代理人が期日の前の日に準備書面を提出した事が気に障ったらしく、席に着くなり、
「被告代理人!書面は1週間前に提出していただきたいと言っておいてはずですが!」
と提出期限の説教から始まり、細かな訂正点にまで、加害者側代理人に詰め寄っていました。

裁判官が自分の機嫌をあらわにするというのは、珍しいのですけどね

裁判官も人間ですから、そういう風になることがあるのかもしれません(ほめられたことではありませんが)

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交通事故と離婚

2009年10月29日 | 未分類
交通事故は、被害に遭われた方の人生を変えてしまいます。

夫婦の一方が交通事故に遭われ、夫婦関係がうまくいかなくなって、離婚となってしまうということはありうることです。

当事務所の離婚ブログの方で
交通事故で得た損害賠償金と財産分与
という記事を書いていますが、そこでのケースもまさにそのような事案です。

離婚の場合、財産分与という問題が生じますので、これをどう解決するかは、非常に難しい問題を有しています。

詳細は、離婚ブログの方をお読みいただければと思いますが、大阪高裁の結論だけ示しておきます。

大阪高裁平成17年 6月 9日決定(家月 58巻5号67頁)。
(結論)
交通事故の損害賠償金のうちの
 慰謝料部分→財産分与の対象にならない。
 逸失利益部分→財産分与の対象になる(ただし、離婚後の逸失利益相当額については財産分与の対象にならない)

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準備書面が当日提出された話

2009年10月24日 | 未分類
以前、「納期と準備書面の締め切り」という記事を書きました。
http://blog.goo.ne.jp/lodaichi/e/a6a4a064a426182a9f5814fc814014a1

弁護士が作成する準備書面という訴訟に提出する書類の締切期限が守られない
・期日の3、4日
ならまだましで
・期日の前の日
ということも、往々にしてあります

と書いたのですが、ついに、
 期日の当日
に提出するというケースに当たりました。

 前の日、それも前の日の夜にファクスが来ている(この場合、当日の朝にしか見ることができません)ことは、これまでもあり、そういうことが問題ではないかと思って、過去の記事を書いたのですが、
 期日の当日
というのは経験がありませんでした。

 この日の期日は午後1時半からで遠方であったので、私は電車に乗っていました。

 前日までに提出がなかったので、今回は相手方から準備書面の提出はないのだろうと思っていましたところ、
午前11時半過ぎに事務所からメールが。

 相手方代理人から準備書面がファクスされてきました
という内容。

 当然、準備書面の内容までわかりません。

 裁判所に早めに着きましたので、書記官に頼んで、相手方からの準備書面のコピーをもらい、その場で検討せざるをえませんでした。

 たまたま早めに着いたからいいようなものの、そうでなかったらこの相手方の弁護士、どうするつもりだったのでしょう。
 
 提出期限がいかにいい加減とはいえ、当日、しかも期日の2時間前というのは、最近ではほとんどありえない経験でした。


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脳萎縮・脳室拡大の画像所見がなくても高次脳機能障害を認めた神戸地裁判決

2009年10月21日 | 高次脳機能障害
脳萎縮・脳室拡大の画像所見がなくても高次脳機能障害を認めた裁判例をみかけましたので、紹介します。
(神戸地裁平成20年10月14日判決 自保ジャーナル1801号19頁)

このケースでは、被害者は高次脳機能障害の後遺障害が2級であると主張して訴え提起しました。

自賠責の等級認定が事前になされたのかどうかは、よくわかりません(少なくとも判決文からは)。

加害者側は高次脳機能障害の後遺障害が残っていることを争いましたが、地裁判決では、高次脳機能障害の後遺障害があることは認め、ただし等級は5級であるとしています(控訴されています)。

このケースでは、脳萎縮や脳室拡大といった画像所見はなかったのですが
①本件事故により、脳挫傷、くも膜下出血の傷害を被害者が負ったことは明らか
②SPECTにより広範囲にわたって血流低下が認められており、外傷による脳損傷がその原因であると、最も考えやすいとの医師の意見書がある。
③意識障害も軽度ではあるが、1週間以上継続している(救急搬入時にJCS10程度、その後JCS1程度)ということを理由に、高次脳機能障害を認めています。

意識障害の程度が高いものではなく、また脳萎縮、脳室拡大の画像がないことから、争いとなったものですが、当初から脳損傷、くも膜下出血が存在していたのであれば、それにより高次脳機能障害となる可能性は十分にあるはずです。
脳萎縮やくも膜下出血について、画像所見があり、また自賠責の認定を受けていればそれほど問題がこじれなかったと思うのですが、なぜ、自賠責の等級を受けていないのかは、判決文からはよくわかりません。

地裁判決も、脳萎縮、脳室拡大は高次脳機能障害があるか否かの認定を左右しないとしながら、等級を5級と認定するにあたっては、そのことを理由として、被害者側の主張(2級)よりも低めに認定しており、一貫していない印象を受けます。

なお、この地裁判決は、症状固定後の付添費は日額3500円としており、5級としては、高めの付添費を認めています。

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高次脳機能障害を認めた裁判例(名古屋地裁平成21年7月28日判決)

2009年10月14日 | 高次脳機能障害
自賠責の等級認定では、高次脳機能障害が後遺障害として認められなかったのに、裁判所が高次脳機能障害(7級)を認めた裁判例が、自動車保険ジャーナルに掲載されていましたので、紹介します。

名古屋地裁平成21年7月28日判決(自保ジャーナル1800号9頁)

同判決のケースは
自賠責では高次脳機能障害は否定されています。

(理由)
①事故の4年5ヶ月後に行われた頭部MRI検査の結果は、事故による外傷性の異常所見とは認められない。
②初診時に意識障害がない。

①は画像所見に関するもの、②は意識障害に関するものと言えます。

自賠責ではこのケースでは両方とも要件を充たさないと判断ています。

この結論を、名古屋地裁は覆しました。

まず、画像所見については
「事故の4年5ヶ月後に行われた頭部MRI検査の結果は、脳挫傷の可能性が高いと診断されている異常所見である」
として、自賠責とは逆の判断をしています。

画像をどう読むかというということ自体にも、医師によって見方が変わるようで、このケースでも医師の意見が分かれていたようですが、裁判所は外傷性の異常所見であるとする考え方を採用しました。

次に、意識障害についてですが、裁判所は
病院の初診時に意識障害がなかったという自賠責の判断は前提としつつ、病院につくまでの間に意識の清明度が低下した失神状態又は意識内容が変化したもうろう状態にあったと認められる
として、意識障害の要件も充たすと判断しています。

意識障害は一定期間継続することが要件であるはずなので、病院に到着するまでの間の短時間での意識障害だけで、意識障害の要件を充たすといってしまってよいかどうかは、微妙であると思います。


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加害者側代理人からの医療記録の取り寄せ

2009年10月07日 | 交通事故民事
加害者側代理人からカルテや画像などの医療記録(被害者が入通院していた病院に対して)の取り寄せ申請が裁判所になされることがあります。

この申請は、加害者側に
 被害者側が主張する後遺障害の内容・程度に疑問があるので、それを確認したい
というときに主に行われます。

 加害者側からは、直接被害者が入通院していた病院に対して医療記録を取り寄せることはできません(個人情報の問題がありますから)。

 そのため、加害者側としては、文書送付嘱託申請という手法をつかいます。
 
 文書送付嘱託申請については、下記過去記事をご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/lodaichi/e/bdee3318f8eb5b18bb5af4712bfe0cd1
 加害者側が医療記録を検討した結果、被害者側の主張に特に反論しないこともあります。

 もちろん、それをもとに反論してくることもあります。

 加害者側としては、”被害者側が提出してきた証拠だけでは疑問がある。それだけでは、本当にその後遺症になったかのかどうかがわからない”という疑問を持っているときにカルテなどの取り寄せ申請(文書送付嘱託)を行うのです。

 この申請がなされると、裁判の審理のほうは時間がかかります。

というのは、
 1 裁判所から病院に対してカルテなどの取り寄せを支持して、実際にカルテが来るまで1~2ヶ月
 2 それを加害者側がコピーして、検討するのに2~4ヶ月
つまり、長いと合計6ヶ月程度
かかるからです。


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