南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

保佐とは 6

2006年06月30日 | 高次脳機能障害
 前回は、
「本人が一定の重要な行為をしても、あとで保佐人が取り消すことができる」
というのはメリットとして、積極的に考えたほうがよいということを話しました。
 今回は、それが具体的にどういうことなのかということを説明します。

 高次脳機能障害で金銭感覚が乏しくなってしまい、また有る物事について固執するという傾向を持ってしまった人が、どうしても車が買いたいと思い、勝手に車を買う契約をしてしまった。頭金も払ってしまってローン契約までしてしまったとします。

 このような場合、保佐をつけていないとこれを取り消すのは大変です。
 ディーラーが好意的であれば可能かもしれませんが、解約する際に契約書に書いてあれば違約金を支払わなければならないかもしれません。

 保佐をつけてあれば、簡単に取り消すことができます。

 本人が保佐人に相談もせず、ディーラーに行って自動車の購入契約をしてしまったというような場合、保佐人としては、この契約を取り消す事が出来ます。
理由は本人が保佐の審判をうけていて、保佐人はこのことについて今まで全然知らなかったということだけでいいのです。

 契約というのは、一旦してしまったら簡単には取り消す事ができないのですが、これを本人が保佐の審判を受けているから、という理由だけで取り消す事が出来るのが、保佐人の強みです。

 取り消した場合は、契約がなかったことと同じになりますから、ディーラーに頭金を支払っていたときは、そのお金の返還を請求する事ができます。

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保佐とは 5

2006年06月28日 | 高次脳機能障害
 前回は、保佐になったときのデメリットを説明しました。
 今回もデメリットのような話になりますが、見方によってはメリットになるという話です。

 保佐の審判を受けても、本人は日用品の購入等の日常生活に関する行為は、自由に出来ます。
しかし、重要な法律行為を本人単独で行う事ができなくなります。

 何回か引用している東京家裁の「成年後見申立ての手引」にまたおいで願うとしますが、この手引きでは、

 ”保佐開始の審判を受けた本人は、一定の重要な行為(金銭の貸借、不動産及び自動車等の売買、自宅の増改築等)を、本人が単独で行う事ができなくなります。
保佐人は本人の利益を害するものでないか注意しながら、本人がしようとすることに同意したり、本人が既にしてしまったことを取り消す事を通して、本人を援助していきます。”

と書いてあります。
 これを読みますと、本人の行為が制限されるのだから、これはデメリットではないかと思うかもしれませんが、そうではなく、
 
「本人が一定の重要な行為をしても、あとで保佐人が取り消すことができる」
というメリットとしてとらえたほうがよいと思います。


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保佐とは 4

2006年06月26日 | 高次脳機能障害
 前回は、保佐の審判がされると本人は資格等がなくなる場合があるということで、資格がなくなる場合の注意点について述べました。

 今回は、

 保佐になると会社役員(代表取締役や取締役)の地位を失う

ということについてお話しましょう。

 「資格等を失う」と書いてありますと、資格のことにばかり目がいきがちですが、実際に一番ありうるのが「会社役員の地位を失う」という場合ではないかと思います。

 自分で事業を立ち上げて仕事をしている方は、会社の代表取締役になっていることが多いのですが、そのような方が保佐の審判を受ければ、自動的に代表取締役を辞めた事になってしまいます。

 そうすると、1人しか代表取締役がいなければ、代表取締役を新たに選んで、登記してということが必要になってきます。
 新たな代表者を選ぶ手間や登記に要する費用や手間がかかってきます。
 そもそも、新たな代表者のなり手がいるのか、逆に複数候補がいて誰を代表者にするのかいいのかどうかそれがすんなり決まらないという場合だってないとはいえません。

 代表者が代われば代わったで、会社の関係者に新しい代表者が挨拶回りにいかなければならないとういう場合であってあります。

 もっと問題なのは、銀行等の金融機関からお金を借りている場合、金融機関から新たな代表者を保証人にしてくれと言われるかもしれず、(その金融機関との取引状況にもよるとは思いますが)色々な問題が出てきます。
保佐人としては、これらのことをいちいち解決する必要にせまられます。



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保佐とは 3

2006年06月22日 | 高次脳機能障害
 前回までは、どのような場合に保佐となるのかのイメージを説明しました。
 今回は、保佐の審判をうけると本人がどのような利益と不利益があるのかということを述べます。

 まずは、マイナス面からの説明になってしまいますが、

 資格等を失う場合があります。

 これまでにも登場した東京家裁の「成年後見申立ての手引」をここでもう一度登場願いしますと、これには、
 ”保佐が開始すると、本人は医師、税理士等の資格や会社役員の地位を失います。”
と書いてあります。
 これはこのとおりで、この説明だけで十分わかっていただけるかと思いますが、気をつけなければならないポイントがあります。

 資格を失うかどうかは、資格にもよりますので、資格ごとに確認する必要があるということです。

 資格を失えば、その資格を利用して仕事ができなくなりますので、それでよいのかどうか、考えなければなりません。
 例えば、私は弁護士ですが、私が保佐の審判を受けたときは、自動的に弁護士資格を失いますから、もう弁護士としての仕事が出来ません。
 弁護士会に色々と届けを出さなければいけないのはもちろんですが、雇っていた事務員さんにも、お暇を出さなければいけなくなります。
 その前に残務も整理しなければなりませんから、依頼者との関係も色々整理しなければなりません。
このように資格を有して仕事をしている場合は、色々な法律関係を整理する必要にせまられます。



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保佐とは 2

2006年06月20日 | 高次脳機能障害
 前回は、「保佐」というのは、本人の判断能力が特に不十分な場合をいうといわれているが、その「特に不十分」というのが、東京家裁の手引書によっても全然説明されておらず、イメージがわかないという話をしました。
 
 そこで、なんとか具体的なイメージがわくような説明をしてみます。

 不動産を買うという事を、例にとって考えてみましょう。
 例えば、40代の働き盛りの人が事故にあって、脳外傷で高次脳機能障害となってしまった。

 “「不動産」という言葉自体、何の意味かわからなくなってしまった“

となれば、不動産の購入について判断できるわけがありません。
これは、「後見」が必要なレベルです。

 “「不動産」という言葉はわかるし「買う」ということも、どういうことかなんとなくわかる、しかし、これを買うことでどのようなことになるのかがわからない”

というような場合がありえます。
 不動産を買うとなると、多額のお金を支払わなければなりません。それだけのお金を投じて購入するとなると、それに見合った不動産でないといけないわけですが、そのようなことがわからない。
 例えばガケ地で、これから開発予定もないのに、それを何千万円も出して購入しようとする、というような場合です。
 また、ローンも組まなければならない、その為には、月にいくら働いていくら返していかなければならない、という計算をしなければならないわけですが、そのような考えもなく買おうとする。
 自分が働けなくなってしまっている、家族も働いていないのに、購入しようとするような状態、このような状態ですと「保佐」になると思います。

 このような説明でお分かりいただけたかどうか心もとないのですが、少しはイメージできていただたのではないかと思います。


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保佐とは 1

2006年06月18日 | 高次脳機能障害
 以前このブログで、成年後見制度について書きました。
 このブログでも読むことが出来ますが(→こちら)、ブログの性質上連載すると下から上にスクロールしなければなりません。
 読みにくいなと感じる方は、私のホームページの方にPDFファイル形式でまとめておきましたので、そちらを参照して下さい(→こちら

 さて、保佐人に選任された方から
「保佐人は何をするんですか?家裁からの説明文書を見ても、よくわからないのですが・・・」
というご相談をいただいたことがあります。

 改めて、手元にある成年後見制度関係の本を読んでみました所、後見については色々書いてあるのですが、保佐についてはあまり書いておらず、確かにこれでは何をするのかわからないのも無理はないと思いました。

 法律には本人(被保佐人)がどこまでできるのか、条文の形では書いてありますが、実際の生活において、どのようなことに注意をすればよいのかということを、その条文から読み取ることは、法律家でもない限り無理だと思います。

 そこで、保佐人となった場合、どのようなことに注意するのかまとめてみました。

まず、成年後見制度の基本の確認です。
 成年後見制度には、「後見」「保佐」「補助」の3つがあります。
 本人の判断能力によって、この3つが振り分けられることになります。
 本人の判断能力が
  全くない→後見
  特に不十分→保佐
  不十分→補助
というように分かれています

 保佐は、本人の判断能力が「特に不十分」な場合ということになりますが、ではこの「特に不十分」とは何なのか?

 東京家裁の「成年後見申立ての手引」では

 ”保佐とは、本人の判断能力が失われていないものの、特に不十分な場合であり、保佐開始の審判とともに本人を援助する人として保佐人が選任されます。”

と、あくまでも「特に不十分」という言葉で説明してしまっており、わかったようなわからないような気にさせてしまいます。
 お役所としては、正確な説明を心掛けているのでしょうが、これだけでは、なんだかわかりません。



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遷延性意識障害(植物状態)の療護センターを拡充

2006年06月16日 | 遷延性意識障害
 遷延性意識障害(植物状態)の療護センターを拡充という記事が、共同通信に載っていました。

国土交通省は15日、交通事故で植物状態になった重度後遺障害者らの支援を拡充するため、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の運用益で運営、全国で4カ所しかない専門の療護センターの機能を一般病院にも広げることを決めた。2007年度中の実施を目指す。

療護センターは、これまで全国に4箇所しかなく、これがそもそも少なすぎたわけですが、これを拡充しようという動きがあることはよいニュースだとはいえるでしょう。

もっとも、この療護センターいつまでもいることができるというわけではなく、5年程度で退院しなければならないそうです。
そうなると、遷延性意識障害の方は病院では受け入れてくれないので、在宅で介護するということになってしまいます。

 遷延性意識障害の方は自分のことがまったくできませんので、すべて介護者頼りとなり、介護は非常に過酷なものになります。

なお、遷延性意識障害の介護料について関心のある方は、こちら(私のホームページで介護料についてまとめたもの)をご覧ください。

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「パパの脳が壊れちゃった」より 6

2006年06月16日 | 高次脳機能障害
(本の要約)
アランが目覚めたのは、事故にあってから5日目のこと。
声をかけても当初は無反応。
やがて、意味不明なうめき声をあげるようになり、その後簡単な言葉(「あれ、だあれ?」「なに?」のような赤ん坊なみの言葉)を返すようになる。

その頃、身体の動きが激しくなり、点滴をぬこうとしたり、鼻から栄養チューブを抜き取ってしまう。
昏睡から目覚めて2日半、アランは突然「マンゴー姫はどこにいる?」と質問
筆者には、その意味が全くわからない。

これを境にアランは、その場に全くそぐわない要求を、次々とするようになった。
「このファックスを送らなきゃ」「最初の4枚は行ったんだが、5枚目がダメなんだ」…
筆者が必死に訂正しても、アランはなかなか訂正ができないでいる。

(感想)
重度の高次脳機能障害の後遺症の残った方のケースを担当していると、アランとほぼ同様の経過をたどる例を目にします。
昏睡
→反応はあるが意味をなさないうめき声
→言葉は明瞭になるけれどもその場にそぐわない話しぶり
という経過をアランはたどっているのですが、このような事態は家族を不安に陥れます。

家族は昏睡から脱出し、言葉がでるようになると「命が助かった!」と思うのですが、以前とは全く違う様子に驚きます。
しかも、点滴やチューブを引き抜こうとする等の、身体的な激しい動きを伴う場合があるので、驚き、とまどいがおそれに代わる場合もあるわけです。

この段階で医療関係者が家族に対し、適切な医学知識を教えて、家族も対処できれば一番良いと思いますが、私が担当したケースを見る限り、そこまでの家族へのケアは行われていないようです。



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交通事故弁護士

2006年06月14日 | 未分類
 医者は専門分野が分かれており、分野に学会があって、そこで認定医や指導医といったものを取得する事ができますが、弁護士にはそのようなものはありません。
ですから「弁護士には専門分野というものはない」といわれてきましたが、こう世の中が複雑になり、法律も頻繁にかわるとなりますと、特定の分野について深く知識をたくわえないと、いけなくはなってきていると思います。

 交通事故の分野も、自動車工学、医学等の知識が法律の知識と共に必要とされる分野であり、専門化が期待されるところだと思います。
加害者側については、任意保険をかけていれば、損保会社が対応をしてくれますし、損保会社の手に余れば、損保会社がその会社の事件を多く取り扱っている弁護士に、依頼をしてくれます。
 このように損保会社の仕事をうけている弁護士は、必然的に交通事故の取り扱いが多くなります。
 被害者側は損保会社のようには組織化されていないため、被害者サイドを集中的に受任する弁護士が育ちにくい環境にあります。

 最近、このブログを訪れて頂いた方の中には「交通事故弁護士」という用語で、検索して頂いている方が何人かおられるのですが、交通事故専門の弁護士を求めておられるニーズを感じます。


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違法駐車に過失を問えるか

2006年06月12日 | 未分類
道路交通法が改正されて6月1日から駐車違反の取締まりが変わりました。
大きな変更点は
1 違反摘発を警察官がしてきたものを、民間に委託し始めた
2 ドライバーだけでなく、車の持ち主にも処罰対象が広がった
ということです。
このような道交法の改正は、駐車禁止に対する政策の変化を表しています。

 日本経済新聞6月4日付朝刊によれば、違法駐車が直接・間接の原因になった人身事故は、昨年1年間で8500件。
 うち死亡者が100件だそうです。

 このように違法駐車で死傷者が出ているのですが、違法駐車に対しては民事・刑事上の責任はどのように追及されているのでしょうか?

 民事(損害賠償)では、違法駐車をしたこと自体を過失ととらえて、損害賠償を認めるというケースは存在します。
 もっとも、被害者側もある程度不注意があれば、過失相殺(かしつそうさい)といって、損害賠償額がその分差し引かれてしまう事はありえますが。

 刑事上の責任については、駐車禁止自体を業務上過失致死、又は業務上過失傷害で起訴したというケースは、残念ながら聞いた事がありません。
私がいくつか相談を頂いたケースも、刑事事件としては「不起訴」でした。
このように刑事上は、まだまだ違法駐車だからといって、起訴するという扱いにはしていないようなのですが、先にも述べたように違法駐車をめぐる政策が変更されてきておりますし、それに伴って世間への考え方も変わってくることが予想されます。
 検察官や裁判官は、このような世間の目を意識していますから、世の中が変わっていけば、刑事上でも起訴されるという時代がくるかもしれません。

 ただ、そのためには、被害者サイドも違法駐車をしていた方の過失の重大性を証明するように、警察・検察側に証拠を提供するなどの、粘り強い活動が必要とされるでしょう。



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