南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

弁護士の交通事故事件勉強法 9

2006年07月30日 | 未分類
さて、交通事故事件を勉強するためには
〇取り扱い事件を増やす
〇研修会に出る
ことも大切ですが、やはり普段からの勉強が必要になってきます。
どんな勉強が必要なのかは、人によって考えるところは異なると思いますが、私は次のような事を考えています。

1. まず、第一に法律の知識です
 弁護士である以上あたり前のことかもしれませんが、交通事故事件に深く取り組む為には、民法だけでは間に合いません。
 年金や労災等の社会保障分野の法律、保険法等の商法的分野の法律の知識が必要になってきます。
 自賠法の分野では施行令等の細かいところもあります。
 自動車保険の約款の問題もケースによっては生じてきます。
 特に、最近は人身傷害保険という新しい商品が保険会社によって開発され、これが保険会社ごとに約款が異なり、また解釈・運用についても保険会社にゆだねられてしまっている状況にあり、適正な解釈・運用をすべく被害者サイドから注文をつけていくには、保険会社に対抗し得るだけの理論武装が必要となってきます。







  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

加害者と一緒に飲酒した者に賠償責任を課す判決

2006年07月28日 | 未分類
 飲酒運転をして死亡事故を起こした加害者だけでなく、一緒に飲酒した者(同乗者ではなく)にも賠償責任を認める判決が東京地裁でました。
こちら

 法律上でいうと、加害者というのは、被害者に不法行為を与えたということで賠償責任を負います。
 これまで、同乗者については直接の加害者とともに共同して不法行為を与えたという理屈で(共同不法行為といいます)、賠償責任が認められたケースはあったようですが、一緒に飲酒をした者(同乗者ではなく)に賠償責任を認めたのは初めてのようです。

 被害者側からすれば、賠償責任を問える人間が増えた方が保護に厚くなりますし、このような判決が定着すれば飲酒運転をやめる方向で社会が動くでしょうし、飲酒運転をする人と酒を飲むという方はなくなるでしょう。

 飲酒運転は社会からなくなるべきだと思いますし、道路交通法の改正で罰則が重くなったこともあり、数は減ってきているのかもしれませんが、飲酒運転が起こす悲劇が繰り返されています。

 なお、飲酒運転を撲滅する活動をしている団体としては、
MADD JAPAN
がありますので、ご興味のある方はそちらもどうぞ。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弁護士の交通事故事件勉強法 8

2006年07月28日 | 未分類
弁護士の業界では、ボス弁から事件の取り扱い方を一から教えるというような方法はとりません。これはどこの業界においてもそうかもしれませんが、仕事は上の者のやり方を見て、自分で考えて覚えるものであるという考えが強いようです。

同じく法曹業界でも、裁判官や検察官は、1年目は集合研修の機会もあり、それぞれ研修所をもっていて、そこで総合的な研修をするのですが、弁護士の場合は、研修会と名のつくものは色々開催されていますが、それに参加するかどうかは、全く個人の自由に委ねられていますし、参加が義務づけられているものとしては、弁護士登録1年目の2回ほどの研修と、5年おき程度に開催される弁護士倫理の研修会くらいです。

弁護士もスーパーマンではありませんから、全ての分野に通じるということはなかなか出来ません。
しかし、弁護士も事件を選べるわけではなく、次から次へと相談の依頼がきます。
各地の弁護士会は、一般向けに法律相談の窓口をもっていますが、事件数のわりに、弁護士が多くないところは、この弁護士会経由の相談というものが結構あるのです。

例えば、私は千葉県弁護士会に10年ほどいましたが、千葉県は人口600万人以上おり、首都圏にあるため、事件数は多いのですが弁護士は300人強であり、東京の弁護士数(1万人以上)にはるかに及ばないところです。
このように事件数の割に弁護士が相対的に少ないところでは、弁護士会から相談が相当数回ってきますが、その内容は債務問題であったり、家庭関係であったり、不動産関係であったり、遺産の問題であったりするわけで、弁護士が専門化したくてもなかなか難しいところがあります。

弁護士に相談を依頼したいユーザーサイドからすれば、自分の抱えている問題のエキスパートに解決してほしいという願いがあると思いますが、弁護士には医師の専門医のような制度もありませんし、逆に「どんな事件にも対応できるのが良い弁護士だ」との考えも根強いものがありますので、一部の分野を除いては専門化がはかられていない状況にあります。
一部の弁護士会では、「専門相談」ということで特定の分野については、その専門相談に登録している弁護士に相談を任せるという方針のところもありますが、これも弁護士会が、その弁護士を専門と認定しているわけではなく、その分野のやる気のある弁護士に相談を回しているにすぎません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「パパの脳が壊れちゃった」より 9

2006年07月26日 | 高次脳機能障害
さて、夫婦の間といえば、セックスの問題は切り離せない問題です。

リハビリテーション医学の教科書を見ても、中途障害を負ったことと、性の問題については、記述があります。
ただ実際のところ、医療の現場で、どこまでこの問題が、具体的に取り扱われているのでしょうか、そこのところはよくわかりません。

被害者側の弁護士としての立場からすると、夫婦が性生活を営む事が不可能、又は著しく困難ならば、それぞれの慰謝料として考慮すべき、という主張を展開したいところです。
しかし、この点を弁護士の方から、積極的に持ち出すことについては、ためらわれるものがあります。
日本の裁判所は、このような点について、慰謝料を大幅に加算するという方向性にないことも、ためらいを増幅することの1つの理由です。

「パパの脳が壊れちゃった」では、勇気のあることに、このセックスの問題に言及しています。

筆者は、一時帰宅で夫と自宅に帰るのに、アランは以前のアランの様ではない。自宅である事が、筆者の心を一層孤独にします。
手持ち無沙汰で過ごしていると「アランと愛し合ってみよう。彼とつながるのだ」「久しぶりに帰ってきたときは、セックスをするのが当然だ。違うだろうか?」という考えが浮かぶ。

筆者は、アランに語りかけるが、アランの反応はかんばしくない。
パンツの中に手を入れてペニスをなではじめると、アランのそれは大きくなったが、アランは無表情で、まっすぐ前を見ているだけ。
「もうやめよう、随分むごいことをしている気がする」「これは脳損傷の男性に対するセクハラではないか」と考えるが、セックスがアランの奥深い所にある感情を刺激して、彼と再びつながるきっかけになるのではないか」と考えて、自分の下着を脱ぎ、アランにまたがってみる。
しかし、アランは妻の背中に手を回す事すらせず、無表情のまま、射精だけした。
筆者は「そこだけ、身体の他の部分から、切り離されているよう」「彼とセックスしても、まるで少年をレイプしてるみたい」と感じる。

ここまで詳細に言及しているものを、私は他に知りませんが、セックスとは人間にとって何なのか、脳損傷、脳外傷で高次脳機能障害となったときに、それがもたらす影響というものを改めて考えさせられます。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「パパの脳がこわれちゃった」より 8

2006年07月24日 | 高次脳機能障害
アランが、リハビリ病院として通うこととなったのはマギー病院。
ここには、実際に日常生活を送ってみるための「練習用アパートメント」がありません(驚いた事にアメリカの病院では、そのようなアパートを持っているところがあるそうです)

リハビリの目的は日常生活への復帰ですから、日常生活に近い状況で暮らす事はとても大事。これは、アメリカでも日本でも、かわりがありません。
マギー病院でも、一時帰宅が奨励されており、入院3週目にアランは一時帰宅しました。

家に帰ってベッドの中で横たわると、ベッドでの位置がいつもと左右が逆。18年間アランが左、筆者(妻)が右だったのに、アランにそのことを尋ねると、左右が違うことさえわからない。
このことに、筆者はすごく敏感に反応します。

「なぜ私はこんなくだらない、小さな事が気になるのだろう?アランは中身が別人になったのだろうか?そんな思いが、ふと頭をよぎる。」

外見は昔と変わらないのに、ひょっとしたらエイリアンにでも取り付かれたのではないか。昔見たテレビドラマだと、エイリアンが入ると小指が変化すると言っていたっけ、ということでアランの小指を見ても変化はない。

アランの変化は脳外傷の後遺症なのですから、小指を確かめようが変化があるわけはないのですし、そんなことは筆者は百も承知なのでしょうが、何か得体の知れないものが夫に悪さをしているのではないか?
そうだったら、それを取り除けば元に戻るのにというのは、家族だからこその感情だと思います。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弁護士の交通事故事件勉強法 7

2006年07月22日 | 未分類
仮に、何らかのつてで勤務弁護士が交通事故事件をやることになったとしても、それを処理するノウハウというものがボス弁になければ、勤務弁護士としては乏しい修習生までの知識でその事件を処理するか、他の弁護士に色々教えを請いながらやるしか道がありません。

良い病院かどうかというのを判断するひとつの基準として、その病院が取り扱っている手術件数というのが指標にあげられますが、法律事務においても取り扱いが多いかどうかということと、その事件の処理の巧拙というのは、ある程度関係をもつと言って良いでしょう。

同じ事件というものは、この世に2つはありません。しかし、法律的な目で見ると似通った点というものはあるわけで、そこを一度経験していれば経験を生かすことができ、その分時間の節約が可能です。

例えば、事件を処理するためにある判例を知らなければならないのに、A弁護士は既に自分が経験した事例でこの判例を研究していて知っているのに、B弁護士は未経験のため知らないということであるとすると、A弁護士は、この経験をいかしてこの判例を頭の中で思い出すだけで、事件処理をすることが可能です。B弁護士は
判例の存在を知れば、その判例がどのようなものであるかを調査する必要がありますし、下手をするとその判例を知らないまま事件を処理してしまうこともありえます。
 
もちろんすべての判例を知り、覚えていることなど到底できないわけですが、判例を知っているか否かで事件の方向性が変わってしまう(交通事故訴訟の場合は、それは損害賠償額に直結します)ということもないではありません。

A弁護士のように、既にある判例は研究済みということであれば、その判例を改めて調べる必要はなく、余った時間は、そのケース特有の法律上の問題や立証活動にふりむけることが可能となるので、時間を有効に使用して、よりレベルの高い弁護活動をすることが可能となります。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弁護士の交通事故事件勉強法 6

2006年07月20日 | 未分類
前回までは、司法修習生がどのレベルまで交通事故事件を勉強するのかについて書いてきました。

さて、弁護士になるということは通常、既にある法律事務所に就職するという形をとります。
いきなり、自分で事務所を作って独立という人が、いないわけではありませんが、ほとんどの人は、事務所のボス弁(ボスの弁護士)の下で働きながら、実際の事件にあたっていくのです。
ですから、勤務する弁護士は、ボス弁が取り扱っている事件に非常に影響を受けます。

ボス弁が取り扱う事件は、勤務弁護士も取り扱いますが、ボス弁が取り扱わない事件は、勤務弁護士としては取り扱うチャンスが少なくなります。
勤務弁護士にどのように事件を取り扱わせるかは、これまたボス弁の意向に左右されます。
勤務弁護士が自分の興味のある事件をやろうとしても、ボス弁からの事件量が、勤務弁護士の仕事処理量の限界に近いものであれば、勤務弁護士としては、別の事をやろうと思っても出来なくなります。
また、事務所によっては、ボス弁以外からの事件の取り扱いは禁止というところもあります。
そうなりますと、ボス弁が交通事故事件を取り扱っていれば、自然と勤務弁護士も交通事故事件を取り扱うため、勉強するようになりますが、ボス弁が交通事故事件を取り扱わなければ、勤務弁護士としては、取り扱うチャンスはかなり少ないといえます。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弁護士の交通事故事件勉強法 5

2006年07月18日 | 未分類
さて、話が大分交通事故事件からそれましたが、司法修習生というのは就職に一番関心があるのであって、勉強というのは、その次の関心事であり、交通事故事件をこの時期に集中的に勉強しようと考えるようには、なっていないという事です。
修習生の時期に、初めて実務的な事に触れますので、損害というものをどのように算定するのかという事を知ります。
「赤い本」という損害の算定基準が書いてある本が存在し、実務上はその基準で動いているという事は、全ての修習生が分かります。
しかし、「赤い本」をどのように活用して損害を算定するかというと、修習生は初歩的な段階にとどまっています。
これは、ある程度仕方のない事です。
修習生が習得し、試験をパスしなければならない科目としては
民事裁判
刑事裁判
民事弁護
刑事弁護
検察
の5科目が主なものです。
このうち、交通事故は民事裁判と民事弁護で取り扱われますが「民事」というのも非常に広いものであり、交通事故というのはその一分野でしかありませんので、どうしても全てのものが初歩的な段階にとどまらざるをえないのです。
つまり、修習生は「広く浅く」勉強せざるをえないということです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弁護士の交通事故事件勉強法 4

2006年07月16日 | 未分類
司法修習生というのは、裁判官になるか、検察官になるか、弁護士になるかという就職に一番関心があります。
弁護士になると決めている人は、どんな事務所に就職するかというのが最大の関心事です。

現在の一番人気は企業法務を取り扱う事務所です。
次に人気なのが「一般民事」を取り扱う事務所で、交通事故事件は、修習生の頭の中では、この「一般民事」というくくりの中にいれられます。

「一般民事」といったときに、どんな事件がこの中に入ってくるかと言いますと、交通事故事件のほかに、不動産の事件、金銭の貸借にからむ事件等があります。
刑事事件や家事事件(離婚や子の親権に関する事件)は、修習生には不人気です。
私が所属していた事務所では、一時刑事事件を取り扱える事務所を目指しますとして求人をしていたところ、「刑事事件でもうかるのですか」という遠慮のない質問を修習生から受けたことが、数知れずあります。

誰でも皆、格好良い仕事、沢山稼げる仕事、楽な仕事をしたいと思うものですが、司法修習生とて例外ではなく、そのようにみえる仕事に惹かれるわけです。
もっとも、企業法務を扱う事務所が、一般民事や刑事や家事を扱う事務所と比べて、沢山稼げるのかというと、TOPの方の弁護士は別として、1~3年目程度で拘束時間の割合にしてみれば、決して企業法務を扱う事務所の時給が高いかというと、そうではないようです。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弁護士の交通事故勉強法 3

2006年07月14日 | 未分類
 前回は、司法試験合格レベルでは交通事故事件のことは、民法の中の不法行為というごく限られた分野の限られた知識しか持っていないということを述べました。

 さて、司法試験に合格し、司法研修所という最高裁の運営する機関に入りますと、司法修習生という身分になります。現在進行中の司法改革で、この司法修習の期間なども私のときとはかなり異なってきていますが、私のときは修習期間は2年でした(現在はそれよりも短くなっています)。
 司法修習生は、最初と最後を司法研修所で座学といえば格好いいですが、教室で勉強するわけです。
 間の1年半(現在は1年)を実務修習といって、各地で裁判所、検察庁、弁護士事務所を回って実地に勉強するのです。
 つまり、司法研修所での間は机の上の勉強、実務修習中は生きた事件を目の辺りにして勉強ということになります。

 この法曹業界はシステマチックな研修というよりは、徒弟制度のようなところがありまして、先輩がやっているところを見て真似をしなさい、自分から聞かなければあれこれ教えるようなことはしませんよという側面が結構強いのです。
 それゆえ、自分で努力するかしないかでこの司法修習中の勉強量というのが決まってきます。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする