南斗屋のブログ

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女子の逸失利益は男子よりも低い 4

2005年10月10日 | 年少女子の逸失利益問題
 このような最高裁判決がでても、被害者側からは是正を求める主張が絶えません。
 家事労働分を賃金センサスに加算すべきだと被害者側が主張したことがあります。
 賃金センサスでは、家事労働というのは計算されておりませんので、その分を加算すれば男性と同じような賃金となるはずであるという発想です。
 しかし、最高裁はこの主張をいれませんでした。
 昭和62年1月19日判決(民集41巻1号1ページ)は、「女性労働者の全年齢平均賃金に家事労働分を加算することは認められない」として被害者側の主張を認めず、家事労働分を加算するということは葬られてしまいました。
 裁判における最高裁判決の影響力というのは、絶大なものがあるのですが、年少女子の逸失利益の問題というのは、やはり根深いものがあり、最高裁判決が出た後も裁判官の間でも何かしら是正しなければならないものと認識されていたようです。
 その例が1999年11月に出された「共同提言」です。
(続く)



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女子の逸失利益は男子よりも低い 5

2005年10月10日 | 年少女子の逸失利益問題
 この「共同提言」というのは、東京・大阪・名古屋の3地方裁判所民事交通部が出した
 「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(判例タイムズ1014号62ページ)
です。
 交通専門部があるのは、上記の3つの地方裁判所しかありません(他の裁判所では一般の事件を扱う部署が交通事故事件も扱っています)。
 つまり、交通事故を専門的に扱う地裁の裁判官が出した提言であることに意味があるわけです。
 ここで、逸失利益の男女格差の問題を、
「是正の必要性及びその可否について多くの検討すべき要素があり、直ちに解決することは困難であり、徐々にその問題の解消に努めてゆくこととしたい」
と述べ、解消の方向性を打ち出しています。
(続)



  

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