南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

将来の介護料について

2007年07月30日 | 交通事故民事
 重度の後遺障害が残った場合、現実に介護が必要となりますが、損害賠償請求で、将来の介護料をいくらとするかについては、なかなか難しい問題があります。

 というのは、将来の介護料がいくらかかるかは、現時点ではあくまでも「予測」ということになってしまうからです。

 将来のことは誰もわかりません。

 ただ、損害賠償では、将来にわたる問題を、現時点で評価しなければならないということが宿命づけられておりますので、このような問題が生まれてくるわけです。

 そこで、将来の介護料を算定するには、現時点で将来的にどのような介護料がかかってくるかを予測し、それだけの費用がかかるであろうということを、被害者側からは立証していかなければなりません。

 では、どの程度の介護料が認められるのかといいますと、赤い本によれば、
「職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日8000円。」
というような基準が一応定められています。

 もっとも、この基準には、「具体的看護の状況により増減することがある」という留保がつけられており、裁判所としては1級の介護を念頭においてこの基準を定めているようです。

 この基準が本当に介護の実態にあっているのかということは、常に検証されていくべきと思います。
 
 基準といっても、世の中の情勢が動けばその金額も動いていくものですし、赤い本の基準も変遷を重ねて現在に至っています。

 その基準を動かしていくのは、ひとつひとつの裁判の積み重ねですから、被害者サイドからいえば、被害者の裁判ひとつひとつが重なって、基準を動かしていくものとなるということがいえるかと思います。
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日常生活状況報告表第6項=身の回りの動作能力(完)

2007年07月27日 | 高次脳機能障害
 高次脳機能障害の日常生活状況報告表の改訂部分について説明するシリーズ、その6(最終回)です。

 日常生活状況報告表の意味及び第1項から第5項までについては→過去記事「日常生活状況報告表」

 さて、改訂された日常生活状況報告表の第6項は、以下のように記載されています。


「6.身の回りの動作能力 該当する項目に〇をつけてください。」
ということで
 食事動作
 更衣動作
 排尿・排尿動作
 入浴動作
 屋内歩行
 屋外歩行
 階段昇降
 車椅子操作
 公共交通機関
というそれぞれの場面について、自立しているのか、介助が必要な場合どの程度の介助が必要なのかをチェックさせる問いになっています。
 回答は、それぞれの場面によって微妙に違いますが、おおむね

1 自立
2 ときどき 介助・見守り・声かけ
3 ほどんどできない/大部分介助
4 全面的に介助

というようになっています。

 以上で、高次脳機能障害関係で必要とされる日常生活状況報告表についての説明は終わります。
 項目が詳細になった関係で、評価する側からすれば、以前の報告表よりは生活実態を把握しやすくなったと思いますが(改訂したのはそれがねらいでしょうから)、記載する方からすれば、その負担が重くなった、ないしは微妙な判断が必要とされるところもあろうかと思います。

 高次脳機能障害では日常生活実態も後遺障害認定の重要な資料となりますので、その点を念頭に置かれて記載される必要があるでしょう。

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民事訴訟の期日はどんなことをやるのか

2007年07月25日 | 交通事故民事
 最近は、テレビでも弁護士ものとか裁判ものが大分増えてきました。
 法廷のシーンなどもかなり取り入れられているようです。
 
 その関係で、裁判所で期日が開かれるというと、ほとんどの方はその法廷のシーンをイメージされることが多いようです。

 しかし、法廷シーンのような尋問が行われることは、民事では一審の審理の終盤にあるかないかです(刑事裁判ではその逆で、尋問が行われることがほとんどですが)。

 実際の民事訴訟の審理というのは、端から見ていますと何をやっているかよくわからないうちに終了してしまいます。

 たとえば、第1回の審理はこんな感じです。

裁判官「原告代理人は、訴状を陳述されますね。」
原告代理人「はい、陳述します。」
裁判官「被告代理人は答弁書を陳述されますね」
被告代理人「はい、陳述します」

裁判官「証拠、甲1号証から10号証まで、提出されますね。」
原告代理人「はい、提出します。」

裁判官「今後の進行についてですが、何かありますか」
被告代理人「次回までに訴状についてさらに認否反論をしたいと思いますので、次回期日まで1ヶ月くらいいただければ」

裁判官「では、次回期日を決めます」

となって、以下、次回期日を決めることになります。

 こんなやりとりですから、弁論期日の時間は、5分から長くても10分程度です。
 上のやりとりは何をやっているかというと、事前に裁判所に提出してある訴状や答弁書を、それに証拠を「正式に」提出する手続をしているのです。

 ただ、双方の代理人及び裁判官とも既に目を通しているので、その内容についてはいちいち確認をいたしません。

 「弁論」期日というくらいだから、何かを弁じたり、論じたりする場だろうと思っていると、まったくそんなことはないのです(民事の場合です。刑事は違います)。

 これは民事は書面での主張や証拠が中心となるからです。
 一方、刑事では書面は原則として提出できないことになっていますので、証人尋問が多用されるわけです。


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交通事故の損害賠償請求の時効

2007年07月23日 | 交通事故民事
 請求権には「時効」というものがあります。
 これは、請求権があるのに、そのまま放っておくと、請求権自体がなくなってしまうというものです。

 請求権の時効が何年なのかは、請求権ごとに違い、民法などで規定されています。
 交通事故の損害賠償請求(加害者に対する請求)の場合は、3年です(なお、自賠責への被害者請求は2年ですから気をつけてください)。

 問題は、この3年がいつからか(起算点)ということですが、「被害者が損害及び加害者を知った時から」となっています(民法724条)。

 被害者が即死というケースでは、事故の時点から3年ということになりますが、後遺障害の事案ではどうなのか?ということが問題となってきます。

 なぜなら、後遺障害の事案では、事故で傷害を負ってから、症状固定まで時間がかかることが通常だからです。

 後遺障害の事案では、おおむね症状固定の時期から時効を考えるという扱いになっているようです。
 最高裁も、「後遺障害事案については、遅くとも症状固定診断を受けたときには、後遺障害の存在を現実に認識し、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況になったと考えられる」としています(平成16年12月24日判決判例タイムズ1174号252ページ)。

 症状固定の診断がでれば、そこから3年(自賠責の被害者請求は2年)ということになりますから、注意が必要です。
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弁護士の夏休みについて

2007年07月20日 | 未分類
 先週、「裁判官の夏期休廷」ということで、記事を書きましたが、では、弁護士はどうなのかということが気になる方もありましょうから、弁護士の夏休み事情についてお話しします。

 弁護士は自由業ですので、いつでも休みがとれるというのが”建前”です。
 しかし、実際はお盆のあたりで1週間程度休みをとる事務所が多いようです。
 これは、自由業であるとはいっても、弁護士は依頼者次第ですから、依頼者が休むことの多い、お盆のあたりは、弁護士も休むものだからと考えています。

 私が以前所属していた事務所では、お盆のときでも事務所は空いていました。
 これは、事務所で一斉に休みをとらないからです。
 夏休みは7月から8月の間に、個々人が自由にとるものとしていますので、事務員の中にはお盆の時期にとらないで、別の時期にとる方がいいという者もおり、結果として、事務所としては、土・日を除いては空いているという状況になっています。

 もっとも、メールや携帯電話がこれだけ発達を遂げていますと、夏休みでもあまり関係なく仕事ができてしまいます。
 海外にいけば携帯が通じないというのが、これまでの常識でしたが、国際ローミングが標準になると、その常識も通じなくなるのでしょうね・・・
 
 

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「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準」

2007年07月18日 | 交通事故民事
 判例タイムズ社という出版社から、「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準」という本が出されました。

 同社の売り出し文句によると、
”●大阪地裁の算定基準を掲載。算定基準の解説や最高裁判例、必要な資料を付した。類書には見られない「買替係数表」も添付。民事交通損害賠償に携わる法曹関係者、保険会社の担当者必携の書!”

ということです。
 早速、一冊買い求めましたが、A5判 240頁と、赤い本(過去記事はこちら)などに比べますと、非常にコンパクトです。

 一般の方が購入するならば、赤い本よりも、こちらの本の方をお奨めします。
 というのは、赤い本は、解説が書いていないからです(この点については、以前過去記事で書きましたので、ご興味のある方はこちらをご参照ください)。

「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準」では、「解説と判例」という項があり、これがなかなかわかりやすくて良いです(といっても、一般の方には難しいかもしれませんが)。

 判例も最高裁判例に限って載せており、赤い本が地裁判例が山盛りの載っているのに比べて、差別化をはかっています。

 ネットで入手できるのもうれしいです(赤い本はネットで入手できないのです)
 セブンアンドワイでは購入できます(→こちら)。


 

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犯罪被害者保護法の改正~損害賠償命令

2007年07月16日 | 未分類
 刑事訴訟法等が今回改正されたことで、被害者参加制度が創設されたことについては、既に過去記事で取り上げましたが、
 「被害者参加制度(改正刑事訴訟法)の成立」
「被害者参加制度~参加できる事件」
「被害者参加制度~参加するための手続き」

それと同時に
 ”損害賠償命令”
という新しい制度もできました。

 これは、刑事事件を審理している裁判所に、民事の損害賠償命令をしてくれるように申し立てると、その裁判所が民事の損害賠償命令をしてくれるというものです。

 民事事件と刑事事件というのは、区別して扱われており、裁判所でも民事部と刑事部というのは別の部として構成されています。

 ですから、刑事事件は加害者の罪を決めるところ、民事事件は損害賠償額を定めるところとはっきりと区別されていたのです。
 このような扱いの大枠は、この法律ができたからといって変わりません。

 ただ、一部の事件については、刑事事件の裁判所でも併せて民事事件の審理もできるようにした方がよいのではないかというアイディアがでて、それが立法化されたのが、”損害賠償命令申立”です。

 このように、刑事事件の裁判所で併せて民事事件も審理できるのであれば、刑事事件が終わった後に、民事事件を申し立てる必要もなくなりますし、被害者にとっては手続きの手間を軽減することが期待できます。

 もっとも、この損害賠償命令申立ができる事件は限られています。
 このブログでとりあげている交通事故事件は、対象外ですから、この制度が使えず、今までどおり、刑事事件とは別に民事事件を起こさなければなりません。

 なお、参考までに損害賠償命令申立ができる事件の範囲は以下のとおりです。

 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつ及び強姦の罪、逮捕及び監禁の罪並びに略取、誘拐及び人身売買の罪等に係る刑事被告事件

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日常生活状況報告表第5項=就学・就労状況

2007年07月13日 | 高次脳機能障害

 高次脳機能障害の日常生活状況報告表の改訂部分について説明するシリーズ、その5です
 日常生活状況報告表の意味及び第1項から第4項までについては→過去記事「日常生活状況報告表」をご参照ください。
 さて、改訂された日常生活状況報告表の第5項は、就学就労状況についてです。

 就労状況について
 
事故前 a 就労している(職業      )
      
b 就労していない(理由      )

 現在  a 就労している
       1 元の職場に復帰(配置転換の 有・無)
       2 福祉的就労(授産所・作業所・援護施設)
       3 その他・内容
  *就労している場合の具体的な仕事の状況
      b 就労していない(理由      ) 

 以上のように、就労状況を、事故前と現在でどのようになっているのか、説明することになります。

 事故時に学校に行っている場合は、以下のように現在の就学状況について記載することになります。

就学状況(現在)
 a 就学している(普通学級・特別学級・養護学校)
 b 就学していない(理由               )
*就学している場合の具体的な就学の状況

  


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被害者参加制度~参加するための手続き

2007年07月11日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 被害者参加制度は、犯罪被害者が法廷に参加できるという日本の刑事訴訟上、画期的な制度です。
 先週、どのような事件で参加できるのかについて取り上げましたが(→こちら)、今回は、参加するためにはどのような手続きになっているのかを説明します。

1 まず、被害者側から参加の申出をしなければなりません。
 もちろん、被害者本人ではなく、被害者が弁護士に委託をして参加の申し出をすることも可能です。
 被害者の参加は、被害者の権利ですが、被害者が参加しなければ、法廷が開けないということではないのです。
 ですから、その権利を使うためには、被害者側から申出をしなければならないという仕組みになっています。

2 参加の申出は、検察官に対してします、
 参加を許可するのは、裁判所ですが、まず検察官に対して申出をして、検察官が許可が相当かどうか意見をつけて、裁判所に回す仕組みになっています。
 これは、被害者が参加するには裁判所の許可が必要なのですが、裁判所は起訴されたばかりの時は、事件の詳細な内容がわかりませんので、事件の詳細をしっている検察官に意見をださせることにしたものと思います。

3 参加は、裁判所が相当と認めるときに許されます。
 条文上、申出をすれば必ず参加できるという規定にはなっていません。
 法律上は、「相当と認めるときは、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする」というような規定になっており、非常にあいまいです(もっとも、このような規定というのは法律上しばしば見受けられます)。
 何をもって「相当とする」のかは、法律が施行されてからの運用次第です。

4 いったん参加が認められても、裁判所は、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができるとされています。
 これはどういうケースを念頭に置いた規定なのか、よくわかりませんが、ここからも被害者が参加できるのが裁判所の裁量の範囲内にあることがおわかりいただけるかと思います。

コメント (1)
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裁判官の夏期休廷

2007年07月09日 | 未分類
 7月に入りました。
 この時期に気になるのが、裁判官の夏期休廷期間です。
 
 民事事件の期日というのは、だいたい1ヶ月~1ヶ月半くらいの間隔で入るのが普通なのですが、裁判所の夏期休廷期間にあたってしまうと、次の期日が2ヶ月以上先になってしまうこともあるからです。

 裁判所全体としてみると、ほかの役所、たとえば市役所などと同じで、夏の間中も受付は行われています。
 ただ、各部署ごとに夏休みというのはあるわけです。
 
 夏になりますと、法廷が休みという期間があります。
 これが、夏期休廷期間で、約20日あります。

 夏期休廷期間は、7月21日から8月31日までのあいだで
  第1期 7月21日~8月10日
  第2期 8月1日~20日
  第3期 8月11日~31日
と3期に分かれています。

 たとえば、7月上旬に期日のある民事事件があったとします。
 通常であれば、1ヶ月先の8月上旬から中旬には期日が入るはずですが、第3期の8月11日~31日の夏期休廷期間の裁判官に当たっているとしますと、この期間は法廷が入らないので、9月以降ということになります。

 しかも、9月の上旬というのは、非常に期日が込み合うために、早めに期日が入らないと9月の中旬や下旬となってしまうことも珍しくありません。

 「民事訴訟制度研究会」の最近の調査に寄りますと、民事裁判に「満足できる」との回答は24%ということで、満足度は高くありません。
 期間がかかることも理由のひとつと思いますが、このような夏の休廷期間の長さもその一因ではないかと思います。
  

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