南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

地方裁判所と簡易裁判所

2006年11月30日 | 交通事故民事
 交通事故事件で訴えを提起する場合、
  地方裁判所又は簡易裁判所
に訴えを起こすことができます。

 被告にいくら請求するかでどちらに起こせばよいのかが変わってきます。
 被告に請求する金額が
  140万円以下→簡易裁判所
  140万円を超える場合→地方裁判所
です。

 地方裁判所と簡易裁判所とで何が違うのかですが・・・

1 まず、簡易裁判所は地方裁判所に比べてカバーする地域が狭いです
 裁判所には「管轄」といって、その裁判所がどの地域の訴訟を担当するのかということが決まっているのですが、その地域が簡易裁判所の方が狭く、地方裁判所の方が広いです。
 例えば、東京都でいきますと、地方裁判所は
  東京地方裁判所(本庁)と東京地方裁判所八王子支部
の2つしかありません。
 東京地方裁判所(本庁)は23区内と伊豆諸島
 東京地方裁判所八王子支部は東京都のそれ以外の地域を
カバーします。

 一方、簡易裁判所は東京地方裁判所(本庁)がカバーする地域だけで4つあります(東京簡裁、八丈島簡裁、伊豆大島簡裁、新島簡裁)。

 このように簡易裁判所の方が狭い地域をカバーするのは、地元の人が近くの裁判所を利用できるようにということにあります。

2 裁判官となるべき資格が違います。

 地方裁判所では、司法試験を通った裁判官が裁判をしますが、簡易裁判所では司法試験を通らなくても裁判官になれます。
 例えば、書記官(裁判所の職員)から一定の試験を受けて、簡易裁判所の裁判官になることのできる道があります。
 また、地方裁判所の裁判官の定年は65歳で、簡易裁判所は70歳と簡易裁判所の方が定年が遅いため、地方裁判所の裁判官をやめた後に、簡易裁判所の裁判官をつとめられる方もいます。

 このように簡易裁判所の裁判官の方が、司法試験を通ってキャリアシステムにのった地方裁判所の裁判官よりも個性豊かといえます。

 

  


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懲罰的賠償

2006年11月28日 | 交通事故民事
 四国新聞社のホームページで、被害者側が交通事故で111億円の損害賠償請求をしたという記事が載っていました(末尾に記事を一部引用しています)。

 このケースは、 国内で交通事故に遭った米国人女性が富士火災海上保険などに対し、懲罰的賠償を含む約111億円の賠償を求める訴訟を米国ニューメキシコ州の連邦地裁に起こしたというもの。

 日本では交通事故で認められた損害賠償の最高額は4億円を下回っていますので、まさにけた外れの請求額です。

 このような巨額な請求となったのは、アメリカの制度である
  「懲罰的賠償」制度。
 これは、加害者の悪質性がはなはだしいときに、将来の加害行為を抑止するため賠償金を課すというものです。

 アメリカの大手製薬会社に対して、同社の薬の副作用で死亡した男性の遺族が、起こした損害賠償請求で
 遺族の精神的苦痛や経済的損失に対する損害賠償
             =2400万ドル(1ドル110円として、26億4000万円)
 懲罰的賠償金 2億2900万ドル(251億9000万円)
をアメリカの裁判所が認めたことがあります。

 日本の慰謝料算定額とはけた外れの金額です。
 なお、日本の民事上は、懲罰的賠償制度は導入されておりません。
 また、アメリカで懲罰的賠償の判決をとっても、日本でもその判決で強制執行はできません(最高裁の判例があります)。

 しかし、アメリカに財産がある人に対しては、強制執行が可能ですから、訴えられた損害保険会社がアメリカに財産があるとなれば(一部上場企業であれば、その可能性は高いでしょうが)、どのような判決がでるかにもよりますが、この訴訟によりかなりのリスクを負担しているとはいえるでしょう。

(四国新聞社からの記事の一部引用)
111億円の賠償請求/函館の女性が米国で提訴

 国内で交通事故に遭った北海道函館市の米国人女性(39)が富士火災海上保険(大阪市)などに対し、懲罰的賠償を含む約111億円の賠償を求める訴訟を米国ニューメキシコ州の連邦地裁に起こしたことが22日、分かった。保険会社が虚偽の説明をしたため、懲罰的賠償を求め米国で提訴したとしている。
 女性の家族によると、女性は2004年1月、札幌市南区で江別市の男性の車に追突され、首や腰を痛めた。男性は富士火災の保険で対応すると話したが、同社は当初「男性は加入していない」と虚偽の回答をした。10日後に加入を認めたが、虚偽説明に関する回答は拒否した。

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病院の重要情報掲示

2006年11月26日 | 未分類
情報開示・情報提供は、様々な分野で浸透してきていますが、病院の分野でも例外ではありません。
病院では重要情報を掲示しなければならないものとされており、掲示をしていないと社会保健事務局から指導を受けたり、悪質な場合保健診療の停止などの処分もありえます。
重要情報には以下のようなものがあります。

① 医師の氏名、診察日、診療時間
② 看護職員の配置状況
③ 差額ベッド代
④ 各種保健外負担金
⑤ 高度な一部手術の年間実施件数

これらはいずれも、医療サービスを受ける患者さん及びその家族にとって、重要な事項ですので、病院の掲示どおりになっているかどうか、入院などをされるときは、きちんと確認していただきたいところですが、交通事故の損害賠償の関係でみてみますと②看護職員の配置状況が、比較的重要かと思われます。

この事項は、病棟ごとに具体的にどの程度の看護職員が働いているかを示すものであり、「当病棟では1日○人以上の看護職員が勤務しています」「看護職員1人で受け持つ患者は○人以内」等と掲示されています。

当初が重傷であった場合等は、損害賠償として入院付添日を請求できるのですが、看護職院の配置が手薄であれば、その分家族の介護に負担がかかるということが言えると思います。
このようなことも、入院付添料を請求していくときのひとつの証拠として、利用していくことが考えられてよいのではないでしょうか。


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損害保険会社の不払いへの対応

2006年11月24日 | 未分類
 損害保険会社の保険金の不払いについては、すでに金融庁でも何社かに対して行政処分を出しており、社会問題化しております。

 最近、金融庁がさらに不払い調査の徹底を求めているとの報道がなされております(一番最後に日経ネットからの記事の一部引用をしております)。
 このような不払いに対して、被害者サイドとしては、
1 保険会社や代理店に問い合わせてみる
ことがまず必要と思います。

 また、日本損害保険協会という、各損害保険会社が加入している協会でも相談を受け付けております。自動車保険については、
2 自動車保険請求相談センターという相談窓口があり、ここに電話で相談可能ですので、こちらも利用可能です(電話番号はこちらをご参照ください)。
 

(日経ネットからの記事の一部引用)
金融庁、損保26社に不払いの調査徹底求める
 金融庁は17日、9月末に損害保険各社が発表した自動車保険などの保険の不払いをめぐる社内調査が遅れているうえ、一部はずさんだったとして、損保26社に対して不払いを徹底して調査し、報告するよう異例の命令を発動した。なお全容を把握できていない会社が多数あるうえ、一部で調査の不備も見つかった。損保の不払いをめぐり報告を求めるのは3回目。金融庁は問題があれば行政処分を検討する。

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診療報酬改定によるリハビリ制限

2006年11月22日 | 高次脳機能障害
 今年の4月に診療報酬が改定され、リハビリテーションの治療日数が原則180日(6ヶ月)に制限されました。
 このリハビリの制限については、様々なところから批判が起こっており、この制限を撤廃すべきだという声が強く起こっていますが、まずこの制限がどのようなものかについて正確に押さえておいた方がよいと思います。

 リハビリの日数制限には以下のようなものがあります。
  ・呼吸器分野 90日
  ・狭心症など心大血管疾患と運動器分野 150日
  ・脳血管疾患 180日

 このように上記の日数制限があるのですが、リハビリを継続できる場合があります。
 この継続できる場合には、「除外疾患」というものがあり、一定の疾患については医師が改善を見込めると判断した場合には、リハビリの日数制限をかけません。
 除外疾患の中で、交通事故に関係がありそうなものとしては、
  ・失語症
  ・高次脳機能障害
  ・重度の頚髄損傷
  ・頭部外傷
があります。

 このような除外疾患にあたるとしても、「医師が改善を見込めると判断すること」がリハビリ継続には必要なので、病院側が「改善の見込みなし」としてしまえば、リハビリ継続ができないことになります。

 ですので、除外疾患にあたっても、リハビリをうち切られてしまうということがありえますし、現に私の周囲でもリハビリをうち切られたという話を聞きます。

 以上のような制度の状況ですので、被害者・患者サイドとしてリハビリの継続を求める場合は、最終的には医師の判断ということになりますので、医師・病院側にリハビリの継続を要請することが必要となると思います。



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高次脳機能障害2級で介護料日額1万円を認めた判決

2006年11月20日 | 高次脳機能障害
 高次脳機能障害2級で介護料日額1万円を認めた判決が自動車保険ジャーナルに掲載されていましたので、ご紹介します。

 これは、横浜地裁平成18年5月15日判決(自動車保険ジャーナル1662号2ページ)で、

被害者 交通事故当時 19歳
介護者 母親
被害者の後遺障害の内容
 高次脳機能障害2級で、性的逸脱行為、暴力、暴言等の突発的な問題行動がもっとも大きな問題とされています。
 たとえば、
 性的逸脱行為としては、
  女性に対して、キスをする、抱きつこうとする、触る、首筋、髪、耳等に息を吹きかける、手を握る、迫るというような行為があり、
 暴力については
  同じリハビリやデイサービスを受けている利用者などに対して、突き飛ばしけがをさせる、突き飛ばす、けるというような行為があり、
 暴言については、
  「じじい、死ね」「あの禿が」「知恵遅れが」等の暴言を行ったり怒鳴ったりしている
という問題行為が認められています。

 このような行為があることから、裁判所は、
  突発的な問題行動に備えて介護者が常に付き添い、適時適切に声をかけて、指示や抑制等を行う必要がある
と介護の必要性を認め、介護費用として日額1万円を認めました。

 このように、この判決は、2級という等級よりも具体的な高次脳機能障害の問題行為に着目して比較的高額な介護料を導いたといえると思います。

 






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調査事務所のビデオ撮影を不相当とした裁判例 下

2006年11月18日 | 高次脳機能障害
 調査事務所のビデオ撮影を不相当とした裁判例は、
  横浜地裁平成18年5月15日判決(自動車保険ジャーナル1662号2ページ)
です。

 このケースで、調査事務所が行ったことは、
1 被害者らを2週間にわたってひそかに追跡調査した
2 写真などの撮影が禁じられている施設内で被害者の水泳の様子等を写真とビデオで撮影した
3 被害者らの自宅の玄関付近で室内にいる姿をビデオで撮影した
というものです。
 
 判決は、これを
 「社会通念上許容される限度を超えた不相当な行為」
であると認め、慰謝料を増額する理由としました。

 この判決のポイントは、ビデオや写真の「撮影行為」を
  社会的に不相当だ=許されない
としたことにあると思います。
 個人に肖像権(顔を同意なく撮影されない権利)があることは、最高裁判例も認めており、刑事事件の捜査でも一定の条件が整ったときでなければ違法であるということが定着しております。

 横浜地裁のケースでは、撮影禁止場所や玄関付近で被害者を撮影したことが問題とされており、肖像権の侵害が明らかであるといえるでしょう。

 しかし、それ以外のケースではどのような判断がこの先出るかはまだ明らかではありません。
 たとえば、単なる尾行にとどまり、撮影がなんらされていないケースも考えられますが、尾行の態様が一般常識に照らして不相当でなければ、このような調査も適法であるという判断がでる可能性はあります。

 現在、会社には法令順守(コンプライアンス)が求められており、損害保険会社も例外ではないのであり、今後どこまでが調査として認められるのかは注目していく必要性があるでしょう。 

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調査事務所のビデオ撮影を不相当とした裁判例 上

2006年11月16日 | 高次脳機能障害
 最近、交通事故の裁判例などを見ておりますと、被害者を尾行する等の調査が行われている事例が見かけられます。
 尾行、ビデオ撮影をされ、被害者は「詐病である」と断じた裁判例については以前もこのブログでとりあげました。
 原告は「詐病」と断じた裁判例 上
 原告は「詐病」と断じた裁判例 下

 この調査は、”調査事務所”といって、損害保険会社の依頼を受けて調査をする会社が担当するのが一般的です(なお、この”調査事務所”と自賠責の認定で調査をする「自賠責損害調査事務所」はまったくの別物ですので、ご注意ください)。

 被害者は、交通事故の被害にあい、それだけでも精神的に不調を訴えることが多いのですが、調査事務所が尾行をする可能性がある、ビデオをとられる可能性があるということにでもなれば、それだけでも多大な精神的な負担になります。

 これは当然のことで、一般の方でも尾行をされる、ビデオをとられるということになれば、気持ちが悪いと感じるのが普通だと思いますが、ましてや被害者の方というのは、事故にあって傷害や障害を負っており、また損害賠償という法的にも複雑なことに巻き込まれてしまっているわけであり、それ以上さらに精神的な負担に
さらされたくないものです。

 このような精神的な負担は、その調査行為が社会的に不相当なものということになれば、二次被害ともいうべきものであるといえます。
 
 この点について警鐘をならすべき裁判例が表れましたので、次回に紹介します。

 
コメント (1)
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ぽすぴたる!(病院検索)

2006年11月14日 | 未分類
 以前、
「ワムネット」
という病院や介護施設の検索サイトを紹介いたしましたが(→こちら)、そのほかにも
 ぽすぴたる!
という病院検索サイトがあります。

 こちらのサイトは、健康保険組合連合会の運営しているもので、
  保険医療機関である「病院」(ベッド数20床以上の保険医療機関)専用
の検索サイトです。
 一般的には、医師がいるところはすべて”病院”といったりしますが、法律上は、
 ベッド数20床以上を「病院」
 ベッド数がそれ以下を「診療所」
といって区別します。

 ぽすぴたる!は、「病院」専用ですから、「診療所」については検索できません。診療所はWAM NETでは検索できますが、ぽすぴたる!では検索できないということになります。

 なお、本ブログで頻繁に扱っている高次脳機能障害について検索を実施しましたが、残念ながら「高次脳機能障害」という疾患名では検索がかけられないようです。
 疾患別で検索できるようになっているのですが、「高次脳機能障害」は残念ながらこのサイトではまだ扱われていないようです。


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飲酒運転の防止対策

2006年11月12日 | 未分類
NIKKEI NET記事で「飲酒死亡事故4.6%減、検問など効果・1-10月」という題で、記事がでていました。
 今年1―10月末に全国で起きた飲酒運転による交通死亡事故は538件。
 これは、前年同期より4.6%(26件)減少した
というものです。

 検問が一定の効果をあげているようですが、それでも件数にして5%弱減らすことしかできないというところに限界があるようです。
 警察のマンパワーも有限ですから、このような結果はある程度やむをえないところなのでしょう。
 
 飲酒運転を防止するにはさらに様々な方策が必要ということでしょう。

 11月11日の記事では、「運転代行業、規制見直し・与党方針」ということで、運転代行を2人ですることが義務づけられている現状を緩和する方針が伝えられており、これも飲酒運転防止対策の一環です。


(NIKKEI NET記事よりの引用)
運転代行業、規制見直し・与党方針
 今年1―10月末に全国で起きた飲酒運転による交通死亡事故は538件で、前年同期より4.6%(26件)減少したことが10日、警察庁のまとめで分かった。

 飲酒死亡事故は、8月末までは前年を上回るペースだったが、同月25日に福岡市で幼児3人が死亡した事故などを受け、全国の警察が一斉検問などの徹底した取り締まりを実施。増加傾向に歯止めがかかった。 (16:20)

 飲酒死亡事故4.6%減、検問など効果・1-10月
 与党は車で飲食店を訪れて飲酒した客とその車を自宅まで送り届ける「運転代行業」への規制を見直す方針だ。1人でも送迎を可能にするなど事業をしやすくする一方、違法業者の取り締まりを容易にする措置も検討する。適正な業者の参入を後押しして、社会問題化している飲酒運転の防止につなげたい考えだ。




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