南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

てんかん 1

2006年05月31日 | 未分類
交通事故の頭部外傷のケースでは、てんかんが発生する場合があります。
てんかんについて、わかりやすい本としては、
 清野昌一外監修「てんかんテキスト」(南江堂)
があります。

 以下、この本の内容を紹介しながら、てんかんについて書いていきます。

 WHO(世界保健機構)の定義では、てんかんとは、
”大脳神経細胞の過剰発射に由来する、反復性発作(てんかん発作)を主徴とし、種々の成因によってもたらされる、慢性脳疾患であって、それに付随した種々の臨床並びに、検査所見表出を伴うもの”
だそうです。

 WHOの定義ですから、医学的には正確なのでしょうが、一般にはわかりにくいですね。
 症状としては、
1 反復発作=てんかん発作は同じかたちで反復するのを特徴としている
2 慢性脳疾患=慢性的な疾患である
ということが大事なのではないかと思います。

 てんかん発作は、時と場所を選ばずに突然起こるものです、これが患者さんや家族にとって最大の悩みとなります。
 てんかんに、前兆とか前駆症状があればそれを予測することも可能になりますが、前兆というものは、ある場合もない場合もあるようで、全ての発作にみられるものではないということです。
 ですから、発作を予測する事は難しいとされています。




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「パパの脳が壊れちゃった」より 5

2006年05月29日 | 高次脳機能障害
 「パパの脳が壊れちゃった」が参考にしているランチョ・ロス・アミーゴス病院の認知機能スケール(LCFS)の内容を書いておきます(神奈川リハビリテーション病院「脳外傷マニュアル」P139より引用、「パパの脳が壊れちゃった」の訳とは微妙に違います)。

 回復期の認知機能評価
 Rancho Los Amigos Levels of Cognitive and Functioning Scale (LCFS)

Ⅰ 反応なし
 外的刺激に反応せず眠っているようにみえる。

Ⅱ 一般的反応
 外的刺激に対して、時折、無目的な反応を示す。しかし反応の様子は、定型的で限界がある。

Ⅲ 限定された反応
 目的の明らかな反応がある。簡単な指示に従うこともある。示された品物に意識を集中することもある。

Ⅳ 混乱し興奮
 活動の亢進がある。混乱、失見当識、攻撃的行動などがある。
 身の回りの動作実行不能で、現在起きている事項に関心を持たない。
 興奮は精神的な混乱の結果生じているようにみえる。


Ⅴ 混乱し不適切な反応、興奮なし
 意識清明にみえ、指示に従う。しかし注意の集中を失いやすく、外部から刺激されると興奮反応を示すこともある。
 会話の内容は不適切で、新しい情報を学習できない。

Ⅵ 混乱しているが適切な反応
 良好な目的のある行動を示す。しかし多くの場合誘導が必要。
 前に習得した動作(ADLなど)は再学習可能。重大な記憶障害があるが、自分や周囲の人々の状況をある程度把握できる。

Ⅶ 適切反応だが自動的
 適切な行動を示すが、ロボットのような自動的反応にみえる。
 混乱は少ない。記憶の再生はまだ十分でない。自分の置かれた状況への洞察も十分でない。
 自分から動作を始められるが、誰かが環境を整えてあげる必要あり。
 判断力、問題解決能力、計画能力などはまだ不十分。

Ⅷ 適切反応を合目的に示す
 意識清明で、見当識もあり、過去の事柄を統合して思い出せる。
 指導なしでも新しい事を学習できる。家庭内の動作はすべて自立し、自動車運転可能。
 残っている問題は、心理的ストレスへの耐性が低く、判断力や抽象的思考能力もまだ十分ではない。
 社会的の多くのことができるが、受傷前に比較すると明らかにレベルの低下がある。


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「パパの脳が壊れちゃった」より 4

2006年05月27日 | 高次脳機能障害
(昏睡からの回復)

 「パパの脳が壊れちゃった」という本の昏睡からの回復部分についての要約です。

 アランは、身体の動きを最小限に抑え、脊髄を守る為に薬物で昏睡状態になっている。
 3日たってもアランが目を覚ます気配はない。
 ICUの看護士は「昏睡から回復するのは、深い水の中から抜け出すようなもので、最初に頭のてっぺんがのぞいて、少しずつ他の部分も姿を現してくる。それはとてもゆっくりで、大変な苦労が伴うのよ。水は重たくて、なかなかそこから抜けきれないの」

 その後、昏睡状態なのに、発作的に手足をばたつかせるようになり、血圧が上昇するということがおこるが、著者はランチョ・ロス・アミーゴス病院のスケールのレベル2の説明に、ぴったり合うのではないかと考える

(感想)
 昏睡から、どのように回復していくのかということを、この本では、非常にわかりやすく書いています。

 筆者は、ランチョ・ロス・アミーゴス病院の認知機能スケール(LCFS)に沿って、アランの回復過程を描写しているのですが、このLCFSというスケールは、急性期の患者が、意識障害から回復していく様子を記述する目的で作られたもので、訓練開始の指標や、家族へ患者の回復状態を説明するのに役立つものとされています。

 神奈川リハビリテーション病院の「脳外傷リハビリテーションマニュアル」には、このLCFSがのっています。
 標準脳神経外科学や、標準リハビリテーション医学という医学教科書も見ましたが、残念ながらのっていませんでした
 インターネットでも検索してみましたが、日本語としてはあまり出てこないので、この認知機能評価は、そんなに広まっていないのかなという気がいたします。

 筆者の考えたレベル2の状態というのは、
「外的刺激に対して、ときおり無目的な反応を示す。しかし反応の様子は、定型的で限界がある」
 という状態です。

 LCFSの全部については長いので、次回に掲載します。

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「パパの脳が壊れちゃった」より 3

2006年05月25日 | 高次脳機能障害
<アランの急性期の治療方法>
(本の要約)
 薬物でアランを昏睡状態にし、人工呼吸器につなぐ。これは、身体の動きを最小限にして、脊髄にまで災いが及ぶのを防ぐため。
 胃の内容物をポンプで吸出し、鼻から食道に管を通す(経管栄養)。これは、脳は損傷したところを自分で修復する時に、大量のエネルギーを必要とするため、昏睡状態の患者に早い段階から栄養を与える方が、回復の助けになるから。
 下腹部は、白い小さなタオルで覆われただけの姿でベッドに横たわっているが、これは体温を低くして、脳の腫脹を抑える為。

(感想)
 法律家である私には、脳外傷の治療は門外漢ですが、かなり詳しい記載がされています。筆者が描くアランの状態は、医学書に掲載されている急性期治療の様子の図に符合します(例えば「脳外傷リハビリテーションマニュアル」神奈川リハビリテーション病院 P5)。

 筆者は、アランが「びまん性軸策損傷」と診断され、「前頭葉全体に硬膜下血種ができている」と専門用語を用いてアランの様子を説明するのですが、このような知識は「病院に置かれた小冊子を読んだり、アランの状態をしょっちゅうたずねて身につけた」と書いています。
 また、色々な友人に電話をかけまくって、情報収集につとめています。大学時代の友人がリハビリ病院を経営していると知ると、そこに電話をし、その友人も経営している病院が作っている「脳損傷を理解する-緊急入院について」というガイドブックを送ってくれたりしています。

 これらは、アランや筆者の知的レベルの高さによるのかもしれませんが(アランは弁護士、筆者は作家)、このようなガイドブックが作成されているアメリカのレベルの高さを、無視するわけにはいかないでしょう。
 アメリカでは、1996年に「脳外傷法」が可決され、脳外傷のリハビリテーションに、毎年多額の財政援助が行われるようになり、2000年までにはそれぞれの治療段階で、誰が何をすべきかの方法論が、確立された感があるとされています。
 一方、日本では、医療期間で行える急性期リハは、診療報酬の対象とされている理学療法、作業療法、言語療法に集中しがちで、認知や記憶障害の評価と、その障害への対応が遅れがちとの指摘もあります(神奈川リハビリテーション病院著の「高次脳機能障害マニュアル」)。

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「パパの脳が壊れちゃった」より 2

2006年05月23日 | 高次脳機能障害
(救急搬送先の病院での状況)
 筆者は夫の状態について、執ようとも思えるほどの情報を、医師や看護士に求めます。

「私には、情報が必要だった。長い待ち時間を耐えぬくには、それしかない。だからこそ貧欲なまでに情報を求めた。」

 グラスゴーコーマスケールは5点。1~3点の場合は、患者は植物状態かそれに近くなる危険性が高いが、アランの場合、意識は戻るが、そのあとどうなるかは誰にもわからない。

→グラスゴーコーマスケール(GCS)は、全世界で最もよく使用されている昏睡の評価方法。日本では、ジャパンコーマスケール(JCS)という評価方法を使用しているところが多いです。GCSは合計で15点で、13~15点が軽症、9~12点が中等症、8点以下が重症脳外傷とされていますから、アランは重症脳外傷です。
 GCSを用いて医師が患者の家族に説明するというのは、筆者が色々質問をしたからかもしれませんが、日本では考えにくいのではないでしょうか。最近は日本でもかなり丁寧に説明がなされているようで、カルテ等にも説明をしたこと(これを「ムンテラ」というようです)が記載されている例もみかけますが、コーマスケールの説明までしたケースは見かけたことがありません。

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「パパの脳が壊れちゃった」より 1

2006年05月21日 | 高次脳機能障害
 頭部外傷を負って高次脳機能障害の残るケースを、弁護士として担当していて思うのは、被害者やその家族に当初の入院の段階で、高次脳機能障害の情報がなんら与えられていないということです。

 私がこれまで扱った十数件のケースをみても、当初入院した先で、既に頭部外傷の障害が表れているにも関わらず「これ以上入院している必要はありませんから、退院して下さい」と医師から「退院勧告」をされているケースが珍しくありません。

 家族としては、そのような医師の「退院勧告」にも関わらず、被害者の様子があまりにもおかしいことから、インターネット等から情報を得て、高次脳機能障害のリハビリテーション病院にようやくたどりつく、そんな感じです。

 一体、日本の救急病院というところは、このような障害が残ることについて、なぜ何の情報も与えないのだろうか?日本以外でも同じような状況なのだろうか?と疑問に思っていたところへ
「パパの脳が壊れちゃった」
(キャシー・クリミンス著 原書房)
という本が、本屋で目に止まりました。

 この本、副題が「ある脳外傷患者とその家族の物語」となっています。
 被害者はアランという30代(多分)のアメリカ人男性(職業は弁護士!)。
 筆者はその妻で、7歳の娘が1人いる家庭。
 1996年の夏、休暇先のカナダで、モーターボートの衝突事故に遭って、頭部外傷を負ったというところから始まります。

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記憶障害

2006年05月19日 | 高次脳機能障害
高次脳機能障害の症状シリーズ、半側空間無視に続いては
 記憶障害
です。

記憶障害とは、物の置き場所を忘れたり、新しい出来事を覚えていられなくなる,
そのために何度も同じことを繰り返し質問したりする障害をいいます。

 記憶面の検査としては、三宅式記銘力検査などがあります。

 記憶障害が、脳外傷の後遺症になると、新しいことを学習できなくなるので、社会復帰が困難になります。重傷の記憶障害では、援助者無しでは、日常生活を送れなくなります。

 物の名前などに関する意味記憶と短期記憶が保たれているが、長期記憶が損なわれているというケースの場合、言われたことをその場で聞き返されれば答えることが出来るのに、少し時間が経ってから尋ねられると覚えていないということが起こります。この障害があると、約束や予定を覚えることができません。

 脳外傷以前に覚えた知識は保たれていますので一見受け答えは正常で、外見からは障害を持っていないように見えます。
 しかし、しばらく様子を観察していると、これから何をする予定なのか、昨日は何をしたのかなどを思い出せないことが分かります。

 生活上の困難が多いのに、本人は記憶障害が原因で失敗したことを忘れ、このための障害を自覚していないことがあります。

 このように記憶障害があることは本人にとっても介護者にとっても非常にやっかいな問題を生じさせます。 

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半側空間無視

2006年05月17日 | 高次脳機能障害
高次脳機能障害の症状シリーズ、失語に続いては
 失認
のはずですが、ここでは失認のひとつである半側空間無視について。

 半側空間無視というのは、高次脳機能障害でしばしば見られる障害のひとつで、これがあると、健常であれば見えているはずの場所の半分を無視してしまうとか、無視した側の障害物にぶつかったり、無視した側の食べ物に気がつかなかったりするというものです。

 半側空間無視は、日常生活行動やリハビリテーションの場面で、様々な問題点や危険を引きおこします。
 身体的なリハビリができていたとしても、その到達レベルを制限する重大な要因となってしまいます。

 行動範囲が外に広がれば広がるほど、半側空間無視が軽症であっても、思いがけない障害が現れることがあります。
 慢性期に半側空間無視が残ってしまうと、日常場面でも完全に消失するということは難しいので、行動範囲が広がるとそれに応じて新たな危険が生じてきてしまいます。そのため、家族や介護者に対して半側空間無視に伴って起こる危険、問題点、対応方法を知っておいてもらうことが必要です。

 半側空間無視になってしまった方は、自分が半側空間無視であることの病識が乏しいです。
 病識を促すため、リハビリ訓練課題終了後などに左側の見落としの指摘をすると、訓練を続けているうちに、口先では「左を見落とすので十分注意します」というようにはなります。
 これは、一見病識を得たように見えますが、「自分で見落とすと思うか」と別の機会に尋ねると、「見落としているつもりはない」と言うこともあり、実際の行動には結びつかないことが多いようです(石合:「高次脳機能障害学」医歯薬出版p121、p145、p146から要約)。

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失行

2006年05月15日 | 高次脳機能障害
 高次脳機能障害の症状シリーズ、失語に続いては
  失行
です。

 失行とは動作をちゃんと行うことができない状態をいいます。運動麻痺や運動失調が有る場合も動作をちゃんと行えないのですが、この場合は除かれます。

 失行は、大脳というコンピューターからのアウトプットが、順序だってうまくできないことからおこります。

 失行にも色々種類がありますが、いくつか紹介しておくと、着物を着ようとしてもうまく着ることのできない、着衣失行というものがあります。
 自賠責保険において日常生活状況報告表の中にも「衣服は自分で着る事ができますか?」という欄があるのですが、着衣失行になってしまいますと、これが「できない」になってしまいます。
 袖に手を通すこともできず、頭も首の穴にもっていけず、猫が袋をかぶったときのように、もがくだけという状態になるそうです。

 また観念性失行というものがあり、これは命じられた動作ができなくなります。
単純な動作は自分からできますが、口でこうして下さいと言われたことができないようになってしまうものです。


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失語 4

2006年05月13日 | 高次脳機能障害
 小長谷医師という神経内科の医師が、アメリカで留学生活を送ったときのことを、全失語にたとえています(小長谷:「神経内科」岩波新書)。
 それを引用しますと、

 ”こちらがしゃべる英語はまるっきり相手に通じない、英語を口にしているつもりでも、英語でしゃべってくれといわれる。
言葉が言葉としてはっきりわかるのではなくて、その場の雰囲気でそういわれているのだと理解する。
で、またしゃべると、今度はなんか通じたらしいが、なにか別のことを言ってくると、これも皆目わからない。
およそ言葉として理解できず、音として耳から入ってきて頭を通りぬけていく。
(中略)
自分の言葉が通じないということは、たとえようもないほどじれったいものだ。悲惨である。さらに相手の言うことがわからないのでは、落ちこんでしまうだけだ。”

 この文章はわかりやすい例えだと思います。

 このように失語というものは、重要な障害を与えますし、患者には多大なストレスが伴うものなのです。

 「言語障害」、「構音障害」という言葉もありますので、「失語」との関係について説明します。
 「言語障害」というのは、言葉がしゃべれなくなる障害ということで、その中に構音障害と失語があります。

 声を出すには声帯だけでなく、舌や喉などのたくさんの筋肉が、うまく動かなければいけませんが、これらの筋肉の動きを指令している運動神経等の働きが悪いと、声や言葉をうまく出せなくなります。
 このような、発声するときに必要な筋肉の障害を、「構音障害」といいます。
 そして、脳の言葉に関係するセンターが障害されて、言葉がしゃべれなくなるものを「失語症」というわけです。

 ですから、失語症と構音障害は両方とも言語障害の一種ですが、別のものだということになります。

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