南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

和解事例1604から1608まで

2020年02月26日 | 原子力損害
2020年2月10日、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)から和解事例が公表されました(和解事例1599から和解事例1618まで)。今回は、1604から1608までの和解事例を紹介いたします。
1604=自主的避難等対象区域(福島市)内の会社の営業損害に関するもの
1605=帰還困難区域(双葉町)の中間指針第四次追補に基づく慰謝料に関するもの
1606=居住制限区域(浪江町)の生命身体的損害に関するもの
1607=避難指示解除準備区域(浪江町)の財物損害・就労不能損害等に関するもの
1608=避難指示解除準備区域(浪江町)の日常生活阻害慰謝料の増額に関するもの

和解事例(1604)
自主的避難等対象区域(福島市)において果樹苗木の生産販売業等を営む申立会社について、原発事故により作業場所を県外に変更したり、新規に営業を行ったりすることが必要となったとして、平成26年6月分から平成27年5月分までの出張費用(原発事故前に出捐していた出張費用との差額)が賠償された事例。

和解事例(1605)
帰還困難区域(双葉町)内において出生以降、生活をし、同町内に自宅を有し、妻子を自宅に残して原発事故当時県外に単身赴任をしていた申立人に対し、中間指針第四次追補に基づく慰謝料等が賠償された事例。

和解事例(1606)
居住制限区域(浪江町)から避難した申立人について、避難生活中に持病である潰瘍性大腸炎の通院治療を行ったことを考慮し、通院1回当たり1万円の入通院慰謝料等の生命身体的損害が賠償された事例。

和解事例(1607)
避難指示解除準備区域(浪江町)から避難した申立人らについて、1.賃借物件において飲食店を営む申立人の財物損害として、直接請求手続においては構築物であるから支払の対象とはしないとされた改装工事、電気工事及び給水設備が賠償されたほか、2.日常生活阻害慰謝料(増額分)として、家族別離、妊娠中及び乳幼児を育児していたの各事由ごとに月額3万円が賠償され、また、3.自治体関連団体において臨時職員として稼働していた申立人の平成27年3月分から平成28年2月分までの就労不能損害として、原発事故前の収入の一部(当初5割、後3割)が賠償された事例。

和解事例(1608)
避難指示解除準備区域(浪江町)から避難した申立人らの日常生活阻害慰謝料(増額分)について、家族別離を生じたこと等を考慮して、平成23年4月分から平成30年3月分まで、月額3万円(合計252万円)が賠償された事例



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わいせつ行為で停職6か月の懲戒処分は妥当か

2020年02月25日 | 地方自治体と法律
 地方公務員が停職6か月の懲戒処分とされたことの是非が争われた裁判例を見かけましたので紹介します(最高裁平成30年11月6日判決・判例タイムズ1459号25頁)。

【事案の概要】
 地方公務員のXは、勤務時間中にコンビニに行き、コンビニの女性店員にわいせつな行為等を行った。そのことで、市はXに停職6か月の懲戒処分を行った。Xはこの懲戒処分が重すぎるとして、提訴。

【懲戒処分とされた行為】
 ①勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった。
 ②以前より当該コンビニエンスストアの店内において,そこで働く従業員らを不快に思わせる不適切な言動を行っていた。

【高裁の判断】
 Xへの停職6か月の懲戒処分は重すぎるから、処分を取り消す。
(理由) 
 ①Xと女性店員は顔見知りで、Xから手や腕を絡められるという身体的接触について渋々ながらも同意していた
 ②女性店員と店舗のオーナーはXの処罰を望まず、そのためもあってXが警察の捜査の対象にもされていない
 ③Xが常習として本件のわいせつ行為と同様の行為をしていたとまでは認められない
 ④本件のわいせつ行為が社会に与えた影響が大きいとはいえない

【最高裁の判断】
 市の停職6か月の処分は妥当(高裁の判決は取消し)
(理由)
ア ①については,Xと女性店員はコンビニエンスストアの客と店員の関係にすぎないから,女性店員が終始笑顔で行動し,Xによる身体的接触に抵抗を示さなかったとしても,それは,客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地があり,身体的接触についての同意があったとすることはできない。
イ ②については,女性店員及び店舗のオーナーがXの処罰を望まないとしても,それは,事情聴取の負担や本件店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるものとも解される。
ウ ③については,Xが以前から本件店舗の従業員らを不快に思わせる不適切な言動をしており,これを理由の一つとして退職した女性従業員もいたのだから,本件処分の量定を決定するに当たり軽視することができない。
エ ④についても,わいせつ行為が勤務時間中に制服を着用してされたものである上,複数の新聞で報道され,市で記者会見も行われたことからすると,Xの公務一般に対する住民の信頼が大きく損なわれたというべきであり、社会に与えた影響は決して小さいものということはできない。 
オ Xのわいせつ行為は,客と店員の関係にあって拒絶が困難であることに乗じて行われた厳しく非難されるべき行為であり,Xの公務一般に対する住民の信頼を大きく損なうものである。また、Xが以前から同じ店舗で不適切な言動を行っていたなどの事情に照らせば,本件処分が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものであるとまではいえない。



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地方公務員の定年退職

2020年02月22日 | 地方自治体と法律
地方公務員の定年退職日は条例で決まります。

地方公務員法では、「定年に達した日以後における最初の三月三十一日までの間」で条例で定めると規定しています(同法28条の2第1項)。

千葉市を例にとります。

千葉市では3月31日が退職日とされていますので(千<葉市職員の定年等に関する条例2条)、職員は年度末に一斉に定年退職することとなります。
定年は60歳。ただし、医療業務に従事する医師や歯科医師の定年は年65歳です。一般の職員よりも5歳長くなっています(同条例3条)。

最近、国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるという方針が政府から示されていますが、地方公務員の定年は条例により決められていますから、国家公務員の定年につき法律改正があっても、自動的に定年が引き上げられることにはなりません。

もっとも、定年を条例で定めるにあたっては、「国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めるものとする」とされていますので(地方公務員法28条の2第2項)、国家公務員について法改正があれば、それに応じて条例を改正する自治体が増えてくるものと思われます。


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地方公務員の懲戒の種類と内容

2020年02月21日 | 地方自治体と法律
地方公務員の懲戒処分には、4種類あります。
①戒告、②減給、③停職、④免職です(地方公務員法29条1項)。
この意味内容は地方公務員法上には規定がありません。職員の懲戒の手続及び効果は、法律で定められているほかは、条例に委ねられており、自治体によって異なる扱いが許されています。

千葉市を例にとると、減給や効果についてはは次のように規定されています(職員の懲戒の手続及び効果に関する条例)
【戒告】責任を確認しその将来を戒めるもの。
【減給】期間は、1日~6か月。給与の減額は、給料の月額の10分の1以下に相当する額。
【停職】期間は、1日~6か月。停職者はその職を保有するが、職務に従事せず、停職の期間中いかなる給与も支給されない。

 地方公務員の停職の報道があったら、停職期間に注目してみてください。停職6か月というのは、停職の最大限であり(千葉市であれば、ですが)、免職ギリギリのケースだったということがわかります。

 最近の地方公務員の不祥事ニュースで目に留まった停職事案(停職6か月)としてこんなものがありました。
・正当な理由もなく約2カ月間無断欠勤(埼玉県狭山市;2019年8月21日付産経新聞)
・酒気帯び運転で罰金30万円の略式命令を受けた(さいたま市;2019年4月27日埼玉新聞)
・無免許で警察車両を運転した(埼玉県;2019年4月27日埼玉新聞)


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和解事例、1599から1603まで

2020年02月18日 | 原子力損害

2020年2月10日、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)から和解事例が公表されました(和解事例1599から和解事例1618まで)。今回は、1599から1603までの和解事例を紹介いたします。
1599=自主的避難等対象区域(田村市)内の営業損害に関するもの
1600=自主的避難等対象区域(伊達市)の除染費用に関するもの
1601=県南地域の木材加工の過程で生じる樹皮の販売会社の営業損害に関するもの
1602=自主的避難等対象区域(郡山市)の避難費用・生命身体的損害に関するもの
1603=旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)での営業損害等に関するもの

和解事例(1599)
自主的避難等対象区域(田村市)内において、農業用肥料の製造、販売等を営む申立会社の平成27年9月分から平成30年4月分までの営業損害(逸失利益)について、販売地域内の一部作物については作付制限が出されていたこと等を考慮して原発事故と売上げの減少との間に相当因果関係を認めた事例(特に原発事故の影響が強いと考えられる作物に係る肥料については、その影響割合を当初の5割から2割まで漸減。その他の作物に係る肥料等については、原発事故の影響割合を1割とし、終期を平成28年6月分までとした。)

和解事例(1600)
自主的避難等対象区域(伊達市)に居住する合計5世帯14名の申立人らが共同で実施した除染費用について、申立人らが自ら行った除染作業につき労賃(1人当たり、1日につき1万円、半日につき5000円、1時間につき1000円)及び高所作業車等のリース代が賠償されたほか、業者に依頼した除染作業につき費用の全額が賠償された事例。

和解事例(1601)
県南地域において木材加工の過程で生じる樹皮の販売を行っていた申立会社の営業損害について、原発事故に伴う放射性物質の影響により樹皮の取引の停止を余儀なくされたことにより生じた平成29年1月分から同年12月分までの逸失利益(原発事故の影響割合5割)のほか、追加的費用(費用出捐の内容に応じて、必要性、相当性等を考慮し、支出額の2割ないし10割)が賠償された事例。


和解事例(1602)
自主的避難等対象区域(郡山市)から県外に避難した申立人らについて、平成27年3月分までの避難費用(一時帰宅費用)のほか、平成31年3月分までの生命身体的損害(甲状腺検査等の検査費用及び通院交通費)が賠償された事例。

和解事例(1603)
旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)において陶芸家として活動していた申立人らの営業損害について、自宅が特定避難勧奨地点に設定され、避難を余儀なくされたこと等を踏まえ、平成26年1月分から平成29年2月分までの逸失利益及び避難先の家賃が賠償されたほか、申立人らが除染目的で購入した放射線測定器の購入費用(既払い分を除く。)が賠償された事例



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