南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

学生に休業補償? 上

2006年02月27日 | 未分類
 休業補償という言葉は、一般の方でもなじみのある言葉ではないでしょうか。
 会社員等の働いている人が交通事故にあったら、入院や通院している間は、働けなかった間に給料分を補償してもらえるというものです。
 通常は、交通事故に遭う前、3ヶ月分の給与証明というものを会社から取得し、その平均収入分を支払ってもらうことになります。

 学生の場合はどうなるでしょうか?
 学生さんの場合は、原則として休業補償はありません。
 働いている人は、交通事故に遭わなければ、給料がもらえたはずなのに、もらえなかったという関係にたちますが、学生は交通事故に遭う遭わないに関わらず、給料をもらえるという立場にはないからです。
もっとも、学生でも継続的にバイトをしていたというようなことであれば、バイト代を休業補償してもらうことは可能です。
 裁判になる場合は、バイトが短期ではなく、比較的長期間に及ぶ可能性があったものだということまで証明できないと、休業補償を得ることができないと思いますので、この点までしっかり立証する必要があります。
 バイトの時期が長ければ長いほど、この点は有利に働くことになります。
 逆に、バイトの時期が短いと、この点の立証は工夫が必要になるでしょう。






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減収が存在しない場合に逸失利益が認められるか 下

2006年02月24日 | 未分類
 では、どのような場合に例外が認められるのかというと

 ア) 本人の特別の努力
 最高裁判例に沿って言いますと、
 「事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであつて、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合」

 イ) 不利益取り扱いのおそれ
 最高裁判例に沿って言いますと、
 「労働能力喪失の程度が軽微であつても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合」

があれば、逸失利益を認めるとしてます。
 「本人の特別の努力」も「不利益取り扱いのおそれ」も被害者本人側の事情ですし、このような例外的な場合は逸失利益を認めましょうというのが最高裁の立場なので、被害者側が証拠を提出して証明していかなければなりません。

 このように、後遺症があれば、それだけで逸失利益を認めるということにもなっていませんし、収入の減少がないからといって、逸失利益が認められないというわけでもありません。
 今まで述べてきたような最高裁判例のガイドラインにそって、個別ケースごとに証明を重ねていくことが必要になるのです。
 
 なお、この最高裁にご興味のある方は、以下の最高裁判例なので、参考までにあげておきます。
 最高裁三小判昭和56.12.22(民集35.9.1350,判例解説民事篇昭和56年度843頁)

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減収が存在しない場合に逸失利益が認められるか 中

2006年02月22日 | 未分類
 最高裁は、
 「かりに交通事故の被害者が事故に起因する後遺症のために身体的機能の一部を喪失したこと自体を損害と観念することができるとしても、その後遺症の程度が比較的軽微であつて、しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないという場合においては、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないというべきである。」
と判断しました。

 この意味ですが、
 ① 後遺症の程度が比較的軽微
 ② しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないという場合
は、原則として逸失利益は認めないということです。
 最高裁のケースは、
 ① 後遺症の程度は14級で
 ② 被害者は国家公務員の研究員で、今後とも収入の減少が認められない
場合にあたるので、そのようなケースでは原則として逸失利益は認めないというのです。



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減収が存在しない場合に逸失利益が認められるか 上

2006年02月20日 | 未分類
 後遺障害が残って自賠責の認定まで受けたのに、任意保険会社からの示談提案で「逸失利益については認められません」といわれる場合があります。

 逸失利益というのは、後遺障害が残って、これからもらえるはずだった収入がもらえなくなったことについて損害賠償できるということです。

 「逸失利益については認められません」という理由のひとつとして、
   ”事故の後に収入が全く減少していない”
ことがあげられるケースがあります。
 このような場合、法律上はどう考えるのでしょうか?

 この点については、最高裁判所の判例がありますので、このケースについて解説していきます。
 事案としては次のようなものです。
 1) 被害者は14級に該当する腰部挫傷後遺症を残して症状が固定し、右下肢に局部神経症状があるものの、上、下肢の機能障害及び運動障害はないとの診断を受けていました。
 2) そして、当時の通産省の研究所に技官として勤務しており、国家公務員法のもと民間人と比べるとはるかに手厚い待遇を受けうる立場にありました
 3) 本件事故後も給与面については格別不利益な取扱は受けていませんでした。



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交通事故とうつ病との因果関係

2006年02月18日 | 未分類
 交通事故からうつ病となったという被害者の主張を認めた裁判例がありました。
(大阪地裁 H17,6,6 自保ジャーナル1623号16頁)
この被害者は頭部を打ちましたが、CT検査では脳内出血はなく、意識は明瞭でした。
 しかし、事故の1週間後ころから、頭痛が続く、胸が痛く、首が重たい感じになる、夜寝つけないなどの症状がではじめ、うつ病であると診断されました。
加害者側は、被害者のうつ病と交通事故との因果関係を争いましたが、裁判所は因果関係を認めました。
 その理由としては
① うつ病の発症に、交通事故等の外因が原因として発生することがあるのは、精神科領域でコンセンスとなっている。
② 被害者には、既往症や娘が突然死した等の事情があるが、これらが被害者の心理的負担になっていたとは認められない、ことがあげられています。
 もっとも、裁判所は本件事故が重大な事故ではなく、通常であれば比較的早く治ることができたはずであることを重視し、
被害者が本件事故を原因として、うつ病になったことはかなり特殊な事例である
→被害者の心因的要素が相当影響している
と考え、被害者は加害者に損害の60%しか請求できないとしました。
 このように、被害者の後遺症に被害者側の影響が相当あるという場合、請求を減額することがあり、これを専門用語では 寄与度減額(きよどげんがく) といいます。

 ところで、このケースでは労働能力喪失率表は9級相当の35%を認めました。
 従前は、うつ病でも14級程度の労働能力喪失率表しか認めなかったことからすれば、後遺障害の状態から14級よりも上の等級を認めるようになったことは注目できます。
 もっとも、この裁判例が労働能力喪失を認めた期間は、うつ病が時間の経過と共に回復する症状であることから「5年」にすぎません。これがよいのかどうかは議論のあるところでしょうが、14級よりも上の等級を認め、期間をくぎる、寄与度減額をするという手法が裁判例では取られます。



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RSDを否定した裁判例 下

2006年02月16日 | 未分類
 労災や自賠責では、RSDを後遺症認定する基準として
① 関節拘縮
② 骨の萎縮
③ 皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)
という3つの症状が、健康なときと比べて明らかに認められる場合に、痛みが労働能力に及ぼす影響により、7級、9級、12級の認定をする。としています。
 今回の裁判例のケースでもこれらを参考にして、RSDの後遺障害があるとの証拠は、十分ではないとしたようです。
 RSDは、いまのところなぜそのような疼痛が発生するのかや、治療法が確立していない症状なので、訴訟では鑑定が行われることが多いと言われています。
この裁判例でも鑑定がされており、裁判官と鑑定人の鑑定意見と同様の判断をしています。
 被害者側からしてみると、交通事故がなければ、このような体にならなかったのだから、後遺症を否定されることは、非常に納得のいかないことだと思いますが、裁判というのは証拠の勝負であり、医学的に未解明な分野ですと、その分野に詳しい医師の説得的な意見書がないと、裁判において適正な認定を得られないということがありえるということは、覚えておかれた方よいと思います。



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RSDを否定した裁判例 上

2006年02月14日 | 未分類
RSDを否定し、胸郭出口症候群で、後遺障害12級のみを認定した、裁判例を見かけました。(名古屋地裁 H17,8,30 自保ジャーナル1623号9頁)
交通事故によって、骨折、捻挫、打撲等という怪我を負うことがありますが、これらがひきがねとなって、慢性的な痛みや、腫れ等が生じることがあります。
 RSD(反射性交感神経萎縮症、又は反射性交感神経性ジストロフィー)というのは、このような症状の一つで、尺骨神経等の主要な末梢神経の損傷がなくても、微細な末梢神経の損傷が生じ、外傷部位に強度の痛みをもたらすものです。
 今回とりあげた裁判例のケースでは、被害者が原付バイクに乗っていたところ、加害者の乗用車が一時停止道路から進入してきて衝突。被害者は頚椎捻挫等で14日入院しましたが、後遺症として
① 首及び右腕は触っただけでも痛みを感じ、首を動かすことがほとんどできない。
② 右手指で動くのは、親指と人指し指だけで、物をつまむぐらいの動きしかできない。
③ 右腕を動かせないため、食事、洗顔、入浴、パソコン操作も左手のみで行っている等の症状が残ったというのです。



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遷延性意識障害の将来のおむつ代 下

2006年02月12日 | 未分類
 「認められる」派と「認められない」派のどちらに軍配が上がるのかは、最高裁の裁判例が出ないと最終的には決着がつきません。
 しかし、最高裁の判決が出るかどうかは、当事者同士がそこまで争わないといけないわけですからでるかどうかもわかりません。 
 ですから、当分「認められる」派と「認められない」派の争いが続くと思います。
 
 この問題に対する私の考えを述べておきます。
 問題は、おむつ代が通常の生活費の範囲内なのかどうかにあると思います。通常
の人はパンツをはいて生活していますから、交通事故にあわなくても、このパンツ代を支払って生活します。
 そうすると、このパンツ代程度は、通常の生活費の範囲内にあるといってよいでしょう。
 もっともパンツ代などというのは、通常はそう高額になるものではありません。そこでおむつ代というのは、通常のパンツ代などよりも、相当高額にかかるのであるということを、具体的に立証する必要があるのではないでしょうか。
このような立証ができるのか否かによっても、結果は変わってくるのかもしれません。

 ところで、この正反対の判決、いずれも神戸地裁の民事1部というところで出されています。
 もちろん別の裁判官なのですが、同じ部屋で仕事をしていても、裁判官は自分の考えをはっきり判決に出せますから、こういう風に違う結論が出る事もあるのです。



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遷延性意識障害の将来のおむつ代 上

2006年02月10日 | 未分類
 交通事故で被害にあい、遷延性意識障害(植物状態)になった場合、介護におむつは欠かせないものですが、このおむつ代を損害賠償請求することができるかどうかについては、裁判例が分かれています。
 自動車保険ジャーナルの1621号には、
 「認められない」とした裁判例(神戸地裁H17,1,13判決)
 と
 「認められる」とした裁判例(神戸地裁H16,12,20判決)
が同じ号に載っていました。
 「認められない」派と「認められる」派にわかれているのですが、それぞれどのような理由からなのでしょう。

「認められない」とした方の理由は、そのような入院に伴う雑費は、逸失利益として認められる賠償金から、生活費として支払われるべきもの。ということにあります。
 簡単にいうと、おむつ代は生活費の範囲内でしょう。という考えではないかと思います。
 「認められる」とした裁判例は、理論的な理由は示していませんが、実際に1日2000円の貸しおむつ代を、支払っていることを重視しているようです。



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原告は「詐病」と断じた裁判例 下

2006年02月08日 | 未分類
 調査会社というのは、損保会社が交通事故に関連して、色々な事情を調べるときに使用する会社であり、今回の判決からもわかるように、被害者を尾行し、ビデオ撮影をすることもあります。
 被害者の近隣に聞き込み調査をする、というケースも目にしております。
 確かに、今回の判決が断じたような人間がいるとすれば、損保側からすれば、調査せざるをえないところもあるのでしょうが、善良な被害者からすれば、このような調査をされること自体、はなはだ迷惑なことです。

 ところで、今回のこの裁判例で特異なのは「原告は介助具なしでは歩行困難」という診断をした医師の存在です。
 裁判官からは「客観的症状がほとんど認められないのに、原告の訴えのみから、独自の見解に基づいて診断をした。」と批判されています。
 この医師は、原告が元気に仕事をしている、という事実を突き付けられても、「それは自分の治療の効果である。」と法廷で述べたようですが、裁判官は「全く信用できない。」と一蹴しています。
 


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