南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

弁護士と国賠訴訟

2017年02月26日 | 国家賠償請求(国賠)
水戸地裁龍ケ崎支部の裁判官が弁護士の訴訟活動に問題発言をしたということで、弁護士が国に損害賠償の訴訟を起こしたという報道がありました(2月22日茨城新聞)。

”裁判官は「こんな主張は意味ないんですよ」「先生がこれからも弁護士をやっていくことに不安を覚えますよ」と誹謗(ひぼう)中傷し、弁護士が抗議すると「まあ可塑性がないってことですね」などとやゆした、としている。”

 さて、では、弁護士側の勝ち目はどの程度あるでしょうか。

 裁判官の法廷での発言というのは、訴訟指揮権というものに基づいています。
 どの程度になると、損害賠償が認められるかについて調べてみましたら、最高裁で随分前に判決があるのですね。

  その判決では、こういわれています・
「裁判官が違法又は不法な目的をもって訴訟指揮権を行使したなど,裁判官が訴訟指揮権を付与された趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認め得るような特別の事情があることを必要とする」(最高裁判所昭和57年3月12日第二小法廷判決民集36巻3号329頁)

 この最高裁判決を前提とすると、違法となるハードルがかなり高いので、国賠請求が認められるのは難しいことになってきます。

 この基準を前提として、どう裁判官の特別な事情を立証するのかが、裁判のポイントになってきます。

 ところで、国賠(国家賠償)請求訴訟というのはかなり労力を使います。私も携わったことがありますが、国の代理人というのはかなりボリュームのある書面を作ってきます。組織の総力を上げてというような感じがしました。それだけの書面を作り込むのは、能力も時間も必要になってきます。

 国賠に勝つためには用意周到な準備が必要です。



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学校災害事故(誰に対して損害賠償請求できるか)

2010年12月27日 | 国家賠償請求(国賠)
私がよく目を通す「自保ジャーナル」という判例雑誌は自動車保険の事案の判例を多く扱っている雑誌ですが、学校事故の裁判例も掲載されます。

柔道部活動中の事故のケースを紹介します(福島地裁郡山支部平成21年3月27日判決自保ジャーナル2010年12月23日号(1836号))。

13歳の女子中学生が、柔道部活動中に負傷し、遷延性意識障害(いわゆる植物状態)の後遺障害を負ったということで、損害賠償請求をし、1億5000万円強の賠償が認められたというものです。

学校災害事故については、いろいろと問題点がありますが、今回は「被害者は誰に対して損害賠償を請求できるのか」について考えてみたいと思います。

このケースでは、被害者は次の者を訴えて(被告として)います。
①市
②県
③加害者(生徒)
④③の親

裁判所は①~③については損害賠償責任を認め、④については否定しています。
まず、①の「市」ですが、これは被害者、加害者の生徒が所属していたのが市立中学校であり、その中学校の部活動での事故ですから、教師に過失があるということで、損害賠償責任が認められています。(国家賠償法1条1項)

次に③の「県」ですが、県は市立中学校の教員らの給与(俸給)負担者であり、教員に過失があるということで、損害賠償責任が認められています。(国家賠償法3条13頁)
③の加害者(生徒)は、暴行を加えていたことが不法行為にあたるということで、損害賠償責任が認められています(民法709条)。(但し、損害賠償額の一部のみ責任が認められています)
④の加害者(生徒)の親は、本件では親権者としての責任違反はないということで、損害賠償責任が認められていません。

本件では、以上のような判断でしたが、ケースによって誰にどのような責任が発生するかということは異なるので、法律家ではない方にとっては、判断が非常に難しい、いや法律家であっても、なかなか判断が難しいというところではないかと思います。



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