南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

弁護士「格差」を考える

2008年01月30日 | 交通事故民事
 地域ごとにどのくらいの弁護士がいるのかという観点からみていけば、弁護士のサービスを受けやすいかどうかの「格差」を客観的にとらえることができます。

皆さんは、今弁護士が日本に何人いるかわかりますか?
おそらく全然検討もつかない方が多いと思いますが、その数約2万人です。
日本には47の都道府県がありますから、1つの自治体ごとに平均的にいるとすれば
2万÷47=425
で、425人ということになります。
もっとも、都道府県ごとに、人口がそもそも違うわけですから、こう単純に47で割ってしまうのは公平でないかもしれません。
日本の人口が約1億2000万人、東京都は約1200万人ですから、弁護士を人口で比例すれば、
東京都の弁護士は2万の1割で、2000人ということになります。

では、実際の弁護士の分布はどうなっているでしょうか(2007年12月の数字をもとにしています)。
東京 1万1709人
大阪 3170人
 先ほどあげた目安の数字(東京を人の比にすれば、弁護士2000人)という数字から、かなりかけ離れていることがわかります。
 つまり、弁護士は異常なほど大都市集中なわけです。

 そのため、地方では異常なほど弁護士が少ない結果になります。
例えば
 鳥取 44人
 島根 38人
です。
 鳥取の人口は、60万人、島根は73万人なので、人口比からすれば、弁護士が鳥取100人、島根121人いてもおかしくないのですが、そうなっていません。
ここからすれば、日本には弁護士サービスの利用に「格差」があるということが、おわかりいただけるかと思います。

では、この「格差」はどのような事態を起こしているのか、ということを次回では考えます(→次回記事)。


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医師不足と弁護士サービスの格差

2008年01月28日 | 交通事故民事
医師不足がマスコミで騒がれています。
医師不足は人の生命に直結する問題だけに、放っておけない問題となっています。
医師不足の原因として、以下のものがあげられています。

①2004年に研修医制度の変更があり、研修医か研修先病院を自由に選べるようになった。
②医師側も多少給料が安くても、都市で生活したいという考えが支配的。
③それゆえ、研修医が都市に集中し、地方で医師が足りなくなった。

研修医制度の変更以前は、大学病院の医局が、その権力で研修医をいわば「強制的に」配置できたのですが、「自由化」によって、その権力基盤が崩されてしまい、大学医局の権力基盤の上に成り立っていた医師の配置政策が、崩壊してしまったということになりましょうか。

では、弁護士はどうなんでしょうか。
「弁護士不足」とは、今は言われていません。というか、弁護士がこのまま急速に増えたら大変なことになるということで、司法試験の合格者の増加をしないように、決議をしている弁護士会連合会もあるほどです。

どうも、それらの意見は、司法試験を合格したはいいけれど、就職先がない、そんな就職先のない弁護士資格のあるものだけを作っても無意味だ、というところにあるようです。
しかしこれは、"合格者が困る"という視点からのもので、弁護士サービスを受ける"消費者"側からの視点が入っていません。
医師と違って、弁護士の場合、弁護士がいなくても生命に直ちに直結するわけではないので、弁護士不足かどうかが見えにくいということがあるかとは思います。そこで、不足というよりは、弁護士のサービスを受けやすいかどうかの「格差」という点から、考えた方がよいのかもしれません。

 次回、どのくらいの格差があるのかを考えてみたいと思います(→次回の記事へ)。



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「人証」とは

2008年01月25日 | 交通事故民事
 以前、民事訴訟の一審が終わるまで、どのくらいの期間がかかるのかという記事を書きましたが(→過去記事)、そのときに、人証の取調べを必要とする事件については18.8ヶ月という裁判所の統計を紹介しました。

 この「人証」(にんしょう)という言葉が、気になった方もいるかもしれません。
 過去記事では、大雑把に"証人尋問"のことと理解して下さいと書きました。一般の方であれば、そういう把握の仕方で間違いがないのですが、今日はその細かいところにまで踏み込んで書いてみたいと思います。
 少しややこしい話になりますし、専門的なところにも少し踏み込まなければならないので、読まれる方は心して読んでください・・・

 さて、厳密にいうと「人証」と「証人」は違います。
 漢字ですと字が前後になっただけなのですが、法律上の意味が変わってきてしまうのです。

 まず、「人証」の説明からします。
 「人証」というのは、証拠の種類の一種です。
 訴訟では証拠を、紙に書かれたもの、人によるものという風に分けます。
 紙に書かれた証拠を書証(しょしょう)、証拠が人の場合を人証といいます。
 証拠が人の場合の中には、証人尋問と当事者尋問という2通りの尋問があります。
 当事者というのは、訴訟の原告や被告をいいます。証人というのは当事者以外の人のこと。

 なぜ、当事者とそれ以外を分けるのかというと、尋問であえて嘘の供述をした場合の責任が、当事者と証人では違うからです。
 一番の違いは、証人が嘘の供述をすれば、偽証罪になりますが、当事者の場合は偽証罪には、ならないというところでしょうか。
 つまり、証人の場合は、他人の裁判だからといって、嘘をついたら偽証罪という刑罰を科しますよということになっています。

 以上のように「人証」というのは"人が証拠"ということを示し、「証人」というのは、"原告とか被告以外の第三者で、法廷で証言する人で、嘘をいうと偽証罪になってしまう"ということになります。

 こんな風に、証人に偽証罪もありうるという重い責任を科すと、証言してくれる人がいなくなってしまうのではないかと、思われる方もいるかもしれませんが、そのとおりで「証人として法廷で証言をして下さい」と頼んでも「法廷ではちょっと・・・」と断られることは、ままあります。

 あまり知られていないことですが、法律では全ての国民は、裁判所から証言を命じられれば、証人として出廷して、証言をしなければならないことになっています。
 つまり、証言をするように強制することが法律上できることになっていますが、少なくとも民事の裁判では(刑事裁判は違います)、そのような方法はほとんど使われません。
 そのため、協力的な方がいなければ、証言がえられないという現状になっています。

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なぜ民事訴訟は平均1年半もかかるのか

2008年01月23日 | 交通事故民事
前回までに、交通事故の民事訴訟の一審の審理期間の目安は、1年半程度ということを説明してきました。
この1年半という期間を
"民事訴訟というのは、もっとかかると思っていたけれども、1年半程度ということであれば、案外早く終わるものだな"
という感想を抱く方もおられるかもしれませんが、多分
"やはり訴訟というものは、長くかかるものだ。何でそんなに時間がかかるのか"
という疑問をもたれる方も多いのではないかと思います。

 では、なぜそれだけの時間がかかるのでしょうか。
 民事訴訟では、期日といって、当事者(代理人でもよいのですが)が集まる日があります。
この期日は大体1ヶ月~1ヶ月半のペースで設定されます。
民事訴訟の一審の審理が1年半、期日が1ヶ月半ごとと仮定すると、期日は
1年半÷1ヶ月半=12回
という計算になります。

この12回の期日で何をしているかというと、原告、被告双方が、「主張」、「立証」を尽くすのに必要な回数です。

 今「主張、立証」という言葉を使用しましたが、これは、ここでは大雑把に
  主張=訴状や準備書面を提出すること
  立証=証拠を提出すること
と考えておいて下さい。
 つまり、証拠を集めて(立証)、それをもとにして、訴状や準備書面を書く(主張)ことが、原告や被告がしなければならないことなのです。

 証拠を集めて、正確な準備書面を書くには、それなりの時間がかかります。
 場合によっては、依頼者の方に書面を見ていただいて、誤りがないかどうかをチェックしていただくことも必要です。

 訴訟の進行は、将棋のように一手こちらが指したら、一手相手が指すという構図に似ています。
 まず、原告が訴状を提出し、それに対して被告は訴状のどこまでを認めて、どこまでを争うのかを明確にします。
 その争う部分に対して、原告が更に反論し、被告はそれに対して再反論し・・・というように続いていきます。
 ある程度のところまでくれば、双方の主張、立証が尽きることになりますので、裁判官は主張、立証を整理しながら、争点についての判断を考えていくことになります。

 このような双方の応酬で、1年近くの期間がかかることが多いわけです。


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千葉地方検察庁

2008年01月21日 | 交通事故刑事事件の基礎知識


 千葉地方検察庁です。
 私の事務所はここから歩いて3分ほどです。
 合同庁舎なので、検察庁が使用しているのは5階よりも上の階になります。

 ほかの検察庁の運用はどうかわからいですが、千葉地方検察庁では、裁判所と比べて入るのにチェックが厳しく、弁護士でも名簿に記名してから入らないといけません。

交通事故の被害者の方が検察庁に来る場合というのは、検察庁に事情聴取で呼ばれる場合や、刑事記録のコピーを申請に来る場合くらいでしょうか。あまりなじみのあるところとはいえませんでしょうか。
 
 ところで、東京地検には「特捜部」というものがあり、政治家がらみの事件などを扱っているところがありますが、千葉地検には「特捜部」はありません。
 「特別刑事部」という名称で、国税庁からの事件や独自捜査を行っているようですが、東京地検の「特捜部」と比べると人員もあまりいないようなので、マスコミでとりあげられる機会は、千葉日報(千葉の地方紙)を読んでいてもあまりありません。
 この千葉地検の特別刑事部は、この庁舎にはなく、千葉駅から2駅ほど離れた別の庁舎内にあります。



 



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平均審理期間1年半強という統計のとらえかた

2008年01月18日 | 交通事故民事
 前回(→過去記事)は、交通事故事件では、
  一審裁判の審理期間は8ヶ月弱
と把握することは不正確であることとその理由について、説明しましたが、それでは、交通事故事件では統計のどこを見ればいいのかというと、

 人証調べを実施した事件では平均審理期間は18.8ヶ月

というところです。
 ”人証”というのがわかりにくですが、”証人尋問”とほぼ同様ですので、一般の方はそのように把握していいただければ大丈夫です。
 
 交通事故事件で争いのある事件は、たいてい、この”証人尋問”が必要になるような事件です。
 
 そうすると、交通事故事件では、
  一審の審理は1年半強
というところを目安にしておけばよいということになりますし、私の感覚からしても、だいたいそのような、ものかなと思っています。

 前々回(→こちら)でも申し上げたように、これはあくまで「審理」期間であり、審理が終わってから判決が出るまでの期間は含まれていませんから、判決が出るまではここからさらに1~2ヶ月は足さなければなりません。

 そうすると、合計で訴え提起から判決までは1年8ヶ月くらいという期間が統計的にはかかるという計算になります。

 被害者にとってこれだけの長い期間、訴訟をするというのは、いかに弁護士を代理人として依頼するといっても、大変なことだと思います。

 このような時間の問題や諸費用それに訴訟になると証拠の提出ということをしていかなければなりませんので、そのあたりの労力の度合いをも考慮して、どのような手段で最終的に解決するのが妥当なのかということを被害者サイドとしては選んでいくことになるでしょう。


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「一審裁判の審理期間が8ヶ月弱」は統計のマジック

2008年01月16日 | 交通事故民事
 前回(→こちら)は、法律相談を受けるときに多いご質問のひとつである
”民事訴訟はどのくらいで終わるのか”
について、裁判所が出した報告書である

 「裁判の迅速化に関する検証結果の公表について

をもとに、

 一審裁判の審理期間は8ヶ月弱

という統計を紹介しましたが、実はこの期間は実際の感覚よりも早くでてしまっています。

 なぜならば、この数字には
  被告が期日に欠席するケース
が含まれてしまっているからです。

 被告が期日に欠席するというケースが、民事訴訟上どのように処理されるのかというと、被告は”原告の主張どおりの事実を認めた”ことになります。
 そして、審理は1回で終了。
 つまり、被告欠席のケースは、審理期間が約1ヶ月程度で終了することになってしまうわけです。

 被告が欠席するケースというのは、たとえば、
 ・AさんがBさんに100万円貸してあり、Bさんは借金100万円したことは争っていないのに、Bさんがちっとも返してくれない、いつか返すというが、全然返してくれないので、AさんがしびれをきらしてBさんに対して、訴訟を提起する
というような場合
 が考えられます。

 交通事故の場合、被告欠席になるということはあまりありません。
 というのは、被告が加害者であるとすれば、損保会社(任意保険)がついていることが多く、過失相殺や損害額を争ってくることが多いからです。

 ですから、交通事故事件の場合、
  一審裁判の審理期間が8ヶ月弱
という把握をすると間違ったことになります。

 そこで、裁判所の報告書の別の部分を参照することになりますが、それについては次回で(→こちら)。

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民事訴訟はどのくらいの期間で終わるのか

2008年01月14日 | 交通事故民事
 交通事故の被害者となったときに、これは示談で終わらせたほうがよいのか、民事訴訟などの法的手段を取った方がよいのかということは、大きな決断です。

 それを決めるにあたっては、費用のこともさることながら、訴訟をするといったいどのくらいで終わるのかという時間の問題も大きいと思います。

 この点について、裁判所が、

 「裁判の迅速化に関する検証結果の公表について

という報告書を2007年7月13日に出しています(PDFファイルですが、その内容については→こちら)。

 これによれば、
  一審全体の平均審理期間は、7.8ヶ月
  人証調べを経た事件の審理期間は18.8ヶ月
  2年を超える審理をした事件の割合は5.5%
という結果が出ています。

 まず、「一審」というのは、民事訴訟を最初に起こす裁判所のことです。
 金額が150万円までなら、簡易裁判所
 150円を超えると、地方裁判所
が一審になります。
 
 「一審全体の平均審理期間は、7.8ヶ月」
ということは、この一審での「審理」期間が平均で8ヶ月弱ということを意味します。
 審理期間というのは、判決が出るまでの期間とはちょっと違います。
 訴えを提起してから、判決が出る前の状態(これを「弁論終結」といいますが)までの期間を「審理」というので、ここまでの期間です。
 判決はこの弁論終結から、通常の事件ですと、1ヶ月~2ヶ月というところででますので、判決がでるまでの期間はそれを足す必要があります。

 そうすると、訴えを起こしてから、判決がでるまでは平均約10ヶ月ということになります。

 これは皆さんの感覚からすると、どう思われるでしょうか。
 私は、これで終われば早い方だと思います。
 
 というのは、これだけを見てしまうのは、統計のマジックがあるからです。
 この統計のマジックについては、次回に(→こちら)。

ご相談は無料(初回)現在電話相談にも対応しております
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千葉市中央区中央
法律事務所大地
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  平日午前9:15~午後5:00は、043-225-0570まで。
  平日午後5時~午後7時半、土日祝午前9時から午後7時半は、
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静岡県の弁護士会館

2008年01月11日 | 未分類


 静岡県弁護士会の会館です。
 
 正式名称は、
  静岡県法律会館
といい、通称を
  静岡県弁護士会館
といいます。

 弁護士会が何をしているのかというのは、一般の方にはなかなかイメージをもっていただけないかと思いますが、弁護士はどこかの弁護士会に加入していないと、弁護士としての資格をもって働くことができません。
 
 静岡県弁護士会館は、静岡地方裁判所本庁の構内にあります。
 
 静岡は駿府城の跡地を利用して、裁判所などの公的な庁舎が建てられています。以下の地図をご覧いただければおわかりいただけるかと思います。




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札幌高裁の高次脳機能障害認定を最高裁が維持

2008年01月09日 | 高次脳機能障害
 北海道新聞の記事からです(記事は末尾に引用)。
 
 自賠責の認定では、CTやMRIといった画像所見が必要なのですが、この札幌のケースでは、それがなくとも裁判所が高次脳機能障害を認めたというところに意義があります。
 
 今回、最高裁が、加害者からの上告を棄却したということですが、これが即ち、最高裁が脳の画像所見がなくても、高次脳機能障害となるということを認めたといいうことにはならないと思います。

 というのは、最高裁は、事実認定については、基本的には審理の対象外なのです。つまり、事実の認定については、高裁で著しい謝りがない限り、上告を認めるという扱いはしないのです。

 さらに、この12月25日付けの最高裁決定は最高裁の裁判例情報のホームページに掲載されていません。
 これは、最高裁自体はこの決定を、重要性をもっていないと位置づけているともみれます。



高次脳障害 札幌の女性勝訴が確定 最高裁、運転手の上告棄却(12/28 08:04)
 交通事故で高次脳機能障害を負ったとして、札幌市の二十代の女性が事故を起こした運転手に約一億二千四百万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は二十七日までに、運転手の上告を退ける決定をした。運転手に約一億千八百万円の支払いを命じた二審札幌高裁判決が確定した。決定は二十五日付。
 自動車損害賠償保障法では、高次脳機能障害に認定されれば保険金が支払われる。認定されるには、磁気共鳴画像装置(MRI)の画像診断で脳の損傷が認められることなどが必要だが、女性は損傷が見られず認定されなかった。
 しかし、札幌高裁判決(二○○六年五月)は、一九九七年六月の事故後に、女性の記憶力や集中力が著しく低下していることを重視。「症状から、司法上は事故で障害を負ったと認める」とする初判断を示していた。

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