南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

画像所見と高次脳機能障害(大阪高裁判決より)

2009年05月27日 | 高次脳機能障害
CT,MRIに脳内損傷の画像所見がなくても、高次脳機能障害を認めた判決(9級認定)をみかけましたので、紹介します。

高次脳機能障害の自賠責保険の診断基準では、「頭部画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3ヶ月以内に脳室拡大、脳萎縮が確認されること」となっています。

 そこで、この考えかに沿って、CTやMRIで上記のような画像所見がある場合を頭部外傷による高次脳機能障害と認定する考えが裁判例上は多数を占めています(参考;「高次脳機能障害の認定~東京高裁判決から」)


 平成18年5月の札幌高裁判決がこのような画像所見がない場合でも高次脳機能障害を認定した唯一の裁判例だったように記憶しています(参考;「札幌高裁の高次脳機能障害認定を最高裁が維持」)


その後、東京高裁判決(平成20年1月24日判決自保ジャーナル1724号)が、画像所見がない場合でも準高次脳機能障害として認定しうる場合がありうることを認めました(参考;「準高次脳機能障害」)

しかし、この判決では被害者を高次脳機能障害ではないと認定しています。

本日ご紹介する大阪高裁判決(平成21年3月26日判決;自保ジャーナル1780号)は、札幌高裁判決に続いて2例目となるものといってよいでしょう。

 このケースは、一審(大阪地裁判決平成19年10月3日自保ジャーナル1741号)では、高次脳機能障害を認めず、12級相当の非器質性精神障害を認定したのですが、被害者側が控訴し、高次脳機能障害を認定できるかが最大の争点となりました。

 大阪高裁は、詳細は検討をした上で、高次脳機能障害を認定しており、これまでの裁判所の流れにも一石を投じるものといえ、大いに参考になります。

この判決の被害者側代理人となった事務所(弁護士法人穂高)のホームページに概要が紹介されています→こちら

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2009年度東京地裁民事27部(交通部)の担当裁判官

2009年05月25日 | 未分類
東京地裁では交通事故事件は交通部(民事27部)で取り扱っています。

  交通専門部があるのは、東京・大阪・名古屋の3つの地方裁判所しかありません(他の裁判所では一般の事件を扱う部署が交通事故事件も扱っています)。

 さて、今年度の東京地裁民事第27部の担当裁判官が東京地裁のHPに載っていました。


 2009年5月1日時点の情報です。
 裁判官が年度途中で異動する場合もありますが、通常の異動時期は4月1日なので、おおむねここにあげた裁判官が担当すると考えてよいと思います。

 東京地裁民事27部は、係りの名前が「いろは」になっており、よくわかりません。
 1係、2係の方がわかりやすいと思うのですが・・・(ほとんどの裁判所はそのようになっています)

数字は法廷の番号です。

い係 中西茂 毎週火曜日 629
ろ係 千葉和則 毎週火曜日 632
は係 鈴木正弘 毎週月曜日 毎週水曜日 633
に係 小野瀬昭 毎週水曜日 616
ほ係 森健二 毎週月曜日 518
と係 中辻雄一朗 毎週火曜日 636
た係 鈴木尚久 (前期)毎週金曜日(後期)毎週月曜日 (前期)633(後期)636
ま係 飯畑勝之 毎週水曜日 509
あ係 山田智子 毎週水曜日 628

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自賠責保険会社への被害者請求

2009年05月21日 | 未分類
 自賠責保険会社への被害者請求(以下、「被害者請求」)とは、どのようなものかについて説明します。

 被害者請求は加害者が加入している自賠責保険会社に、被害者が直接請求することです。加害者がどの自賠責保険会社に加入しているかは、交通事故証明書をみればわかります。

被害者請求の限度額は
傷害部分(後遺障害分以外のもの)  120万円
後遺障害分    等級に応じて
死亡の場合    3000万円
となっています。

 私が関わることが多いのは「後遺障害分」の方ですので、以下、主にこの手続きについてです。

 まず、自賠責の保険会社に書類をそろえて、請求します。
後遺障害については
後遺障害診断書の提出
が必要です。
弁護士が代理する場合は
被害者の実印のある委任状
印鑑証明書
が必要になります。

あとは、ケースごとによって必要書類などが変わってきますので、私の場合、その都度必要書類をご案内することとしております。

自賠責の保険会社に書類を提出すると、自賠責の保険会社は、調査事務所に調査を依頼します。
行われる調査は、いくつかありますが、最も重要なのは
後遺障害の等級認定の調査
です。

自賠責の等級は、自賠法施行令という政令で定められており、別表に等級表があります(→参考 損害保険料率算出機構のHP)。

調査の方法としては、基本的には提出された書類及び画像による調査です。

画像のコピー代がかかった場合は、その領収証の原本を調査事務所に提出すると、そのコピー代だけは支払われます。(後遺障害診断書などの文書料は支払われません。)
振込み名義は、「損害保険料機構」の名前で行われているようです。

調査が終了すると、調査事務所は、後遺障害等級などについて、自賠責保険会社に調査結果を報告します。
自賠責保険会社はこれを受けて、支払いの手続きをし
後遺障害等級認定票
支払い通知
を被害者側(代理人がついている場合は代理人)に送付します。

被害者請求をしてから支払いがなされるまで、後遺障害の場合で、最も順調にいって3ヶ月位と考えておいて下さい。

「順調にいって」というのは、調査事務所が必要書類などを被害者側にリクエストしたり、被害者から調書をとって主治医などに照会をしたりする場合があるのですが、これがスムーズにいった場合ということです。

被害者側や医師などがなかなか必要書類を提出できなかったりした場合などは、その分手続きが遅れるということになります。

また、後遺障害の内容によっては、調査事務所内部の審査会での審議が必要となることがあります(例えば高次脳機能障害審査会
その場合は、審議会の審議が終了しないと、調査結果を自賠責保険会社に報告しないこととなります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不起訴処分の民事への影響

2009年05月18日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 「加害者の刑事事件が不起訴になっていたのですが、民事のほうに影響がありますか?」というご質問は被害者の方からよく受けます。

 加害者の刑事事件が不起訴になっても、民事の損害賠償の過失相殺というのは刑事事件とは別の視点できまりますから(→過失相殺の基準本)そういう意味では影響はありません。

 ただ、刑事事件の記録というのは、どういう事故があったかという基礎資料として民事事件でも使用します。
 実況見分調書は不起訴処分であっても取得できるのですが、その実況見分調書にあることに反論していこうということになると、これは、事故から時間が経っていれば経っているだけ難しいことになってきます。
 つまり、刑事事件が不起訴処分になったこと自体ではなく、刑事記録については民事のほうでも影響があるということになります。

 ですから、刑事事件が不起訴になったといっても、その理由が問題となります。
 怪我が軽いからなのか、刑事上過失が認められると立証するのが難しいのか、いずれの理由により不起訴なのかによっても代わってきます。
 
 弁護士はこんなことを気にしながら、刑事事件を見ています。

 なお、怪我が軽いと、検察官はすぐ不起訴処分としてしまいます(警察から検察に送られてから、早い場合で1週間程度で不起訴ということもあります。この場合、検察としては書面をみただけで不起訴処分にしています)。
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

名乗る裁判官、名乗らない裁判官

2009年05月14日 | 未分類
 4月というのは裁判官も異動時期でして、その関係で、私が担当している裁判官も数名が代わりました。

 裁判官の交代は、予告もありませんので、期日当日に裁判所に行くと、今までとは別の裁判官が座っているので、初めて交代したとわかるという具合です。

 さて、今年気がついたのは、自分の名前を名乗る裁判官と名乗らない裁判官がいたということです。

 人とはじめてあったときには、自分の名前を名乗るのが社会常識ですが、法廷はその常識が全く通じないところなので、裁判官名乗らないというのが普通でした。

 もう5年位前になりますか、名乗る裁判官にであったときは、衝撃的でもありました。
 名乗るといっても、
 「はじめまして、今度から担当の裁判官になります、**です。よろしくお願いします。」
という一般の方から見たら、実に当たり前の平凡な挨拶なのですが、このようなことを言う人は5年前には皆無でした。

 今年の裁判官の交代を経験して、私の場合、5件の交代があったのですが、
  名乗りを含めて挨拶をした裁判官 4人
  名乗らず、挨拶もなかった裁判官 1人
という結果で、挨拶派が多数を占めたのです。

 これに驚く私のほうが一般常識からはずれた世界に身をおいてしまっていて、おかしいのかもしれませんが、今までの裁判官の対応を考えると、裁判所も変わったな~と思った次第です。

参考
過去記事 裁判官の「常識的な」対応

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人証申請書

2009年05月11日 | 未分類
人証については、以前詳しく書いたことがあります
過去記事

簡単にいうと、人証というのは、裁判所の法廷で、原告や被告、証人から事情を聞くことです。

事情をきくといっても、その方たちが、いちから話を用意しなければならないのではなく、双方の代理人(弁護士)から質問して聞いていくことになります。
このような質問の形式を”尋問”といいます。
”尋問”というといかめしい言葉のように聞こえますが、あまり大事に考えず、法廷内で質問され、それに答えることというくらいに考えておいてください。
もっとも、法廷に行くこと自体が、多くの方には不安だと思いますが・・・・

ところで、人証というのは、裁判所に申請をしなければなりません。
この書面を
 人証申請書
といいます。

 裁判所や相手方代理人とは、事前の期日で、誰を人証として呼ぶかということを協議した上で、人証申請書を提出することが通常です。

 つまり、当初は口頭である程度打診しておいて、正式に書面(人証申請書)を提出するということです。

 裁判所はこの人証申請書をみて、誰を人証として取り調べるか、つまり、誰から法廷で話を聞くかということを決定することになります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家事労働について考える

2009年05月07日 | 後遺症による逸失利益
 交通事故により、被害者が後遺障害を負ったり死亡した場合は、逸失利益を損害賠償として請求することできます。
 後遺障害の場合は、
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
という式になります。
 ここで「基礎収入」とあるのは、会社の従業員であれば、基本的には交通事故の前年の収入であることが多い(個別ケースによって違いますが)です。

 では、被害者が主婦の場合はどうでしょうか。
 主婦は、主婦をしていること自体では収入をえていません。

 つまり、主婦業(家事労働といった方がよいのかもしれませんが)、は、”アンペイドワーク(無償労働)”であるわけです。

 主婦が被害者の場合は、
”賃金センサスの女子労働者の全年齢平均賃金”
を基礎収入とするというのが多数の裁判例です。

 無償労働ではあるわけですが、それなしでは、生活が立ち行かないという意味で労働であることには間違いがないのですが、家事労働をどのように収入として評価するかというのは非常に難しいため、女性の平均賃金で考えましょうということになっているのです。

 ところで、逸失利益があるというためには、
  現実に労働ができなくなり、対価が支払われなくなったこと
を被害者側が立証するのが基本です。

 たとえば、会社員の場合は、後遺障害を負ったから、収入があがらなくなったということを立証していけばよいのですが、では、主婦の場合は、どうかというとなかなか難しい問題があります。

 主婦の場合、何がどこまでできなくなったといえるのかが、外からはわかりにくいからです。
 
 たとえば、家事労働の一部として、ごみを捨てるということがありますが、それをざっと考えただけでも次のようになります。
 家事労働は考えてみると多岐にわたるのですが、これらを細かく立証していかなければならないとなると、なかなか骨が折れる作業ということになります。


<家事労働としてのごみの処理>
生活を続ければごみが発生する。
このごみの後始末をつけなければならなない。
そのためには、
・ごみが家庭内で出た場合、どこに捨てるかを決め、実行する(この実行するには家事労働を行うもの自身が行うほか、家族との間で役割を決めて家族に実行させることも含む)。
(具体的には、ゴミ箱を買ってきて、家庭内でどのごみはどのように捨てるかを決める)
・上記のことは、ごみの分別の問題とも絡み合うので、自治体ごとに違うごみの分別の仕組みを理解する必要がある。どのごみを自治体が回収してくれるのか、回収してくれるとして無料なのはどこまでか、自治体が回収してくれないものはどの範囲か、その場合はどのようにそのごみを捨てるのか
・また、ごみの収集日は、分別されたものごとに違うので、これらをも踏まえてごみをどのように捨てるかという計画を立て、実行する。
・自治体が回収するものでも有料ごみについては、支払いの手間があるので、その手続きを行う必要がある。
・自治体において回収されないもの(たとえば、エアコン、テレビ、洗濯機などの家電製品)については、その回収先を選定し、回収手続きを進める
・注意すべきは、ごみは毎日生じるものであり、それらを効率的に捨てないと、悪臭が発生するし(たとえば、生ごみ)、はなはだしい場合は健康にも害を与える可能性もある。
 よって、ごみの回収について、家事労働を行うものは、毎日配慮を行う必要があるし、自治体によって決められている回収時刻などの所定の手続きを守ってにごみを出すことを忘れずに実行する必要がある。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5月です、ブログを再開します

2009年05月01日 | 未分類
4月は、なかなか激動の月でした(個人的にですが)

ようやく少しは落ち着いて書けるような状況になってきましたので、このブログをまた綴っていこうと思います。

もうすぐGWです(というかもうGWでしょうか)。

私、もともと、GWに家族でどこかへ行って楽しむという習慣を持っていないのです。

これからの連休も仕事やら雑事やらで、スケジュールは既に全部塞がってしまいました。

GW明け(私の認識では5月7日)以降にまたお会いしましょう。

よい連休をお過ごしください。 



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする