南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

高次脳機能障害2級の裁判例(横浜地裁)上

2006年01月31日 | 未分類
 自動車保険ジャーナルを読んでいましたら、高次脳機能障害で2級を認めた、裁判例がありました。(横浜地裁H17,11,10判決;自保ジャーナル1621号7頁)
 「高次脳機能障害で2級」というのが、そもそもわかりにくいかもしれませんね。
 後遺障害の等級というのは、自動車損害賠償法(自賠法)で決まっています。
自賠法では、1級から14級までの後遺障害のリストを、法律で決めていると考えて下さい。
 1級が一番重く、2級、3級となるにつれ、後遺障害の程度としては、軽くなっていきます。
高次脳機能障害のケースでは、このリストの中の「神経系統の機能又は精神の障害」にあたるものと、考えられています。
この「神経系統の機能又は精神の障害」として、高次脳機能障害を認定していくときの、ものさしとしては、次のようなものさしが使われています。

1級=身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に、全面的介護を必要するもの

2級=著しい判断力の低下や、情動の不安定などがあって、一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの

3級=自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの

上記のものさしは、自賠責の等級認定で使われるものですが、横浜地裁もこのものさしを引用していますから、裁判所も参考にしているとみてよいでしょう。



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成年後見制度11ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月26日 | 成年後見
(家裁調査官との面接)
ポイント=なぜ家裁調査官が面接をするのか、その意味について覚えておいてください

 調査官との面接をしますが、この面接に至る手順としては
1.家裁の調査官から、電話で面接日を指定される
2.面接日までの間に、調査票を書くように指示されるので、郵送されてくる調査票に記載する
3.調査票を持参して、面接する
ということになります。
 この調査票というものは、現在の財産状況や、本人や近しい人が、後見を申し立てることを、知っているのかどうか等を、記載することとなっています。

 家裁の調査官と言うのは、心理学や社会学を大学で勉強してきた人がなることが多く、人間関係の調査ということを主眼にしています。
 実際に後見が申し立てられるケースでは、お金をもっている高齢の方が、要介護状態になり、子供のうち誰が親の面倒をみるかが、お金の問題とからんで後見申立られるケースが多くあるようであり、遺言相続の前しょう戦的な問題とすることもあります。
 このようなケースに該当しないかどうか、家裁の調査官は気を配っているようですが、交通事故のケースでは、このようなケースはほとんどありませんので、調査面接に際しては、何事も包み隠さずに話すことが必要でしょう。



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成年後見制度10ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月24日 | 成年後見
(成年後見における家庭裁判所調査官の役割)
ポイント=家裁の調査官の役割についておさえておいてください

 このような申立関係の書類をそろえて、家庭裁判所に申し立てますと裁判所では、形式的に書類の不備が無いかを、書記官がチェックし、オーケーということになれば、家庭裁判所調査官に書類をまわします。
 家庭裁判所調査官は、家裁で取り扱う調停や、審判の調査にあたる裁判所の職員で、裁判所独自の試験により、採用されるものです。大別すると、家事事件関係の調査官と、少年事件関係の調査官がおり、成年後見の関係は、家事関係の調査官が取り扱います。
 家事事件関係の調査官は、成年後見以外でも、例えば、離婚事件で親権者を夫又は妻のいずれかに指定すべきかという問題が発生した時に、裁判官の調査命令をうけて、夫や妻及び子共に面接し、どちらを親権者とするのがよいのかを、調査する等の仕事をしています。
 
 調査官は家裁の本庁には必ずいますが、全ての支部に配属されているわけではなく、支部によっては調査官が不在のこともあります。
 水戸家裁龍ヶ崎支部や麻生支部で申立したことがありますが、家裁調査官が不在であったため、最寄りの水戸家裁土浦支部の調査官が担当していました。



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成年後見制度9ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月22日 | 成年後見
(成年後見登記について)
ポイント=成年後見は戸籍ではなく、登記によって管理されています。
 
 申し立ての必要書類には、後遺症を負った本人や、後見人候補者が後見に付されていないことを、証明する必要がありますので、後見の登記が無いことの証明をもらう必要があります。
 これは東京地方法務局で、取り扱っています(郵送で申請が可能です)。
 禁治産・準禁治産制度のときには、それらの審判があると、戸籍に記載されていました。日本人は、このような記載が戸籍に載ることを「戸籍が汚れる」といって非常に嫌がります。
 禁治産・準禁治産制度が広まらなかった理由の一つも、戸籍が汚れるという日本人の感情に基づいていました。
 そこで、成年後見人制度ではこれを改め、戸籍ではなく、登記にすることとしたのです。そして、その取り扱いを東京地方法務局で集中的に扱わせることとし、この後見登記の申請をすることが出来る請求者を限定しています。
後見登記に関する上記のような事柄は「後見登記等に関する法律」という法律で規定されています。




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成年後見制度8ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月20日 | 成年後見
 話を元に戻して、申立の手続の話を続けます。
 申立人を誰にしたら良いでしょうか。
 後遺症を負った本人が申立人となることもできるのですが、本人が財産管理ができない状況にあるのに、後見人の説明をしても意味がわからないのではないかという疑問がありますので、私が代理人となるときは、本人を申立人とはせず、本人が結婚している時は、その配偶者、いないときは、親や子といった近しい方が申立人となっていただくようにしています。
 申立の際には、後見人候補者を記載する必要があるのですが、申立人を後見人候補者となるようにしています。
 後見人は一人であるのが普通ですが、二人つけることも可能です。
 子どもが後遺症を負った場合に父親のみならず、母親をも後見人としたことを求めたことや、親に後見をつける場合に、子ども二人を後見人候補としたことなどが私の経験でもあり、双方とも後見人二名をつけることを裁判所は認めました。
 後見人を二人つけた場合は、二人が共同で行為をする必要はなく、どちらか一人の名前ですればよいことになるのが原則です。



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成年後見制度7ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月19日 | 成年後見
 話は少々脱線しますが、このように裁判所によって取り扱いが違うということは往々にしてあるところです。
 例えば、千葉地裁では、本庁のほかに支部が7つあり、本庁と支部で取り扱いが微妙に違うこということがあります。これは申立をする側からすると非常に不都合な状況にあります。
 一般の方からすれば、裁判所は国の役所であり、そこが支店をだしているようなものだから、どこでも同じような扱いでやってくれるのだろうという感覚があると思うのですが、私の感覚からすると裁判所ほどローカルルールのあるところはないと思います。
 このようなことがなぜおこるかというと、裁判官は独立であるという裁判官独立の原則があるからです。裁判官は憲法や法律には拘束されるが、それ以外のものからは自由であるということは、憲法にも規定されている原則です。
 個々の裁判官が独立ということは、極端なことをいうと同じ裁判所であっても、あたる裁判官によって全然別の扱いが可能ということにもなりかねませんが、さすがにそこまでいってしまいますと裁判所のほうも混乱しますので、本庁は本庁で、支部は支部で取り扱いを決めていくということをします。
 これをすべての地裁でやってくれればすべて扱いが統一されるわけですが、その手間たるや相当なものですから、重要なものは統一されていきますし、そうでないものについてはローカルルールが残るということになります。
 これは、例えていえば、「大富豪」のような全国に広くいきわたっているトランプゲームに多数のロー0駆るルールがありながら、大筋のルールは同じというようなものといえるかもしれません。 



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成年後見制度6ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月18日 | 成年後見
 鑑定の話となりましたから、鑑定費用についても触れておきたいと思います。
 鑑定に際しては当然医師への費用が発生しますが、鑑定は本来裁判所が医師に依頼することとなりますので鑑定医には、裁判所が支払うことになります。
 もちろんその分は、申立人があらかじめ裁判所に費用を予納しておくことになるのですが。
 気になる値段ですが、10万円というのが相場のようです。
 いままで私は、千葉家裁、東京家裁、甲府家裁、水戸家裁で後見や保佐申立を行ってきましたが、このうち、水戸家裁以外は鑑定費用は10万円でした。
 しかし、水戸家裁だけはなぜか5万円でした。よって、詳細は申立をする家庭裁判所に問い合わせる必要がありますが、5~10万円が相場であるということはいえるかと思います。
 10万円というと、非常に高い金額のように思われるでしょうか。
 しかし、通常医師に鑑定を依頼すれば、これ以上の金額になります。
 訴訟の中で医師による鑑定となると最低でも50万円くらいはしてしまいますので、それに比べれば10万円というのは低い部類には属します。
 成年後見で鑑定費用を10万円に抑えているのは、成年後見を普及させようという裁判所側の政策的な狙いがあります。
 禁治産・準禁治産制度のときには、鑑定費用が高いこともあり、申立を躊躇するかたが多かったということです。
 鑑定費用を抑える代わりに、鑑定書のフォーマットを裁判所が用意し、必要最低限のことを記載すればよいシステムにしており、医師の負担も抑えているのです。

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成年後見制度5ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月17日 | 成年後見
 医師に診断を求める際には、その医師に対して、今後鑑定をひきうけていただけるかどうかも、この時期に打診しておくほうが好ましいです。
 申立てをした後の手続は、
  申立て→家庭裁判所調査官との面接→医師による鑑定→審判
と続き、医師の鑑定を受けるのが原則です(もっとも、遷延性意識障害の場合は、鑑定が省略される扱いのようです)。
 この医師の鑑定は、本来は、裁判所から鑑定を委託する形式をとるのですが、実際の鑑定医を裁判所が確保するのは容易ではないことから、鑑定することのできる医師を申し立てる側が見つけておくことが必要なのが現状です。
 交通事故の場合は、すでに医師に治療をお願いしていますから、その医師に依頼すればよいでしょう。
 医師には、「今後成年後見を申し立てると、鑑定を医師にしてもらう必要が出てくるようなのですが、その鑑定を先生のほうでしていただけないでしょうか」というようにお願いすればよいかと思います。

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成年後見制度4ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月16日 | 成年後見
 実際に後見を申し立てるにはどのようにするのでしょうか。
 まず、そもそも後見や保佐を申し立てたことのない方に、後遺症を負った方が貢献にあたるのか、それともあたらないのかを判別することは困難だと思います。
 このことは、経験のない弁護士でもおそらく同じことで、事実、私も当初は後遺症の程度を聞いても、これが貢献に当たるのか保佐なのか、法律の要件に照らせばおそらくはどちらかなのだけれども、他の可能性も否定できないという状況にありました。
 では、どうすればよいかというと、この点は、医師の判断をまず仰げばよいのです。
 申し立て書類の中には診断書を提出することになっているのですが、この診断書は、後見や保佐の申し立て専用の診断書で、診断名と財産を管理する能力がない状況なのかどうかをチェックする項目があるだけの簡単なものです。
 申し立てを検討するためには、申し立て書類一式を家庭裁判所から取得し、この中にある申立専用の診断書をもって医師に診断をしてもらえばよいということになります。
 これがまず、第1のステップです。

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成年後見制度3ー高次脳機能障害を中心に

2006年01月15日 | 成年後見
 成年後見制度を従来の禁治産・準禁治産と対比させますと、
  禁治産→成年後見
  準禁治産→保佐
ということになります。
 2000年以前は、禁治産と準禁治産しかなかったのですが、今の成年後見制度は、さらに「補助」というものがあります。
 「補助」については、私も実際に手がけたことがありませんので、今回のシリーズでは取り上げません。
 まず、成年後見から取り上げてみたいと思います。
 どういう場合に成年後見が開始されるのかというと、法律上は、
 「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」
となっています。
 法律用語というのは、とかく漢語が多く、ここでも「事理」だの「弁識」だのと日常用語としてはおよそ用いない言葉を使用していますので、この言葉を読むだけで嫌になってしまった方もいるかもしれませんが、要は、
 「精神上の障害により判断能力を欠く常況にある者」 
ということです。
 自分の財産の管理を判断する能力がない場合とお考えいただければよいと思います。
 このような状況であれば、当然、財産を管理する能力のある人についてもらわけなければいけませんから、後見人をつけましょうということになるわけです。
 後見人をつけるには、家庭裁判所の審判が必要なので、審判を求めるために申し立てをしなければなりません。


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