南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

自動車保険約款の解説本

2008年04月30日 | 未分類
 交通事故の損害賠償請求をする際には、自動車保険約款の知識が本来は欠かせません。

 しかし、約款というのは、非常に細かい字で書かれている上に(それだけでも読む気を失います)、法律的な用語で書かれており、一般の方には理解が非常に困難です。

 それでは、これを易しく解説してくれる本が出回っているかというと、この点に関する本は法律実務家向けのものですらほとんどないのが現状です。

 本格的なものとしては、
 註釈自動車保険約款 上 ・下
 鴻常夫/〔ほか〕編集 、有斐閣 、1995年3月発行
があるのですが、絶版または重版未定となっており、注文しても手に入りません。

 また、
注解交通損害賠償法 3
川井健/〔ほか〕編 、青林書院 、1996年11月発行
という本もあるのですが、これまた絶版または重版未定となっており、注文しても手に入りません。

実務に携わっている方のためのものとしては、
自家用自動車総合保険(SAP)の解説【2005年版】
保険毎日新聞社
があり、これを使用している弁護士が多いようです。

 一般の方向けにも書かれた本(東京の弁護士会の書店にも平積みとなっていましたが)としては、
  自動車保険 約款の解説・活用マニュアル
  宮尾一郎/著 、かもがわ出版 、2006年3月発行
がありますが、8,400円とちょっと高めです。

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判決期日変更への対抗手段

2008年04月26日 | 未分類
 判決期日変更に関して以前書いたのですが(→こちら)、この記事について、裁判官がする期日の変更に何か対抗する手段はないかという趣旨のコメントをいただきました。

 個別のご質問に回答をすることはこのブログではいたしませんが、私が興味のあることについてはとりあげて考えてみたいと思うので、この点について考えてみました。
 
 確かに、判決の延期は、代理人といういわば第三者の立場にある人間でも、約束違反ではないかという思いから、決していい思いはしないのですから、当事者である方が怒り心頭に発するにも気持ちとしてわからないわけではありません。

 しかし、これに対する対抗手段というのはなかなかないのが現状です。

 というのは、裁判官には職務の独立が高度に保障されているからです。
 
 通常の会社ですと、職場の上司に文句を言うとか、会社の不祥事に対して監督官庁にいうということが考えられます。

 しかし、裁判官は上司というものをもちませんし、裁判所は国会議員がメンバーである弾劾裁判所というところでないと懲戒されませんので、「監督官庁」というものがありません。

 そうすると、裁判所に対して、当方としては速やかに判決を出してほしいので、二度と期日の変更はしないでほしいという書面を提出するくらいしか私には思いつきません。

 もっとも、代理人の立場ですと、このような書面を出して裁判官が気を悪くしてもどうかなあという考えも頭をかすめますし、今までにそのようなものを出したことはありませんが。
 
 

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ひきにげ行為は刑法上どのような罪となるか

2008年04月22日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
交通事故をおこして、そのまま加害者が逃走したというような場合、加害者には、逃走したという点では
救護義務違反
という犯罪が成立します(厳密にいうと、報告義務違反という犯罪も成立するのですが、今回は割愛します)

救護義務というのは、車両の運転手がその車両の交通によって、人が死亡したり、怪我を負ったりした場合に、救護しなければいけない義務をいいます。
これをしないで逃げてしまった場合は
救護義務違反
ということになります

平成19年の道交法改正前は、この救護義務違反の法定刑は
5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
となっていました

詳しくいうとこんな条文になっています。
「車両等(中略)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、第72条(交通事故の場合の措置第1項前段の規定)に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
この条文(道交法117条)自体は、現在でもありますが
2項として
救護義務違反をしたときに
「人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるとき」
は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金にする
との条文が付け加わりました(道交法117条2項)

これにより
人の死傷が運転者の運転に起因→10年以下の懲役(又は罰金)
そうでない場合→5年以下の懲役(又は罰金)
というように、救護義務違反がわけられました(平成19年9月19日から施行)

例えば、信号のある交差点で、Aさんが赤、相手が青で、Aさんが突っ込んで相手方が怪我をした場合、Aさんが無免許運転がばれるのが嫌で逃走してしまったという場合
Aさんには過失がありますから、相手方の怪我はAさんの運転に起因するものといえるので、重い方の規定が適用され
逆に、Aさんが青、相手方が赤の場合はAさんは救護義務違反となりますが、軽い方の規定が適用されることになります


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被害者参加制度のモデル案

2008年04月20日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
中日新聞の記事からです

「被害者参加」で模擬裁判 最高裁がモデル作成

記事の内容は、
 今年中に施行される被害者参加制度のモデル案を最高裁がつくった、今後、これをもとに模擬裁判が行われる
というものです。

 被害者参加制度というのは、刑事事件の裁判で被害者が参加できるという制度です。
 すべての事件に参加できるわけではなく、参加できる事件は限定されます。
 交通事故事件関係で、どのような事件について参加できるのかについては、以前の記事(→こちら)をご参照ください。

 今回、最高裁がつくったモデルケースは
”飲酒運転による死亡事故で危険運転致死罪”
のケースということです。

 今後、模擬裁判が各地で行われていくことでしょう。

 裁判員制度の模擬裁判では、まず、裁判官、検察官、弁護士などの関係者でうちうちに行って、いろいろな問題点を詰めていき、その後、一般の方が参加するものに広げていきましたが、被害者参加制度の模擬裁判はどうなるでしょう?

 施行が今年中ということは、模擬裁判を行う期間も限られますし、関係者だけでやるのが精一杯ということになるかもしれません。

 







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犯罪被害者国選弁護人制度

2008年04月18日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 被害者参加制度について、被害者側に国選弁護人がつくことが決まりました。

 日経ネットの記事
 犯罪被害者国選弁護人制度、改正総合法律支援法などが成立


 被害者参加制度自体は、2007年6月20日、犯罪被害者の刑事裁判への参加等ができるようになる刑事訴訟法の改正などの成立により決まったものですが、被害者側の弁護人は自費で依頼するほかはありませんでした。

 これを、資力に困っている人には国選弁護人を被害者側につけることができるというのが今回の法律改正のポイントです。

 被害者参加制度は2008年12月までに施行されますので、裁判員制度(来年の5月施行)よりも実施時期が早いです。

 しかし、ほとんどマスコミにはとりあげられません。

 これは、裁判員は全国民が対象で誰が裁判員になってもおかしくないということにあるのかもしれません。
 犯罪被害者というのは、マスコミにとっては地味な話題でしかないのかもしれません。

 私は、被害者参加制度は、犯罪被害者の刑事裁判への参加という道を開いたもので、犯罪被害者にとっては画期的なものだと考えています。

 もっとも、弁護士業界でも裁判員関係の研修や模擬裁判は繰り返し行われていますが、犯罪被害者参加制度については全く行われておらず、犯罪被害者をサポートする弁護士の能力は、その弁護士の熱意やこれまでの経験に左右されることになり大きな差がでてきてしまうかもしれません。


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裁判員に心のケア制度導入の記事から

2008年04月16日 | このブログについて
 裁判員に「心のケア」・最高裁、裁判後に無料電話相談
という記事が載っていました。

 裁判員制度は殺人や強盗傷害など重大な事件を対象としたものなので、そのような事件の証拠を見、聞きしたりする裁判員にメンタル面で専門家による電話相談や無料カウンセリングを実施しようというもののようです。

 裁判員が3日ほど、しかも間接的に証拠に触れただけでも心のケアが必要であるならば、交通事故の被害者の方は、実際に交通事故に遭われ、しかもその事故の処理のためにある程度の時間を使わなければならないのですから、裁判員より心のケアが必要ということになるでしょう。

 しかし、それに対する具体的な制度というものはないようです。
 ですから、被害者自身が自分で気がついて決断するか、またはその周囲の方の勧めにより、カウンセリングを受診したり、精神科にいくなどの方法をとるしかありません。

 無料でそのようなものができる制度がない以上、自己負担で行くしかないこともあり、気軽にというわけにはいかないようです。

 もっとも、抑うつ状態になると、自殺願望なども表れ、非常に重大な結果を招くこともありますから、これに対して何らかの対応が必要でしょう。

  

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裁判官は何人で審理をするのか

2008年04月11日 | 交通事故民事
 テレビのドラマなとでは、裁判官は法廷のひな壇に、3人で並んでいるイメージがあります。
 そのため、裁判官は3人で審理をすると考えておられる方が多いのですが、
 交通事故の民事事件の一審(地裁)では、
『裁判官は1人』
であることが多いです。

このように裁判官が1人で審理にあたる事件のことを、『単独事件』と呼びます。

 裁判官が民事の単独事件を審理するには、5年以上の経験が必要です。
 では、5年未満の経験の裁判官は何をしているかというと
 『裁判官が3人であたる事件』(これを「合議事件」と呼びます)
の中の構成員を務めているのです。

整理しますと
単独事件=裁判官1人
合議事件=裁判官3人
の2つの場合がありうるということです。

 それでは、単独事件(裁判官1人)と、合議事件(裁判官3人)とは、どのように区別されるかといいますと、厳密な区別の基準は法律上はないのですが
 裁判官からみて難しい論点を含む事件
 慎重に審理を進めたい事件
は、合議事件(裁判官3人)、そうでない事件は単独事件(裁判官1人)となっているようです。

 これは、合議事件とした方が、裁判官3人が色々相談して、ことを運ぶことができる為、裁判官1人が処理するよりも、マンパワーを使うことができるからです。

 交通事故事件の場合は、赤い本等も出版されており、審理の進め方は多くの裁判官がわかっているところですので、単独事件として裁判官1人で進められることが多いのです。


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更生保護における犯罪被害者等施策

2008年04月07日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
新しい被害者のための制度として、
 昨年(2007年)12月1日から
”更生保護における犯罪被害者等施策”
が始まっています。

 「更生保護」というのは、なじみのない言葉ですが、加害者が実刑判決を受けた後、刑務所から仮釈放されたり、保護観察となったりするのですが、その仮釈放後、刑期が終了するまでの期間をいいます。

 これまで、犯罪被害者が加害者の仮釈放や保護観察について、何も意見がいえなかったのですが、2007年12月1日からの
”更生保護における犯罪被害者等施策”
によって、ある程度の道が開かれました。

 具体的には4つの制度が定められました。

1 意見等聴取制度
 ・・・加害者の仮釈放・仮退院について意見を述べることができるもの。
2 心情等伝達制度
 ・・・保護観察中の加害者に,被害者の方の心情を伝えることができるもの。
3 加害者の処遇状況等に関する通知
 ・・・加害者の保護観察の状況などを知ることができるもの。
4 相談・支援
 ・・・専任の担当者に不安や悩み事を相談することができるもの。

その詳細や問い合わせ先については、法務省のホームページに掲載されていますので、そちらをご参照いただければと思います。



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自動車保険の約款はHPでどれだけ公開されているか

2008年04月04日 | 未分類
 ”約款”というのは、自動車保険の契約をして、証券と一緒についてくる細かい字の冊子のことです。

 この約款というものは、保険契約の契約内容をさだめたものなので、法律上はきわめて重要なのです。

 たとえば、どんな場合に保険金を支払うのか、保険金を支払わない場合はどういう場合か、保険金を支払う手続きとしてはどのようなものが必要なのか、時効は何年か・・・といったようなことが書かれています。

 しかし、あまりに細かい字で読みにくいために、一般の方は、表紙以外は見たことが無いのがほとんどではないでしょうか。

 かくいう、法律家もこの約款について熱心に読んでいる方は少ないと思います。

 ところで、最近はサイトで約款を公表しているところもあると聞いたので、早速調べて見ました。

 大手損保6社の好評状況はつぎのとおりです。

東京海上日動→あり

損保ジャパン→あり

三井住友海上→あり


あいおい→あり


日本興亜→見当たりません

ニッセイ同和→見当たりません

大手ほどサイトでの公表がなされていることがわかります。
ちなみに、その他の保険会社についてもできるだけ調べてみましたら、以下とおりとなりました。


富士火災→見当たりません

共栄火災→見当たりません

JA共済→見当たりません

ネット系に力をいれているところは、さすがに約款もネットで公表されていました。

チューリッヒ→あり


アクサダイレクト→あり


アメリカンホーム→あり


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搭乗者傷害保険

2008年04月02日 | 未分類
搭乗者傷害保険というのをご存じでしょうか。

 例えば、自分の車に乗車していたときに、加害者から追突されて怪我を負ったという交通事故があったとしましょう。
 加害者に請求できることはもちろんですが、自分の車に任意保険がついているのであれば、通常、その中に搭乗者傷害保険という保険がつけられておりますので、この保険を請求することを忘れては、任意保険をかけている意味がなくなってしまいます。

 搭乗者傷害保険の中身はさらに次のようにわかれています。
  A 死亡保険金
  B  後遺障害保険金
  C  重度後遺障害特別保険金
  D  重度後遺障害介護費用保険金
  E  医療保険金(部位・症状別払)

 詳細な内容については、ここでは省きます。
 内容をお知りになりたい方は、例えば、三井ダイレクトのサイトなどをご覧ください。

 
 搭乗者傷害保険は、その名のとおり、「搭乗中」に起こった事故について請求できる保険です。
 ですから、車に「搭乗」していない場合、例えば、歩行中の事故の場合は、いかに自分の車に任意保険をかけていたとしても、搭乗者傷害保険は請求できません。

 では、自分の自動車に乗車していたときに自損事故を起こし、車外に避難したあと、後続車にひかれ死亡した場合、被害者の遺族は、被害者がかけていた搭乗者傷害保険を請求できるでしょうか?

 自損事故の時には「搭乗」していたけれども、後続車にひかれたときには、「搭乗」していないので、どちらの要素を重視するかで判断がわかれてくるケースです。
 
 このようなケースについて、実は既に最高裁判決がでています。
 過去記事でとりあげていますので、ご興味があれば覗いてみてください(→過去記事
  

 

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