南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

交通事故によるPTSD

2012年12月24日 | 未分類
 交通事故でPTSDの後遺障害が残ったと認めたケースがありましたので紹介します。

 京都地裁平成24年4月18日判決(自保ジャーナル1878号16頁)

(判決の骨子)
① PTSDによる後遺障害を認め,等級は12級を認めた。
② 労働能力喪失率,喪失期間は,いずれも赤い本における基準どおり認めた。
③ PTSDの特性等から10%の素因減額をした。

1 PTSDを正面から認めています。
 東京地裁ではPTSD認定を嫌う傾向にあるように思い,関西方面の地裁ではPTSDを正面から認める判決が出ています(神戸地裁平成17年1月18日判決交民集38巻1号90頁,京都地裁平成23年4月15日判決自保ジャーナル1854号)。
 この判決もその流れにあるものです。

2 PTSD認定されても喪失期間を基準どおりにしない裁判例もあるのですが,この判決では基準どおり67歳まで認定。
 その理由としては,
「PTSDは,一般には予後が良好で,将来症状が大幅に改善する可能性があるとされるが,原告の場合,発症から症状固定までに3年半以上経過しており,大幅改善の蓋然性が高いとはいえない」
と判示しています。

3 素因減額をするのはPTSDでは通常の手法です。
 判決では、
「PTSDは心的外傷というストレス因子と個体の脆弱性の内因が相まって発症するが,6~7割は2~3ヶ月以内に自然治癒し,慢性化する者の割合は少ない。あるいは3年以内に消失するなどとされていることが認められる。これによると原告のPTSDが慢性化したことについては,原告
の内因が参与したものと考えざるをえず,慢性化する者が少数であることからすると,公平の観点から素因減額するのを相当と判断する」
と理由を述べています。


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脳脊髄液減少症の裁判例

2012年12月17日 | 未分類
 脳脊髄液減少症の疑いが相当程度あるということで,9級後遺障害を認めた裁判例がありますので紹介します。

横浜地裁平成24年7月31日(自保ジャーナル1878号1頁)。

1 この判決は,被害者が脳脊髄液減少症であると認定したわけではありませんが,9級の後遺障害を認定しています。
 これが本判決の最大の特徴でしょう。

a.原告が脳脊髄液減少症を発症したとは確定的には認めることはできないが,その疑いは相当程度ある。
(理由)
 ① 起立性頭痛であると診断されている
 ② 厚生省中間報告基準における参考所見が複数みられる
 ③ ブラッドパッチが一定程度効果があった

b.脳脊髄液減少症との「確定」ではないが、「疑いが相当程度ある」レベルではある。だから,同症によらない可能性もあるけれども,諸般の事情を考慮すれば,原告の現在の神経症状は本件事故によるものと認められる。

以上が,この判決の考え方です。

 横浜地裁の合議での判決であり,この考え方が東京高裁でも支持されるのか注目したいところです。

 なお,労働能力喪失期間は10年間としており,基準よりも下げた形となっています。


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高次脳7級に付添費を認めた判決

2012年12月10日 | 高次脳機能障害
 高次脳機能障害で後遺障害7級のケースに,症状固定後の付添費日額2000円を認めた事案がありましたので,紹介いたします。

   東京高裁平成23年10月26日判決(自保ジャーナル1861号1頁)

 高次脳機能障害では,5級以下では付添費を認められるか,認められないかが,シビアな争いとなってくるというのが私の感覚です。
 結局,症状固定後の障害の状態がどうなのかがポイントになってきます。

 上記判決のケースでは,
 ・医師が「精神障害を認め,日常生活における身の回りのことも,多くの援助が必要である」と診断している。
 ・被害者は,外出するときには,行ったことのないところに一人で行って,場面に応じて臨機応変に対応することは苦手であるため,必ず誰かの付き添いが必要。
 ・薬の管理は母がしている。
といった状態にあったため,裁判所は,
 「日常生活動作自体はできるが,自発的にはできず,声かけが必要であり,外出時には付き添って看視することが必要であるものと認められる」
と認定しています。

 7級といっても,人によって状態は様々なわけでして,このような状態があれば付添費が認められるという一つの目安とはなるでしょう。


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交通事故と統合失調症

2012年12月03日 | 未分類
交通事故により統合失調症を発症した(事故と統合失調症の因果関係を肯定した)ケースが、自保ジャーナルに掲載されましたので、紹介します。

仙台地裁平成24年3月23日判決(自保ジャーナル1882号36頁)

当初の診断は頚椎捻挫、腰背部挫傷というもの。
事故日から8日間入院していますが、その後は通院だけです。
事故から49日後に精神科に通院開始となりました。

自賠責では、頚部について14級認定。統合失調症は相当因果関係を否定して、後遺障害とは認定されていません。

仙台地裁は、事故と統合失調症との相当因果関係を肯定。
統合失調症について後遺障害等級9級認定。
労働能力喪失期間は、症状固定後10年間のみ。
素因減額60%。

仙台地裁が相当因果関係を認めた理由は以下のとおり
1 主治医の意見(「交通事故というライフイベントが十分な強度のストレスとして統合失調症に関与した可能性がある」)
2 精神疾患の既往症なく、精神科受診歴もない
3 事故前は社会生活上、大きな問題はなかった
4 事故直後より不眠が出現し、連続して、幻覚・妄想が短期間で出現している
5 幻覚・妄想の内容は交通事故に関連するもの

事故と統合失調症との因果関係を否定した裁判例もあるなかで(東京地裁平成22年2月18日判決自保ジャーナル1829号)、統合失調症との相当因果関係を肯定した事自体は注目に値します。


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