南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

加害者の刑務所への収容状況・出所情報を知ることができるか

2009年06月15日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 加害者が刑事事件で実刑判決を受け、刑務所に収容されるということがあります。

 この場合に、交通事故の被害者が、加害者の刑務所への収容状況・出所情報を知ることができます。

 法務省のHPに
  裁判後の段階での被害者支援
ということで掲載されていますので、詳細な内容はそちらをご参照ください。

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不起訴処分の民事への影響

2009年05月18日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 「加害者の刑事事件が不起訴になっていたのですが、民事のほうに影響がありますか?」というご質問は被害者の方からよく受けます。

 加害者の刑事事件が不起訴になっても、民事の損害賠償の過失相殺というのは刑事事件とは別の視点できまりますから(→過失相殺の基準本)そういう意味では影響はありません。

 ただ、刑事事件の記録というのは、どういう事故があったかという基礎資料として民事事件でも使用します。
 実況見分調書は不起訴処分であっても取得できるのですが、その実況見分調書にあることに反論していこうということになると、これは、事故から時間が経っていれば経っているだけ難しいことになってきます。
 つまり、刑事事件が不起訴処分になったこと自体ではなく、刑事記録については民事のほうでも影響があるということになります。

 ですから、刑事事件が不起訴になったといっても、その理由が問題となります。
 怪我が軽いからなのか、刑事上過失が認められると立証するのが難しいのか、いずれの理由により不起訴なのかによっても代わってきます。
 
 弁護士はこんなことを気にしながら、刑事事件を見ています。

 なお、怪我が軽いと、検察官はすぐ不起訴処分としてしまいます(警察から検察に送られてから、早い場合で1週間程度で不起訴ということもあります。この場合、検察としては書面をみただけで不起訴処分にしています)。
 

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警察の監察課

2009年01月26日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
被害者遺族「署員が威圧」(読売新聞)

 交通事故のご相談の中には、警察官の発言や態度に不満があるというものがときどきあります。

 その中にはだいぶこれはひどいなあと思うものもなくはありません。

 さて、では、そんなときにどのような法律上の手段が取れるのかというと、実はこれといったものがないのが現状です。

 ずさんな警察官の捜査方法により被害者が損害をこうむった場合、警察相手に損害賠償請求できないだろうかとお考えの方もあるかもしれませんが、これは今のところ最高裁で明確に否定されてしまっております。

 この最高裁判決は、
「犯罪の捜査及び検察官による公訴権の行使は、国家及び社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって、犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を目的とするものではない」
と言い切ってしまっており、警察官の犯罪の捜査は、犯罪の被害者の利益のためではありませんよと言っているのです
(最高裁平成2年2月20日判決 判例タイムズ 755号98頁)

 今のところ、できるもっとも現実的な方法は、冒頭の新聞記事でも示唆されているとおり
 県警本部にある監察室とか監察課
に訴えることであると思います。

 この記事では、山梨県警の監察課が事実関係を調査し、被害者サイドの言い分に耳を傾けてくれたものです。

 しかし、被害者が正しい主張をしても、この記事のように警察が謝るということはまれなことだと思います。

 監察課は警察のお目付け役とも言うべきところですが、警察は組織体として自分達をかばうという性質も持っており、監察が正常に機能しなければ、結局は、起きたことを追認するだけの機関ということにもなりかねませんので。

 今後もこのような被害者の要請に丁寧にこたえられるかどうかが問われることでしょう。

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被害者参加制度、釧路地裁で初適用の記事

2008年12月13日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 被害者参加制度、2008年12月1日より施行されましたが、適用事件の1号は釧路地裁の交通事故事件です。

日経ネット記事

記事では、
「最高裁によると公表を了承した被害者では初の許可決定という。」
という微妙な表現になっています。

 裁判所サイドは、公表するかしないかも被害者のを了承をとっているということでしょうか。

 いずれにせよ、この制度の今後の運用が注目されます。

 被害者参加制度についての過去記事は、
”目次”
をご参照ください。



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司法解剖について

2008年12月09日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
最近の新聞に出ていた記事です。

司法解剖 「遺族への説明」是非、医師交え議論

さらに詳しくは、
司法解剖、被害者遺族に説明へ 東大法医学教室

 東大の法医学教室で、司法解剖をされた人の遺族にアンケートしたところ
  71%が「手続きがよくわからず、納得いかないままとりあえず」了承
  「解剖後に執刀医から説明を受けたかった」との要望は82%にのぼった

というもので、遺族が司法解剖について納得がいかないことが明らかになっています。

 交通事故事件でも死亡事件で多くはないですが、司法解剖が行われることはあり、司法解剖を受けたご遺族にはこの問題に直面されているのではないかと思われます。

 ”司法解剖されたこと自体を慰謝料として考慮できないか”
というご質問も受けたことがあるのですが、法のタテマエとしては、裁判所が必要を認めて許可を出して行っているのが、司法解剖なので、
「法律に定められたものなので、受忍の範囲内だ」(つまり、がまんしろ)
というように言われてしまいそうだと考えておりました。

 この記事を見て、少しでもそのような司法界の考え方が変わってくればと思いました。

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被害者参加制度、本日より施行

2008年12月01日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
被害者参加制度、本日(2008年12月1日)より施行です。

本日以降に起訴された事件について適用されます。

被害者参加制度についてのこのブログでも何回かとりあげました。

ご興味のある方は”目次”を参照していただければと思います。

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公判請求された場合、裁判所は罰金の判決ができるか

2008年10月10日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 以前、 
 「略式罰金か公判請求かはどう決まるのか」
という記事を書いたことがあります。
 
 加害者の刑事の処分で検察官が略式罰金を請求するのか、公判請求(正式裁判)をするのかはどのような事情で決まるのかについて述べたものですが、その記事にこんな質問が寄せられました。
 
 ”公判請求され、有罪が明らかな場合、刑は(執行猶予がつくとしても)必ず懲役刑以上となるのでしょうか。検察の求刑が懲役であったとしても、裁判官の判断で罰金刑になることはあるのでしょうか。”

 質問の答えとしては、こうなります。
 検察官が公判請求をしても、裁判官は、懲役刑でも罰金刑でも自分で考えたとおりに判断できます。

 実際にも、最近の判決で、検察官が懲役刑を求刑したのに、裁判官は罰金を言い渡したというケースがあります。

 仙台地裁平成20年9月19日判決は、
 宮城18人死傷事故で、助手席に乗っていて道交法違反(酒酔い運転幇助(ほうじょ))で起訴(公判請求)された被告人に対し、罰金25万円の判決をしました(検察官の求刑は懲役1年6カ月)。
 
 しかし、これはまれなケースと思っていただいた方がよいと思います。
 一般には、検察官が「このケースは、罰金ではおさめるべきではない、懲役刑を求刑する」というものが公判請求(正式裁判)になるのですから、裁判官もその考え方にのって、罰金にはしないという方が多いです。

 上記の仙台地裁判決は、検察官と裁判官の考え方が大きく分かれたケースと評価できるでしょう。



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在宅事件と身柄事件

2008年09月02日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
前回、警察官の調書偽造事件で「在宅事件」という言葉を使いましたが、この反対の言葉が「身柄(みがら)事件」です。

「在宅事件」も「身柄事件」も、いずれも刑事事件の処理方法で、被疑者(犯罪を行ったと嫌疑をかけられている人)を逮捕勾留するのが「身柄事件」で、しないのが「在宅事件」です。

圧倒的多数の交通事故関係の刑事事件は、在宅事件として、つまり被疑者(加害者)が逮捕も勾留もされません。

逮捕も勾留もされないうちに、事件が警察から検察に送られ、検察で処分が決められてしまっているので、交通事故の加害者の刑事の処分がどうなっているんだろうと、被害者が思ったころには、処理が終わってしまっているということも頻繁におこります。

在宅事件にするか、身柄事件にするかは、警察官が判断します。

交通事故事件(自動車運転過失致死傷)でいえば、結果が重大であれば逮捕する方向に行きますし、そうでなければまず在宅です。
事故後逃走した場合(救護義務違反)は、多くの場合逮捕されますが、被害者の怪我がきわめて軽い場合は、まれに逮捕されないケースもあります。

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被害者参加制度、12月1日施行へ

2008年08月25日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
<刑事裁判>被害者参加制度、12月1日施行へ…政府方針
という記事が報道されていました(毎日新聞)

 記事によると、
 「刑事裁判で犯罪被害者や遺族が被告へ質問などができる「被害者参加制度」について政府は20日、施行日を12月1日とする方向で調整に入った。被害者の声を公判に直接反映させて権利拡充を図る制度で、施行日以降に起訴された対象事件に適用される。」
ということで、まだ確定ではないようですが、政府が施行日を12月1日とすることで調整しているということです。

 施行日以降に起訴された起訴対象事件に適用されるとすれば、実際の公判記事は、年明けになりますから、実質的には2009年から動き出すといってよいでしょう。

 2009年5月までには裁判員制度も始まりますし、刑事司法関連は様々な新制度が始まることとなります。


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ひきにげ行為は刑法上どのような罪となるか

2008年04月22日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
交通事故をおこして、そのまま加害者が逃走したというような場合、加害者には、逃走したという点では
救護義務違反
という犯罪が成立します(厳密にいうと、報告義務違反という犯罪も成立するのですが、今回は割愛します)

救護義務というのは、車両の運転手がその車両の交通によって、人が死亡したり、怪我を負ったりした場合に、救護しなければいけない義務をいいます。
これをしないで逃げてしまった場合は
救護義務違反
ということになります

平成19年の道交法改正前は、この救護義務違反の法定刑は
5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
となっていました

詳しくいうとこんな条文になっています。
「車両等(中略)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、第72条(交通事故の場合の措置第1項前段の規定)に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
この条文(道交法117条)自体は、現在でもありますが
2項として
救護義務違反をしたときに
「人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるとき」
は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金にする
との条文が付け加わりました(道交法117条2項)

これにより
人の死傷が運転者の運転に起因→10年以下の懲役(又は罰金)
そうでない場合→5年以下の懲役(又は罰金)
というように、救護義務違反がわけられました(平成19年9月19日から施行)

例えば、信号のある交差点で、Aさんが赤、相手が青で、Aさんが突っ込んで相手方が怪我をした場合、Aさんが無免許運転がばれるのが嫌で逃走してしまったという場合
Aさんには過失がありますから、相手方の怪我はAさんの運転に起因するものといえるので、重い方の規定が適用され
逆に、Aさんが青、相手方が赤の場合はAさんは救護義務違反となりますが、軽い方の規定が適用されることになります


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