南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

脊髄損傷とその合併症

2009年11月30日 | 脊髄損傷
脊髄損傷については、わかりやすいサイトがいくつもあります。

独立法人労働者健康福祉機構のサイトなどもわかりやすいです。
http://www.research12.jp/sekizui/index.html


脊髄損傷の
「現在日本には10万人以上の脊髄損傷者がみえ、毎年5,000人以上の新たな脊髄損傷患者さんが発生しています。」
とされています(同サイト)

受傷原因は、交通事故が43.7%を占めています(日本脊髄障害医学会の1990~1992年の調査)

脊髄損傷は、様々な合併症を伴うものです。

「脊髄損傷のリハビリテーション」(千野直一外編:金原出版)という本では、
 ① 呼吸器合併症
 ② 関節拘縮
 ③ 化骨
 ④ 褥瘡
 ⑤ 排尿機能障害
⑥ 排便障害
⑦ 性機能障害
 ⑧ 痙縮
⑨ 疼痛
の9つの合併症をあげています。

 交通事故の損害賠償請求をしていくうえでは、脊髄損傷そのものの後遺障害のみならず、これらの合併症にどのように被害者が苦しめられているのかを見極め、裁判所に主張立証していくことが必要となるでしょう。

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交通事故高額賠償判決例(人身事故)

2009年11月26日 | 未分類
交通事故高額賠償判決例(人身事故)(pdfファイル)
http://www.nliro.or.jp/service/databank/statistics/data06.pdf
裁判例の掲載雑誌に載せられた裁判例の中から、高額賠償判決を上位20位まで紹介しているものです。

被害者の方の収入状況や個別の状況は異なりますので、被害者の方がこれを見て比較してもあまり意味を感じられないかもしれませんが、参考までに紹介しておきます。

なお、この判決の一覧表は、損害保険料率機構のホームページに掲載されているものです。
損害保険料率機構については→過去記事


交通事故発生状況の推移など、さまざまな統計が載せられています。
http://www.nliro.or.jp/service/databank/statistics/

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遷延性意識障害と定期金賠償

2009年11月23日 | 遷延性意識障害
前回、遷延性意識障害の方で生活費控除を認めた裁判例を紹介しましたが(→過去記事)、同じ判決で、定期金賠償について触れられていますので紹介します。

広島地裁三次支部 平成21年5月1日判決(確定)(自保ジャーナル1802号)

「原告(被害者)は、平均余命までの間の将来の治療費について、主位的に一時金賠償を求め、これに対し、被告らは、植物状態患者の平均余命は一般人に比べて著しく低く、植物状態患者である原告が一般人の平均余命まで生存すると認定することは著しく不合理である旨主張して、将来の治療費について、定期金賠償判決がなされるよう求める。
上記で認定した事実、証拠(略)によれば、植物状態患者の平均余命が一般人に比べて著しく低いこと、原告は、本件事故によって事実上植物状態となり、肺炎や尿路感染症を繰り返し、全身状態が非常に不安定であることが認められ、これらの事実を総合考慮すると、同原告が、一般人と同様に平均余命まで生存するものと推認することは困難と言わざるを得ない。
したがって、原告の将来の治療費については、予備的請求に基づき、定期金賠償の方法によるのが相当である。」

将来の治療費について、一括で請求できるのか(一時金賠償)、分割払いで請求できるのか(定期金賠償→過去記事参照)が問題となっています。


これは、遷延性意識障害者の平均余命が法律上問題になりうること(→過去記事参照)とも連動しています。


裁判例の多くは、遷延性意識障害者の平均余命が、一般人の平均余命と同じであると認定していますが、
今回紹介した広島地裁判決は、
 被害者が肺炎や尿路感染症を繰り返し、全身状態が非常に不安定であること
を重視して、一般人の平均余命と同じとは認められないとしたものと思われます。

 その上で、定期金賠償を認めているのですが、これは非常に珍しいことです。

 遷延性意識障害といっても、状態が非常に不安定である場合は、将来の治療費などについて定期金賠償となる可能性があることを、この判決は示しています。


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遷延性意識障害と生活費控除

2009年11月19日 | 遷延性意識障害
生活費控除(その意味内容については→過去記事)というのは、逸失利益の算定で問題となるときがあります。
多くは、死亡事故ですが、遷延性意識障害の被害者の方でも問題となります。


自動車保険ジャーナルで、遷延性意識障害の被害者の損害賠償請求で、生活費控除を認めたものが載っていましたので、紹介します(35%の生活費控除)。

広島地裁三次支部 平成21年5月1日判決です(自保ジャーナル1802号)。

 このケースは、被害者が遷延性意識障害となり、常時医療措置を施さないといけない状態、つまり、病院に常時いないと生命を維持できない状況でした。

判決の生活費控除についての説明は次のとおりです。

 「原告(被害者)は、本件事故によって極めて重篤な傷害を負い、事実上植物状態にある上、全身状態が極めて不安定であるため、24時間の人工呼吸管理と状態観察が必要な状態にあり、退院の見込みがないことが認められる。
 そして、原告の将来の生活費については、一般に必要とされる労働能力の再生産に要する生活費のうち、食費については流動食として病院における治療費に含まれ、その余の被服費、教育費、学費、遊興費、交通費、通院費、交際費等については、ほぼ支出を必要とせず、同原告の生活のために必要とされる支出は、治療費、付添看護費及び入院雑費にほぼ限られるものと考えられるから、同原告の逸失利益を算定するに当たっては、35%の生活費控除を行うのが相当である。」

 上記の判決は一般論として、遷延性意識障害者の生活費控除を認めたものではありません。
 
 裁判所は、個別のケースごとに判断をするところですから、裁判所が認める事実に従えば、生活費を控除するという判断はある程度やむをえないところでしょう。

 ただ、本当に今後病院に常時いなければならないのか、例えば、外出などは全く不可能なのかどうか(遷延性意識障害の方の状態もそれぞれで、介護者により外出できるケースがほとんどです)は正確に見極める必要があると思います。
 多くのケースでは、生活費控除はされない状態であることが多いはずです。

 この点は、弁護士にしっかり証拠をだしてもらわなければなりません。

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在宅での付添看護費(遷延性意識障害のケース)

2009年11月16日 | 遷延性意識障害
横浜地裁平成21年5月14日判決(自保ジャーナル1802号)を紹介したことがありますが(→過去記事)、その判決から、
 在宅での付添費をどう考えるか
を考えて見ます。

 被害者(遷延性意識障害)が在宅介護をするのか、職業介護をするのかについて、裁判所の判断は次のとおりです。

 「原告が自宅に戻った後については、原告妻は、原告の介護を行う意思を有しており、そのために介護用具の購入を行っていることが認められる。また、原告妻が今まで原告の入院介護を行ってきた経緯、原告妻はヘルパーの資格を取得したものの、原告の介護に役立てるためと説明していることからすると、在宅になった場合、原告妻が他に就職し、原告の介護を職業介護人に任せるとは考えられず、むしろ、近親者として主な介護を行うことを認めることができる。」

 近親者介護か職業介護人に任せるかは、このケースでは、被害者妻が他に就職するかどうか、それとも在宅介護をしようとしているのかどうかという点で判断しています。
 そして、裁判所は、近親者介護が主となると認定しているのです。

 もっとも、全て近親者介護にするというわけではありません。

 「ただ、原告妻が終日介護を行うことは、原告妻に過剰な負担を求めることになるということができること、原告長女、原告長男及び原告二女が、原告妻に代わって介護を行うことは、その年齢や原告らが就職する蓋然性が高いことから期待できないと言わざるを得ない。このような状況からすると、原告らは、原告妻が67歳までの間、基本的に職業介護人に介護を任せ、休日等に原告妻が介護を行うとするより、基本的に平日の介護を原告妻が行い、同人の加重負担を軽減するために、休日に職業介護人を依頼することが現実味があると認められる。」

 被害者の状態からして、終日介護は、被害者妻に過剰な負担を求めることとなるので、
  平日の介護→被害者妻
  休日→職業介護人
と裁判所は考えました。

 そこで、介護費用の認定に入ります。

 「原告妻の付添介護費用は、入院中の介護内容、在宅時の介護内容、介護を容易にするための介護用具を使用すること等を踏まえると、日額1万円が相当な介護費用と認められる。
 次に、職業介護人の日額であるが、休日の介護を一日二人体制で依頼することになるのが通常であり、原告らが依頼をすることを前提として調べた金額が日額3万2354円であり(証拠略)、この費用に介護の内容が夜間、長時間の介護を含むことからすると、この金額が不当に高額と認めるに足りる証拠はない。」

 近親者介護が日額1万円。
 職業介護人は日額3万2354円という算定です。

 被告からは職業介護人について、具体的な反論がでましたが、裁判所はその主張は採用しませんでした。

 「被告は、日額2万2000円とした上で、今後の高齢化社会の発展により、より安い介護が受けられるといった意見であるが、介護の担い手不足は深刻な事態になっており、その原因が介護報酬の低額なことにあるとの指摘もされていることからすると、必ずしも被告の指摘のように言うことはできず、将来どのようになるかは流動的と言わざるを得ない。」



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入院付添費(介護料)はどのようなときに認められるか

2009年11月13日 | 遷延性意識障害
 横浜地裁平成21年5月14日判決(自保ジャーナル1802号)は、職業付添い人の費用として日額3万2354円という高額な介護料を認めたとして、自動車保険ジャーナルに紹介されていましたが、判決文の中には付添費(介護料)を考える上で、重要なポイントが書かれていますので、その点をご紹介します。

 被害者は、遷延性意識障害となっております。

 入院後、在宅で介護が行われているので、
 ・入院中の付添費 
 ・在宅での付添費をどう考えるかが問題となりました。 入院中の付添費について、判決は次のように述べています。

 「病院においては完全看護が行われるため、親族による介護は親族としての情に基づくもので、介護として評価されないこともある。しかし、本件においては、原告が遷延性意識障害となっており、自ら意思を表明できない状態であったことが認められ(証拠略)、上記に認められたようは介護を原告らが行い、原告に刺激を与えたことで原告の状況が変化したことが認められるもので、その介護は、親族の情に基づくものとは言い切れず、むしろ、病院の看護の補助的役割を果たしたことが認められる。このようなことからすると、原告に入院付添いが必要であったと認めることができる。」

 ここで「上記に認められたような介護」というのは、
 ・面会を行った家族は、原告に声を掛け、手足をさすり、身体の清拭等を行っていること
 ・原告(被害者)に面会し、声掛けを行い、手足のマッサージをし、気がついたことを看護師に説明し、散歩に同伴するといった内容の介護をいいます。

 ポイントは、病院では看護師による看護が行われているので、
  病院の看護の補助的役割
を果たしたということまで立証する必要があるということです。

 別の入院先(「Eセンター」としか書かれていませんが、たぶん記載内容からしてどこかの療護センター)では、

 「入院付添費については、Eセンターにおける介護が充実しており、原告妻の行う介護の内容が散歩の付添い等であり、看護師の介護の補助といえる部分が他の病院より少ないと認められること(証拠略)、時間等から日額3000円が相当と認められる。」 と、看護の補助的役割の低さから付添費を減額しています。

 つまり、”看護の補助的役割”を果たしていたのか、どの程度果たしていたのかを被害者側は主張立証しないといけないということになります。

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