南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

精神障害。自賠で14級認定。判決では12級。

2013年07月08日 | 未分類
 交通事故を原因として精神障害になったとして,自賠では14級認定。訴え提起して判決では12級となったケースがありましたので紹介します。

 神戸地裁平成25年1月28日判決(自保ジャーナル1896号124頁)

1 このケースでは,交通事故と被害者の精神障害が因果関係があるのかが争われました。
 裁判所は,
 ① 事故前は普通に働いていたし,症状もなかった。事故後は働けなくなっているし,症状も存在する
ことを第1の理由としてあげています。
 被告は,「事故から発症までの期間が空いている」と主張したのですが,これに対しては,
 ② 事故から6ヶ月以内に原告の精神障害が発症していたことが認められるから,発症までの期間が長期間に及んでいるとはいえない
と判断しました。

 精神障害は,事故からすぐに発症するものではなく,一定期間が経過してから,受診することが普通です。
 この間隔がどのくらい空いていても認められるのかは一つの問題ですが,この裁判官は「6ヶ月以内」という線引きをしており,参考になります。

2 等級は自賠では14級でした。
 裁判所は,原告の症状を認定し,日常生活において頻繁に支障が生じているといえるので,12級であると認定しています。
 自賠の見解を割と簡単に否定しているので,この点についての自賠見解と裁判所の見方は違うと考えることもできるかもしれません。

3 なお,本件では50%の素因減額がされています。

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高次脳。自賠2級,判決で3級,介護料日額4000円

2013年07月02日 | 高次脳機能障害
高次脳で,自賠では2級認定も,判決では3級認定。症状固定後の介護料は,日額4000円という裁判例がありましたので紹介します。

 東京地裁平成25年3月27日判決(自保ジャーナル1896号53頁)

 判決で3級と認定されたポイント
 ① 公共交通機関を利用して一人で外出できている
 ② 金銭の管理をし,買い物をしたり,精算をしたりすることができる
 ③ 自分の理解力が低下していることを認識して,他者とコミュニケーションをとることができている


 自賠責が2級認定であるのに,判決は3級認定ということで2級と3級はどこが分岐点なのかを考える上では参考になります。
 2級も3級も「神経系統の機能又は精神に著しい障害」を有していることは共通なのですが,3級が「終身労務に服することができないもの」とのみされているのに,2級が「随時介護を要するもの」としているところが違います。
 2級と3級の違いはこの「随時介護の要否」ということになります。

 それでは高次脳では,具体的にどういう場合が2級で,どういう場合が3級なのかが問題となってくるのですが,上記東京地裁判決は「ポイント」のような点を理由に,本件の被害者は2級ではなく,3級のレベルにあると判断しました。

 3級であるので,随時介護とまではいえないものの,声かけや看視を主な内容とする付添介護の必要はこの裁判例でも認められており,症状固定後の介護料として,日額4000円が認定されています。



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高次脳3級介護料裁判例(症状固定後 日額5000円)

2013年07月02日 | 高次脳機能障害
高次脳3級の介護料の裁判例です。

 東京地裁平成25年2月22日判決(自保ジャーナル1895号)
 症状固定後の介護料=日額5000円

 被害者は日中は一人で自宅で暮らしているというのがこのケースの特徴です。
 ・事故後,障害者雇用枠で採用されたが,実際に働いてみると高次脳が問題となり,契約が1年で打ち切られた
 ・内縁の妻と二人暮らしで,妻がフルタイムで働いているので,日中は自宅で一人で過ごしている

 ここまでの事実ですと,1人で家で過ごせるのではないか,介護の必要はないではないかという反論を任意保険側がしてきそうです。
 実際,本ケースでもそのような反論がされたようです。

 しかし,次のようなところがポイントとなって介護料が認められています。
・自発的に必要な行動を考えて行動することはできないので,食事等の必要なことは妻が出かける前に準備している
・妻が日中行うべき課題を指示したり,勤務先から電話で声かけをするなどして行動を促している
→社会性・活動性のある生活を送るには日中も看視・声かけなどの随時介護が必要



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