南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

上告手続き(上告受理申立て手続き)

2017年10月24日 | 法的解決までのロードマップ

日本の裁判は三審制と言われます。
しかし、最高裁への道は高裁までと比べると狭き門です。上告(上告受理手続き)についてよくある質問についてまとめました(民事の訴訟事件を前提としています)。

1 高裁の判決に異議申立てをしたいのですが、どのような手続きがありますか?
⇒最高裁に異議申立てすることができます。異議申立ては、「上告申立て」と「上告受理申立て」の2種類があります。それぞれ理由が違うので、どちらの申立てをするのか、両方するのかの手続き選択を間違ってはいけません。上告申立てと上告受理申立ては、別個の手続きで申立て段階で明確に区別されているので、正しく振り分ける必要があります。

2 上告申立てにはどのような理由が必要ですか。
⇒上告申立てには「上告理由」が必要です。
上告理由のメインは、憲法違反ということです。
条文では「上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる」(民訴法312条1項)と規定されています。

3 憲法違反だけということになると、上告を申立てるのはかなり制限されることになりませんか。
⇒そのとおりです。最高裁の裁判官は全員でも15人しかおらず、3つの部(小法廷)に分かれて仕事をしていますので、全国の事件が全て来てしまうとパンクしてしまいます。
そのため、上告理由はできるだけ制限するように法律で規定されています。

4 上告受理申立てというのは、どのようなものですか?
⇒上告受理申立てというのは、「判例違反やその他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」についてのものです(民訴法318条)。憲法違反だけではあまりにも狭すぎるので、このようなケースについても最高裁が取り扱えるようにしたのです。
 もっとも、上告受理申立ての場合、最高裁が事件を受理するか受理しないかは最高裁の自由ということになっているので、その点が上告申立ては違います。申立てる側からすると厳しいところです。

5 民事事件では、最高裁では事実の問題は取り扱ってくれないのですか。
⇒どのような事実があったかということは、高裁段階までです。「事実認定」の問題は最高裁では基本的に扱いません。最高裁は「法律審」と言われ、法律問題しか基本的には扱いません。
 条文上はこんな風に書かれています。「原判決において適法に確定した事実は、上告裁判所を拘束する」(民訴法321条)。
「事実」については高裁までにしっかり争っておかないといけないということになりますが、最近は高裁では証人尋問などはほとんどやってくれませんので、一審の地裁段階でしっかりやっておかないといけないということになります。


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賃貸借契約の保証人は要注意

2017年10月02日 | 未分類
「他人の連帯保証人にはなってはいけない」とはよく言われることです。

私も子どもの頃から親にそう言われ育ちました。
その言いつけを守って、弟がアパートの賃貸借契約をする際にも連帯保証人となることを渋ったことがありましたら、それを親が聞きつけて、「弟のアパートの賃貸借契約くらい保証してやれ!」と怒られましたが・・・(笑)

なんだ例外があるなら、例外があるとはっきり言ってくれればよいのにとそのとき思いましたが、口やかましい私の親でさえ、賃貸借契約の場合は他の場合(例えば、他人がお金を借りるときの連帯保証人)とは違うという感覚が存在していたようです。
しかし、法律は他人がお金を借りるときの連帯保証人だろうが、賃貸借の連帯保証人だろうが容赦してくれません。
しかも、賃貸借契約の連帯保証が怖いのは「更新」されても保証人としての責任を負わなければならないからです。

賃貸借契約が更新されたら、それ以降は保証人としての責任を負わないと思っていませんか。
それは甘い考えで、保証人の責任は更新してもつきまとってきてしまいます。

これは、最高裁がはっきりと結論していることです(最高裁平成9年11月13日判決)。
最高裁のケースは、次のようなものでした。

弟が大家さんからマンションを借りました。契約は昭和60年からで、このときの家賃は月26万円でした。お兄さんはこのとき弟の連帯保証人となりました。

2年後(昭和62年)、契約の更新のときには、お兄さんは賃貸借契約書には署名押印はしていません。不動産会社からも「引き続き連帯保証人としてお願いします」などという連絡一つありません。つまり、更新契約は、弟さんと賃貸人だけで行われ、お兄さんには全く知らされませんでした。

さらに、2年後(平成元年)、更新され、賃料は月額31万円となりました。

またさらに2年後(平成3年)、更新され、賃料は月額33万円となりました。

平成元年も平成3年もお兄さんには同じく何の連絡もありませんでした。

お兄さんに連絡がきたのは、平成5年になってからでした。お兄さんは「弟さんが800万円以上滞納しているから、連帯保証人として支払って下さい」ということをいきなり告げられたのです。

お兄さんとしては、支払えと言われても納得ができません。賃貸人から支払うよう裁判を起こされました。地裁でも高裁でもお兄さんは連帯保証人として支払えという判決です。納得できなかったお兄さんは最高裁まで争いました。

 

最高裁の結論ですか?
残念ながら、お兄さんの負け。つまり、お兄さんは連帯保証人の責任を負いなさいというものです。

お兄さんがあまりに納得しなかった為か、最高裁は理由を詳しめに書いています。
わかりやすく言うと、こんな感じになります。

 

“建物を借りて住むということになると、ある程度長期間住むのが普通ですよね。法律上も賃貸人の方から賃借人を追い出すってのはなかなか難しいんです。保証人になる方は、この辺のことは当然ご存じですよね。いや、知らないとしても、そういう予測はできますでしょ。ですから、更新があってもその更新のときに連帯保証人の署名押印がなくても、保証人は更新の後も、責任を負ってもらわければなりません。それが原則です。
例外はありますよ。ある期間しか責任を負わないというようなことがはっきりと契約書に書いてあれば例外として認めます。はっきりと書いてないと例外とは認めません。
え?例外の範囲が狭すぎるですって?あくまでも例外なんですから、そう広く認めるわけにはいきませんよ。「特段の事情」が必要です。もちろんそれを立証する責任は保証人の方ですよ。”

 

どうですか?
以上が最高裁の考えているところです。
あまりにも一般人の感覚とは別なので、びっくりされると思いますが、残念ながらこれが最高裁の結論です。
ということで、賃貸借契約でも連帯保証人になるのは非常に怖いことなのです。

請求される賃料が多くならないようにするには、定期的に未払いがないかどうかを確認するほかありません。
最高裁のケースも放置していた期間が長かったために、800万円以上の金額に膨らんでしまっているからです。
やはり、連帯保証人は怖いということを肝に銘じておかれた方がよいです。


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