南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

刑事事件の処分では当初の診断書が重視されている

2007年04月30日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 先週は、刑事事件での検察官の不起訴処分にまつわる話をかいたところ(先週の記事はこちらです)、これをご覧になった方が、この方法で検察官から不起訴理由を書面で取得したというご連絡をいただきました。

 その理由というのが、「業務上過失傷害罪は成立するが傷害の程度が比較的軽度である」ということでした。

 日本では検察官が、被疑者(犯罪を犯したという疑いをもたれている人)を起訴する権限をほぼ独占しています。
 しかし、検察官はすべての被疑者を起訴するわけではありません。
1 犯罪が成立しない又は証拠で立証できない
ものについては、起訴のしようがありませんので、起訴せず、不起訴とします。

 犯罪が成立するものについてもすべて起訴するのではなく、
2 起訴する必要性がないというとき
は、起訴しなくてもよいという権限を検察官に与えています。
 これは、刑訴法248条に根拠がありまして、
「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況により訴追を必要としてないときは、公訴を提起しないことができる」
という条文となっています。

 先ほどの
「業務上過失傷害罪は成立するが傷害の程度が比較的軽度である」
というのは、
1 業務上過失傷害罪という犯罪は成立するし、証拠で立証もできる
2 しかし、傷害の程度が比較的軽微であるので、業務上過失傷害罪としては軽い部類に入るから起訴しない
という考えであるといえるでしょう。

このような不起訴の仕方を、
 ”起訴猶予”
といいます。

 交通事故犯罪である業務上過失傷害は年間相当な件数が起きていますから、これをすべて起訴したら、検察や裁判所の処理容量を超えてしまう、また、業務上浄化室傷害とはいえ起訴されて有罪となれば前科となりますから、国民の多くが前科をもつことになる、そんなことを避けたいために軽傷事案については、検察官は起訴猶予(不起訴)にすることとなっています。

 はたしてそれがよいのかどうか、その政策がどのような影響を与えるかについては、次回にも考えていきたいと思います。


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検察審査会の議決に将来的には拘束力が生まれます

2007年04月27日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回は、検察審査会の議決の内容について説明しました。
 最後の方で、「不起訴不当」と「起訴相当」という、検察官の処分に反対する決議ですが、全国で年間約125件されており、そのうち、検察官が、起訴をしたというのが年間約30件です。
ということをお話ししました。

 これを結構、検察官も反省して起訴しているんだなあと見るのか、3件に2件も検察審査会のいうことは聞かないんだから、検察官もかなり慎重なんだなあと見るかは見解のわかれるところでしょうが、ここからおわかりのとおり、
  検察官は検察審査会の議決を聞く義務がありません

 検察審査会が「起訴相当だ」といったところで、検察官が「いや、改めて捜査をしてみましたが、これを起訴するのは無理です。裁判所に起訴したとしても、無罪になってしまう可能性がある。だから、起訴しません」と考えて、起訴しないということは法律上オーケーなのです。

 つまり、検察官は検察審査会の議決に拘束されません。
 拘束されずに、自由に(といっても、検察庁内部の問題はありますが)起訴、不起訴ができるということになっています。

 このようなことでは、検察審査会という市民の考えが反映されないではないか!ということで、法律が改正されまして、2009年5月までには検察審査会の議決に拘束力を生じさせる、つまり、検察審査会が起訴すべきだと議決したときは起訴をする効力をもたせるということになりました。 
 ただ、これは2009年という再来年の話ですので、それまでは現在同様、議決には拘束力がなく、検察審査会の議決はいわば「参考」扱いになります。

 2009年5月までというのは、裁判員制度が始まるときなのですが、裁判員制度は大々的に宣伝されておりますし、それなりに関心が払われておりますが、この検察審査会の制度改正については全くといっていいほど知られておりません。

 弁護士ですら、この制度改正を知らない人もいるぐらいですから、一般の方が知らないのも無理もありませんが、被害者側としては非常に重要な制度改正ですので、記憶の片隅にでもとどめておいていただけるとよいのではないかと思います。
 
コメント (1)
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検察審査会の議決の内容

2007年04月25日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回検察審査会についてお話ししてきましたが、この制度被害者サイドから見ると非常に重要な制度ですので、もう少し詳しく説明いたします。

 検察審査会では、検察官の不起訴処分が妥当なのかどうかを審査します。
 そして、以下の3つのうちのどれかを決議します。
1 不起訴相当
2 不起訴不当
3 起訴相当

 つまり、検察官の不起訴処分は妥当である、仕方ないということであれば、検察審査会としては、検察官の不起訴処分は間違っていない、この事件は不起訴で仕方がないんだという決議をします。
 これが1の「不起訴相当」です。
 「不起訴」が「相当」なわけですから、これは検察審査会が検察官の考えを追認したといえるでしょう。

 審査会で審査したところ、検察官の処分は誤っているとの考えでまとまることがあります。
 ただ、今のところの証拠では起訴するにはちょっと足りない、もう少し捜査をして証拠を集めてみないと起訴にまではいかないだろうというときは、2の「不起訴不当」という議決をします。
 これは「不起訴」は「不当」だけれども、まだ起訴するまでには至らない、起訴するまでには証拠が不足だと考えるときにだされます。
 
 そして、今のところの証拠で起訴できるではないか、それなのになぜ起訴しないのかというのが3の「起訴相当」です。
 審査会としては、今の証拠で十分起訴できるではないか、起訴しないのはおかしいではないかということです。

 以上をまとめますと、検察官の処分にオーケーをだすものが、「不起訴相当」
ダメ出しをするものが、「不起訴不当」と「起訴相当」で、その中でも「起訴相当」の方が検察官を批判する度合いは大きいということになります。

 このように、「不起訴不当」と「起訴相当」は検察官の処分に反対する決議ですが、これは全国で年間約125件されています(1999~2003年の平均)。
 そのうち、検察官が、やはり改めて捜査してみたところ、起訴をしたというのが年間約30件です。
 つまり、検察審査会から戻されたうちの、3件に1件が起訴されるという数字になっています。




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検察官の不起訴処分と検察審査会

2007年04月23日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 最近、相談を受けておりますと、交通事故の被害者の方が、加害者の刑事事件の処分に興味をもつことが増えてたように思います。
 もっとも、加害者の刑事処分は被害者が知らないうちになされてしまう場合も多いので、今回は、加害者の刑事処分について知る方法についてです。

 被害者側が事件の担当の警察官は必ず知っていると思いますが、警察官の仕事は捜査をして検察庁に事件を送致する(これを「送検」といいます)のが仕事なので、どのような処分がなされたかは把握していないこともあります。
 そこで、どのような処分がなされたかは、その事件を担当している
  検察官
に教えてもらう必要があります。
  
 担当の検察官が誰かということは、担当の警察官に連絡すれば、検察庁の連絡先と担当の検察官の名前は教えてもらえるはずです。
 検察官宛に電話をすれば、検察事務官といって秘書役をしている事務方が対応してくれますので、その方に聞けばできる範囲で教えてもらえます。
 これらは検察庁が定めている被害者等通知制度実施要項に基づいて行われています。

 さて、ここで不起訴となってしまった場合は、被害者はどのようなことができるでしょうか。

 まず、不起訴となった理由を調べることが大事です。
 それを調べるためには、取得できる資料は取得しておくべきです。

 不起訴になれば、検察官手持ち証拠のうちごく一部ですが、検察官が開示する扱いとなっていますから、開示を受けられるものはすべて受けて下さい。
 交通事故事件では実況見分調書は開示される扱いです。
 詳細は、被害者等に対する不起訴記録の開示について、検察庁のホームページを参照してください。

 検察官の不起訴処分に対しては、
  検察審査会
というところに申し立てをすることができます。

 これは、裁判所におかれているもので、実際に審査をするのは抽選で選抜された一般の方です。

 2009年から裁判員制度が始まることになっておりますが、検察審査会ではそれに先駆けて一般の方が司法に関与しているのです。
 検察審査会は地味な存在なので、このことはあまり知られていませんが、市民が司法に関わるという重要な役割を果たしているものと評価されています。
  
 検察審査会については、さらに詳しく知りたい方は、
最高裁のホームページの検察審査会の説明
もご参照ください。

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大手損保6社と保険料収入

2007年04月20日 | 未分類
 先日新聞を見ていましたが、2006年度の損保各社の保険料収入がでていました。
 そのうち、自動車保険料の収入については、大手6社で、合計3兆655億円で前年比0.2%減ということです。

 減少した理由としては、新車販売が低迷したためと解説されていました。

 このように自動車保険でいうと、収入は減少しており、会社としてみれば、経費を削る→支払いを抑えるという流れは今後も続くのではないかと思っております。

 ところで、大手損保6社の自動車保険料収入はどのくらいかといいますと
東京海上日動 8744億
損保ジャパン 6668億
三井住友海上 5585億
あいおい   4695億
日本興亜   3347億
ニッセイ同和 1616億
です。

 これをみるとおわかりのように、大手損保6社といっても、その規模が拮抗しているわけではなく、東京海上日動がダントツの一位であるということがわかると思います。

 



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損保会社の不払い問題

2007年04月18日 | 未分類
 損保会社の不払い問題がクローズアップされています。

 この4月13日には、いわゆる第三分野の関係ですが、損保各社が業務改善計画を提出しました。
 これを受けて金融担当相は

「保険契約に対する信頼を回復するため、保険会社にとって適切な保険金支払いがもっとも基本的かつ重要な業務であるということをあらためて肝に銘じてもらいたい」と指摘。その上で「今回の改善命令や報告を機に、今までとは違う新たな保険業界のあり方、契約者保護の観点がはっきり出されてくることを期待している」と語った。

ということです(ロイター記事より→こちら

 このように金融担当大臣が、「契約者保護」ということをいわないといけないほど、保険業界は契約者保護が徹底していない業界となっています。

 契約者が保護されないのですから、対立当事者である交通被害者への対応はよりひどいものとなることが容易に予想されるところですし、私も被害者サイドから損保の行動を見ていますが、あまりにひどくてあきれかえるものもあります。

 任意保険会社は加害者の同意を得て、被害者と折衝を行っています。
 これは自動車保険の約款に書いてあります。

 参考までに条文をあげておきますと、

 自家用自動車総合保険普通保険約款 第1章賠償責任条項 5条1項

「被保険者が対人事故にかかわる損害賠償の請求を受けた場合,または当会社が損害賠償請求権者から次条の規定に基づく損害賠償額の支払の請求を受けた場合には,当会社は,当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において,当会社の費用により,被保険者の同意を得て,被保険者のために,折衝,示談または調停もしくは訴訟の手続(弁護士の選任を含みます。)を行います。」

これが、「示談代行」というものの規定です。

 損保会社は、内閣総理大臣の免許を受けて保険業を行う者であり(保険業法2条2項)、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、行うことができません(同法3条1項)。

 つまり、営利を目的とした株式会社の形式をとっているとしても、その業務については一種の公共性、公益性が要求されるのではないかと思います。

 これらが徹底されない限り、被害者が適正な権利を保護されるという世の中にはならないと思います。



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慰謝料増額事由

2007年04月16日 | 交通事故民事
 悪質な交通事故については、被害者側の慰謝料を増額させる場合があることについては、これまでも書いてきたところですが(「慰謝料の増額」)、どのような場合に慰謝料を増額させるかについては、赤い本でもまとめられています。

 赤い本によれば、
「加害者に故意もしくは重過失又は著しく不誠実な態度等がある場合、慰謝料を増額することがある」
とされております。

 「故意」とか「重過失」とかいう法律用語が出てきて、少々わかりにくいかもしれませんが、「故意」というは、わざと交通事故を起こした、被害者がけがを負う、死亡するということがわかっていて事故を起こしたというような場合です。
通常の交通事故ではあまりこういうケースはありませんが、最近では刑事事件で、殺人未遂事件として立件されるものもあり、そういう場合は「故意」にあたります。

 「重過失」というのが、またわかりにくいですが、赤い本は重過失の内容について解説してくれています。
 
「無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに赤信号無視等」

です。

 こういう事情があれば、裁判所が慰謝料増額を認めていることはほぼ確定しています。
 しかし、気をつけなければならないのは、逆にこの中に入らない場合は、慰謝料増額を認めない方向性で裁判所は考えるということです。
 たとえば、「スピード違反」だけでは、裁判所は増額事由としては認めません。
 「著しいスピード違反が必要です。
 たとえば、制限時速50キロのところを、100キロで走っていたら、著しいスピード違反でしょうが、60キロだと著しいスピード違反とまではいえないというように考えるわけです。



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弁護士費用を自分のかけている自動車保険から支払ってもらう

2007年04月13日 | 交通事故民事
 被害者の方が自分で依頼する弁護士の費用のうち、ある程度のものについては、加害者に損害賠償請求できるということについては、以前の記事
 「弁護士費用
で書いたところですが、あくまでも加害者に請求して支払いを受けられるのは判決が確定した後ということになります。

 依頼する場合は、弁護士には通常、着手金といって事件を依頼するときに必要な手数料を支払わなければなりませんから、その費用をどのように支払うのかということが問題になってきます。

 このような場合に自分がかけている自動車保険に、
 弁護士費用等担保特約
がついていれば、弁護士費用を自分がかけている保険会社が支払ってくれることが可能です。

 この特約がついているかどうかは、自分のかけているかけている自動車保険の保険証券を見ればわかるようになっています。

 また、被害者本人がかけていなくても、被害者の家族のうち誰かが自動車保険をかけている場合に、この特約がついていれば、弁護士費用を支払ってもらえる可能性がありますので、保険会社や保険の代理店に問い合わせてみてください。

 弁護士費用等担保特約は保険会社によって異なる可能性がありますが、私がかけている自動車保険の約款では、上限は被保険者1名について300万円と定められていました。

 なお、約款(やっかん)というのは、保険証券と一緒に送られてくる細かい字で記載されているもので、自動車保険契約の内容となるものです。



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訴訟費用は敗訴側の負担になります

2007年04月11日 | 交通事故民事
 前回、訴訟費用について話しましたが、今回はその続きです。
 前回をごらんになりたい方は→こちら

 前回にも書きましたが、
 判決の主文は、
1 被告は、原告に対し、金**円及び平成*年*月*日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え
2 訴訟費用は被告の負担とする
というような形で書かれます。

 訴訟費用のほとんどは印紙代と理解していただければ(ただし例外はあります)・・・というお話をしましたが、この訴訟費用は敗訴側、つまり、裁判に負けた側の負担となります。

 上の判決の例文であげた
 「訴訟費用は被告の負担とする」
というのは、訴訟費用が全部被告の負担の場合で、原告が全面勝訴したときにはこうなります。
 
 それでは、なにをもって、勝訴とか敗訴とかを判断するのかといいますと、交通事故の損害賠償の場合は、
 原告側の請求額と裁判所が認めた金額
を比較してだします。
 原告側の請求額=裁判所が認めた金額→原告側の全面勝訴(被告側の全面敗訴)
 原告側の請求額が全然認められない→原告側の全面敗訴(被告側の全面勝訴)
ということになります。

 ところで、交通事故の損害賠償の場合は、原告側の請求額の一部は裁判所が認めるが、そのほかの部分は認めないということがありえます。
 たとえば、原告は5000万円を請求したのに、裁判所は2500万円の限度でしか認めないというような場合です。

 こういう場合は、
  裁判所が認めた金額÷原告側の請求額
を計算して、その割合で訴訟費用を負担することになります。
 先ほどの例ですと、
 2500万÷5000万=1/2
ですから、原告側と被告側で1/2ずつ訴訟費用を負担するということになります。 


 

 

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弁護士費用

2007年04月09日 | 交通事故民事
 訴訟を依頼するにあたって、弁護士を依頼すれば、弁護士への手数料(弁護士費用)がかかります。

 どのくらい弁護士費用を支払わなければならないのか?というのは、被害者側としては一番気がかりなところだと思います。

 現在、弁護士の手数料というのは、弁護士によって自由化されており(昔は、弁護士会が手数料の基準を規定していました)、私の基準は
 こちら
に記載してあるとおりです。

 さて、この弁護士費用、加害者側に請求できるのでしょうか?
 これは、法律上できることになっています。ただし、全額ではありません。

 赤い本では
「弁護士費用のうち、認容額の10%程度を事故と相当因果関係のある損害として加害者側に負担させる」
とあります。

 具体的にいいますと、たとえば、損害の元金5000万円の請求をして、その請求が判決によって全額認められたとします。このような場合、裁判所は赤い本の基準に乗っ取って、500万円の弁護士費用の上乗せを認めます。
 ですから、総額は5500万円(5000万+500万)ということになります。

 しかし、実際に弁護士に支払う金額は(以下は架空の試算であり、ケースにより、また弁護士により異なります)
 弁護士への着手金(当初払う手数料) 100万円
 弁護士への報酬金(事件終了時に支払う手数料) 550万円
の合計650万円だったりします。

 つまり、実際に支払う費用は650万円であるけれども、そのうち500万円については、加害者側から回収ができるということです。
 
 

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