goo blog サービス終了のお知らせ 

南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

鳥海秀七代言人の業務日誌

2020年06月30日 | 鳥海代言人業務日誌

橋本誠一先生が翻刻した「市原郡村々民事々件諸用留」についてブログ記事を書いたことがあるのですが、ふと思い出してその翻刻が納められている「明治初年の裁判ー垂直的手続構造から水平的手続構造へ」を再び手にとってみました。

 同書を読みながら、「市原郡村々民事々件諸用留」とググってみましたら、先生の翻刻は、無料でダウンロードすることが可能なんですね(正確には、「ある代言人の業務日誌: 千葉県立中央図書館所蔵「市原郡村々民事々件諸用留」」。
https://shizuoka.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=8837&item_no=1&page_id=13&block_id=21

 この業務日誌を書いた代言人は、市原郡(現在の千葉県市原市)在住の鳥海秀七氏。明治7(1874)年5月1日から始まっていますが、内容からすると、業務日誌というよりは、事件の記録とでもいうべきもののようです。

 1874年5月1日は金曜日なのですが、「休庁」とあり、裁判所は閉まっています。しかし、翌5月2日(土)も3日(日)も裁判所で仕事をしているので、どうやら裁判所は土曜とか日曜とか関係なくやっていたようです。5月1日の次の休庁日は6日(水)で、その次は11日(月)なので、4勤1休体制のようです。
官公庁で土曜半休・日曜休日制が実施されたのは、1876(明治9)年で、それ以前は、1868(明治元)年9月の太政官布告により、31日を除く1と6のつく日を休日としていたということですから、千葉裁判所もこの太政官布告に従っていたことがわかります。

「5月2日 午前8時頃裁判所へ出る。着御届申し上ぐ。」とあります。
8時には裁判所は開いていたようです。
裁判所に出頭したら、「着御届」というものが必要だったようです。鳥海氏はこの後も頻繁に裁判所に出頭→着御届と書いています。

5月2日の記載の続き。「午後4時頃まで控えおり候ところ、脇屋様御掛りの分、一同明日まで罷り出るべく」と裁判所から言われたとの記載があります。
午前8時から待たされて、午後4時になって初めて「掛りが脇屋の分は明日来るように」と言われたということ。私なら、これきっと怒ると思うんですが(というよりも、4時になるまでに何か裁判所にいうと思います)、鳥海代言人は「御掛り様、ご病気にてご出勤のなき様子に御座候」―掛りの脇屋様が病気で出勤していない様子だーと淡々と書くだけです。
今では考えられないノンビリさということなのかもしれません。裁判所の方でも平然と待たせていたのでしょう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「教育分野における法曹有資格者の活用について」

2020年06月25日 | 地方自治体と法律

 自治体法務研究2020年春号で「教育分野における法曹有資格者の活用について」という論考が掲載されておりました(土井健太郎弁護士)。

 明石市は市長が弁護士であり、自治体内弁護士の採用に熱心なところです。教育委員会専属で弁護士を配置している自治体は、明石市しかないのではないかと思われます。貴重なレポートとして、要旨を紹介します。

・兵庫県明石市全体では10名の弁護士を市で雇用しており、教育委員会専属で1名弁護士を配置している。
・教育委員会各課及び学校からの相談を取り扱う。
・導入当初の平成27年度の相談件数は年間250件であり、平成30年度には300件となった。
・相談内容
①児童生徒の問題行動、親子の問題、いじめ・児童虐待・不登校、
②保護者対応、教員の負担軽減と健康管理、
③体罰・ハラスメント・指導上の問題などへの対応、
④学校事故への対応、
⑤学校におけるコンプライアンスの実現と紛争予防。
・相談方法は、電話、メールで対応することもあり、資料作りは不要としているとのことです。

 土井弁護士は、教育分野における法的需要は、「児童生徒のいじめなどの典型的な教育紛争のほか、学校用務員や給食調理員を含む教職員の労務管理、PTAや教職員組合などの各種団体との調整、校舎や備品の管理といった、教育活動を支える土台の部分」であり、「これらの相談が全体の件数の相当部分を占めている」と指摘しています。

 スクールローヤーというと、困難な保護者対応やいじめ・体罰事案の調査にスポットが当たりがちですが、実際の法的な需要がどのあたりにあるのかがわかる貴重な指摘であると思います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

和解事例1643から和解事例1650

2020年06月12日 | 原子力損害

2020年5月1日、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)から和解事例が公表されました(和解事例1643から和解事例1650まで)。今回は、1647から1650までの和解事例を紹介いたします。

1647=自主的避難等対象区域(福島市)の生活費増加分に関するもの
1648=地方公共団体が所有する不動産(土地)の財物損害に関するもの
1649=旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)の日常生活阻害慰謝料に関するもの
1650=居住制限区域(浪江町)の生命身体損害等に関するもの

和解事例(1647)
 自主的避難等対象区域(福島市)に居住する申立人らについて、原発事故前は畑で自家消費のための野菜を栽培していたが、原発事故後に行った畑の除染の状況、除染後の放射線量の検出の状況のほかこれらの事情に照らして野菜の栽培を再開することができないこと等を考慮し、平成24年1月分から平成27年3月分までの生活費増加分として野菜購入費用25万3500円が賠償された事例。

和解事例(1648)
 地方公共団体が所有する不動産(土地)の財物損害について、帰還困難区域内の土地については全損として評価した額が、避難指示が解除された区域内の土地については申立人の行政財産使用料条例による使用料相当額に利用阻害期間(避難指示期間。公営住宅の底地等、個別に避難指示期間に1年を加える不動産もある。)を乗じた額(ただし、本件事故前から分譲申込みを受けていた不動産については、全損として評価した額)が、賠償された事例。

和解事例(1649)
 旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)から避難した申立人ら(祖父母、父母、子2名)の日常生活阻害慰謝料について、申立人父の就労先が避難先に所在していたこと等を考慮して、申立人ら全員について平成24年9月以降も避難を継続したことの合理性を認め、同月分から平成26年3月分まで月額10万円が賠償されたほか、申立人祖父について平成23年5月分から平成23年9月分まで、申立人父について平成23年3月分から平成23年9月分まで家族別離が生じたことを考慮しそれぞれ月額3万円が、申立人母について家族別離が生じたこと及び乳幼児1名の世話を行ったことを考慮して平成23年3月分から平成25年3月分まで月額3万円ないし6万円が増額して賠償された事例。

和解事例(1650)
居住制限区域(浪江町)から避難した申立人夫婦について、1.避難生活により腰痛、めまい症等が生じた申立人夫の通院慰謝料として、直接請求手続における既払金33万1800円とは別に79万5200円が追加して、2.避難生活により過活動膀胱に罹患するなどした申立人妻の通院慰謝料として、直接請求手続における既払金24万7800円とは別に56万7200円が追加して、3.申立人夫婦の平成23年3月分から平成30年3月分までの日常生活阻害慰謝料(増額分)として、申立人夫は身体障害等級4級の認定を受けており、また、申立人妻はそのような申立人夫の介護をしながらの避難を余儀なくされたこと等を考慮して、直接請求手続における既払金127万5000円とは別に233万5000円が追加して、それぞれ賠償された事例。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

千葉市の債権管理の取り組み

2020年06月11日 | 地方自治体と法律

千葉市の債権管理の取り組み等について市長が2019年の議会で答弁していました。

(ポイント要約)
・2012(H24)年4月 千葉市債権管理条例施行。同時に債権管理対策本部設置。
・2013(H25)年4月 債権管理課設置。同課では、高額困難案件を各債権の所管課から引き継ぎ、滞納整理を行う。
・市全体の滞納額:2011(H23)年度217億円⇒2018(H30)年度127億円
もっとも、同年度に不納欠損額19億円超。
・時効期間の満了間の満了に至った私債権など、明らかに徴収不能である非強制徴収債権については債権放棄可能。これにより、累積していた徴収不能な債権を放棄し、新規の事案への取り組みを強化した。
 ・一方、滞納が発生した場合には、早期に滞納者と接触し、滞納整理を進めることが原則ですが、催告書の送付や架電を行っても滞納者との連絡がとれず、生活や財産状況が不明のまま手続が進まず、時効期間の満了を迎えているケースもある。

(答弁内容)
令和元年第4回定例会(2019-12-09)
◯市長(熊谷俊人君)
債権管理の推進についてお答えをいたします。
 まず、条例制定後の債権管理の取り組みや成果についてですが、平成24年4月に千葉市債権管理条例を施行し、債権管理に関する事務処理を明確にし、台帳の整備を徹底するとともに債権放棄について定めました。条例に基づき時効管理を徹底するとともに、滞納者の納付資力を見きわめた上で滞納整理を進めることにより、適正な債権管理が推進されました。
 また、条例の制定とともに、横断的な取り組みにより全庁─丸となって債権管理を推進するため、債権管理対策本部を設置し、毎年度、徴収率等の目標を設定し徴収を進めるとともに、徴収率向上のための対策について検討を行ってまいりました。
 平成25年4月には、債権管理に関する総合調整や指導を行う債権管理課を設置し、高額困難案件を各債権の所管課から引き継ぎ、より一層、効率的な滞納整理を進めております。これらの取り組みにより、条例施行前の23年度に217億円あった市全体の滞納額は、毎年度着実に縮減され、30年度には127億円となっております。しかしながら、時効期間の満了等で徴収できなくなったことによる不納欠損額は19億円を上回る状況にあり、その縮減が課題の一つとなっております。
 次に、条例の規定による債権放棄についての運用状況と評価についてですが、条例では、あらゆる手段を尽くしながらも、時効期間の満了に至った私債権など、明らかに徴収不能である非強制徴収債権について、債権管理の効率化の観点から放棄できることとしております。これにより、累積していた徴収不能な債権を放棄し、新規の事案への取り組みを強化することが可能となり、各債権の徴収率の向上が図られました。
 一方、滞納が発生した場合には、早期に滞納者と接触し、滞納整理を進めることが原則ですが、催告書の送付や架電を行っても滞納者との連絡がとれず、生活や財産状況が不明のまま手続が進まず、時効期間の満了を迎えているケースもあります。滞納者の所在不明などによるこのようなケースの発生を防ぐためには、滞納整理の早期の着手を進めることが必要であると考えております。
 次に、債権管理をさらに推進するための今後の取り組みについてですが、来年10月から、市税、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料、保育料、下水道使用料の強制徴収6債権について、一元的に管理する統一滞納管理システムを導入し、統一滞納整理組織を設けて徴収を開始いたします。
 統一滞納整理組織においては、差押さえ処分等を中心にした滞納整理を進め、市税以外の5債権についても滞納処分の増加による徴収額の増を見込むとともに、システムの機能を活用して時効の管理を推進し、不納欠損額の縮減を図ります。一方、各債権の所管課は、催告や滞納処分等を実施し、現年度分の徴収に注力してまいります。
 また、滞納処分ができず、徴収の手続に時間を要する非強制徴収債権については、口座振替の積極的な勧奨などにより滞納を未然に防止するよう努めるとともに、滞納整理の早期の着手により不納欠損額の縮減に努め、コールセンターによる電話催告、サービサーや弁護士等への民間委託による徴収対策を積極的に実施してまいります。今後も、債権管理対策本部を活用して、全庁─丸となって債権管理の推進に努めてまいります。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

対行政暴力への自治体の対処例(富山市)

2020年06月06日 | 地方自治体と法律

 対行政暴力への富山市の対処例です。

(市議会での答弁からの要約)
・市長自ら議会で「基本的に、職員の安全を守るというのは、私の重要な使命の1つだと認識しています」と職員の安全は重要なミッションだと表明しています。
・昭和57年から継続して、危機管理について高度な知識や専門性を有する警察官に市役所に出向してもらっている。
・平成29年11月に、従来の体制を強化し、窓口応対を行う所属の課長代理等で構成する富山市行政対象暴力等庁内情報連絡会議を設置。
・同連絡会議では、暴力行為等により要求の実現を図る行為ですとか、正当な理由なく職員に面会を強要する行為などの6つを不当要求行為等と定義して、これらの行為に関する情報交換や対応方針について協議をしている。
・同連絡会議の諮問機関として、警察OBの防災危機管理統括監、弁護士資格を有する法務専門監等で構成します行政対象暴力等対策検討チームを設け、必要に応じて個別事案の対策、対応を検討している。
・同連絡会議発足以来10カ月余りで、本庁舎、出先機関を合わせて約30件を不当要求行為等として認定。
 主な事案。要望に対する回答を強要して長時間窓口に居座り続けたため、警察へ通報の上、不退去罪として現行犯逮捕に至ったもの。情報開示の事務に当たっていた職員に暴行をしたため、職員が現行犯逮捕したもの。
・平成29年11月から令和元年10月までの2年間に76件。1年目が28件、2年目が48件。
・2年目が20件増加しているのは、不当要求行為等の事案を担当課やその職員が抱え込むことなく、行政対象暴力等対策検討チームへ相談して対応要領を検討するなど、組織的に対処する取組みが徐々に浸透してきたことによるものと考えられる。

(市の答弁)
平成30年9月定例会( 2018年9月13日)
市長(森  雅志君)
 基本的に、職員の安全を守るというのは、私の重要な使命の1つだと認識しています。昔、私が初めて就任したころは、あまり具体的には申し上げられませんが、例えば競輪ですとか区画整理事務所ですとか、クレーマーがたくさんいて、職員がかなり悩んでいる時代がありました。これを解消するということを大きな目的の1つに当初からいろいろと取り組んできております。
 社会全体から見ても、反社会的勢力ですとか、そういう人たちもまたクレーマーになったりしているわけですので、大変大きな問題に日本国内全体でもなっております。金沢でのああいう──あれは反社会的勢力ではありませんけれども──市の対応に対してどうしても抑え切れない怒りを感じるとか、それが暴力に出てしまうという人たちがやっぱりどうしてもいるわけです。
 かつては、富山県庁で、中沖知事の時代に、購入した絵画に右翼的な人が反対して暴力を振るうということなどもありました。
 いずれにしても、そういうことを絶対的に排除していかなければなりません。
 さらに、形は違いますけれども、長時間にわたる居座りですとか同じことを毎日要求するとか、形式的には暴力ではないように見えるけれども、実質的には暴力というようなものもあります。
 こういうことが公平・公正な仕事をしていくことを阻害するということにもつながってくるわけで、一般の市民の人が利用することにまで邪魔になったり障害になると、こういうことであります。したがって、しっかりとした対応をする必要があります。
 富山市は、昭和57年から継続して、危機管理について高度な知識や専門性を有する警察官に出向をしてきてもらっております。行政対象暴力事案について豊富な経験を生かして適切に対応していただく、例えば直接その者と面談をして、今行っている行為はこういう法に触れる、例えば不退去罪というような法律の規定を知らない方がたくさんいて──いつまでも居座って「出ていってください」と言っても出ていかないと不退去罪になる、現行犯逮捕ができるというようなことを知らない人もたくさんいるので、まずは説明をして説得をするということなどをやることと、職員への研修をやってもらっております。
 実際に、市民が執拗に行政対象暴力を続け、何というか怒りに任せて職員に暴力を振るったということもあります。あるいは窓口にあるものを壊したりということも起きております。そういう際には、その警察官の方と警察署と連携をとりながら速やかな逮捕に結びつけるといった事例もございました。
 いずれにしても、県警察には本市の体感治安の向上や職員や来庁者の安全のために大変努力してもらっていまして、感謝をしている次第でございます。
 さらには、平成29年11月に、従来の体制をさらに強化するために、窓口応対を行う所属の課長代理等で構成する富山市行政対象暴力等庁内情報連絡会議を設置しております。
 この会議では、暴力行為等により要求の実現を図る行為ですとか、正当な理由なく職員に面会を強要する行為などの6つを不当要求行為等と定義して、これらの行為に関する情報交換や対応方針について協議をしております。情報を共有すると──言葉は悪いのですが──この部でこういう事案が起きているということを他の部についても共有していく、どういう者がどういう行為をしているかということを共有していくということです。
 また、この会議の諮問機関として、警察OBの防災危機管理統括監、それから弁護士資格を有する法務専門監等で構成します行政対象暴力等対策検討チームを設けて、必要に応じて個別事案の対策、対応を検討しております。
 現在、自衛隊のOBそれから県警の現職──現職は特に市民生活部次長に、部長級の人に来てもらっているわけですし、一般職員としても現職警察官も仕事についてもらっております。あまりそれが誰かということを申し上げるわけにいきませんけれども、今申し上げたような対応をしております。
 いずれにしても、冒頭言いましたように、これは私にとって大変大事な使命の1つだというふうに思っていますので、今後ともしっかりと対応していきたいと、このように思っています。

◯ 市民生活部長(中田 貴保君)
 行政対象暴力等対策検討チームが昨年11月に発足しましたが、それ以降10カ月余りになりますけれども、本庁舎、出先機関を合わせまして約30件を不当要求行為等として認定させていただいております。
 主な事案といたしますと、今ほど市長からもありましたけれども、要望に対する回答を強要して長時間窓口に居座り続けたため、警察へ通報の上、不退去罪として現行犯逮捕に至ったもの、あるいは情報開示の事務に当たっていた職員に暴行をしたため、職員が現行犯逮捕したものなどがございます。

令和元年12月定例会(2019年12月10日)
○市民生活部長(岡地  聡君)
 市庁舎のセキュリティー対策についての御質問のうち、この1年間に発生した行政対象暴力等の事案について問うにお答えいたします。
 昨年9月議会で答弁いたしましたとおり、本市またはその職員に対する行政対象暴力、その他の不当要求行為を未然に防止するとともに、市民や職員の安全と円滑で適正な公務の執行を確保することを目的に、平成29年11月に富山市行政対象暴力等庁内情報連絡会議を設置しております。
 また、この連絡会議の諮問機関として行政対象暴力等対策検討チームを設置し、必要に応じ、個別事案の対策を検討しております。
 この対策検討チームが、暴力行為などにより要求の実現を図る行為や、正当な理由なく職員に面会を強要する行為などの不当要求行為等と定義される行為に該当するものとして行政対象暴力等に認定した事案は、平成29年11月から令和元年10月までの2年間に76件で、前半の1年間では28件、後半では48件となっております。
 この2年を比較しますと、2年目は20件増加しておりますが、これは不当要求行為等の事案を担当課やその職員が抱え込むことなく、行政対象暴力等対策検討チームへ相談して対応要領を検討するなど、組織的に対処する取組みが徐々に浸透してきたことから、結果として認定件数が増加したものと考えております。
 なお、この1年間での主な事案としましては、議会事務局職員に対して、その身体に危害を加える旨の脅迫電話をかけて業務を妨害した事案や、執務室への侵入を制止しようとした職員を殴った暴行事案等があり、いずれも行為者は逮捕されております。
 なお、刃物やガソリンを使用するなどの凶悪な暴力事案は発生しておりません。
 以上でございます。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

公務員の給与、遡って減額できるか

2020年06月05日 | 地方自治体と法律

 後だしジャンケンという言葉には、ズルさへの非難が込められています。

 後知恵で利益を得る者は非難されるわけですが、法律でいうと「不利益遡及」という問題になるでしょう。
 「遡及」という言葉は聞きなれない言葉ですが、“前に向かってさかのぼる”という意味です。前に向かってさかのぼることでその方が利益を受ける場合は、文句を言う方は少ないでしょうが、逆に不利益を受ける場合は問題です。
 これを「不利益遡及」といいます。

 「不利益遡及」はいろいろな場面ででてきます。 
 例えば、犯罪。
 そのときは犯罪にならなかった行為を後で法律で犯罪になることにして処罰するということがあったのでは、たまったものではありません。そのため、刑罰については憲法で不利益遡及が禁じられています(憲法39条)。

 では、従業員の給料はどうでしょう。
 法律には給料を不利益遡及してはいけませんという条文はありません。そのため、裁判でこの点は争いになったことがあります。
 判例で明らかとなったのは、“民間企業では給与は不利益遡及できないが、公務員ではできる”ということです。

 民間企業については最高裁での判決があり、具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約や事後に変更された就業規則の遡及適用により処分又は変更することは許されないと判示しています(最高裁判所平成元年9月7日判決・裁判集民事157号433頁,同裁判所平成8年3月26日判決・判例時報1572号133頁)。

 しかし、公務員の場合は話が違います。
ここでは、一般職地方公務員について不利益遡及適用が許される場合もあり得るとした大阪高裁平成18年2月10日判決(労働判例910・12)の判示を見てみましょう。
同判決は、①地方公務員の給与に係る立法においても,不利益遡及適用禁止の原則は適用されるとしています。
しかし、例外的に、②特段の合理的理由ないし公共の福祉を実現するための必要性がある場合は、その必要性の程度、侵害される権利の内容、侵害の程度等を総合的に考慮して、不利益の遡及適用が許される場合もあり得るとするのです。
このような②の点を認めるのが、民間企業との違いです。
そして、問題となった事案については給与の実質的な減額を適法としました(給与を遡って減額して、その分を期末手当で差し引くという手法が問題になっていました)。
このように公務員の場合は、自治体の後だしジャンケンが正当化されて給与が減らされる場合もあります。


電話相談(初回無料)を実施中。ご希望の方はプロフィールを見てお問い合わせ下さい。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする