南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

刑事の正式裁判とはどのような手続か

2005年11月30日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
刑事事件一審の公判の目的は、
1 起訴された事実を裁判所が認定できるのか
2 認定できるとしたら、刑をどの程度にするのか
を決めることにあります。
 この2点について検察官と弁護側が証拠を請求し、証拠調べが終わったら双方から裁判官に対して意見を述べ合います。
 もう少し細かくいいますと、

・冒頭手続・・裁判官が出廷しているのが起訴されている被告人と同一であるかどうか確かめ(人定質問)、起訴事実に対して被告人の意見を求める手続
・証拠調べ・・・検察官が立証しようとする事実を主張し(冒頭陳述)、証拠を提出する手続
・論告弁論手続・・・検察官が被告人の行為について評価して(論告)、求刑し、弁護人・被告人がそれに対して意見を述べる手続
・判決宣告手続・・・判決を宣告する手続

 起訴されてから一審の判決まではどのくらいの期間がかかるが気になるところですが、千葉地裁(本庁)の扱いですと、第1回公判は、起訴されてから1ヶ月半~2ヶ月位(事件の比較的少ない庁はもう少し早く期日が入るはずです)。
 事実を認めている事件では、1回の公判で審理が終結し、その1~2週間後に判決となることが多いです。
但し、被告人が事実を争い、証人を呼ばなければいけないような事件ではさらに時間がかかることとなります。



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略式罰金とはどのような手続か

2005年11月29日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 検察官が被疑者を略式裁判で罰金にしようとする場合、被疑者の同意をとらなければならないことになっています。
 これは罰金にするということは有罪が前提なわけで、有罪か無罪かを争っている被疑者は略式裁判の手続に乗せるのは適当でないからです。
 被疑者が略式裁判に同意すれば、検察官は、被疑者を簡易裁判所に起訴します。同時に証拠を提出します。
 このとき検察官の手元にある証拠を整理している暇がないため、検察官は手持ち証拠を全部簡易裁判所に提出しているようです。
 また、検察官は「科刑意見」を裁判官に提出します。これは正式裁判では「求刑」にあたるもので、”このくらいの罰金が相当である”という検察官の意見です。
 裁判官は、これらを検討したうえで、
1 罰金が相当であると判断した場合→罰金の命令を出す
2 罰金が相当でないと判断した場合→正式裁判が相当であるとの決定をだす
こととなります。
 つまり、検察官が略式罰金を請求しても、裁判官の権限で、正式裁判のルートに乗せることは可能なわけです。
 もっとも、圧倒的多数の事案は、「1」の処理=罰金命令で決着してしまいますが。
 これらの手続では、被害者は正式な地位を与えられていません。
 検察官が略式裁判を請求しようとしても、そのことを被害者が通知される権利もありませんし、正式に意見をいう場もありません。
 簡易裁判所の裁判においてもそうです。
 ですから、被害者としては、頻繁に検察官に問い合わせし、正式裁判を望む場合は略式裁判をしないように検察官に意見書を提出するなどの行動をしておかないといけないことになります。



 

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略式罰金か公判請求かはどう決まるのか

2005年11月27日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 起訴するという場合であっても、
 A 略式裁判で罰金にするのか(略式罰金)
 B 正式裁判にするのか(公判請求)
という選択肢がありえます。
 これも第一次的には検察官がこの選択をします。
 略式罰金にするケースは、公判請求をするケースよりも、情状として軽いと検察官が見ているケースです。
 では、どのようなことを検察官が考慮してこれを決めるかといいますと、
1 まずは、過失が重大であるか否か
です。
 前方不注視、携帯電話をもって運転していて注意が散漫になったなどが過失となれば、重大な過失ととらえられ、処分は重い方向に行きます。
2 次に結果が重大であるかどうか。
 交通事故事件では、結果とは、業務上過失傷害事件では、傷害が重いかどうかということです。
 業務上過失致死事件では、死亡という結果が発生していることは明らかですし、死亡という結果が重大であることは論をまたないところです。
3 被害者の落ち度の有無、ある場合はその程度
 被害者に落ち度があるかどうか。なければ、被疑者への処分は重い方向に行きますし、そうでなければ被疑者にとっては軽い方向にいかざるをえません。
4 被害弁償ができているのか、できる見込みがあるのか
 自賠責にすら入っていない事案が一番重くなります。
 自賠責には入っていても、任意保険に入っておらず、自賠責の範囲では損害賠償が収まらない場合は、被疑者の財産で被害弁償できそうな範囲内かどうかが問題になります。
 対人賠償無制限の保険に入っていれば、被害弁償及びその見込みについては問題が少ないと見られます。
 示談がすんでいることは、もっとも検察官の判断に影響を与えます。
5 被害者の処罰感情
 以上の5点が重視されるところですがその他にも、被疑者に前科があるか、被疑者の家族状況等が考慮されますが、考慮要素としてはそれほど大きくはないといえるでしょう。
 これらを総合的に考慮して、検察官は略式請求にするか公判請求にするかを決めることになります。  



 



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起訴か不起訴かはどうかはどうきまるのか

2005年11月26日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 業務上過失傷害事件や業務上過失致死事件などで被疑者が検挙された場合の刑事事件の流れは、
 警察が事件を探知→警察で捜査
 →検察に事件を送致→検察で捜査
 →検察が起訴・不起訴を決定
となります。
 起訴・不起訴を決定するのは唯一検察官だけであり、その意味で検察官の権限は絶大なものがあります。
 検察官が起訴・不起訴をどのように決めるのかというと、まず、
”犯罪自体を裁判所で立証できるだけの証拠があるのかどうか”
ということを最重要視します。
 裁判は、証拠によって証明することになっていますので、証拠がないか不足していれば不起訴方向にいかざるをえません。
 つまり、
 十分な証拠がある→起訴
 十分な証拠がないあるいは不足→不起訴
となります。
 業務上過失傷害・致死事件の場合で、もっとも問題になるのは、「過失」があるのか否かということです。
 例えば、死亡事故の場合で、被疑者側が青色を主張しているというケースなどは非常に過失の認定が難しいケースです。
 というのは、信号が何色であったかについては、基本的には目撃証言に頼るほかはなく、上記のようなケースで被疑者以外に目撃者がいないときは、被疑者の主張を覆すことができないという理由から、検察官が不起訴にする場合があるからです。
 

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業務上過失致死事件で逮捕されるか

2005年11月26日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 刑事事件といいますと、被疑者が逮捕とか勾留などというイメージが強いのですが、全ての刑事事件の被疑者が逮捕されるわけではありません。
 逮捕されないで裁判を受けるケースもあります。
 これを「在宅事件」といいます。
 10年くらい前は、業務上過失致死(つまり死亡事故)のみのケースで逮捕・勾留されるというケースは少なく、ほとんどが在宅事件(逮捕も勾留もされない処理方法)でした。
 つまり、被疑者を逮捕せず、警察は事件を検察に送致するという手法です。
 この在宅事件での処理方法だと、事故から起訴まで1年くらいかかることも珍しくありません。
 現在、千葉県警の扱いでは、業務上過失致死は原則逮捕に傾いているようです。そして、裁判所も勾留を認める扱いが増えてきているようです。
 
 ここで、逮捕と勾留の違いについて触れておきますと、
 逮捕というのは、一番最初の身体拘束です。警察がすることが多く、警察が逮捕した場合、逮捕したときから48時間(つまり2日間)以内に検察官に事件を送致しなければなりません。
 検察官は、被疑者を釈放するか、さらに身体を拘束するか検討し、後者の場合は、裁判官に勾留請求をします。
 裁判官が勾留を決定すればさらに身体拘束が続くことになります。
 検察官は、被疑者が勾留されてから、最長20日の間に起訴するか否かを決めなければなりません(事件が軽ければ10日間のケースもありえます)。起訴しない場合は、釈放されます。起訴された場合は、勾留が起訴後も続くことになります。

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交通事故刑事事件の基礎知識(はじめに)

2005年11月25日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 これまでは交通事故民事裁判の用語を解説してきましたが、本日からしばらくの間、交通事故刑事事件の基礎的な知識について解説していきたいと思います。
 民事裁判よりも刑事事件の方が先行することが多いですし、刑事事件の記録が民事事件でも使用されることが多いことから、刑事事件の流れやどのような証拠が作られるのかということをお分かりいただけた方がよいと思うからです。

 刑事事件は、刑事の処分を決めるためのものです。
 交通事故を起こした行為が「犯罪」に当たらなければ、刑事事件にはなりません。
 交通事故で問われることの多い犯罪は、
  被害者が怪我を負った場合は→業務上過失傷害
  被害者が死亡した場合は→業務上過失致死
です。
 なぜ、「業務上」という言葉を使用するのかというと、「過失傷害」という犯罪もあるので、それと区別するためで、「業務上過失傷害」の方が法定刑が重いですから、業務上であるか否かは重大な区別なのです。
 車を運転することは「業務上」にあたると考えられていますので、車を運転して事故を起こした場合は、業務上過失傷害になります。
 自転車を運転した場合は、「業務上」にあたらないと考えられていますので、自転車に乗って人に怪我をさせた場合は「過失傷害」となります。
 もっとも、その過失が重大であれば、「重過失傷害」となって、業務上過失傷害と同じ法定刑になってしまいます。

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実況見分調書

2005年11月24日 | 交通事故民事
 実況見分調書は、捜査官が実況見分をしたときに作成する調書です。つまり、もともとは刑事裁判用に作成される文書ですが、刑事記録も民事裁判の証拠として使用できますし、実況見分調書は交通事故の態様を証明するのに最も証拠価値の高いものと考えられているため、実況見分調書が提出されない訴訟はまずないと言って良いでしょう。
 実況「見分」という字を書きます。「検分」ではありませんので、注意してください。
 交通事故で出てくる実況見分には、
 1) 事故現場の状況のみを見分したもの
 2) 加害者立ち会いで事故状況を指示説明したもの
 3) 被害者又は目撃者立ち会いで事故状況を指示説明したもの
 4) 事故車輌の損壊状況
等がありえます。
 実況見分は、事故の直後に行われることが多く、それゆえに証拠価値の高いものと考えられていますが、見分にあたる警察官の能力により、実況見分調書の出来は様々であり、当然書かれているべきものが書かれていなかったりしますと、将来事故態様を巡って紛争が生じたときに問題が大きくなります。
 私が見る限りでは、警察は、前記の(2)や(3)の実況見分を重視し、指示説明による実況見分調書を重視しているように見えますが、(1)や(4)の方が客観的な動かぬ証拠であり、こちらを重視していただきたいところです。特に、(1)の調書で、車輌等が破壊されて、散乱している物についての記載が本来あるべきなのに全く記載されていないという例は多いです。

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後遺症認定に対する異議申立

2005年11月23日 | 交通事故民事
 自賠責保険で認定された後遺症に対しては、異議申し立てができます。
 異議申し立ての前提として、どうしてそのような後遺症が認定されたかの理由を自賠責保険から入手することができます。
 その理由を見て、どのポイントから期待する認定がなされなかったのかがわかります。
 問題は、その理由書から、どのような書類があれば認定を変更することができるかどうかということがわかるかということです。 
 証拠関係が変わらないまま異議申し立てをしても、調査事務所の担当が大きなミスをしていない限り、結論を変更するということは基本的にはないと考えてよいと思います。
 従前の書類では不足があったために、期待した認定がなされないのであり、この不足を埋める作業が必要になります。
 これを見抜くためには、ご自分でわからない場合は、相当程度後遺症認定の知識のある弁護士などの専門家に依頼する必要があり(もっとも、すべての弁護士がそのようなことができスキルを有しているわけではないことは昨日も述べたとおりです)。
 十分な証拠がそろったら、異議申し立ての書面を作成します。
 後遺症認定の基準を把握した上、その基準をクリアーするということを説得的に書く必要があります。
 自賠責保険への後遺症認定に対する異議申し立ては何度もできますが、1回目の異議申し立てに万全の準備をもって望むべきです。
   

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自賠責保険における後遺症認定

2005年11月22日 | 交通事故民事
 自賠責保険における後遺症の認定は、
  ・自賠責保険に対して後遺症について被害者請求をした場合
  ・後遺症の認定のみを申請する場合(事前認定)
があります。
 いずれも申請書類の提出先は、加害者側の自賠責保険会社ですが、実際に認定作業をしているのは、調査事務所です。自賠責保険会社は、書類を調査事務所に送付し、実際には調査事務所が認定作業をします。
 もっとも、法律的には、あくまで自賠責保険会社が認定をし、損害賠償金の支払いも自賠責保険会社ということになりますが。
 後遺症の等級は1級から14級まであり、これは自賠法で決まっています。
 自賠責の後遺症認定は、書面審査であり、調査事務所が、提出された書面及び医師への医療照会の結果をもとに判定していきます。
 自賠法に記載されている後遺症の文言というのは抽象的なので、具体的には労災保険でも使用されている後遺症認定の基準を参照して認定が行われます。
 調査事務所で等級認定作業が終わると、自賠責保険会社に書類が送付され、最終的に被害者には自賠責保険会社から、何級と認定されたかが示されます。
 このときに認定理由を記載した書面が交付されていない場合は、自賠責保険会社に請求すれば認定理由をもらうことができます。
 理由に納得できなければ、異議申し立てができ、さらに審査してもらうことが可能です。
 以上述べたように、後遺症認定は基本的に書面審査であり、書面、つまり、後遺症診断書や診断書、画像、医療照会の結果が重視されますので、これらが被害者の後遺症を十分に記載してあるのかどうかを見極めることが重要です。
 このような目利きには、ある程度の医療上の知識が不可欠であり、今後弁護士もこの分野での知識の蓄積をはかっていく必要があります。

 自賠責保険における後遺症認定は、裁判官を拘束しません。裁判官は、自賠責保険で認定された等級とは、別の等級を認定することができるのです。例えば、自賠責保険が14級を認定したとしても、裁判官はそれに対して12級を認定することもできますし、後遺症非該当であるとすることもできます。
 もっとも、裁判官も医療知識にそれほど詳しい方ばかりではありませんから、自賠責で出た認定を参考にしますし、加害者側が争わなければ自賠責の等級がそのまま認定されることもあります。
 ですので、最終的に裁判をすることになるケースを考えても、自賠責保険の後遺症認定で適正な等級を得ておく必要があるのです。 


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被害者請求

2005年11月21日 | 交通事故民事
 被害者請求とは、交通事故の被害者から加害者の自賠責保険会社に対して直接損害賠償金を請求できる制度です。
 もともと、保険金というのは、保険をかけている方から請求できるものですが、自賠責保険は交通事故被害者を救済するためのものですから、被害者から自賠責保険会社への直接請求することを特別に法律が認めたのです。
 自賠責保険が支払うのは、
  傷害部分について 120万円
  後遺症については別途支払い(等級に応じて支払い限度額が決まっています)
です。
 被害者もこの限度で支払いを受けられます。
 もっとも、加害者(又は任意保険会社)が被害者に支払った部分を、被害者よりも先に自賠責保険から取得してしまっていれば、被害者は自賠責保険からの支払いを受けられません(自賠責保険としては二重払いになってしまいますから)。

 加害者側に任意保険がつけられている場合、任意保険会社が示談代行をします。
 交渉がスムースに行けばよいのですが、スムースにいかない場合、任意保険会社に請求しても払いしぶりが起こることは目に見えています。そういうときは、自賠責保険の被害者請求を活用したほうがよいでしょう。
 特に、後遺障害の認定にあたっては、任意保険会社側は、書類を任意保険会社に提出してくださいと促してくることが多いですが、任意保険会社はこの書類を自賠責保険会社に回すだけですから、被害者が自分で自賠責保険の被害者請求をしたほうが効率がよいと思います。
 「自賠責保険の被害者請求は簡単な手続だから自分でやってみてください」とアドバイスする弁護士が多いと思いますが、傷害部分はともかく、後遺症認定に当たっては、その診断書で後遺症認定が可能なのか、つまり、診断書に必要な情報はきちんと盛られているのかどうかを見極める必要があります。このようなことのできる弁護士に依頼したほうが後遺症認定はスムースにいきます。

 

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