南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

裁判が和解で終了する、その終了の手続きについて

2021年06月14日 | 民事訴訟
(裁判の終わり方)
 裁判所に裁判を起こすときは、判決をもらって黒白しっかりつけると思っている方も多いと思いますが、裁判(訴訟)の終わり方は、判決だけではなく、和解(合意)という終わり方もあります。
 裁判官の多くは和解を勧めますし、依頼している弁護士も和解を勧めるでしょうから、和解で終了することの方が多いかと思います。
 
(期日での和解)
 和解(合意)というのはどのようになるのかというと、裁判所の期日で裁判官が和解条項というものを読み上げて、当事者(代理人でもOKが原則ですが、離婚のときだけ本人出頭も必要です)がこれを確認すれば、和解が成立します。
 この和解条項は、その場に立ち会った書記官が「和解調書」という裁判所の公的書面を作成し、記録に残します。

(和解条項)
 和解条項というものは具体的には以下のようなものです。
 原告が請求する側、被告が請求される側で、原告の請求が300万円だったが、100万円を支払うことで合意するケースを想定しています。
1 被告は、原告に対し、本件の解決金として、100万円の支払義務があることを認める。
2 被告は、原告に対し、前項の金員を、原告の銀行口座(○○銀行 ○○支店 ○○口座 口座番号:○○ 口座名義:○○)に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は、被告の負担とする。
3 原告は、その余の請求を放棄する。
4 原告及び被告は、原告と被告との間には、この和解条項に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する。
5 訴訟費用は各自の負担とする。

(和解条項の意味)
 1項と2項で支払う金額と、支払時期、振込口座などを定めています。
 3項~5項は、「これ以上は原告は被告に請求しません」ということを意味する法律上の決まり文句です。それぞれに意味はちゃんとあるのですが、法律家のための言葉なので、一般的には、これ以上請求しないし、今後も請求しないという意味だと思っていただいてほぼ間違いありません。

(和解調書の交付方法)
 和解調書はただ待っているだけでは、裁判所は送ってきてくれません(判決は送ってくれるのですが)。和解調書には、申請が必要です。和解期日に申請を行うのが、申請漏れ防止の点からも望ましいです。


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賃貸人が死亡したときの賃料の扱い

2019年05月29日 | 民事訴訟
1 親名義でアパートを所有して賃料収入を得ていたが、親が死亡して相続が発生したというような場合、賃料はどうなるのでしょうか。
 相続が生じた場合の賃料については、最高裁で決着がついています(平成17年9月8日最高裁判決)。
 「分割債権となって、法定相続割合で賃料は相続される」ことになります。
 法定相続人が子どもだけでAとBの2名という場合で、賃料が月10万円ということですと、それぞれ2分の1ということになりますから、Aさんが月5万円の賃料、Bさんが月5万円の賃料ということになります。
 このような扱いとなるのは、相続の開始(親の死亡)から遺産分割協議までの賃料です。
 不動産についての遺産分割協議が成立しますと、その時点以降の賃料は不動産を相続した者のものとなります。例えば、Aさんが不動産を全部相続したということになると、Aさんが賃料月10万円を取得することとなります。
 以上をまとめると次のようになります。
 ①相続時~遺産分割協議時 
Aさんが月5万円の賃料、Bさんが月5万円の賃料
 ②遺産分割協議によりAさんが所有者となる
  以降の賃料はAさん(月10万円)

2 平成17年の最高裁判決で以上のことは、法理論的には明確になったのですが、現実には賃借人は難しい対応を迫られることとなります。
 というのは、賃貸人がお亡くなりになったかどうかは、賃借人にとってはわかりにくいことですし、誰が法定相続人になるかということは更にわかりにくいことだからです。
 かといって、賃料を不払いとするのは大変危険です。
 賃料不払いは、賃貸借契約の解除事由となりかねないからです。
 賃借人は賃料を支払う義務があり、この義務を怠ると賃貸借契約の解除⇒明渡しを余儀なくされることになってしまいます。

3 このような場合、賃借人としては、「債権者を知ることができない」(債権者不確知)ということで法務局に供託するほかないということになるかと思います。
 法務局ということ自体なじみがない方も多くいるかと思います。
 例えば、法務局というのは、福島県ですと、福島市、相馬市、白河市、会津若松市、いわき市にしかなく、身近な存在とは言い難いところです。このような法務局の供託所に毎月毎月賃料を供託すること自体が大変な作業ですが、賃貸人が死亡して相続が生じてしまうと、このような手続きをせざるを得ないリスクがでてくるのが平成17年最高裁判決の意味するところです。
 間に管理会社等が入って、適切な管理をしているところでは、このようなリスクは相対的に低いかと思いますが、不動産の物件の中には、仲介は不動産会社がしているが、管理は賃貸人が直接行っているというところもあり、このような物件では相続争いの影響を賃借人が受ける可能性があります。

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法務省が共有私道についてガイドライン作成

2018年02月03日 | 民事訴訟

法務省が 共有私道の 保存や管理に 関する問題をまとめたガイドラインがでました。
報道でも取り上げられていましたね。

ガイドラインは法務省のホームページで公開されています。
全体で126ページ(!)あり、PDF ファイルですので PDF ファイルのに入る前の ページをリンクで貼っておきます ます。

法務省のホームページ


正式な名称
⇒複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書 ~所有者不明私道への対応ガイドライン~

どうしてこう法律家の名付ける文書名というのは難解かつ長たらしいのでしょうね。

こんな名称では読もうとする気を削ぐためにあるのか!とすら思ってしまいます。

副題の方だけ理解しておけば十分です。
「所有者不明 私道への対応ガイドライン」

この「所有者不明」というのが ポイントですね 。「所有者不明」といえば、所有者不明土地。これをどうするかは今の日本で大きなテーマです。

これまで所有者不明土地については 総務省サイドに 押され気味で 法務省としては目立った成果がなかったような記憶ですが、今回は共有私道における、所有者不明土地について法務省としてきちんと対策を立てましたというアピールをしてきたように思います。

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共有関係を解消する~共有物分割訴訟

2018年01月24日 | 民事訴訟
1 不動産を共有すると共有者間で様々な調整をしなければなりません。
共有者間の仲が良い場合は問題ないのですが、悪くなるとこの調整が難しくなってきます。

2 共有となる場合というのは、次のような場合です。
・夫婦で住宅を共有していたが、財産分与の話し合いがつかず、共有状態のままとなってしまっている。
・親の不動産を相続したが、遺産分割で共有状態とした。

3 共有者間の調整がつかなくなってきますと、共有関係を解消したほうがよい場合があります。
 共有関係の解消について話し合いができればよいですが、解消したいというときは人間関係が悪くなっているときも往々にしてあるので、話し合いがつかないこともあります。
 そのようなときに取る法律上の手段として、「共有物分割」があります。

4 共有物分割の訴訟の目的は共有関係の解消にあります。
 共有関係の解消するための判決には次の3つがあります。

 1)現物分割= 実際に現地を共有割合で分割するものです
 土地が大きい場合はこの方法は妥当です。逆に土地が狭い場合は、さらに狭くなってしまい、売却に適さなくなってしまうという欠点があります。
 住宅地のようにそれほどの広さがない場合は、現物分割は適さないです。

 2)価格賠償=相手方の共有持分を買い取るという方法です。
 この方法は実際にはよく用いられるものであり、買い取りができる資力があればこの方法が紛争解決に適します。 
 問題は買い取りができる資力があるかどうかです。
 判決では分割弁済はできないので、一括で買い取れる場合でないとこの方法は使えません。

 3)競売命令
 以上の 二つの方法が 採用できない場合は 裁判所は 競売命令 という判決で共有状態の解消を判決します。
 裁判所の競売手続きにより、物件を売却するという手続きとなります。
  競売命令の欠点は 競売 をするということで 売却価格か 低くなってしまうということです。

 判決となるとこの3つの方法に限られてきてしまいます。
 しかし、和解」(合意)であれば、別の解決がありえます。

 4)任意売却= 当事者で合意して 売却する方法
 競売命令に比べて物件を高く売ることができるのがこの方法のメリットです。
 もっとも、任意売却である以上、買い手がつかないということもありえます。また、買い手は見つかったけれども、その価格で売ることに共有者の全員の合意が取れないという場合もあります。
 そのような場合に備えて、「*月*日までに任意売却できない場合は、共有者の1人が単独で競売の申立ができる」という条項を入れておくのが妥当です。
 


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