南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

自動車運転過失致死傷事件の見出し

2008年12月31日 | 未分類
 自動車を運転していて、必要な注意をせず、よって人を死亡させたり、傷害を負わせた場合には、「自動車運転過失致死傷」という犯罪になります。

 この犯罪が立法化されたのは、2007年5月で、同年6月から施行されていますから、比較的新しい犯罪類型といえます。

 さて、この自動車運転過失致死傷を新聞記事で見出しにするのはなかなか困りもののようです。

 見出しというのは、短くかつわかりやすいことが求められますが、
 「自動車運転過失致死」
だけで9字使用してしまい、長くなってしまうのです。

 自動車運転過失致死傷罪がもうけられるまでは、業務上過失致死傷という犯罪として処理されていましたが、これは、
 「業過致死」「業過致傷」
というような略語が定着しており、見出しとしてはこれを使っていたように思います。

 最近の自動車運転過失致死傷事件のニュースを見てみましたら、

庭に車、親子3人死亡 広島、過失致死傷容疑で男逮捕(日経ネット)

 と、「過失致死傷」という見出しを使っているものがありました。
 
 しかし、「過失致死傷」というのは、刑法上は、「自動車運転過失致死傷」とは別の犯罪としてありますので、法律上は不正確な見出しとなっています。

 もちろん新聞社はこの辺をわかっていて、あえてわかりやすさ(と見出しとしての字数制約)を優先しているのでしょうが、なんだか私としては違和感があります。

 一番よいのは、「自動車運転過失致死傷」の適切な略語が考えつければいいんでしょうが、私の見分する範囲ではどうもいい略語がないようです。
 
 


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損保会社の統合の影響

2008年12月29日 | 未分類
三井住友海上など3損保、経営統合で最終調整

記事では、経営統合の理由としては、
「少子高齢化に加え、米国発の金融危機で自動車販売の落ち込みが激しく、保険料収入の約4割を占める自動車保険は長期低迷が見込まれている。統合により経営基盤を強化し、勝ち残りを図る。」
となっており、
経営統合は損保会社の収入減が理由との観測です。

被害者の方でしょうか、別の記事で、
「昨日損保会社三社が統合するというニュースがありました。
被害者が治療中等に統合や合併が行われた場合、担当者なども変わるのでしょうか?」
というご質問をいただきましたが、経営統合したとしても、被害者との窓口になっている担当者がすぐに変わるというわけではないでしょう。

経営統合により、既に締結されている保険契約の内容が変わるわけでもありませんので、その面からは被害者に直接影響を与えるものではありません。

しかし、収入が減ってきているということは、損保会社側から見た支出、すなわち、被害者への支払いを厳しくする可能性も秘められているわけでそちらの方が、被害者にとって影響が大きいのではないかと思っています。


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人身事故と物損事故

2008年12月25日 | 交通事故民事
 交通事故を
  人身事故と物損事故
にわけて考えることがあります。
 
 これらは法律上の用語ではありませんが、物損と人身は、それぞれ特徴をもっていますので、わけて考えるのが便利です。

 人身事故というのは、人の生命身体に損害のある事故
 物損事故は、物に損害のある事故
です。

 人身事故を起こすと、加害者は、自動車運転過失傷害(または致死)などの刑事事件の被疑者として扱われ、警察の捜査を受けます。
 
 物損事故だけならば、そのようなことはありません。

 ですから、物損事故だと、警察は捜査書類を作成しません。
 ただ、物件事故報告書というものを作成することとなっています。

 より詳細を知りたい方は、たとえば、石川県警の「物件事故処理要領について(概要)」(pdfファイル)

 この物件事故報告書ではどのような事故であるかの詳細までは捜査されませんので、これだけで事故態様を立証するのはなかなか難しいです。

 人身事故だと捜査資料が作成されますので、実況見分調書などを加害者の刑事の処分が終わったあとに見ることができます。 

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年末年始の執務日について

2008年12月22日 | 未分類
 年内は12月26日(金)まで執務しています。
 年始は、1月5日(月)からです。

 もともと、私の事務所は12月28日まで仕事をするようになっているのですが(28日は役所などの仕事納めの日です)、今年は、27日が土曜日、28日が日曜日ですので、26日が年末の最後の執務日となります。

 年始は、3が日が休みなのですが、今年は1月4日が日曜日ですので、5日が始まりとなります。



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交通死亡事故で逆転有罪となった記事より

2008年12月20日 | 未分類
裁判:交通死亡事故で逆転有罪 札幌高裁(毎日新聞)

 記事によれば、
  横断歩道のないところを横断していた被害者が、加害者運転の自動車にはねられて死亡したという死亡事故で、
 加害者は、業務上過失致死罪で起訴され、
 一審(地裁)は無罪だったけれども、
 二審(高裁)で有罪とされた
ということです。

 争点は、
 「加害者が被害者に気付いた直後にブレーキを踏めば、事故を避けられたかどうか」
だったようですが、その前提としてどのようにして事故になったかということが問題となったようです。

 死亡事故では、被害者は死亡してしまっており、事故態様を供述できませんので、事故態様については、加害者の供述しかないということが頻繁におこります。

 この事件では目撃者がいたようですが、目撃者がいないことも多く、また、実際には目撃した人がいたにも関わらず、目撃者の供述が得られないということも、またあり得ることです。

 このような現象は、死亡事故に限らず、被害者が重度の怪我を負ったために供述ができないというような場合も同じく起こります。

 重大な事故ほど、被害者が、真相解明という観点からも、マイナスの立場に置かれるのが現状といえましょう。

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損害保険会社の経営と損害賠償

2008年12月18日 | 未分類
損保協会長「大きな影響が出る」 自動車販売の低迷で(日経ネット)

 記事内容は、

 2009年の自動車の国内総販売台数が31年ぶりに500万台を下回る見通しとなったので、
 日本損害保険協会の会長が記者会見で、
 「損保の保険料収入の半分は自動車保険なので、大きな影響が出てくる。(円高などで)状況が厳しいなか自動車販売が減少すれば、損保経営も厳しくなる」との見方を示した

というものです。

 損保の経営という観点からみると、自動車保険の支払いというのはマイナス要因になるわけですが、これは被害者側からみると、「払い渋り」となります。

 適正な損害賠償がなされることは経営的な要因とは本来別物なはずですが、損害保険会社も営利事業である以上、経営が原因で払いしぶりがなされないとも限りません。

 被害者にとって不利にならないよう、被害者側も損害保険会社に対して、毅然とした対応を取る必要が出てくる場合が多くなるかもしれません。

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被害者参加制度、釧路地裁で初適用の記事

2008年12月13日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 被害者参加制度、2008年12月1日より施行されましたが、適用事件の1号は釧路地裁の交通事故事件です。

日経ネット記事

記事では、
「最高裁によると公表を了承した被害者では初の許可決定という。」
という微妙な表現になっています。

 裁判所サイドは、公表するかしないかも被害者のを了承をとっているということでしょうか。

 いずれにせよ、この制度の今後の運用が注目されます。

 被害者参加制度についての過去記事は、
”目次”
をご参照ください。



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司法解剖について

2008年12月09日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
最近の新聞に出ていた記事です。

司法解剖 「遺族への説明」是非、医師交え議論

さらに詳しくは、
司法解剖、被害者遺族に説明へ 東大法医学教室

 東大の法医学教室で、司法解剖をされた人の遺族にアンケートしたところ
  71%が「手続きがよくわからず、納得いかないままとりあえず」了承
  「解剖後に執刀医から説明を受けたかった」との要望は82%にのぼった

というもので、遺族が司法解剖について納得がいかないことが明らかになっています。

 交通事故事件でも死亡事件で多くはないですが、司法解剖が行われることはあり、司法解剖を受けたご遺族にはこの問題に直面されているのではないかと思われます。

 ”司法解剖されたこと自体を慰謝料として考慮できないか”
というご質問も受けたことがあるのですが、法のタテマエとしては、裁判所が必要を認めて許可を出して行っているのが、司法解剖なので、
「法律に定められたものなので、受忍の範囲内だ」(つまり、がまんしろ)
というように言われてしまいそうだと考えておりました。

 この記事を見て、少しでもそのような司法界の考え方が変わってくればと思いました。

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神経症状12級と14級の違い

2008年12月08日 | 未分類
腰部痛や頚部痛が後遺障害として残った場合に、"神経症状"ということで自賠責で12級や14級の等級認定がされることがありますが、12級と14級は何が違うのかというご質問をよく受けます。

これは、自賠責の等級が
12級→「局部に頑固な神経症状を残すもの」
14級→「局部に神経症状を残すもの」
と定められており、12級と14級の違いが「頑固」という言葉の違いにしかみえないことから、「頑固とはどういうことなのか」という点がわからなくなる方が多いです。

「頑固」というものは日常用語としても使われるので、このような混乱がおきていると思います。ここではこの「頑固」という言葉にとらわれないで、考えたほうが良いです。

京都地裁平成20年8月15日判決(自保ジャーナル1760号)が、この12級と14級の違いについて説明していますので、このケースにそいながら説明していきます。

被害者は腰部痛などの後遺障害が残ったので、12級の後遺障害であると主張して、訴訟をおこしましたが、裁判所は12級は認めませんでした。

その理由は
12級の「局部に頑固な神経症状を残すもの」
=労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる神経系統の機能又は、精神の障害を残すものをいうと説明しています。
ここで大事なのは「医学的に証明しうる」という点です。

では、14級はどう説明しているのかというと
「局部に神経症状を残すもの」
=労働には通常差し支えないが、医学的に説明可能な神経系統又は、精神の障害を残す所見があると認められるものとしています。

つまり
12級=医学的に証明しうる
14級=医学的に説明しうる
というもので、12級と14級の差は「証明」か「説明」かということになります。

それでは、医学的に「証明」とはどういうことかという、京都地裁判決では
X線検査、CT検査、MRI検査による異常所見をあげています。
これらはまとめて「画像所見」ともよばれるので、画像所見があれば12級を認めるとの立場をとった判決と考えられます。

本件のケースでは、画像所見が存在しなかったので、被害者には12級は認められず、14級が認定されました。

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自賠の認定基準変更

2008年12月05日 | 未分類
自賠責の等級認定基準は、頻繁にではないですが、変更されることがあります。
自賠責では、事故日を基準にして認定に旧基準を使うか、新基準を使うかを決めるのですが、では裁判所はこのような場合どうするのか?という問題があります。
この点について、最近京都地裁平成20年8月12日判決が自保ジャーナル1760号に掲載されましたので、そのケースに基づいてみてみます。

このケースは、平成12年11月の交通事故で、被害者は左腓骨に偽関節が残る後遺障害を負いました。
この後遺障害は

事故時点→8級(1下肢に偽関節を残すもの)

でしたが、自賠責の等級認定基準の変更が行われ、

平成16年7月以降発生の事故→12級(長管骨に変形を残すもの)

となりました。
このような場合、自賠責では事故時点を基準に8級認定をするのですが、裁判所はどうするのかというのが問題となります。

京都地裁は「現在の認定基準」で認定すべきだとしました(このケースでは12級が認定されました)。

参考までに京都地裁の理由を以下に載せておきます。
この問題について、どう考えるべきかは、なかなか難しい問題であり、この判決は一つの裁判例として考えるべきで、この判決がスタンダードなものとなるかどうかは、今後の動きをみていく必要があると思います。

(京都地裁判決の理由)
労働能力喪失の程度を判断するために、労働能力喪失率表を参考とするにあたっては、現在の認定基準により該当すると判断される等級に基づいてこれを行うべきである。
なぜなら、後遺障害による労働能力喪失の程度を合理的に判断するには、後遺障害の実態に合致した等級に基づいてこれを行う必要があるところ、現在の認定基準は、従来の認定基準について必ずしも後遺障害の実態に合致していない点があるとして見直しが行われ、後遺障害の実態に合致した妥当な認定基準として定められたものであり、現在の認定基準に基づく等級が後遺障害の実態に合致したものといえるからである。


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