南斗屋のブログ

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原発ADR、1527から1530までの和解事例

2019年07月11日 | 原子力損害
2019年7月5日、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)から和解事例が公表されました(和解事例1513から和解事例1530まで)。今回は、1527から1530までの和解事例を紹介いたします。
 1527は帰還困難区域(浪江町)に所在する墓に関するもの、1528、1529は避難指示解除準備区域の日常生活阻害慰謝料に関するもの、1530は居住制限区域(浪江町)の就労不能損害に関するものです。

和解事例(1527)
帰還困難区域(浪江町)に所在する墓の祭祀承継者であって、避難に伴って墓を別の地域に新設した申立人に対し、原発事故前に同墓を建立した際の価格を基に同墓の財物価値を算定し(同墓の移転に要した費用よりも高額となる。)、財物損害が賠償された事例。

和解事例(1528)
避難指示解除準備区域(南相馬市小高区)から避難した申立人ら(祖母、父、母、子ども2名)の日常生活阻害慰謝料について、それぞれ平成30年3月分までの期間につき月額10万円が賠償されたほか、父については他の家族との別離が生じたことや祖母の介護を行ったこと等の事情を考慮し、また祖母については避難先での生活により変形性膝関節症を患ったこと等の事情を考慮し、それぞれ同月分までの期間につき、さらに月額3万円が賠償された事例(なお、一部の申立人らについては、被申立人を被告とする訴えが係属している、いわゆる訴訟並走案件(平成30年当センター活動状況報告書25頁参照)について和解成立に至ったものであるが、特段、訴訟の取扱いについては合意内容となっていない。)。

和解事例(1529)
避難指示解除準備区域(浪江町)から避難した申立人らの日常生活阻害慰謝料(増額分)について、新たに住居を購入した月の半年後である平成26年11月分まで、それぞれの事由(持病、要介護及び介護)に応じて月額3万円が賠償された(ただし、既払い金を除く。)ほか、原発事故前から有していた疾患が避難生活によって悪化した申立人の生命身体損害について、既に平成26年2月分まで直接請求によって一定額の支払がされていたものの、平成30年8月分まで、治療費については全額、入通院慰謝料及び入通院交通費については、原発事故の影響割合を8割として算定した金額が賠償された(ただし、いずれも既払い金を除く。)事例。

和解事例(1530)
居住制限区域(浪江町)から避難した申立人らのうち、原発事故当時、福島県内の警備会社に勤務していたが原発事故の影響により失職した申立人父(原発事故当時50歳台)の就労不能損害について、失職後の再就職の状況や就職活動の状況等の事情を考慮し、平成27年3月分から同年8月分までの期間につき事故前収入の3割相当額、同年9月分から平成28年2月分までの期間につき事故前収入の1割相当額が賠償された事例



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原発ADR和解事例1518から1522

2019年07月10日 | 原子力損害
2019年7月5日、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)から和解事例が公表されました(和解事例1513から和解事例1530まで)。今回は、1518から1522までの5和解事例を紹介いたします。
 1518が旧避難指示解除準備区域の慰謝料の増額・延長に関するもの、1519が帰還困難区域の方の就労不能損害、生命・身体損害に関するもの、1520は大学生に関するもの、1521は自主的避難等対象区域の避難費用及び避難雑費の増額に関するもの、1522は自主的避難等対象区域(川俣町)の会社の営業損害(農業収入)に関するものです。

和解事例(1518)
旧避難指示解除準備区域(楢葉町)に居住していた申立人父母及び子ども3名のうち、子どもの就学上の理由のため週末を除き自主的避難等対象区域(いわき市)の仮住居で生活していた母及び子ども3名の日常生活阻害慰謝料について、母及び子ども3名の自宅での生活状況等の事情を考慮し、それぞれ月額1万3000円が、母及び長女につき平成27年9月分まで、二女及び三女についてはそれぞれの進学による転居時期までの期間につき賠償されたほか、申立人父母の日常生活阻害慰謝料(増額分)について、父は右半身まひの後遺症(要介護度1)を抱えながら避難生活を送ったこと、母も父の介護をしながらの避難生活を余儀なくされたこと等を考慮し、父につき平成30年3月分まで月額1万円、母につき一時金50万円が賠償された事例。

和解事例(1519)
帰還困難区域(大熊町)から避難した申立人の就労不能損害、通院交通費及び通院慰謝料について、原発事故後にPTSDにり患したこと等の事情を考慮し、平成29年12月分までの期間につき、原発事故の影響割合を7割として賠償されたほか、同月分までの避難費用等が賠償された事例

和解事例(1520)
帰還困難区域(浪江町)に所在する実家に住民票上の住所を有し、原発事故当日も同実家において生活していたが、年間を通じてみると他県に所在する大学への通学のために、同大学の近傍においても生活をしていた申立人の日常生活阻害慰謝料について、平成23年3月分及び同年4月分は月額10万円が、平成23年5月分から平成26年3月分までは月額2万5000円の割合による金額が賠償された事例

和解事例(1521)
自主的避難等対象区域(福島市)から平成23年3月に避難した申立人ら(成人2名及び子ども2名)について、避難以前は、自家栽培の野菜や養鶏による鶏卵を食べて生活していたところ、避難先では養鶏が行えなくなったこと、野菜についても平成24年3月以降は避難先での栽培を再開したものの収穫量は避難以前よりも減少したこと等の事情を考慮し、平成25年3月分までの生活費増加費用(自家消費野菜・米・鶏卵)が賠償されたほか、平成27年3月分までの避難費用及び避難雑費が賠償された事例。

和解事例(1522)
自主的避難等対象区域(川俣町)において、米の集荷、検査及び販売事業等を行う申立会社について、上記事業以外の事業を合わせた申立会社全体の売上高及び売上総利益は原発事故前よりも増収増益となっているものの、原発事故の影響によって原発事故前よりも申立会社が米を集荷する地域の水稲の作付面積及び収穫量が減少し、これによって、申立会社の上記の米に係る事業については、減収が継続しているとして、原発事故の影響割合を3割として、上記米に係る事業の平成29年3月分から平成30年2月分までの営業損害(逸失利益)が賠償された事例


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原発ADR和解事例、1513から1517まで

2019年07月08日 | 原子力損害
2019年7月5日、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)から和解事例が公表されましたので(和解事例1513から和解事例1530まで)、今回は、1513から1517までの5和解事例を紹介いたします。
 1514、1515が帰還困難区域(双葉町)から避難からの事例。1513、1516~1517は営業損害についての事例です。

和解事例(1513)
自主的避難等対象区域(郡山市)で酒類の製造販売業を営む申立会社の営業
損害(逸失利益)について、商品の販売先の一つである大韓民国への輸出規
制が継続していること等の事情を考慮し、平成28年10月分から平成29
年9月分までの期間につき、原発事故の影響割合を約2割として賠償された
事例

和解事例(1514)
帰還困難区域(双葉町)から避難した申立人について、原発事故前は田畑を
貸して賃料の代わりに得られていた米等の食料品が得られなくなったことを
考慮し、平成27年12月分までの食費増加分が賠償された事例。

和解事例(1515)
帰還困難区域(双葉町)から避難した申立人らについて、乳幼児を連れての
避難であったことを考慮し、当該乳幼児が就学した月の前月である平成29
年3月分まで、主に世話をしていた申立人の日常生活阻害慰謝料が月額1万
5000円増額されて賠償された事例。

和解事例(1516)
自主的避難等対象区域(伊達市)において畜産業(酪農)を営んでいたが原
発事故後に廃業した申立人に対し、既に廃業損害として一定額が賠償されて
いたものの、営業損害として、廃業に先立って売却した牛の実売却額が原発
事故の影響によって同等の牛の市場における平均売却額よりも低額となった
価格差相当額が賠償された事例

和解事例(1517)
福島第一原子力発電所内部の定期検査における放射線管理業務を受託してい
た申立人について、原発事故直後は別の業務に従事したことにより収入が増
加していたが、平成24年10月に契約を解除され、収入がなくなったこと
等を考慮し、平成25年分は原発事故の影響割合を5割、平成26年分は同
割合を3割、平成27年分は同割合を1割として、逸失利益が賠償された事例


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