南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

交通事故の被害者の後遺障害認定の方法は

2023年01月27日 | 交通事故民事
交通事故の被害者の後遺障害認定の方法は

(問題の所在)
 交通事故の被害者に後遺障害が残った場合、その認定の方法はどのようにすれば良いでしょう。自賠責に被害者請求をする方法、任意保険会社を通じて事前認定をする方法があります。後者(事前認定)のメリット・デメリットを考えてみました。

・メリット
①任意保険会社の担当者が後遺障害の内容を認識できるので、後の手続きがスムースにできる。
②医療機関への同意書を任意保険会社側に渡しておけば、任意保険会社が手配してくれるので、被害者側の負担軽減になる。

・デメリット
①後遺障害の調査を主導する自賠責調査事務所との間に任意保険会社担当者が入る形となり、自賠責被害請求よりも介在する人が多くなる。
②任意保険の担当者が後遺障害の診断書を病院から直接取得するケースでは、被害者側が後遺障害診断書の内容を把握できないことがある。
③任意保険の担当者によっては、手持ち件数の多さからか、自賠責調査事務所に申請する手続自体を忘れていたり、遅滞していたりする例が見られる。
④任意保険会社というのはあくまで相手方であり、被害者側に有利なようにはアドバイスはしてくれない。


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任意保険会社からの治療費打切り要請にどのように対処するか

2021年11月24日 | 交通事故民事
(任意保険会社からの治療費の打ち切り通告)
交通事故の被害者として治療を続けていくと、加害者側の任意保険会社から、「そろそろ治療を終了してください」とか、「治療費を支払うのは来月くらいまでで、それ以降は出しませんよ。」等という連絡が来ることがあります。この治療費の打ち切り通告に対してどのように対処していけばよいでしょうか。

(任意保険会社が治療費を支払っている理由)
 任意保険会社が治療費を支払っているのは、法律上どのように考えられるかについて、まず押さえておきましょう。
 交通事故で被害を受けると、加害者に対して、損害賠償請求ができます。
 あくまでも、損害賠償請求できるのは、「加害者に対して」であって、任意保険会社に対してではありません。
 では、任意保険会社は、本来誰に支払いをするのかというと、「加害者に対して」です。
 加害者が被害者に対して損害賠償を支払い、それを保険会社に対して支払いを請求する(保険金請求)というのが、保険のもともとの発想です。
 しかし、加害者が一旦支払って、保険会社に請求するというのは二段階のプロセスを踏むことになります。また、加害者も被害者と交渉して損害の支払いをして、保険会社に請求するというのでは、非常に面倒です。そこで、保険会社が、加害者の支払う分を直接被害者側に支払ってしまうということが行われているのです。

(損害賠償として認められる治療費とは)
 このような直接払いをしていく任意保険会社は、「損害賠償として適正な治療費を支払うこと」を考えています。任意保険会社も営利事業ですから、できるだけ治療費を安く抑えたいということを考えている担当者もいるかもしれませんが、本来考えるべきは、「法律上適正な治療費」です。
 そこで、「法律上適正な治療費」とは何かということですが、覚えておいていただきたいのが、”後遺障害が残る場合は、原則として、症状固定前の治療費のみが支払われる”ということです。
 症状固定というのは、これ以上治療を加えても、改善が見込めないことをいいます。
 本当に生身の人間の体で、そんなことになるのかどうか、私は医者ではないのでよくわかりません。「症状固定」という考え方で損害賠償請求は考えられているのだということをおさえていただければよいでしょう。
この考え方からは、症状固定前は治療の対象となり、治療費を原則として支払うが、症状固定後は後遺症の問題であるから、治療は原則として必要ないという考えになります。
 つまり、治療費の支払いは、症状固定までであり、それ以降は、原則、法律上の適正な治療費ではないということになります。
 任意保険会社から見れば、症状固定時が治療費の打ち切りポイントであるのです。

(症状固定はどのように決まるか)
 症状固定となっているのかどうか、またその時期というのは、基本的には主治医の意見が尊重されます。
 ですから、任意保険会社の担当者は、主治医に被害者の症状固定の見込み時期を照会して、主治医の回答をもとに、治療費の打ち切りを通告するのが原則です。 
 もっとも、交通事故で多発するむち打ちについては、症状固定までの時期が3ヶ月~6ヶ月という医学的知見があって、任意保険の担当者もそのことを知っているので、むち打ちの場合は、主治医への照会をせずに、被害者側に治療費打ち切りを通告することもあるようです。

(任意保険会社からの治療費の打ち切り通告への対処方法)
 長々とお話をしてきましたが、要点をまとめると次のようになります。
①被害者側が請求できる治療費は、症状固定までのものであり、症状固定後は治療費は原則請求できない。
②症状固定時期は、基本的には主治医の意見が尊重される。
 このことから、打ち切り通告をうけたときの対処方法は次のようになります。
ア 主治医に自分の症状固定時期はいつごろと考えているのか、その理由を聞くべきです。
 また、その際、任意保険会社から症状固定時期について照会があったか、それにどのように回答したのかも聞いてください。   
イ 主治医が症状固定時期がまもなくであり、これ以上は後遺症の問題であるという説明であれば、後遺障害診断書を書いてもらうよう要請することになります。
ウ 主治医はまだ症状固定と考えていない場合
 ・任意保険会社の担当者が主治医に照会もしていなかったときは、担当者に、主治医の意見は、まだ症状固定ではないということであったので、その点を照会して治療費の支払いを継続してほしいと要請することになります。
・任意保険会社の担当者が主治医に照会をしていたときは、主治医の考えと任意保険会社側の考えが食い違っていることになります。なぜこの食い違いが生じたのかを任意保険会社側に聞くべきでしょう。どのような食い違いが生じているかにより、対処方法が異なってきます。

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交通事故被害者が利用できる弁護士費用特約

2021年11月17日 | 交通事故民事
(交通事故被害者が利用できる弁護士費用特約)
 交通事故の被害者になってしまったときに活用すべきものとして、弁護士費用特約があります。
 自分や家族の誰かが、自動車の任意保険に加入していれば、この弁護士費用特約の有無について確認してみてください。

(弁護士費用特約とは)
 弁護士に相談したい、弁護士を依頼したいというときに活用できるのが、弁護士費用特約です。交通事故の被害者になったときに使える特約です。
 あくまでも、自分(又は家族)の任意保険であることに注意してください。
 「特約」とあるように、任意保険に加入していても、当然にこの保障がでるのではなく、「弁護士費用特約」に加入している必要があります。加入しているかどうかは、任意保険証券をみてください。「弁護士費用特約」「弁護士特約」という文字が記載されていれば、この特約に加入していることになります。
 それでもよくわからなければ、保険証券に記載してある保険会社に電話で問い合わせするとよいでしょう。

(弁護士費用特約の内容)
 ①弁護士への相談、②弁護士への依頼のときにその費用を一定限度で保険から支払ってもらえます。弁護士特約のみを使っても、等級は下がりませんので、その意味では使った方がお得な内容になっています。
 ①弁護士への相談
 相談費用の合計が10万円まで使えます。
 弁護士の相談費用は、一般的には30分で税込み5500円ですので、30分の相談ならば18回使えます。
 通常はそこまで弁護士に相談することはないですから、相談費用としては十分保険で賄えます。
 ②弁護士への依頼
 弁護士の着手金・報酬金合計で300万円まで使えます。
 相談費用とは別枠ですので相談費用で10万円を使ってしまっても、弁護士への依頼費用は300万円までという枠は変わりません。もっとも、これはあくまで枠でして、実際にいくらまで保険で支払ってもらえるかは、保険会社内の内規があるようです。
(まとめ)
 以上弁護士費用特約について説明をしてきましたが、弁護士特約のみを使っても、等級は下がらないというのが、被害者にとっては優しい保険内容です。この特約に入っていない状態で弁護士に相談や依頼をすれば、その分は自分持ちということになってしまいますが、特約に入って入れば、負担がかかりませんので、経済的な負担を考えずに、弁護士にアクセスできることになります。
 弁護士の知り合いがいなければ、保険会社が紹介してくれますが、自分で弁護士を選んでもよいので、その点からも自由度のある使い方ができます。

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民事訴訟の流れを把握する

2018年05月22日 | 交通事故民事
【民事訴訟の流れをなぜ把握するのか】
「弁護士さんに裁判を依頼しているのだが、何をやっているのかさっぱりわからない。」「ちゃんとした説明がない」「説明はされているがよくわからない」というご相談をいただいたりします。
お話をよく聞いていると、弁護士から裁判所での期日の報告書は届いており、それなりに丁寧に書かれていたりもします。
つまりは、弁護士の説明と依頼者の聞きたいことが合致していない。
弁護士の説明は、依頼者の求めるものと違うので、「ちゃんとした説明がない」等というリアクションになってしまうのです。
まずは、民事訴訟というものの流れを大雑把に理解していただくことが必要ですが、そのような説明がされていないことが多いので、参考にしてみてください。
なお、ここでの説明は民事訴訟の流れを踏まえてはいますが、どこの本に載っているのでもなく、「こう説明したらわかりやすいかな」と私が考えているだけですので、その点はご容赦ください。

【訴状はテーマの提示】
民事訴訟はまずは原告が「訴状」を裁判所に提出することから始まります。
被告は訴状についてこたえる「答弁書」というものを提出します。
原告が提出する「訴状」は民事訴訟のテーマだと思ってください。
テーマは原告が決めます。
例えば、離婚訴訟ですとテーマは、離婚することだったり、親権者を誰にするかだったり、養育費をいくらにするかだったりしますので、何を求めるかを決めて訴状に書きます。
このテーマを出さないことには裁判は始まりません。
テーマは原告が設定するものであり、裁判所はそれを見ているだけです。
訴状でいちばん大事なのはこのテーマの提示でして、できるだけ漏れのないようにテーマを提示する必要があります。

【被告側の応答】
原告がテーマを提示したことに対して、被告はどう応答するのかを決めることになります。
まずはざっくりとした方針を決め、訴状に対して認否をしていかなければなりません。
「認否」というのは、訴状に書かれている事実について認めるのか否認するのか、ということをいいます。
この認否は「答弁書」やその後に提出する「準備書面」といったものに記載することになりますが、方針を決め、その方針のもとに書面を記載していくことになります。
原告側に比べて被告側は準備時間が短いのが通常ですが、このような作業を疎かにすると後々苦労することとなります。

【その後は争点を整理するための主張・証拠の提出の応酬】
訴状で訴訟のテーマが出され、その後被告側がテーマに対する応答をしていきますと、次は原告側、被告側双方が主張・証拠を提出することの応酬になります。
民事訴訟上の用語では「争点整理」といいます。
争点を整理するためには、原告側、被告側そして裁判所が的確に争点を把握し、主張・証拠を提出していく必要がありますが、必ずしも噛み合った議論になるとは限りません。
場合によっては非常に散漫になったり、関係のないことを延々と論じたりしている場合もあります。
このようなときに、依頼者からは「何をしているのかわからない」という声がでやすくなります。
依頼者サイドとしては、弁護士に「何が争点となっているのですか。その争点についてどのような主張がそれぞれ出されているのですか。よくわからないので争点の整理表のようなものを作って見せていただけませんか」とリクエストするのも良いかと思います。
争点の整理というのは、常に「何が争点となっているのか。その争点についてどのような主張がそれぞれ出されているのか。」を意識していなければならないのですが、弁護士もこれを頭の中でやっていることが多く(かくいう私もそうです)、中にはなんとなくしか考えていない弁護士も少なくないと思われますし、そのような弁護士は依頼者にもうまく説明ができないでしょう。そのためには、簡単でも争点の整理表を作成してもらえば双方の理解に役立つのではないかと思います。

【争点の整理が終われば尋問、判決】
双方の主張が平行線になってきて、証拠も提出されれば、争点の整理が終わったと裁判官も考えますので、その後は必要があれば尋問を行い、判決という流れになります。
現在では尋問はよほどの大きい案件でもない限り、半日程度で終わらせますので、尋問は期間的にはそれほど長くなりません。
一番長くなるのは、争点の整理手続き、つまり主張・証拠の提出の応酬をしている時間ですので、訴訟の流れを掴むには争点整理で何が行われているのかを把握するのが重要です。

【和解について】
以上ざっと判決までの流れを見てきましたが、実は重要なことを書いていません。
訴訟上の和解についてです。
民事訴訟では「和解」というものが非常に重要で、かつ、多くの案件は和解で終了しますので、和解について書かないといけないのですが、和解のタイミングというのはいろいろあってこれを入れてしまうと流れがわかりにくくなってしまいますので、今回は和解については書きませんでした。
この点についてはまたいつか書きたいとと思っています。

(写真は本文と関係ありません)

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最近の判決は短めになってきましたが、その理由について考えてみました

2018年05月07日 | 交通事故民事
20年くらい前と比べると民事とか家事の判決というのはだいぶコンパクトになったような気がします。簡潔になった。これはどういう原因からか厳密にはわかりませんが、裁判官が忙しくなった。そういうことも影響しているように思います。

民事事件の件数は全体的には減少傾向なので、裁判官が以前に比べて忙しくなっているというのは、なぜなんだろう?と思ってしまいます。しかし、裁判官が忙しくなっている、余裕を失ってきているというのは事実のようでして、裁判官が書く論文も減っているようですし(判例タイムズも今や月刊・以前は月2回でした)、現役裁判官が本を出版するのも減っているように思います。

判決がコンパクトになってきているのは、裁判官が忙しくなっているというのとは別の原因もあるのかもしれません。最高裁長官を務めた矢口洪一は、「判決を見てきたように細かく書くのはやめたほうがいい。民事、刑事の関係なく、書けば書くほど『ここも間違っている。ここも違っている』ということになる。書かなければいいんです」といっている。

さらに、「裁判の本質は精緻な判決を書くことにあるのではない」とまで言っている。矢口洪一は海軍の軍法会議(会議とありますが、軍規違反の裁判のことです)の経験があって、「1日20件くらいは当然やりますからね」というスピード感なので、そういうのが念頭にあるんでしょう。1日20件も判決をするのでは、そんなに詳しい判決を書くことはできないですから。

矢口洪一の言説は、発言の当時「精緻な判決を書くのがよい」という考え方があったことが透けてみえます。20年以上前に私が出合った判決はかなり詳細なものであり、それだけに判決が出るのも時間がかかってました。

今は、民事の場合は弁論終結したら2ヶ月後には判決言渡しが原則ですからね。一審も二審もその辺はおんなじです。これだけのスピード感だと精緻な判決は書いていられないというのが裁判官側にあるのかなと思ってます。

つまり、今風にいうと判決は「ざっくり」なんですね。事実認定もざっくり。法の適用もざっくり。結論もざっくり。ところが、依頼者サイドからすると今の判決には不満がたまってます。「何でそういうふうな事実認定になるのかわからない」という感想が多い。

事実認定がざっくりというのは、当事者間に争いがない事実、客観的な証拠から確実にいえることだけ認定すること。当事者は判決を読んで、いろいろ主張したことは何だったのという徒労感に襲われる。最近そんな声が多いです。

それで、納得できないから控訴する。控訴しても和解勧試もなくてあっさりとした一審と同じような判決だと全然納得できない。それは弁護士サイドでもおんなじです。裁判官がどんな思考でそう考えるのかがわからないことが増えました。だから、依頼者に説明しようにも説明できない。

その訴訟はその判決で終わりになるけれども、紛争というのはそれだけじゃないことがあります。交通事故の損害賠償請求なら1回限りで、それ以上の紛争拡大はないのが普通でしょうが、夫婦間の紛争とかは火種がいくつも転がっています。

今の裁判官は「紛争の全体的解決」ということは言わなくなりましたね。以前はこのスローガンのもとに和解を熱心に裁判官が主導していたはずですが、いつのまにか下火になった。紛争を全体的に解決するよりは、今係属している訴訟の処理だけに専念したいようです。

だから、紛争の火種が残っているところでは、紛争が継続していく。その顕著な例が家裁での調停・審判事件の激増ではないでしょうか。

詳しいだけの判決が良いとは思いませぬが、詳細な判決に当事者が納得することもあります。一審でもめにもめて和解も全然ダメ、これは控訴必至だと弁護士サイドが思っていた事案で、判決がやけに詳細で今風な判決でなかったのがありましたが、当事者双方とも判決に納得。控訴なしで終わりました。

その判決はこうも考えられるし、こうも考えられる、でも結局これはこうだろうみたいな事実認定で、おまけに判決期日が延期で弁論終結から2ヶ月では言渡されなかったのですが、言渡しの遅れはともかく、そういう事実認定が人を納得させることもあるのだと認識しました。


(写真は本文と関係ありません)

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控訴審の審理とはどのようなものでしょうか

2018年03月19日 | 交通事故民事

【はじめに】
この記事では控訴審について説明致します。
扱うのは民事事件や人事訴訟(例えば離婚訴訟)の控訴審についてです(刑事事件の控訴審は 手続きはかなり違いますので、この記事では扱いません)。

【控訴とは】
一審の判決への異議申立てを「控訴」といい、控訴は14日以内にしなければなりません。
一審の判決が出ると、数日のうちに控訴をするのか否かの決断を迫られることになります。
控訴審がどのようものか知っておくことも必要かと思います。

【控訴審の手続きの流れ】
控訴審の手続きの流れをおさえておきましょう。
ア 控訴の申立て
一審判決をした裁判所に控訴状を提出します(判決受領から14日以内)。この控訴状には控訴の詳しい理由を書かなくても大丈夫です。
イ 控訴理由書の提出
控訴の申立てをした日から50日以内に控訴理由書を提出します。
ウ 控訴審の審理期日
東京高裁ですと控訴理由書提出から1~2カ月以内という扱いのようです。
多くの事件は審理は1回で終了となってしまいます。ここが一審との大きな違いです。
審理終了と同時に判決期日が指定されます。
東京高裁ですと、審理期日から2ヶ月程度となることが多いです。
エ 和解又は判決
多くの案件では裁判官により和解が試みられます。判決期日までに和解の成立の見込みがないと和解協議は打切られ、判決となります。

【控訴審はどのくらい時間がかかるか】
判決から控訴理由書提出までは約2ヶ月です。
細かくみると
ア 判決から控訴状提出まで14日
イ 控訴状提出から理由書提出まで50日
正確には64日ですが、約2ヶ月として覚えておいてください。

理由書提出から審理期日判決までが3ヶ月から4ヶ月です。
細かくみると
ウ 理由書提出から審理期日まで1ヶ月〜2ヶ月
エ 審理期日から判決まで2ヶ月

これを合計しますと、一審判決から控訴審の判決までは5ヶ月〜6ヶ月となります。
これはあくまでも通常多く見られるケースの最速の日程であり、裁判所からみて重大な案件や複雑とみられる案件はこれよりも遅くなります。

【控訴審では裁判官は3名の合議】
一審の裁判官は1名が担当するということが多いのですが、控訴審の審理は3名の裁判官で行われます。
これは一審の判決が妥当かどうかを3名で慎重に検討するためです。
実際には、3名の裁判官でも役割分担があります。
裁判長は事件の統括役、他の2名の裁判官のうち1名が担当となり、記録を細かく見る役割となります。
あとの1名は合議で妥当性をみる係りということになりましょうか。
実質的には、担当裁判官と裁判長で流れが決まるといっても良いのかなと思います。


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損害賠償請求における「弁護士費用」

2018年03月05日 | 交通事故民事
 損害賠償請求の訴状や判決では、損害として「弁護士費用」という項目があります。
 ここでいう「弁護士費用」というのは、実際に支払う弁護士費用とは額が異なってきますので、注意が必要です。

【具体例】
具体例をあげてご説明致します。
依頼者の方がA弁護士に損害賠償請求の訴訟を依頼しました。
損害賠償の請求額は300万円です。
A弁護士の弁護士費用は次のとおりでした(消費税は考えないことにします)。
着手金=24万円(請求額300万円の8%)
報酬金=判決又は和解で獲得した金額の16%(例えば、300万円であれば48万円、100万円であれば16万円になります)

裁判をして依頼者の得られた金額が100万円とすると、A弁護士に支払う金額の合計は
24万円+16万円=40万円
になります。

では、この弁護士費用を加害者側に請求できるでしょうか?

【実際に支払った弁護士費用を全額は請求できるわけではないが、請求額の1割は請求できる】
結論は、実際に支払った支払った弁護士費用を全額は請求できるわけではないが、請求額の1割は請求できるということになります。

 交通事故の損害賠償で弁護士がよく使用する「赤い本」というものがあるのですが、ここにはこう書いてあります。
「弁護士費用のうち、認容額の10%程度を事故と相当因果関係のある損害として加害者側に負担させる」

訴状で300万円を請求するとなると、弁護士費用を上乗せして、
300万円+30万円(これが弁護士費用分の上乗せ)=330万円
を請求するということになります。

裁判官は判決の場合は、
100万円+10万円(これが弁護士費用分の上乗せ)=110万円
という判決を出すこととなります。

このように実際に支払う金額と、裁判所が認める「弁護士費用」は異なる金額となります。
訴状や判決で「弁護士費用」と書いてあるものは、弁護士を依頼してあるから10%上乗せするという意味なんだとご理解いただければよいかと思います。

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文書送付嘱託とは

2017年12月07日 | 交通事故民事
今回は、裁判でときどき見かけられる文書送付嘱託について考えてみます。

1 文書送付嘱託(ぶんしょそうふ しょくたく)とは何ですか?
⇒裁判所を介して文書の取寄せを行うことです。

 例えば、交通事故で被害者が加害者を訴えたとします。被害者は後遺障害が残ったと主張していますが、加害者は被害者がそのような後遺障害が残ったかどうか疑問に思っているので、被害者の医療記録を見て検討したいと考えています。
 このようなときに加害者側から裁判所を通じて、病院の医療記録を取り寄せてほしいという申請を出し、裁判所がこれを認めれば、裁判所を通じて医療記録を取り寄せることができます。

2 なぜ裁判所を介して行わなければならないのですか。
⇒裁判所からでなければ文書の送付を要請できないからです。

 先ほどの例で見ますと、加害者側が被害者の医療記録を病院に直接要請しても、病院側は応じてはくれません。これは個人情報保護の観点からです。
 しかし、裁判所が正式に嘱託してきた場合は、例外として医療記録を裁判所に送付します(厳密にはコピーを送付します)。
 このように直接文書を入手できない場合に、裁判所を通じて文書を取り寄せるのが文書送付嘱託の機能です。

 なお、「文書」送付嘱託となっていますが、純粋な文書だけでなく、CTやMRI等の画像も対象になります。 

3 文書の取り寄せの費用はどちらが負担するのですか?
⇒申請をした方です。
 裁判所が嘱託をする形式にはなっていますが、裁判所からは支払われませんので、申請をした側が必要な費用は支払うことになっています。

4 相手側の取り寄せる記録というのは、こちらでも見る事はできるのでしょうか。
⇒閲覧・謄写可能です。

先ほどからの例でみると、加害者側が申請したもので医療記録が取り寄せられた場合、被害者側も医療記録を見て、コピーを取ることは可能です。

5 取り寄せた文書はどこに保管されるのですか。
⇒裁判所が嘱託をした文書なので、原則は裁判所が保管します。
しかし、東京、大阪、名古屋などの交通事故の専門部署がある裁判所では、医療記録を全て保管していては膨大なスペースを取るため、取り寄せ申請をした側(先ほどの例でいえば加害者側)に保管させるという扱いをしています(一定の要件を満たした場合のみ)。



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交通事故の後遺障害の認定

2017年11月07日 | 交通事故民事
 交通事故で後遺障害が残った場合、まずは後遺障害の認定を受けるのが一般的です。

 方法としては二通りあります。

A 任意保険会社を通じて事前認定手続きをとる(事前認定)
B 自賠責保険会社に被害者請求をする(被害者請求)

AもBも自賠責で後遺障害が認定される(もちろん「非該当」という認定もあります)ことは代わりがありません。

二つの違いは
1 提出先(Aは任意保険会社、Bは自賠責保険会社)
2 自賠責保険から金額が支払われるか否か(Aは後遺障害の認定だけ求めるものなので自賠責保険から保険金が支払われない手続きです、Bは保険金の請求をするので後遺障害が認定されれば保険金が支払われます)
3 被害者請求のほうが画像を自分で病院に取得しなければならず、その分手間がかかる
ということにあります。

 事前認定と被害者請求のどちらが良いのかというのはケース・バイ・ケースだと思います。
 
 例えば、病院に行くなどの手間が苦にならないのであれば、早めに保険金がもらえる被害者請求の方が良いということになりますし、逆に病院に行くのが手間がかかって面倒だということになれば、事前認定を選ぶということもあります。

 その後訴訟をしていくのか、それとも話し合いで進めていくのかということも影響します。

 自賠責の被害者請求で保険金を支払ってもらっても、トータルでもらえる金額は変わりありませんから、話し合いで済ませたいというのであれば、事前認定を選んでも良いですし、訴訟をしていくということであればある程度時間がかりますから、被害者請求をして保険金を少しでも確保しておくということになるでしょう。


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陳述書はなぜ提出されるのか

2017年09月17日 | 交通事故民事
前回、陳述書について記事にしたら、ツイッターで引用してくれた方がありまして、書いている方としては、誰が見てくれるものか誰も見てくれないのか、どう思ってくれるのかもわからずに書いているので、こんな風な形で反応していただけると非常に嬉しいものです。


というようなこともありまして、陳述書について続きです。


そもそも何のために陳述書というものを裁判所に提出するのか?


民事の裁判というのは、書面での証拠重視なのです。お金を貸したから返してくれという裁判では、借用証書が証拠の決めてとなります。お互いの信用で貸したので、借用証書など作りませんでしたというのでは、書面の証拠がないので貸金訴訟では負けてしまいます。


口頭での話しというのは、後から作ることができるものですから、裁判官は口頭での話しというのはあんまり信用しない。鎌倉時代の判決でも、そんなのがあって、書面と口頭での話しと違うけど書面の方が信用できるよねという鎌倉時代の判決があるほどです。それほど、口頭での話しは眉につばしてかかれというのは裁判での鉄則な訳です。


ということで、民事の裁判では書面での証拠(これを「書証」といいます)を提出するのが原則で、書証の質で裁判の勝ち負けは決まるといっても良い。


ところが、ここで一つ問題があります。

人間、すべての出来事を書面にしているわけではないので、書証を提出したくても出せないことがあります。


交通事故裁判の場合、どのような交通事故だったのかということはある程度は自動車の損壊状況だとかから分かるのですが、それだけではよく分からないこともある。そういうときは人の供述を決定的な証拠とせざるを得ないのです。


このように供述にしか頼れない場合に陳述書の出番となります。


陳述書の出番は、書面の証拠(書証)では立証しきれないところにあるというワケです。

ですから、書証と矛盾するようなことは書かないのが鉄則。矛盾がないように書いていかなければなりません。

書証を引用していくのも大事。

陳述書の書き方の秘訣ってものがあります。


ネットの記事をザーッとみまたしたが、この辺のことは書かれていないですねぇ。結構、「弁護士さんから陳述書を書いてと言われた」「陳述書は当事者が書くものです」みたいな記載があって、ちょっと驚きました。


陳述書で書かなければならないのは、書面による証拠がないところで、かつ、立証しなければならないところです。

何でもかんでも書けばよいというわけではありません。裁判官にアピールするように、裁判官が説得されるように書かなければならないんです。


裁判官がどこに目をつけているかというのは、これはやはりプロでないと分からないわけでして、その辺を踏まえて陳述書を書いていかないといけません。


うちの事務所では陳述書は当事者から聴き取りをして弁護士が素案を書きます。書いた上で当事者に見ていただいて議論して仕上げていく。


これが本来の陳述書の作成方法だと思っています。


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