南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

「子どもの虐待防止・法的実務マニュアル」

2020年08月28日 | 未分類
 子どもの虐待関係での実務的な解説書として、「子どもの虐待防止・法的実務マニュアル」(明石書店;日本弁護士連合会子どもの権利委員会編)という本があることを知りました。改訂を重ねて、第6版まででております(2017年)。

 弁護士という視点からだと、この本、児童相談所のインハウスローヤーには大変役立つだろうなあと思うのですが、例えば、児童相談所から虐待をされたと疑われている親からの依頼にはそのままは使えないと感じました。

・子どもの権利委員会が編集者なので、現に起きている虐待からいかに防止するかという視点が主体です。
親は虐待の加害者として描かれているといって良いでしょう。
そのため、親を依頼者とする場合は、この本の目線で対応することは不適切になってくるかと思います。

・この点をもう少し詳しく述べますと、本書は「はじめに」で次のように書いています。
「子どもたちを虐待被害から守るとともに、虐待被害を受けた子どもの回復や自立を支援するためには、児童相談所を中心にしながら、弁護士を含む法律家、自治体職員やNPOなど、さまざまな職種の大人がそれぞれの役割を従前に果たすことが、ますます求められているといえるでしょう。」
 「児童相談所を中心にしながら」というのは法制度上はそのとおりです。
 しかし、児童相談所も人が運営する組織である限り、過誤が紛れ込む可能性は十分あり、批判的視点が必要なはずですが、本書には児童相談所への批判的な視点が見受けられません。
 親が依頼者となる場合は、なんかの形で児童相談所に不満を有していると思われます。
 その不満をいかに掬い取って依頼者の正当な利益に結びつけるかが弁護士にとって求められるものですが、本書を読むだけではそのような発想はほとんど得られないものと思われます。

・本書は親についての記述がないわけではなく、例えば、「再統合」という表題で親へのアプローチが述べられてはいます。
しかし、その視線は、親によりそったものとは言えないように感じられます。
 例えば、本書では、再統合に向けた取組について、家族が支援を受けることの動機づけをあげ、「虐待を行った親に対する援助の効果をあげ、虐待の再発を防ぐためには、親が虐待の事実を認知しかつ児童相談所の援助を受ける動機づけが必要である」との記述をしております。正論ではありますが、これをそのまま弁護士が依頼者である親に述べたとしても、ほとんど何の効果も得られないでしょう。否、下手をすると、弁護士に対して反感を持たれかねません。
 親が虐待の事実を認めること、児童相談所の援助を受けようという気になるためには、場合によってはかなりの時間と忍耐が必要となります。
 そのためには、親が抱える問題点への洞察が必要です。
 しかし、本書ではこの点は驚くほどクールに書かれているだけです。
「虐待が発生する要因、親の抱えている問題にはさまざまなものがあるところ、それらの問題を理解し、解決するため、他機関と連携して、福祉サービスの提供、治療期間等の紹介などの必要な手立てを講じ、親が経済的、社会的、心理的にもゆとりを取り戻せるようにしなければならない。」
 本書の立場はこの記載に集約されているように思われます。
 ここでも正論ではありますが、そこに至るプロセスや親がそのような問題を抱えるに至ったことへの配慮は何らされておりません。

・翻って考えてみれば、これが弁護士の書いた「マニュアル本」主義というものの弊害なのかもしれません。
世にいう弁護士向けのマニュアルは、法律上の制度を実務的に解説したものをいいます。
法律上の制度を述べていくため、問題がもつ法律上の意味以外を捨象していくきらいがあります。
ビジネス法務であれば、それもまた良いかもしれません。
しかし、児童虐待でいえば、なぜ虐待が起こるのかという点についての社会学的問題はカットされ、その点への洞察を得られるような記載もないことで良いのでしょうか。
これが「マニュアル」本の弊害でもありますので、この点についてはくれぐれも注意する必要があるような気がしました。

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児童相談所について(続)

2020年08月27日 | 未分類
(一時保護業務)
 児童相談所の一時保護の根拠規定は、児童福祉法33条にあります。
 虐待については、同条1項が根拠となります。
 児童虐待防止法では、児童虐待に係る通告(児童虐待防止法6条1項)又は市町村等からの送致(児童福祉法25条の7第1項第1号等)を受けた場合、子どもの安全の確認を行うよう努めるとともに、必要に応じ一時保護(児童福祉法33条1項)を行うものとされ、その実施に当たっては、速やかに行うよう努めなければならないとされています(児童虐待防止法8条)。
 この一時保護は2か月を超えてはならないものとされ(児童福祉法33条3項)、2カ月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長は、家庭裁判所の承認を得なければならないものとされています(同条5項)。

(一時保護処分への不服申立手段)
 不服申し立て手段ですが、一時保護(児童福祉法33条1項)については、行政不服審査法に基づき審査請求ができます。
 大阪市の裁決例がインターネットで公開されていますので、参考にしてください。
https://www.city.osaka.lg.jp/somu/page/0000487051.html
 家裁の承認(児童福祉法33条5項)については、高裁に抗告ができます。
 家裁や抗告審である高裁がどのようなポイントを考慮するかは、大阪高裁平成30年6月15日決定(判例タイムズ1459号106頁、判例時報2405号84頁)が参考になります。判例タイムズのコメントには、次のような参考文献が挙げられています。
【参考文献】
 大畑亮祐「2か月を超える一時保護の司法審査導入に関する諸問題(1)」家庭の法と裁判No.14(2018.6)50頁
 大畑亮祐「2か月を超える一時保護の司法審査導入に関する諸問題(2・完)」家庭の法と裁判No.15(2018.8)56頁
 谷嶋弘修「児童虐待の現状・近年の児童虐待防止対策をめぐる法改正について」家庭の法と裁判No.13(2018.4)26頁
 最高裁判所事務総局「児童福祉法等改正関係執務資料(平成29年改正)」平成30年12月家庭裁判資料200号

 児童福祉法33条1項は、「同法26条1項の措置を採るに至るまで」と規定していますので、同項の措置を取れば一時保護は終了します。一時保護が終了していれば、不服申立てをしても、申立ての利益が消滅したものとして、申立ては却下となってしまいます。



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児童相談所について

2020年08月26日 | 未分類
(はじめに)
 児童相談所ってところは、弁護士にとってはわかっているようで、わかってないところでして、児相についてわかりやすい説明がないかと思って、ネット検索してみましたが、今は役所の書いた公式的な文書が検索上位にでてくるせいかわかりませんが、少なくとも自分の問題意識のあるところがコンパクトに書かれている文書がすぐには見つけられなかったものですから、これは自分で調べて書いてみました。

(法律上の設置根拠、千葉県の設置状況)
 児相の設置根拠は、児童福祉法第12条です。
1項に「都道府県は、児童相談所を設置しなければならない」と規定されており、千葉の場合は、千葉県が設置主体となりますが、千葉市が政令指定都市なので、千葉市児相は千葉市の所管となります。
 千葉県内にある児相は以下のとおりです。
①中央児童相談所(千葉市にあるが、千葉県が所管)
成田市、佐倉市、習志野市、市原市、八千代市、四街道市、八街市、印西市、白井市、富里市、印旛郡
②市川児童相談所
市川市、船橋市、鎌ケ谷市、浦安市
③柏児童相談所
松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市
④銚子児童相談所
銚子市、旭市、匝瑳市、香取市、香取郡
⑤東上総児童相談所(茂原市)
茂原市、東金市、勝浦市、山武市、いすみ市、大網白里市、山武郡、長生郡、夷隅郡
⑥君津児童相談所
館山市、鴨川市、木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市、南房総市、安房郡
⑦千葉市児童相談所(千葉市所管)

(児相の業務)
 児童(その定義は児童福祉法4条)を対象に以下のような業務内容を行っています(児童福祉法11条1項2号)。
・児童に関する様々な問題について、家庭や学校などからの相談に応じること。
・児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行う。
・児童及びその保護者につき、前号の調査又は判定に基づいて必要な指導を行なうこと。
・児童を一時保護所に保護し、その後親に戻すか、児童養護施設などに預けるか決定する。

(児相の職員)
 各児童相談所には、一般の行政職員に加え、精神衛生の知識のある医師、大学で心理学を学んだ児童心理司、また児童福祉司(2年以上の実務経験か、資格取得後、2年以上所員として勤務した経験が必要)などの専門職員がいます。
 また、平成29年4月以降、児童虐待防止法改正により、都道府県は、児童相談所に、児童心理司、医師又は保健師、指導・教育担当の児童福祉司(スーパーバイザー)を置くとともに、弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行い態勢強化を図ることとなりました。
 厚労省が、弁護士配置の好事例を紹介しています。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2017/01/dl/tp0117-k02-01-05p.pdf

 以前児相の職員に連絡する用事があったのですが、なかなか連絡がつかなったような記憶があります。
 そのときからだいぶ経ったので、児相の状況も改善されたと思っていたのですが、2019年9月21日号の東洋経済には「パンクする児童相談所」という題で児相職員の疲弊状況についてのレポートが掲載されていました(有料記事なので、無料では一部しか読めません)。
2019年9月21日号
独自調査|月の残業100時間超も…
パンクする児童相談所

大幅な増員が計画される児童福祉司だが、児相の現場の疲弊は深刻だ。
井艸 恵美:東洋経済 記者 /
辻 麻梨子:東洋経済 記者
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21513


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簡裁で受付けても地裁に移送されることがあります

2018年02月16日 | 未分類
【はじめに】裁判所というのは、地裁やら家裁やら簡裁やら、そのほかに高裁や最高裁まであって、なんでこんなに分かれているのかと不思議に思われる方もおられることかと思います。

これを全部説明しているといくら時間があっても足りませんので、本日は地裁と簡裁についてお話しします。
地裁の正式名称は地方裁判所、簡裁の正式名称は簡易裁判所です。

【地裁か簡裁かは請求額によります】裁判を起こす(訴訟を提起する)のに地裁なのか簡裁なのかというのは、請求金額によって決まります。

 被告に請求する金額が
  140万円以下→簡易裁判所
  140万円を超える場合→地方裁判所
です。

それでは140万円以下の金額、例えば30万円とか50万円の請求だったら簡裁で最後まで面倒を見てくれるかというと、これがそうとも限らないからややこしい話です。

【簡裁の得意分野】
これは簡裁が得意とするものと、不得意とするものがあるからです。

簡裁の得意なものとして、貸金の請求事件
があります。今ても簡裁で一番多い事件は貸金請求事件ではないでしょうか。

貸金業者からの取り立てのための請求を代表格として、貸金請求事件は簡裁が最も多く受付けるものの一つです。

交通事故事件も簡裁の守備範囲です。
140万円以下の請求に限られますから、人身事故よりも物損事故の割合が多くなります。
「わかりやすい物損交通事故紛争解決の手引」という本が民事法研究会というところから出版されているのですが、著者は簡裁の裁判官です。

【簡裁は事件を地裁に移送することができる】
それ以外の事件となると、簡裁はあまり得意ではないらしく、簡裁で判断するのを嫌がります。

裁判官が判断を渋るということを不思議に思われる方もあるかもしれませんが、簡裁の裁判官に味方する規定が民事訴訟法にはちゃんとあるのです。

(簡易裁判所の裁量移送)
簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる(民事訴訟法18条)

法律の条文というのはどうも読みにくいものですが(20年以上弁護士をしていますが、未だ条文の取っ付き憎さには辟易しています)、つまりはこういうことです。
「簡裁の裁判官が『相当』と思ったら、地裁に移送して良いよ」

これはまた随分簡裁に甘い規定ですが、結構活用されています。

【地裁に移送される事件の例】
例えば、労働法に絡む事件。損害賠償請求といっても、交通事故のような件数の多いものではなく、典型的でないもの。

このような事件については、ある程度審理を進めて、和解ができそうにないなと思ったところで、伝家の宝刀を抜いて地裁に移送するというのが簡裁の手法です。

地裁に移送されますと、地裁の担当の裁判官が決まり、そこでまた審理が始まります。

このように簡裁で全てやってもらおうと思っても、簡裁裁判官が地裁に移送するということがありますので、注意が必要です。

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年度末、年度初めは裁判所の期日が入りにくい

2018年02月15日 | 未分類
【年度末、年度初めは期日が入りにくい】
裁判所の期日というのは、1ヶ月ごとに設定されます。
例えば、2月1日に期日があると、その次の期日は3月の上旬ころという感じです。

ところが、裁判所の都合で期日が入らない、入りにくいという時期があります。その一つが年度末~年度初め(3月下旬~4月上旬)です。

この時期に入りにくいのは、裁判所で人事異動があるからです。

民事訴訟に直接影響があるのは、裁判官と書記官の異動です。
裁判官の異動と書記官の異動は基本的には4月に行われます。

【裁判官の異動】
裁判官の異動の目安は3年です。
もちろん3年以上という方もいますが3年位経つと、この裁判官はそろそろ異動かなと思ったりします。

裁判官がどのような異動歴をもつかは
 新日本法規の裁判官検索
というサイトがありますので、私はいつもこれで裁判官の異動歴を調べています。

 異動の予定のある裁判官は、3月末から4月上旬にかけて引っ越しの手続きをしなければなりませんし、事件の引継の準備もしなければなりません。
 異動先では、係属している事件を引き継がなければなりません。
 異動してきた裁判官は、その事件の記録を一から読んで、頭にいれなければなりませんから、赴任してきてからすぐに法廷というのをいれることができません。
 それで大体4月の最初の2週間程度は期日が入りません。

【書記官の異動】
裁判官が異動しなくても、書記官の異動はあります。
裁判官と書記官のペアは1年、長くても2年のようですね。 
書記官も全ての事件記録に目を通す必要がありますから、異動時期前後は非常に忙しいのではないかと推察しております。

【2月下旬の次の期日は4月になってしまうかも】
2月下旬の次の期日というのは、1ヶ月後ですと3月下旬になりますから、期日が入らない可能性が高くなります。
そうすると、4月中旬から下旬の期日ということになります。
まだ、2月中旬ですが、そろそろ年度末、年度初めを意識する季節になってきたなと思います。

まだまだ寒いですが、季節は春に向かって進んでいます。





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弁護士がインフルエンザになったら期日はどうなるか(民事事件の期日変更)

2018年02月01日 | 未分類
今年もインフルエンザが大流行しています。

弁護士も風邪もひけば、インフルエンザにかかるときもありますので、そのようなときに裁判所の期日は どうなるのか? について 本日はお話しいたします 。

結論からいいますと、民事事件の期日を変更してもらうことで対処することが可能です。


民事事件の期日は 、一定の要件を満たせば変更することができます。

法律では次のように規定されています。

「口頭弁論及び弁論準備手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り許す。ただし、最初の期日の変更は、当事者の合意がある場合にも許す(民事訴訟法93条3項)。

この規定の意味は次のとおりです。
1 最初の期日変更 、つまり期日の変更が初めての時は当事者の合意があれば裁判所も期日の変更を認めますということ。

2 しかし2回目以降 については、当事者の合意があっても 期日の変更は「顕著な事由」がないと 裁判所は認めませんよとなっています。

このように規定されているのはの 、当事者が馴れ合いで期日変更を繰り返し、 裁判所の処理が遅滞するのを避ける ということにあります。

ですので、最初の1回目の変更は仕方ない、当事者の合意があれば変更は認めてあげるけれども、2回目以降は厳しくしますよというのが法律の立場なわけです。

弁護士がインフルエンザにかかった場合は 、医師から外出の禁止を指示されますので まず相手方も同意してくれますし、同意がなくても「顕著な事由」に当たるものと考えられます。


法律の鬼ではないので、 このように期日の変更という弾力的な運用が可能となるような規定が入っています。

これまで述べてきたのは民事事件の期日変更ですが、刑事事件は民事事件よりも 期日の変更が認められにくいです。

刑事事件は裁判員裁判もあり、そう簡単に期日変更が認められてしまうと民事事件のときよりも広範囲に影響が生じてしまうということがその理由です。

そういう意味で 刑事事件の弁護士(弁護人)を務めるのは 体力が必要ですし、体調管理がより一層 求められることになります。民事事件の場合は 刑事事件ほどではありませんが 、依頼者に 迷惑をかけてしまうのは間違いないことですので やはり体調管理には 気をつけないといけません。



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日馬富士の傷害事件。検察は略式起訴

2017年12月29日 | 未分類
混乱が続いていた日馬富士の傷害事件ですが検察は略式起訴としました。


今回はこの略式罰金ということについて考えてみます。


1 検察官にはどのような選択肢があるのか


傷害罪は 懲役刑と罰金刑があるので、検察官は被疑者をどちらかを選択することになります。


A 略式裁判で罰金にしてもよい⇒略式起訴(罰金)
B 正式裁判にするのか(公判請求)⇒懲役刑を求刑


 日馬富士のケースではAの方を検察官が選択したということになります。略式罰金にするケースは、公判請求をするケースよりも、情状として軽いと検察官が見ているケースです。


2 日馬富士は略式起訴に同意しないという選択肢もあった


 略式起訴するときに被疑者の同意が必要です。


 罰金にするのは有罪が前提なので、有罪か無罪かを争っている被疑者は略式裁判の手続に乗せるのは適当でないからです。


 事実を争う場合は、略式起訴するよという検察官の誘いを蹴って、略式起訴には同意しないという選択をすることになります。


 日馬富士は事実については争う気はなかったようで、略式起訴に同意しました。


日馬富士の弁護人のコメントで「検察官から略式起訴手続の説明を受けた際にも、納得の上、異議なく直ちに応諾した次第です。」というのは、この同意のことを指しています。


3 日馬富士のこの後の手続き


 被疑者が略式裁判に同意すれば、検察官は、被疑者を簡易裁判所に起訴します。12月28日にはこの手続きまで行われました。


 今後は簡易裁判所に手続きが移ります。


 簡易裁判所は検察官から提出された証拠を検討して、

1 罰金が相当であると判断した場合→罰金の命令を出す
2 罰金が相当でないと判断した場合→正式裁判が相当であるとの命令をだす
こととなります。


 ほとんどは1のケースとなり、2となるのはかなり例外です。

 ですので、略式起訴されたとなれば、だいたい「罰金となって終わりですね」と考えるのが普通です。


最終的な処分は裁判所が決めるタテマエにはなっていますが、実務の運用からすると結論が見えているということは多々あるのですが、この運用もその一つです。




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賃貸借契約の保証人は要注意

2017年10月02日 | 未分類
「他人の連帯保証人にはなってはいけない」とはよく言われることです。

私も子どもの頃から親にそう言われ育ちました。
その言いつけを守って、弟がアパートの賃貸借契約をする際にも連帯保証人となることを渋ったことがありましたら、それを親が聞きつけて、「弟のアパートの賃貸借契約くらい保証してやれ!」と怒られましたが・・・(笑)

なんだ例外があるなら、例外があるとはっきり言ってくれればよいのにとそのとき思いましたが、口やかましい私の親でさえ、賃貸借契約の場合は他の場合(例えば、他人がお金を借りるときの連帯保証人)とは違うという感覚が存在していたようです。
しかし、法律は他人がお金を借りるときの連帯保証人だろうが、賃貸借の連帯保証人だろうが容赦してくれません。
しかも、賃貸借契約の連帯保証が怖いのは「更新」されても保証人としての責任を負わなければならないからです。

賃貸借契約が更新されたら、それ以降は保証人としての責任を負わないと思っていませんか。
それは甘い考えで、保証人の責任は更新してもつきまとってきてしまいます。

これは、最高裁がはっきりと結論していることです(最高裁平成9年11月13日判決)。
最高裁のケースは、次のようなものでした。

弟が大家さんからマンションを借りました。契約は昭和60年からで、このときの家賃は月26万円でした。お兄さんはこのとき弟の連帯保証人となりました。

2年後(昭和62年)、契約の更新のときには、お兄さんは賃貸借契約書には署名押印はしていません。不動産会社からも「引き続き連帯保証人としてお願いします」などという連絡一つありません。つまり、更新契約は、弟さんと賃貸人だけで行われ、お兄さんには全く知らされませんでした。

さらに、2年後(平成元年)、更新され、賃料は月額31万円となりました。

またさらに2年後(平成3年)、更新され、賃料は月額33万円となりました。

平成元年も平成3年もお兄さんには同じく何の連絡もありませんでした。

お兄さんに連絡がきたのは、平成5年になってからでした。お兄さんは「弟さんが800万円以上滞納しているから、連帯保証人として支払って下さい」ということをいきなり告げられたのです。

お兄さんとしては、支払えと言われても納得ができません。賃貸人から支払うよう裁判を起こされました。地裁でも高裁でもお兄さんは連帯保証人として支払えという判決です。納得できなかったお兄さんは最高裁まで争いました。

 

最高裁の結論ですか?
残念ながら、お兄さんの負け。つまり、お兄さんは連帯保証人の責任を負いなさいというものです。

お兄さんがあまりに納得しなかった為か、最高裁は理由を詳しめに書いています。
わかりやすく言うと、こんな感じになります。

 

“建物を借りて住むということになると、ある程度長期間住むのが普通ですよね。法律上も賃貸人の方から賃借人を追い出すってのはなかなか難しいんです。保証人になる方は、この辺のことは当然ご存じですよね。いや、知らないとしても、そういう予測はできますでしょ。ですから、更新があってもその更新のときに連帯保証人の署名押印がなくても、保証人は更新の後も、責任を負ってもらわければなりません。それが原則です。
例外はありますよ。ある期間しか責任を負わないというようなことがはっきりと契約書に書いてあれば例外として認めます。はっきりと書いてないと例外とは認めません。
え?例外の範囲が狭すぎるですって?あくまでも例外なんですから、そう広く認めるわけにはいきませんよ。「特段の事情」が必要です。もちろんそれを立証する責任は保証人の方ですよ。”

 

どうですか?
以上が最高裁の考えているところです。
あまりにも一般人の感覚とは別なので、びっくりされると思いますが、残念ながらこれが最高裁の結論です。
ということで、賃貸借契約でも連帯保証人になるのは非常に怖いことなのです。

請求される賃料が多くならないようにするには、定期的に未払いがないかどうかを確認するほかありません。
最高裁のケースも放置していた期間が長かったために、800万円以上の金額に膨らんでしまっているからです。
やはり、連帯保証人は怖いということを肝に銘じておかれた方がよいです。


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紛争解決のためには裁判手続きの利用がやむを得ないときもあります

2017年07月15日 | 未分類
普通に生活している方にとっては、裁判など関わりになりたくないもの、できれば裁判所などは一生行きたくないものとお考えのことと思います。

つまり、裁判の世界というものは、日常との言葉の対比でいえば非日常。正常という言葉の対比でいえば、異常なものという風にみられてしまっています。

しかしながら、人生とは因果なもので、一定割合で紛争というものは発生してしまうものであり、また、その紛争を解決するためには裁判所を利用することが必要になる場合もあります。

弁護士という職業は、そのような裁判所、裁判、調停などを利用する方々の道案内役なのですが、非日常・異常な世界にどっぷりと浸かってしまっていますと、自ずと普通の方々とは違う感覚になってしまうのは否めません。

弁護士の悪いところは、「裁判などするのは大したことではないですよ」とか、「気軽に裁判所を利用しましょう」などと思っているところです。

弁護士としては裁判所に行くのは当たり前。毎日のように行っていますから、日常的、職業的行為になるのですが、一般人にはそう思えませんので「裁判などは大したことではない」などと考えるのは間違いです。

私の考えを申し上げておきますと、生きている限り、紛争というものは多かれ少なかれ起きてしまいます。そのような紛争があっても話し合いで解決するのが一番です。

しかし、人々の間の信頼関係が希薄になり、また、自分の考えに固執する人々が増えてきているような現代にあっては、話し合いをしてもポイントのずれたものになったり、お互いの言いたいことだけを言ったりとなり、話し合いがちっとも紛争解決にならないということが起こります。

そういう場合に紛争を解決するためにやむを得ず、裁判所という機関を利用するのです。裁判というと、どうも「判決」というイメージが強いのですが、民事裁判の大半は「和解」という名前の合意で終了するものであり、一刀両断の判決というのは案外少ないのです。裁判官も「判決」よりは「和解」」を好みます。

つまり、裁判所を利用するといっても、話し合いのプロセスの1つのバリエーションなのです。

もちろん、裁判所を利用しないということもできるのですが、その場合は、交渉が進展せず、泣き寝入りということになりかねません。

そうはいってもやはり裁判は嫌だという方は多いですし、それはそれで仕方のないことだとは思います。ただ、これまでの多くの依頼者に会ってきて感じるのは、裁判をするまでにはかなりためらっていた方が、裁判の遂行の過程では熱心になることです。江戸時代も裁判というものは相当数あったようですし、案外、日本人は裁判嫌いとは言えないのかもと思っています。

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自動車保険ジャーナル1984号

2017年03月16日 | 未分類
自動車保険ジャーナル1984号から興味のあるケースを紹介します。

事例1
4億7000万円の逸失利益を請求したケースがありました。
東京地裁平成28年7月19日判決(自保ジャーナル1984号)

原告は年収3600万円で80歳(平均余命)まで就労可能であると主張した。裁判所は年収は1200万円と認定。就労可能期間も平均余命の二分の一と常識的な認定。
 この原告は会社役員で、会社は同族会社であって、役員給与は自分で決めることができる立場にあったようです。こういう場合は、会社役員報酬として3600万円を得ていた実績があったとしても、役員給与全額を基礎収入とする判断は出ません。労務対価部分しか出ないので、その辺の主張立証が大切です。

事例2
福岡高裁平成28年9月21日判決(自保ジャーナル1984号)。火災保険を請求したが、保険会社は支払いを拒否。提訴したが、裁判所は請求者が故意に放火したと認定し、保険会社側が勝訴。

つまり、民事上はお前が放火犯だといわれてしまったということになります。ただあくまでも民事なので、刑事は別。このケースも刑事では立件されてないようです。民事と刑事が異なる扱い(民事では「有罪」だが、刑事では「無罪」?)となる典型的なケースの一つです。法律を知らない方からは、分かりにくいことこの上ないですが、今の法律の仕組みですとこういうことが起こってしまいます。


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