南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

高齢主婦の基礎収入

2009年08月27日 | 未分類
交通事故の休業損害や逸失利益を決めるのには、計算のベースとなる収入(基礎収入)をまず決めなければなりません(→詳細は過去記事

主婦が被害者の場合
女性労働者の平均賃金(平成17年の統計で343万4400円)を基礎収入とすることが通常なのですが(→過去記事)事故の被害者が60歳以上の主婦である場合については、女性労働者の平均賃金から減額した基礎収入とするのが現在の裁判所の考え方の主流です。

次のような理由をあげている裁判例がありました(横浜地裁平成21年2月19日判決自保ジャーナル1790号19頁)。

①高齢の主婦の場合には、子が成人していれば家事労働も一定程度軽減される
②同居の親族が家事を分担していて、被害者が担当している家事が少ない
③被害者が行っている家事も対価をえるべき労働というよりは、むしろ人として生きる為に通常必要な生活行為であったりする
④家事労働以外に就労して職につくことは考えにくい

高齢者には、この判決が述べるような傾向が一般的にあることは否定できませんが、それぞれの被害者には個別の事情がありますので、弁護士としては裁判所が上記のような問題意識をもっていることを念頭においた上で、被害者が実際に行っている家事労働の内容を検討していくことが必要となります。

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準備書面の提出期日が守られない理由

2009年08月24日 | 未分類
準備書面の提出期日が守られないという話を書きましたが(→過去記事)、なぜそのようなことになるのでしょうか。

一般の方は、納期は守られるべきものだと考えています。
これは、納期を守らないと取引先から取引を打ち切られたりするサンクション(制裁)があるからです。
これに対して
弁護士が準備書面の提出期限を守らなくてもサンクションがほとんどありません。

「提出期限を守らないのだから、その弁護士の主張はしないということにならないのか」という質問を受けます。
しかし、残念ながらそのような制度にはなっていないのです。

裁判官も提出期限が守られなくても、弁護士に対して厳しくいうことがありません。
これは、裁判官自身も期限を厳格に守れない事があること(→過去記事)と、無関係ではないと思います。

提出期限を守らなくても、さしたるサンクション(制裁)がなく、裁判官も仕方がないなという顔をするだけで、さしたる対応もない結果、準備書面の提出期限は法曹界では、単なる努力目標に終わってしまっています。

もっとも、若い世代は、提出期限に対してきっちり教育を受けているようで、期限を守る事が励行されていますので、5年、10年すれば、悪しき慣行が改まる可能性はあります。

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納期と準備書面の締め切り

2009年08月20日 | 未分類
世間では、納期は必ず守られるべきものと思われています。

しかし、訴訟における納期、具体的には弁護士が作成する準備書面の作成期限ということになりますが、一般の方が考える納期とは全然違います。
準備書面の締め切りは、ほとんど守られないからです。
裁判では、期日の1週間前までに準備書面を提出するように決められるのが通常です。
例えば、本日(8月20日)に期日があったとしますと、次回の期日は1~1ヶ月半後ですから、9月30日に次回期日となったりします。

そうすると、準備書面の提出期限は、期日の1週間前=9月23日となりますが、9月23日までに提出される事は少なく
・期日の3、4日
ならまだましで
・期日の前の日
ということも、往々にしてあります。

期日の前の日でも、昼間の時間帯に送付(FAX)してくれれば良いですが、夜に送られてきますと困ります。
というのは、9月30日の期日で朝一番に期日が入っていると、私など事務所には寄らないで、直接自宅から裁判所に行きますから、相手方からの準備書面が送られてきているかどうか自体がわからないからです。

事前に準備書面の提出があれば、当方の依頼者の方にも転送し、読んでおいていただくことが可能ですが、前日の夜とか、ひどいときには当日に交付されても、斜め読みしかできないということになります。

納期は守られるのが当然と考えておられる一般の方からは、この現象は
”ありえないこと”
とみられてしまいますし、交通事故の被害者やその家族も
”弁護士というのは、自分で約束した提出期限も守る事ができないのか”
という嫌な思いをさせてしまうことになります。

私もこのような恥ずべき習慣は、絶滅されるべきだと思っていますが、なかなかなくなりません。

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