南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

任意保険会社の対応が慰謝料増額事由となるとした地裁判決

2010年01月26日 | 未分類
 任意保険の対応が慰謝料増額事由となるとした地裁判決が、自保ジャーナルで紹介されていました。(松山地裁西条支部平成21年9月24日自保ジャーナル1812号19頁)

 判決から読み取れるのは、次のような経緯です。

1 被害者側には自分の自動車保険契約として人身傷害保険特約があった。

2 加害者側の任意保険会社は、被害者側に人身傷害保険の利用を勧めたが、被害者側は人身傷害保険の利用をしない方向で終えた。

3 加害者側の任意保険は合理的な説明もせずに示談代行を拒否した。

4 被害者側はやむをえず、人身傷害保険を利用せざるをえなくなった。

5 その後被害者側は加害者側に対して損害賠償を求めて訴訟をおこした。

6 加害者側は、訴訟で「被害者側は本件事故について人身傷害保険にその対応を求め、加害者側の任意保険会社側にはその対応を求めないこととした。」と主張し、信義則を理由に加害者側に対して損害賠償請求ができないとも主張した。

以上のような経緯について裁判所は

「人身傷害保険の利用に消極的な態度を示していた被害者側に対し、人身傷害保険の利用を勧めたのに、それを加害者に対する請求権を放棄したかのように主張する一連の対応は、被害者側の精神的苦痛を増加させたものと評価せざるをえない。」

として、加害者の対応には慰謝料増額事由としました。

加害者側の対応が裁判所の目からみても不適切と映ったからでしょう。




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100対0の事故でも注意が必要です

2010年01月21日 | 未分類
 被害者に過失なし(加害者の一方的な過失による事故)であっても、被害者にはいろいろ悩みはつきません。

 例えば、
 自動車に乗って通勤途中で交通事故にあい、加害者の方が100%悪いという事故の被害にあったとします。

この場合
① 加害者(そこが加入している任意保険会社)に対しての請求
② 労災の請求
ができます。
自分の車が、人身傷害補償保険の特約をつけていれば
③ 人身傷害補償保険の請求
もできます。

被害者側からみると、①~③のどれを請求したらよいのかが、よくわかりません。

 労災に問い合わせしてみると
「交通事故で加害者側が100%悪いんですよね。それでしたら加害者の任意保険会社さんに請求してください。」
と言われてしまうことがほとんどでしょう。

また、自分の加入した人身傷害補償保険に問い合わせても
「保険金請求をすればお支払いをするのは可能ですが、加害者の任意保険から支払いを受けられるのだとすれば、そちらで受け取っていただければよいのではないですか。100対0の場合、加害者の任意保険からと、当社からと2重での支払いは受けられませんので。」
と言われてしまうかもしれません。

それではと、加害者の任意保険会社に請求をしていくと
「治療費の支払いでは健康保険を使用してもらえませんか。」
とか言われ、治療が長引けば
「治療費はそろそろ打ち切らせていただきます。」
と言われるなど、払い渋りかと思われるようなケースも見受けられます。

任意保険会社の担当者は法律の理屈というよりは、交通事故の処理の実務を重視して動いており、弁護士が交渉してものらりくらりと、かわしていくようなタイプが多く見られます。
弁護士が交渉しても「話がなかなか通じない」という徒労感を持つことがあるのですから、被害者の方はなおさらだと思います。

このようなのらりくらりとかわされるケースには、訴訟を含めた法的手段をとって、事態を打開するしかありません。

訴訟となると弁護士が処理するので、法律上の理屈で物事を進めることができるからです。

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自動車保険ジャーナル、厚くなる

2010年01月12日 | お知らせ
自動車保険ジャーナルは、薄い新聞のような形式(冊子形式)でしたが、この1月から雑誌形式に変わりました。

それに伴い、名前も「自保ジャーナル」と変わりました。
以前は略称だったものが、正式名称になったのです。

詳細は、
 自保ジャーナルのホームページをご参照下さい。


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裁判所の検索システムで入力ミス

2010年01月11日 | 未分類
<量刑検索システム>誤入力新たに19件 10件が判決主文

量刑検索システムは、最高裁が構築している刑事事件のデーターベース。
裁判員が量刑判断で参考にするためのものですが、データ入力ミスがあったと最高裁が発表したという記事。

交通事故とは直接関係ないですが、裁判所も人間の集まりである限り、単純ミスからは逃れられないのだなあと思いました。

当事務所でもできるだけ、ミスのない書面を提出するよう心がけていますが、なかなか完全なものはできないものです。

裁判所も例外ではなく、交通事故訴訟でも和解案など結構計算ミスをすることがあります。

 交通事故(被害者)・離婚・相続・債務整理関係の相談は無料です(初回)。
 その他のご相談は有料となります。

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ペットが交通事故にあった場合の慰謝料

2010年01月06日 | 未分類
前回、ペットが交通事故に遭い怪我をした場合の治療費
という記事を書き、ペットの治療費を認めた名古屋高裁判決を紹介しましたが、今回は、同じ高裁判決から慰謝料の判断をご紹介いたします。

通常、物損については慰謝料は認められません。

赤い本にも「原則として認められない」と書かれています。

しかし、名古屋高裁判決では慰謝料を認めています。

ペットは物とは違う側面もあるという考え方です。

判決では、
「近時,犬などの愛玩動物は,飼い主との間の交流を通じて,家族の一員であるかのように,飼い主にとってかけがえのない存在になっていることが少なくないし,このような事態は,広く世上に知られているところでもある(公知の事実)。」
と大げさな書き方ですが(これが判決の書き方ではありますが)、と述べられています。

ペットが怪我をした場合、すべてに認めるのではなく、重い傷害を負った場合に限るとしています。

「そのような動物(注;犬などの愛玩動物)が不法行為により重い傷害を負ったことにより,死亡した場合に近い精神的苦痛を飼い主が受けたときには,飼い主のかかる精神的苦痛は,主観的な感情にとどまらず,社会通念上,合理的な一般人の被る精神的な損害であるということができ,また,このような場合には,財産的損害の賠償によっては慰謝されることのできない精神的苦痛があるものと見るべきであるから,財産的損害に対する損害賠償のほかに,慰謝料を請求することができるとするのが相当である。」

一審判決は合計80万円を慰謝料として認めていたのですが、この名古屋高裁判決は、一審判決から減額し、慰謝料として認めたのは、合計40万円でした。


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ペットが交通事故に遭い怪我をした場合の治療費

2010年01月03日 | 未分類
 交通事故は、大きく分けると、
 人身(人損)・・・人が怪我をおった場合
 物損・・・物が壊れた場合
に分けられます。

 人身か物損かによって、損害賠償の算定方法がかなり違ってきます。

 人身では、治療費や慰謝料が認められますが、物損の場合は、そのようなものは通常認められません。

 ペットが怪我を負った場合は、
  物損扱い
に基本的になります。

 しかし、ペットを単なる「物」として考えてもよいのかということは、まだ最高裁でも決まっていません。

 名古屋高裁平成20年9月30日判決(最高裁ホームページ)は、
 交通事故によりペットである犬が負傷した場合において,治療費,慰謝料等を認めた判決
であり、ペットの損害賠償請求を考える上で、参考になります。

 治療費について、判決の原文を引用します。

 ”愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているも
のが不法行為によって負傷した場合の治療費等については,生命を持つ動物の
性質上,必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく,当面
の治療や,その生命の確保,維持に必要不可欠なものについては,時価相当額
を念頭に置いた上で,社会通念上,相当と認められる限度において,不法行為
との間に因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である。”

 わかりやすくいえば、
  ペット(判決では、「愛玩動物」)を買った値段<ペットの治療費
となった場合、ペットの治療費を支払うべきだが、
 a 当面の治療や,その生命の確保,維持に必要不可欠なものに限られるし
 b ペットの時価相当額は考慮する必要がある。
ということになります。

 つまり、治療費全額を認めるわけではなく、aやbのような絞りをかけるのだということを名古屋高裁判決は示しているのです。

 このケースは、6万5000円で購入した犬についてのものですが、認められた治療費等は
 一審判決が約88万円でしたが、
 名古屋高裁判決は約14万円
と一審判決よりも大幅に減額しました。


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