南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

家裁審判への即時抗告のスケジュール

2018年01月30日 | 家事事件関係
家庭裁判所の 婚姻費用の審判や 面会交流の審判に 不服の場合は 異議申し立てができます。 この異議申し立てを「即時抗告」といいます。

即時抗告のスケジュールが どんなものなのか について ご説明します 。

1 申立て側のスケジュール
・審判受領から即時抗告申立て=14日以内
・即時抗告申立てから 即時抗告理由書提出=14日以内

申し立てる側では、〈即時抗告申立書〉と 〈即時抗告理由書〉を提出しなければなりません。
〈申立書〉は 審判の受領から14日以内 、〈理由書〉は申立書の提出から 14日以内 とされています 。あわせて28日以内(=およそ1ヵ月以内)にしなければなりません。

2 高等裁判所のスケジュール
 即時抗告の理由書が提出されると 記録は 家庭裁判所から高等裁判所に移管されます。 高等裁判所に記録が移管されるまでは 家庭裁判所に記録がありますので、即時抗告申立書や 即時抗告理由書は 家庭裁判所に提出します 。

高等裁判所では記録が届くと審判が妥当なのかを検討します。 この検討期間が 事案によってまちまちで 一概には言えないのですが、 私が経験したところをでは、早いところで 1ヶ月半程度、時間がかかると2ヶ月半程度で高等裁判所の決定がだされます。
つまり、審判が出てから 決定までは2ヶ月半から3ヶ月半ということになります( 2週間+2週間+ 1ヶ月半ないし2ヶ月半 )。

3 相手方(抗告された方)のスケジュール
高裁の決定が出る 話に飛びましたが、相手方としては決定が出る前に答弁書 というものを 提出する機会をが与えられます。これは 抗告の 理由について 相手方に 反論の機会を与えるものです。
また、 相手方にも資料の 提出の機会を 与えるために 決定の 2週間前 までに資料を提出するように という日を設定します。この日のことを「審理終結日」といいます。
この審理終結日までに資料、すなわち証拠を 提出しなければなりません 。

4 以上をまとめますと 流れとしてはこうなります 。

家庭裁判所の審判
→即時抗告申立書の提出
→ 即時抗告申立理由書の提出
→ 高等裁判所への記録の移管
→相手方の答弁書提出
→ 審理終結日
→決定

以上のような流れで 3ヶ月前後で 即時抗告 の手続きが 終了することになります 。


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共有関係を解消する~共有物分割訴訟

2018年01月24日 | 民事訴訟
1 不動産を共有すると共有者間で様々な調整をしなければなりません。
共有者間の仲が良い場合は問題ないのですが、悪くなるとこの調整が難しくなってきます。

2 共有となる場合というのは、次のような場合です。
・夫婦で住宅を共有していたが、財産分与の話し合いがつかず、共有状態のままとなってしまっている。
・親の不動産を相続したが、遺産分割で共有状態とした。

3 共有者間の調整がつかなくなってきますと、共有関係を解消したほうがよい場合があります。
 共有関係の解消について話し合いができればよいですが、解消したいというときは人間関係が悪くなっているときも往々にしてあるので、話し合いがつかないこともあります。
 そのようなときに取る法律上の手段として、「共有物分割」があります。

4 共有物分割の訴訟の目的は共有関係の解消にあります。
 共有関係の解消するための判決には次の3つがあります。

 1)現物分割= 実際に現地を共有割合で分割するものです
 土地が大きい場合はこの方法は妥当です。逆に土地が狭い場合は、さらに狭くなってしまい、売却に適さなくなってしまうという欠点があります。
 住宅地のようにそれほどの広さがない場合は、現物分割は適さないです。

 2)価格賠償=相手方の共有持分を買い取るという方法です。
 この方法は実際にはよく用いられるものであり、買い取りができる資力があればこの方法が紛争解決に適します。 
 問題は買い取りができる資力があるかどうかです。
 判決では分割弁済はできないので、一括で買い取れる場合でないとこの方法は使えません。

 3)競売命令
 以上の 二つの方法が 採用できない場合は 裁判所は 競売命令 という判決で共有状態の解消を判決します。
 裁判所の競売手続きにより、物件を売却するという手続きとなります。
  競売命令の欠点は 競売 をするということで 売却価格か 低くなってしまうということです。

 判決となるとこの3つの方法に限られてきてしまいます。
 しかし、和解」(合意)であれば、別の解決がありえます。

 4)任意売却= 当事者で合意して 売却する方法
 競売命令に比べて物件を高く売ることができるのがこの方法のメリットです。
 もっとも、任意売却である以上、買い手がつかないということもありえます。また、買い手は見つかったけれども、その価格で売ることに共有者の全員の合意が取れないという場合もあります。
 そのような場合に備えて、「*月*日までに任意売却できない場合は、共有者の1人が単独で競売の申立ができる」という条項を入れておくのが妥当です。
 


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埋もれていた史料〜「市原郡村々民事々件諸用留」

2018年01月16日 | 鳥海代言人業務日誌


今年は江戸時代が終わって150年の節目の年です。

私は歴史が好きなので、昔の裁判というのはどういうものなのかに興味があります。


その中でも千葉県での裁判ということになると、これを知るには「千葉県弁護士会史」をおいてほかにはないのではないかと思います。


「千葉県弁護士会史」は、千葉県弁護士会が1995年に発行したもので、既に絶版。古本でも売ってないもので、市場流通がされていないという貴重というかマニアック過ぎる本というなそういう部類のものです。


発行当時に千葉県の弁護士には無料で配布されましたので、書籍をきちんと蔵書されている方は今でも書棚にあるのではないでしょうか。


かくいう私は暫く蔵書していたはずですか、いつのときにかブックオフさんに売却した記憶があり、今は手元にはありません(笑)。



さて、明治時代の当初は弁護士というものがどうだったのかといいますと、そもそも「弁護士」という言葉自体がありませんでした。


「弁護士」と呼ばれるようになったのは、1893(明治26)年からなのです。

それ以前は、「代言人」と呼ばれていました。


しかもしかも当初は試験自体がなかったのです(試験ができたのは1877=明治9年)。


代言人となった人はどのような人だったのか、どうやって活動していのかは非常に興味があるところですが、この辺はほとんど史料がないようで、「千葉県弁護士会史」では全くといってよいほど論述がありません。


だだ、 「代言人の 資格を定めなかったため 無学 無識の 代言人を 多数輩出させる いわゆる三百代言の悪名を残してもいる」ということしか書いておりませぬ。

つまりは、史料がなくてお手上げ状態だっため、「三百代言」という言葉に言及したに過ぎないということなんでしょう。


こんなマニアックな本ですら、明治当初の代言人の活動が書いていないのならば、これはもうお手上げなのかと思っていましたら、昨年(2017年)5月に面白い本が出版されていました。


「明治初年の裁判」(橋本誠一著)

著者は静岡大学の教授で、法学がご専門らしい。


この中で、「ある代言人の業務日誌」という章があって、その副題が「千葉県立中央図書館所蔵『市原郡村々民事々件諸用留』」となっています。


「ある代言人の業務日誌」は文字どおり業務日誌でそれを翻刻したものです。翻刻した文章が延々と掲載されていて、あとはどうぞ皆さんでお読み下さいという体裁になっている。


うん、ちょっとは解説が書いてはあるんですが、ほんの一部。それを手がかりに読むほかありません。

翻刻されたものといっても、漢文みたいなものなのですよ。

その漢文調の文章と悪戦苦闘して、噛み砕いて説明してくれる方がいれば良いのですが、今のところそのような方も出ていないようです。


「市原郡村々民事々件諸用留」とググってみたところで、検索結果として表れるのは、橋本教授のお名前ばかり。


千葉の方もまだ気が付かれていないのか、少なくともネットの世界では全然広がりをもっておりません。


私のこの駄文が「市原郡村々民事々件諸用留」が少しでも広まる契機となれば良いのですが。


 

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