goroの徒然なるままに・・・

日々の記録と言うか自分の日記や備忘録として書き連ねるつもり。

ピンクのバンダナ特別編 第三章

2006年10月08日 | novels
第三章 New morning in the new town ・・・ 新しい町での新しい朝

6:00am 枕もとの時計が調子はずれのアラーム音を発した。

時差の関係か、早朝にもかかわらず思いのほか寝起きは楽だった。

僕は、朝食の前にホテルの周りを歩いてみることにした。
昼間の気温は温かいと聞いていたが、さすがにこの時間はひんやりとしている。
日曜日の早朝と言うこともあって、街は静まりかえっている。

朝日にきれいな町並みが照らしだされていた。
町並みと言ってもしっかりとビルディングも並んでいる普通の地方都市と言う感じだ。

僕が今日から3年間を過ごす街、綺麗に整備された町並、緑も多く適度に都市を感じさせる建物とうまく調和している。

交通量の少ない広い道路を、まったくノーマルのままのヘリテイジ・ソフテイルが、ノーマル然とした排気音を響かせて走り抜けていった。
東京ではノーマルマフラーのヘリテイジなんてかえって珍しいのだが・・・ここではふつうの国産オートバイだからだろうか?

最初の交差点にあったコーヒーショップでカプチーノを買って、近くの公園のベンチで初めての街での朝を過ごした
冷えきっている朝の空気に、温かいカプチーノはほっとさせてくれる。

今回僕がこの都市に来たのもIE社の開発部門からの誘いがあったからだ。
どうやら今までの大排気量ではない小排気量車を開発する計画があるようだ。
しかもエンジン形式は2ストロークだ。

いまさら2ストなんて、とみんなが思っているようだが、燃焼効率を考えると2ストの優位性も忘れてはならないはずだ

そして、日本で僕が開発していたのが中間排気量車用のマフラーだった。
排気ガス規制の関係か、世間から冷たい目で見られていた2ストロークエンジン用だったが
僕自身、昔から2ストエンジンが好きで所有していたオートバイはほとんどが2ストロークエンジンを搭載しているものだった

最初はエンジンのフィーリングだけで2ストロークエンジン車を選択していたのだが、次第に世間で2ストローク車が敬遠されるようになってきたのが気になり、新しいマフラーの開発に着手したのだった
一般的には4ストロークエンジンのほうが環境にやさしいなんて言われるのが悔しかったことも要因の一つだ

実際に、僕の開発したマフラーはフィーリングの向上だけでなく、エンジン性能の向上と排気ガスの低減という相反するものを両立できるものだった。
環境に対して非常にシビアな認識を持っているアメリカ、そのアメリカで永い歴史を持つIE車が僕のマフラー理論を認めてくれたのもわかる気がした。

ホテルに戻り、僕は愛用のラップトップでメイルを確認した

最近のホテルは備え付けの電話に通信用のモジュラージャックが装備されているので複雑な接続が不要になった、といっても国際電話を掛けることになるには変わりはない。

移動が続いていたので2日ぶりのメール受信だ。
予想どおり友人達から無事に到着したのか?とのメールが何通か届いている。

なかには彼女からのメールもあった。
日付を見るとどうやら僕が日本を出発した日に送ったもののようだ。
どうやら彼女のセンスが認められ、副都心に新しく建設予定のオフィスビルの一部のデザインがまかされたとのこと。

バブル時代に金銭をつぎ込むことが美徳とされていた頃から自然と人間の環境を考えたデザインを行ってきた彼女だ
仕上がりが楽しみだが、完成のときに立ち会えない場所にいることが残念だ。

3年後、日本に戻ったときを楽しみにしているとの返事を送り僕はシャワーを浴びた。

朝食をとりにレストランへと向かった。

地方都市のホテルだ、思いのほか人気の少ないレストランで、コーヒーにパンとソーセージを注文しゆっくりと朝食を楽しんだ。
そういえば、このようにゆっくりと朝食をとるなんてほんとに久しぶりだ。
輸入業務を手伝っていた頃は時間に追われる毎日で精神的にも参っていたことは確かだ。

IE社を尋ねるのは月曜の朝なので、今日は終日フリータイム。
ゆっくりと朝食をすませ、シャワーを浴びに部屋に戻った。

時計を見るとすでに11:00をまわっていた
フロントでもらってきた街の案内を見て近くにナショナルミュージアムがあるのを確認し僕は部屋を出た

何度となく海外での生活を経験したが、初めて訪れた街では最初に必ずミュージアムに行くことにしている
日本で言う「民族資料館」のようなものがあると、知らない街の歴史も良くわかるから、と言う理由もあるが、ミュージアムの雰囲気自体が好きだった。

ホテルを出て15分くらい歩いただろうか。
並木道の先に目的のミュージアムが見えてきた。

地方都市にしては立派なつくりで見応えのありそうなミュージアムだ。
この街自身も綺麗に整備されてはいるが、長い歴史のある街だという事もわかったし、何よりもIE社の存在がこの街に大きな影響を与えていることも紹介されていた。

内燃機関を作りつづけて100年以上の歴史のあるIE社だ、ここまで社会に認められるのは環境への配慮も怠っていなかったのだろう。

専門のコーナーが設けられていたことからも、影響力の大きさと信頼を物語っている。

休日でも見学者も少なくゆっくりと見物した後、僕は館内のティールームでゆっくりとコーヒーを飲んだ。

博物館を出ると時間はすでに15:00だった
今日の夕方に友人と会うことになっている
友人と言っても僕とIEの間に入ってくれていろいろと面倒を見てくれたToddだ
彼は僕のwebを見てメイルをくれて以来の友達だ
もちろん会うことは初めてだし話すことも初めてだ
でも、メイルと言うものは便利なもので、顔写真を添付してくれたのでなんとなく印象はわかっているつもりだ

約束の時間まではまだたっぷりあるので僕は徒歩で近くのショッピングセンターに向かった
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