子供の頃、正月の楽しみのひとつが餅だった。
あの頃、餅は正月にしか食べられない特別なものだった。
三十日になると、米屋からビニール袋に入った、まだ柔らかいのし餅が届く。ビニール袋には点線が印刷されていて、これに沿って包丁を入れれば、形の揃った切り餅ができる。
正月が終わると、残った餅は揚げ餅か水餅にする。水につけておけば、カビるのを防ぐことができるが、ふやけて不味い。風味の落ちた水餅に、正月が終わってしまったことを実感した。
1973(昭和48)年、サトウ食品が「サトウの切り餅」を発売した。革新的技術で、日持ちしない欠点を克服し、餅を一年中食べられる保存食に変えた。餅があれば雑煮もできる。「サトウの切り餅」は、正月の持つ特別な雰囲気も変えてしまった。
子供の頃、正月は日本中が休みになった。今は、スーパーもコンビニも営業している。門松やしめ飾り、日章旗を掲げる家も少なくなった。振袖姿で出社するOLも見かけなくなった。
クリスマスには競ってライトアップするというのに、どういうことだろう。
年々、正月はただの長期休暇へと変質し、騒いでいるのはテレビ局だけだ。
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