徒然なるままに 

BGMはモダンジャズ、暇つぶしの自分史

水谷豊主演 「少年H」

2013年09月11日 | 日記・エッセイ・コラム

「少年H」は、妹尾河童の自伝的小説。
神戸を舞台に、軍国化や戦争という暗い時代を生きる家族の姿を描いている。
1997年(平成9年)、講談社より刊行され、300万部を超える大ベストセラーになった。

しかし、批判も少なくない。
筆頭が、児童文学作家の山中恒で、「妹尾の自伝でもなんでもなく、戦後的な価値観や思想に基づいて初めから結論ありきで描かれた作品である」と酷評した。父親の盛夫が時代背景の説明役になっているが、それが当時の一般人が知るはずもないことを語っているという。
例えば、帝国議会での斉藤隆夫の反軍演説は戦後公開されたものであるし、独ソ不可侵条約でポ-ランド分割占領の秘密議定書の存在も戦後発覚したものである。それを戦時中に盛夫が語り、少年Hが憤慨するのだから、あきらかに作り話だという。

家族をよく描きたいがために、脚色がはいってしまったことは否めない。
その「少年H」が映画化され、モスクワ国際映画祭で上映し特別作品賞を受賞した。
国内の興行成績も上々だという。
Pic20130911_2
茅ヶ崎では、イオンシネマで上映されている。公開して1ヶ月経っていることもあり、ガラガラだった。約2時間の映画だが、最後まで退屈することなく楽しめた。特に、戦前、戦中の街並みや暮らしぶりが忠実に再現されていて、とても興味深かった。

盛夫(水谷豊)は、批判されたような事情通ではなく、家族の安全のための忠告に終始する。
批判を避けた作りになっているが、語り部をなくしたことで、反戦映画なのか、家族愛の物語なのか、テーマがぼやけてしまった感もある。
また、眉唾っぽい演出も残っている。
過激な鬼教官(原田泰三)が、戦後は中学生に媚びるような男に変貌してしまうのも嘘くさい。

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コメント
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